障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第9障『勃起』

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玉座の間にて…

カメッセッセ,残・雷尿,デカマーラ大臣,マイアン,パパンダが居た。

「久しぶりやねん、カメッセッセ。相変わらずの童顔ねん…あーん!!!」
「うるすぁい。」

雷尿はマイアン達に敵意を露わにしている。

「お前らドピュっと魔物だな。この国に何のようだ。」

マイアンはカメッセッセを指差した。

「用があるのはそいつやねん…あーん!!!」

すると、マイアンは空間に穴を作り出した。

「サシでやろう。」
「…えーでー。」

マイアンとカメッセッセはその穴の中へと入っていった。
次の瞬間、パパンダが雷尿に殴りかかってきた。

「きぃぃみの相手は僕だぁ!」

雷尿はその拳を受け流し、反撃の蹴りをかまそうとした。
しかし、パパンダは寸前でそれをかわし、背後へ大きく飛んだ。

「いいだろう!ドピュっと相手をしてやる!戦いは嫌いじゃない!」
「ダメです!早くお逃げ下さい!」

大臣の制止も虚しく、雷尿はパパンダに玉座を投げつけた。

「そんな物で僕がやられるとでも…」

次の瞬間、玉座の大きさが5倍になった。

「フォォォォォオオン⁈」

パパンダは驚きの奇声をあげている。

「コレが俺のタレント…『勃起ビルド』だ!!!」

パパンダは巨大化した玉座の下敷きになった。

「解除。」

雷尿は玉座の大きさを元に戻し、下敷きになっているパパンダに追い討ちをかけようとした。
しかし、そこにパパンダの姿は無かった。

「居ない…何処へ行った…⁈」

その時、玉座の間の入り口の方から声がした。

「こっちだぁ!」

雷尿が振り返って見ると、そこにはパパンダがいた。

「(いつの間に…)」

その時、大臣は叫んだ。

「王!上です!!!」

雷尿は上を見上げた。
すると、そこには巨大な岩石が落下してきていた。

「なにぃぃ⁈」

岩石は雷尿に直撃すると思われた。

「『勃起ビルド』!!!」

しかし、雷尿の腕が巨大化し、岩石をいとも容易く砕いた。
その光景を見たパパンダは少し微笑んだ。

「ドピュっと嬉しそうだな。」
「君のタレントは物体を大きく、そして硬くする能力だな。でないと、あの岩石を素手で粉々には出来まい。」
「その通り。まさか、ドピュっとこんなに早く、硬質化がバレるとはな。」
「ところで、君は僕のタレントの正体、分かったかなぁ?」
「急に消えたり岩を落としたり…悔しいが、ドピュっと見当つかないな。」
「バカ野郎だ!死ね!」

