障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第4障『初戦闘』

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カイムの村、ナツカの畑にて…

「俺はガイ。アンタと同じ、障王の末裔さ。」

これから探すはずだった障王の末裔が目の前に現れたことに、ナツカ達は驚いている。

「えっちゃ、やったやん。探す手間省けて。」
「そだな。」

ナツカはガイに話しかけた。

「ワシら今から魔王倒す為に障王の末裔探しに行くんダけどよ、オメェも来るダろ?てか来い。」
「あー無理。」
「は?」

承諾されると思っていたが、拒否されてしまいナツカの顔は曇った。

「だって俺、魔王の味方だから。」

ナツカ達は驚いた。

「はぁ⁈」
「えっちゃ、何で障王が魔王の味方してんねん!」
「良いだろ別に。あ、ちなみに魔王復活させたの俺だから。」

ナツカ達は再び驚いた。

「えっちゃ、嘘やろ⁈」
「オメェ!何してくれちゃってんダ!」

ナツカは怒りが込み上げてきた。

「オメェのせいで…ワシの村は…ッ!」
「知るかよ。俺にとっちゃそんな事、どうでもいい事だ。」
「オメェ…ッ!!!」

ナツカが剣を抜こうとしたその時、カメッセッセがナツカの前に立った。

「(コイツがあのカメッセッセか…)」

カメッセッセはガイに話しかけた。

「ケモテイか?」
「え?ケモテイ?なにそれ?」

次の瞬間、カメッセッセは有無を言わさず、再びガイに問いかけた。

「すぉんなんどーでもええねん!ケモテイかどうか聞いてんねん!」

その時、ガイはクスクスと笑った。

「噂通り、変な奴だなお前。まぁ、魔障将ましょうしょうはお前みたいな変人ばっかだけど。会話が成り立たない成り立たない…」
「ましょうしょう…?」

エッチャは聞きなれない単語が頭に引っかかった。

「なんだ?そいつから何も聞いてないのか?タレントとか魔王軍の事とか。」

ナツカとエッチャはカメッセッセを見た。

「教えてやれよ。元魔障将のカメッセッセ。」
「元…?」
「カメッセッセ…オメェ…」

カメッセッセにいつものおちゃらけた表情はなく、真剣な面持ちをしている。

「魔障将は敵。タレントは能力。」

カメッセッセはボソッとそれだけ言った。

「いや、ちゃんと教えろよい!」
「お前らにはおすぃえへん。」

その時、カメッセッセは背負っていた弓と矢を取り出した。

「今はな…」

カメッセッセは弓を引いた。

「魔障将はオレらの敵や。敵が目の前おんねん。殺るしかないやろ!!!」

次の瞬間、カメッセッセはガイに向けて矢を放った。

「急だな。」

ガイは楽々とその矢を回避した。

「微分魔法『y=0ホライゾン』!!!」」

次の瞬間、矢の向きが変わり、ガイの左肩に刺さった。

「いって…」

ガイは左肩に刺さった矢を抜いた。

「やっぱり能力バトルは面白い。クソタレントも使い方次第だからな。」

ナツカとエッチャは、矢のあり得ない挙動に驚いた。

「な…何が起こったんダ…⁈」
「途中で矢が曲がったっちゃ⁈」

次の瞬間、ガイはナイフを取り出し、それをカメッセッセに投げつけた。

「微分魔法『x=0バーティカル』!!!」

しかし、ナイフはカメッセッセに当たる直前で下向きに方向が変わった。

「へぇー…」

ガイは又もや、カメッセッセにナイフを投げつけた。

「微分魔法『x=0バーティカル』!!!」

カメッセッセは再びナイフの方向を変えた。それと同時に、ガイはさっき投げたナイフよりも少し下方向にナイフを投げた。
すると、そのナイフと方向を変えられたナイフが衝突し、方向を変えられたナイフはさらに向きが変わった。
そして、それはカメッセッセの太ももに刺さった。

「あでッ!!!」
「やっぱりな。微分魔法か…理解した!」

ナツカ達はカメッセッセに近寄った。

「おい!オメェ大丈夫か⁈」
「えっちゃ、血ぃ出てる…」

2人はカメッセッセを心配しているが本人はそれどころではないらしく、ガイから視線を逸らさずにいる。

「お前の微分魔法、奥行きは変えられないんだろ。もし、それが可能なら、ナイフはそのまま俺の方へ帰してるはずだからな。」
「そんなん分かったぐらいで…」
「それだけじゃない。俺の2回目の攻撃が成功した理由だよ。2回目の攻撃時、俺が投げた2つ目のナイフの方向を、何故お前は変えなかったのか。お前だって分かってたはずだ。2つ目に投げたナイフは、1つ目のナイフの方向を変える為だって。」
「すぉんなんどーでも…」
「お前のタレントは、解除するまで1つの対象にしか使えない!」
「あ"~~~~~!!!」

