障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第7障『残・雷尿』

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翌日、デカマーラ城下町にて…

ナツカ達はデカマーラ城へ向かって歩いている。

「障王の末裔って事は、ワシみてぇに王族なんか?」
「そりゃそうやろ。なんや、吸いたいんか?」

カメッセッセは上からナツカの顔を覗き込んだ。
そんな光景をエッチャは一歩下がったところから見ていた。

「えっちゃ、お前ホンマ頭おかしいな。」
「うるすぁい。」

その時、何者かがナツカ達に声をかけた。

「おまんら!!!」

それは、魔障将レイパーTであった。

「…誰ダ?」
「えっちゃ、むっちゃ濁声やんけ。」

レイパーTとカメッセッセは睨み合っている。

「…姦淫って分かるか?」
「レイプ。」

レイパーTの質問にカメッセッセは即答した。
次の瞬間、レイパーTはクレープを創造し、それをカメッセッセにあげた。

「チッ…」

レイパーTは去っていった。

「えっちゃ、アイツも現地のハンディーキャッパーか?」
「いいなぁ、クレープ…」

カメッセッセは浮かばない表情のままクレープを食べ始めた。

デカマーラ城下町広場にて…

レイパーTが広場にやってきた。

「そのタレント、発動条件バレてると弱いよな。」

噴水の前には、ガイが座ってアイスを食べていた。

「何しに来たんや!」
「保険。」
「はぁ⁈」
「アンタ、タレント不発しても戦いかねないからさ。」
「そんな事するかッ!」
「でしたね。」

レイパーTはその場を去ろうと、ガイに背を向けた。

「もうすぐマイアンが到着する!おまんの出る幕は無い!」
「あの人には荷が重いんじゃないですか?相手はあのカメッセッセですよ。」
「…おまんは奴を過大評価しすぎや!」

レイパーTは去っていった。

「お前らを過小評価してんだよ。少なくとも、こっち側じゃ…」

ガイはデカマーラ城を眺めた。

「早く強くなれ、ナツカ・チハーヤ。カメッセッセが死ぬ前にな。」

デカマーラ城、門前にて…

ナツカ達がデカマーラ城へ入ろうとした時、2人の門番に止められた。

「待て!ここから先は王の許可がないと入れん!」
「今日は使者が訪れるなどという話は聞いていない!」
「お前たち、見るからにこの国の者ではないな!観光ならよそへ行け!」