パパンダはとてもニヤニヤしながら罵声を浴びせた。

「お前が死ね!『勃起ビルド』!!!」

雷尿は腕を巨大・硬質化させ、パパンダを殴ろうとした。
しかし次の瞬間、パパンダの姿が消えた。

「(転移型のタレントか…それなら、先の攻撃も納得がいく…)」

次の瞬間、パパンダが雷尿の真後ろに、突如として現れた。

「はっ⁈」

パパンダは縄で雷尿の首を絞めた。

「ぐっ…がぁ…ッ!!!」

パパンダは雷尿の首を絞め続けている。

「いぃ~締め付けだろぉ!」
「(まずい…このままじゃ…!)」

パパンダは不満そうに首を傾げた。

「どうしてタレントを使わないんだぁ?さっきの手みたいに首を巨大化して縄を引きちぎればいいだろぉ?」

雷尿はもがいている。

「まさか、発動条件があるのかなぁ?そうだろう⁈そうに違いないんだろぉ!」

パパンダの言う通り、雷尿の『勃起ビルド』には、発動条件があったのだ。
雷尿は今、その発動条件を満たしていない。だから使えないのだ。

「(意識が…)」

雷尿の意識が遠のいていく。

「これは良い!死ね死ねぇ~!」
「(こうなったら…ッ!)」

次の瞬間、雷尿は懐から何かを取り出した。

「本…?」

パパンダは雷尿が取り出したものを見た。

「そ、それは…!」

雷尿は縄への手を離し、その本を読み始めた。
パパンダは首を絞めながら、雷尿の背後から本を覗き込んだ。

「エロ漫画だとぉぉぉお⁈」

そう。雷尿はこの状況でムフフ本を読んでいたのだ。

「『痺れるこころ肉体からだ』!デカマーラで最もムフフな漫画!王よ!まだそんなものを隠し持っていたのですか!」

大臣はお怒り気味だ。

「きぃぃみは何を考えてるんだぁあ!!!」

パパンダが雷尿のふざけた行動に呆れた次の瞬間、雷尿の首が巨大・硬質化し、縄を引きちぎった。

「なんだとぉお⁈」
「『勃起ビルド』!!!」

雷尿は腕を巨大・硬質化させて、パパンダを殴り飛ばした。

「フォォォォォアァァァァァァァア!!!?!?!」

パパンダは壁に激突した。

「カッチカチやでぇ!!!」

説明しよう!
雷尿の『勃起ビルド』には発動条件があった。それは性的興奮。『勃起ビルド』は性的興奮の度合いによって、巨大・硬質化の度合いが変化する。つまり、よりムラムラしている方が、物体をより大きく、より硬くする事ができるのだ。
雷尿は首を絞められていた。その為、雷尿の性的興奮度が一時的に減少した。故に、『勃起ビルド』が発動しなかった。
よって、雷尿はムフフな漫画を読み、発動条件である性的興奮を取り戻したのだ。

「ムラムラチャージ完了!今の俺はドピュっと最強だ!」

雷尿は拳を振り上げた。

「喰らえッ!『勃起ビルド』!!!」

しかし、何も起こらなかった。

「(な、何故だ…⁈ムラムラはMAX状態なのに…!)」

その時、パパンダは不敵に笑った。

「(まさか、アイツのタレントか⁈タイトルを消すタレント…いや、違う…)」

雷尿はパパンダとの戦いを振り返った。

「ドピュっと、俺の逆か。」
「その通り!僕のタレントは『萎縮フィーロ』!物体を柔らかく、小さくする能力だ!」

そう。パパンダは自身を縮小させたり、岩石を小さくして持ち運んでいたのだ。

「発動条件がどうあれ、僕のタレントなら、君のタレントを封じる事ができる。つまり!今の君はただのバカ野郎だ!」
「それは…ドピュっとお互い様なんじゃないか?」
「あ、ホントだ…」
「バカ野郎が。」
「きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!?!?!」

パパンダは顔を真っ赤にし地団駄を踏んでいる。
その時、入り口からナツカとエッチャがやって来た。

「おう!王様!助けに来たぜ!」
「ナツカ君!エッチャ君!ドピュっと無事だったんだね!」
「えっちゃ、当然っすよ。」

エッチャは自身の頭を触っている。
パパンダはその光景にすぐ違和感を覚えた。

「(ナツカ・チハーヤ⁈何故ここに…まさか、オチクビサマがやられたのか…⁈)」

次の瞬間、玉座の間の天井の一部が崩れ落ちてきた。

「ななな、なんでい⁈」

すると、血だらけのマイアンが落ちてきた。

「マイアン様ぁ⁈」

パパンダはマイアンの元へ駆け寄った。

「大丈夫ですかぁ!」
「か…帰るねん…」
「え…で、ですが…」

次の瞬間、カメッセッセが崩れ落ちた天井から舞い降りてきた。

「はいドーン。」

マイアンはカメッセッセを見るや否や、空間に穴を開けた。

「待て!逃げんのか!」

ナツカの叫びにマイアンは振り返った。そして、少し間が空いた後にため息をついた。

「オチクビサマは…やられたねんか…?」
「…おそらく…」
「…そうか。」

空間の穴はどんどん広がっていき、マイアンとパパンダを包み込んだ。

「安心するねん…またすぐに、殺しに来るねん…」

ナツカが走り出そうとしたその時、カメッセッセはナツカを止めた。

「何すんダ!」
「深追いはすんな。」

マイアン達は穴の中へ消えていき、次第にその穴も消えていった。

「クソぉぉお!!!」

ナツカは地面を蹴った。

「ナツカ君…」

怒りに満ちたナツカの表情。雷尿は、そんなナツカを眺めていた。
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