図星のようだ。

「使えなかったんだよな。もし、2つ目のナイフの方向を変えようとしたら、1つ目のナイフが当たってしまうから。」
「おてぃとぅけ…おてぃとぅけオレ…」
「まだあるぞ。衝突後にナイフの方向を変えなかった理由だ。」
「もうやめて…」
「詠唱をしなければ、能力を発動できないんだろ。だから、衝突後も使わなかったんだ。詠唱を終える時間よりも早く、ナイフが届くと思ったから。まぁ、『魔法』って付く系のタレントは基本、詠唱必要だけど。」

ガイは得意気にカメッセッセのタレントを言い当て続けている。

「(アイツが何言ってるか全然わかんねぇ…だが、コレだけは分かる…)」

ナツカはカメッセッセの顔を見た。

「(コイツ、めちゃくちゃ動揺してらぁ…)」

それを見兼ねて、エッチャはナツカに話しかけた。

「ナツカ。俺らも戦うぞ。」
「お…おう!」

ナツカとエッチャは剣を構えた。

「お前ら、今までの様子からしてタレント持ってないだろ。ノーマルがハンディーキャッパーに勝てると思ってるのか?まぁ、絶対に勝てないって事は無いけど。俺も昔、握力エグいだけのノーマルに倒されたし。」
「えっちゃ、よく喋る奴やな…!」

エッチャはガイに斬りかかった。

「ちゃぁぁぁぁぁあ!!!」

エッチャの剣先がガイに触れかけたその時、ガイは叫んだ。

「微分魔法『y=0ホライゾン』!!!」

すると次の瞬間、エッチャの剣の刃が曲がり、ガイには当たらなかった。

「ちゃああ⁈」

次の瞬間、ガイは背中に忍ばせていた刀で、エッチャの左腕を切断した。

「エッチャ!!!」
「ちゃぁぁぁぁああ~!!!痛ぇよぉぉぉぉぉお~!!!」

ガイは悶えるエッチャを気にも留めず、刀についた血を拭いている。

「あーヤダヤダ。錆びちゃう。」
「オメェ…!!!」

ナツカはガイに斬りかかった。

「ダァァァァァア!!!」

その時、再びガイは叫んだ。

「微分魔法『y=0ホライゾン』!!!」

すると、ナツカの剣が曲がった。

「(くそッ!何ダよコレ…!)」

その時、カメッセッセは叫んだ。

「微分魔法『x=0バーティカル』!!!」」

すると、ナツカの剣が元に戻った。

「お、マジか。」

ナツカの剣先がガイの額に触れかけた。しかし、ガイは全く動じていない。

「『磁力マグネ』!!!」

次の瞬間、ナツカの剣は何か強い力で別方向に引き寄せられた。

「んダッ⁈」

ナツカの剣は、ガイが右手に持っていた刀にピッタリくっついた。
その時、ガイは刀の柄の部分で、ナツカの顔面を殴った。

「ダフッ!」

ナツカは鼻を押さえて背後に飛んだ。

「あーあ。使っちゃった。今日はいいや。帰る。」
「待て!逃げんのか!」

ガイはカメッセッセを指差した。

「だってアンタ、本気じゃないだろ。何で第二、第三のタレントを使わない?」

カメッセッセは黙ったまま睨みつけている。

「ま、いいや。いずれまた会うだろうから。その時はもっと楽しませてくれよな。」
「楽しませる…だと…」

ナツカは拳を強く握りしめた。

「『飛翼フライド』!!!」

すると、ガイの背中から翼が生え、ガイは空を飛んだ。

「今日の事は魔王軍には内緒にしとくよ。安心して障王探しするといい。じゃ。」

ガイは何処かへ飛び去った。

「くそッ!何なんダよ、アイツ…!」
「…アイツは助けを求めとぇる…」
「は…?」
「お前が助けるんや。」

カメッセッセは真剣な眼差しでナツカを見ている。

「…オメェ、マジなのかふざけてんのか分かんねぇんダよ。」

その時、エッチャが苦しみの声を上げた。

「ちゃぁ~…ッ!」
「あ!そうダ!忘れてた!スマネェ!」
「えっちゃ…ひどいって…」
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