障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第6障『タレント』

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チハーヤ王国の真東、デカマーラ王国にて…

デカマーラ城内では何やら騒ぎが起きている。

「王よ!何処へ行く気ですか!」

1人の青年が多くの兵士達に追われている。

「待たれよ!王!」

青年は城の窓から飛び降りた。

「ドピュっとあばよ!!!」

デカマーラ王国、城下町にて…

ナツカ達はチハーヤからデカマーラ王国へ、徒歩で辿り着いた。

「オッサ!着いたぞ!」
「はぁ…しんどい…」

ナツカはかなり疲れ切っていた。いや、ただの根性無しの文句たれである。

「えっちゃ、俺腹減ったわ。」
「なんか食おうぜぇ…」

ナツカ達は街を探索した。

「えっちゃ、変わった建物が多いな。」
「服も変ダ。」

デカマーラ王国の建物や服装は、独特な作りをしていた。例えるならば、古代中国のような。

「すぉんなんどーでもええねん!ケモテイかどうかあのお店でご飯食べたいかどうか聞いてんねん!!!」
「食うよボケ。」

ナツカ達はとある飲食店の前にやってきた。

「葉っぱ専門料理店…?何ダこの店。」

入り口の上に掲げられた看板には、『葉っぱ専門料理店』と書かれていた。

「えっちゃ、俺、肉食べたい。」
「ワシも。」

エッチャもナツカもここに入店するのを拒んでいる。

「文句言うな。オレだってな、立派な肉棒食べたいねん。」

カメッセッセは無理矢理に、ナツカとエッチャを店の中へ連れていった。

店内にて…

ナツカ達が店に入ると、若い女性の店員がやってきた。

「いらっしゃいませ~!3名様でよろしいですか?」
「見りゃ分かるやろ!ガンサすんぞ!」

カメッセッセはいきなり店員に怒鳴り散らした。

「す、すみません!」

店員は慌てて頭を下げた。

「えっちゃ、やめろって。」
「オレお腹すいてイライラすぃてんねん!ムラムラすぃてんねん!!!」

ナツカ達は席につき、メニューを見た。

「…何ダこれ…」

メニューは植物図鑑だった。

「すいませーん。」

ナツカが店員を呼んだ。

「はーい!ご注文お決まりでしょうか?」
「これ、草しか載ってねぇんダが。」
「ヤシの葉3つ。」

ナツカを無視して、カメッセッセが全員の分を勝手に注文した。

「ダッ⁈」
「かしこまりましたー!」

店員は厨房へと戻っていった。

「オメェ、何勝手に決めちゃってくれちゃってんの。」
「ありがとう。」
「褒めてねぇよ。」

エッチャはテーブルに手をつき、立ち上がった。

「えっちゃ、出ようや。この店もカメッセッセも頭おかしいって。」

すると、ちょうどそこへ店員は厨房からヤシの葉がたっぷり入った茶碗を3つ持ってきた。
ナツカとエッチャはその茶碗を見て、言葉を失った。

「やってられっかぁ~!!!」

カメッセッセはブチギレた。

「えっちゃ、落ち着けって!」
「オメェが頼んダんダろ!」

カメッセッセが店員に顔射しようとズボンを下ろそうとしたその時、店員は不敵に笑った。

「落ち着いて下さい。こう見えて私、ハンディーキャッパーなんですよ。」
「ハンディーキャッパー…?」

その時、ナツカはガイの言葉を思い出した。

〈ノーマルがハンディーキャッパーに勝てると思ってるのか?〉

店員は葉っぱの入った茶碗に手をかざした。

「『米化マイマイ』!!!」

すると次の瞬間、茶碗に入っていた葉っぱが炊き立てご飯に変わった。

「ちゃちゃあ⁈」
「何じゃこりゃあ⁈」

エッチャもナツカも同時に驚きの声が漏れた。

「私のタレントですよ。葉っぱを米にするんです。」
「そうダ!タレントでい!タレントについて聞くの忘れてた!」
「お客様、タレントは初めてですか?」
「あぁ。」

タレントを全く知らないということに、店員は少し驚いていた。

「えっちゃ、何なん?タレントって。」
「タレントとは、ハンディーキャッパーだけが使える超能力のようなものです。」
「ハンディーキャッパー?」
「ハンディーキャッパーは何かしらのウィークポイントを持った者の事ですよ。」
「ウィークポイント…って具体的に何…ダハッ!!!?!?!」

ナツカは禁断症状により倒れた。

「えっちゃ、それじゃね?ウィークポイント。」

ナツカはポケットから取り出したラムネを食べ、禁断症状を抑えた。

「えっちゃ、でも何で超能力使えるん?」
「詳しくは解明されてないそうですが、弱点を補う為の第六感、だそうです。」
「第六感?」
「こんな話聞いた事ないですか?目の見えない人は、それを補うかのように他の感覚器官が強化されるって。」
「それがタレント…」
「はい。ですが必ずしも、ウィークポイントを持っていればタレントを使えるという訳ではありません。」

ナツカは自身を指差した。

「さっきのワシの禁断症状みてぇにか?」
「先天的なものなら100%発現するそうですが、後天的な場合、タレントが発現するのは非常に稀だそうです。」
「んじゃ、ワシ無理かもな。使いたかったなぁ、超能力…」

ナツカはしょんぼりとした。

「でもナツカ、障王の末裔やん。使えるやろ。」
「そうなのか?」

ナツカは店員から、回答を得ようとそっちの方を向いた。

「タレントの特性は遺伝の要素が大きいので、もし後天的でも発現の可能性は高くなりますね。」
「ん…なんかよ、タレント使えるようになる前触れとか…前兆みてぇなもんねぇのか?」
「さぁ。私は無かったですよ。子供の頃、公園で遊んでたら急に来ました。あ、でもサイは精神的な要素が大きいので、死ぬ目に遭った時にタレントが発現して、難を逃れたって話聞いた事あります。」
「サイ?」

新たな言葉にナツカは顔を顰めた。

「えっちゃ、自分の能力がどんなんか、どうやって分かんの?」
「何となくです。タレント発現時に何となく、使い方とタレントの名前が分かります。」
「名前も…?」

名前も分かるということに理解が及ばないようだ。
ナツカはカメッセッセの存在を思い出し見ると、無言でただひたすらに米を食べていた。

「てかオメェ、何にも教えてくんねぇよな。どうなってんだ」

カメッセッセは食事を中断し、口の周りについた米を取りながら顔を上げた。

「お前はみなぎってたからな。」
「何が?」
「早よ飯食わな冷めるぞ。」
「おっと、そうダった。」

ナツカは促されるよう白米を食べ始めたが、エッチャはまだ食べようとしない。

「えっちゃ、白米だけで食われへんわ。おかずは?」
「オレの事、オカズにすぃてえーでー♡」
「死ね。」
「ケモテイ…♡」

ナツカ達は白米のみの夕食を楽しんだ。
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