カメッセッセが一歩前に出た。

「オレ、カメッセッセ。」

その発言を聞くと、門番達はたじろいだ。

「な、なんと!アナタがあの有名な…!」
「失礼しました!どうぞお入り下さい!」

門番達は道を開けた。

「セッセン。」

カメッセッセは意味不明な一言を言うと、城の中へ入っていった。
それに続き、ナツカ達も城へ入った。

「オメェ、実はすごい奴なんダな。」
「夜はもっとすごいで♡」
「えっちゃ、頭おかしいけどな。」

デカマーラ城、応接間にて…

「おっすぉいな!何時間待たすぇんねん!」

カメッセッセは机を叩いた。
王が不在という事で、ナツカ達は応接間にて待たされていたのだ。

「王が不在ってどーゆー事ダ?どっか行ってんのか?」
「えっちゃ、ドンキ行ってんちゃう。」
「王様はドンキ行かねぇ。」

その時、応接間に1人の中年の男が入ってきた。

「お待たせして申し訳ありません!」
「おっすぉいねん!ガンサすんぞ!」

男は頭を深く下げた。

「オメェが王様か?」
「いいえ。私はこの国の大臣です。訳あって今は王が不在なので、代わりに私目が。」

その時、カメッセッセは叫んだ。

「すぉんなんどーでもええねん!ケモテイかどうか聞いてんねん!」
「ケモ…テイ…?」

大臣は首を傾げた。

「えっちゃ、コイツの話は聞かんくてええっすよ。」
「そんな事より、何で王様いねぇんダよ。」
「実は…」

ナツカ達は大臣から事情を聞いた。

「ダァァァ~⁈王様が逃げ出したぁ~⁈」
「はい…誠に申し訳ありません…今、兵士たちが探しておりますので、もうしばらくお待ちを…」

その時、カメッセッセは立ち上がった。

「やってられっかぁ~!!!」
「急にでけぇ声出すな。ぶっ殺すぞ。」
「待ってられへんわ!オレ達もすぁがすぅぞ!」

デカマーラ城下町、ドンキ前にて…

「ぜってぇ居ねぇと思うんだが…」
「えっちゃ、絶対おるって。」
「どっから来んダ、その自信…」

エッチャが先頭で他の2人を率いていた。
ナツカは大臣から聞いたデカマーラ国王の容姿を思い出していた。

「えーっと…歳は19で身長は185cm。細身で口にマスク…だっけか?」
「あと、股間がもっこり。」
「あ、そダったそダった。」

ナツカは辺りを見渡した。

「ワシとあんまり歳変わんねぇのに王様かぁ…大変だな。そりゃ逃げ出したくもなるわ………ん?」

その時、ナツカはとある青年がドンキから出てくるのを見た。

「アレじゃね?」

ナツカはその青年を指差した。

「細身…マスク…もっこり…アイツや!」
「マジでドンキに居た…」

無言だったカメッセッセが急に走り出した。

「とぅかまえろ!!!」

その青年はカメッセッセの声に気づき、そちらを向いた。

「ん?何だ君たち?」
「おすぃえますぇ~ん!!!」

次の瞬間、カメッセッセは青年を殴り倒した。

「ブハッ!!!ど、ドピュっと何するんだ⁈」
「お前、王様か?王様やな!王様やねんな!!!」
「はぁ…?」

その時、ナツカとエッチャはカメッセッセを止めた。

「えっちゃ、何してんねんお前!」
「すまねぇな。コイツ頭おかしいから許してやってくれ。」
「君たちは一体…」
「オメェ、デカマーラ国王ダろ。ワシはナツカ・チハーヤ。実は話があって…グハッ!!!」

ナツカは禁断症状により倒れた。

「ど、ドピュっとどうしたんだ⁈」
「ぃお…お薬…を…ッ!」
「えっちゃ、またいつものか。」
「ケモテイか?」

エッチャとカメッセッセはナツカにラムネを食わせている。

「ドピュっと変な奴らだな。」

お前が言うな。

デカマーラ城、玉座の間にて…

「魔王を倒す為に障王探しの旅をしている、か…面白そうだ!よし!俺も着いていくぜ!」
「お、まじか!」

ナツカは小さくガッツポーズした。

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はデカマーラ国王、ざん雷尿らいにょうだ!ドピュっとよろしくな!」
「ドピュっと…?」

ナツカは首を傾げた。

「あぁ、気にしないでくれ。ドピュっと俺の口癖だ。」
「えっちゃ、口癖って…」

エッチャは顔をしかめた。
それと同時に、ナツカは言った。

「変な奴。」

お前が言うな。

「んじゃ、早速4人でインキャーン王国に…」

その時、大臣は叫んだ。

「なりませぬぞ!」

大臣は雷尿に駆け寄った。

「立場をお考え下さい!アナタはこの国の王なのです!王がいなくなれば、デカマーラは一体どうなると…」
「ドピュっとうるさいぜ!俺は王になんかなりたくなかったんだ!半年前に父上が突然死んだから、仕方なくやってただけだ!後の事はお前や弟達に任せる!それでいいだろ!」
「しかし、魔王討伐など危険すぎます!」

その時、1人の兵士が慌てた様子で玉座の間に入ってきた。

「失礼します!」
「何だ!今は大事な話をしている最中だ!」

一方その頃、ポヤウェスト王国にて…

「ぬぐぁあ!!!?!?!??!!!」

唇が特徴的なモヒカン男が急に倒れた。
そこへ、2人の女騎士が駆け寄ってきた。

「ちょっと⁈どうしたのよ!」
「だ…大事な話が…ッ!」
「はぁ?」

デカマーラ城内、玉座の間にて…

「た、大変です!城内に魔物が侵入しました!」
「なにぃ⁈」

その時、カメッセッセはここぞとばかりに腕を組んだ。

「行ってこい、ナツカ、エッチャ。」
「おう。」
「ちゃあ!」

ナツカとエッチャは颯爽と玉座の間を出て行った。

「ケモテイ、ケモテイ、バトルの時間や。」
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