障王

泉出康一

文字の大きさ
47 / 211
第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第47障『ご褒美はお汁ですか?』

しおりを挟む
インキャーン近海、船の上にて…

ナツカ,エッチャ,雷尿,ジャック,ニキ,ヤス,ハルカはイワモミの電撃を喰らい、地面に倒れて動けずにいた。
そして、船尾には恐怖するイワモミと、今まで舐めプしていたカメッセッセが対峙している。
カメッセッセはイワモミに向かって歩いている。

「『コールドゼロ』!!!」

イワモミはカメッセッセの足元を凍り付かせた。それにより、カメッセッセの靴は床の氷に貼り付いている。
しかし、カメッセッセは靴を脱ぎ、再びイワモミに向かって歩き始めた。

「ふっ!お馬鹿さんね!『コールドゼロ』!!!」

再び、イワモミはカメッセッセの足元を凍り付かせた。
しかし、カメッセッセは無理矢理に歩き始めた。

「せせぇッ⁈」

イワモミは驚いた。それもそうだ。カメッセッセの足は直接、素肌ごと床に凍りついていたのだ。にも関わらず、カメッセッセは歩き始めた。当然、カメッセッセの足裏の皮はめくれ、血が大量に流れ出ている。
しかし次の瞬間、カメッセッセの足裏の傷が一瞬で完治した。

「ケーモテーイ♡」

カメッセッセはイワモミとの距離を確実に縮めている。

「(忘れてたわ…奴には『M付加サービス』がある…いくらダメージを与えても、再生されるわ…)」

その時、イワモミは重大な事に気がついた。

「(まって…!カメッセッセは攻撃を当たらなくするタレントを持っている…!しかも、回復系タレントの『M付加サービス』まで…!)」

カメッセッセは余裕の顔でイワモミに近づいてくる。

「(回避と再生の二段構え…)」

イワモミはたじろいだ。

「(どうやって倒せばいいの…⁈)」

その時、カメッセッセは呟いた。

「お前、雑っ魚いわぁ~。全然ダメぇですぇわ~。」

カメッセッセはイワモミに微笑みかけた。

「お父さんのキャンタマボールからやり直すぇ。」

その笑みに恐怖心をさらに掻き立てられたイワモミは、カメッセッセに向かって走り出した。

「キェェェェェェェェェェェ!!!」

イワモミは巨大なモリを器用に扱い、カメッセッセを攻撃した。また、氷柱や火柱攻撃も同時に繰り出している。
この猛攻、おそらく全てを回避する事は誰にもできない。しかし、それらの攻撃がカメッセッセに当たる事は一度もなかった。

「(確実に当たるはずの攻撃が当たらない!何故⁈どうしてぇん⁈)」

するとその時、カメッセッセはイワモミの腹に拳を入れた。

「グフォ…!!!」

イワモミは攻撃の手を止め、腹を抑えた。

「ラッキー。当たらんかったわ。ケモテイ♡」

次の瞬間、カメッセッセはPSIを纏い、イワモミを連打した。

「カメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメカメ!!!!!!!!」

イワモミの体はカメッセッセに殴られて、ボコボコに変形していく。

「カメェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」

カメッセッセはトドメの一撃をイワモミの顔面に喰らわせた。

「ハフグブァア!!!?!?!」

イワモミは海に投げ出された。

「ボスニア・ヘルツェゴビナッ…!」

カメッセッセは訳の分からない一言を言い放ち、決めポーズを取った。

「強ぇ……」

ナツカ達はカメッセッセの圧倒的な強さにただ見惚れていた。

海の上にて…

フルボッコにされたイワモミが海の上に仰向けで浮かんでいる。

「隊長~!」

そこへ、1体の人の顔をした魚姿の魔物がやってきた。

「大丈夫っすか!イワモミ隊長!」

イワモミ隊(海魔隊)・大魔障アグニ
種族名:ジンメンギョ

「アグニ…貴方に…やって欲しい事が…あるわぁん…」
「はぁ~…また俺っすか…」

船の上にて…

ナツカ達は体の痺れが取れ、立ち上がり始めた。しかし、ハンディーキャッパーではないヤスと、PSC肉体的PSI容量の少ないハルカは、PSIでの防御が不十分であった為、相当なダメージを負い、未だ目を覚まさない。

「ドピュっと流石ですね。カメッセッセさん。」
「当たり前ぇや。」

ニキはヤスを、雷尿はハルカを背負い、皆、カメッセッセの元へ集まった。

「オメェ、どうやって攻撃避けてたんダよ?」
「お前にはおすぃえへん。」

ナツカは怒った。

「教えろ。」
「あっかんべー。おすぃりぺんぺん。」

ナツカは拳を振り上げた。

「殴んぞ?」

しかし、カメッセッセは無言のままだ。
その時、ニキはナツカに話しかけた。

「無理ですぜい、ナツカのだんな。アッシもこの前、全くおんなじ対応されやしたから。」
「えっちゃ、ホンマ頭おかしいなコイツ。」
「もうどうでもいい。とりあえず殴る。」

ナツカが殴ろうとしたその時、カメッセッセはボソッと呟いた。

「確率魔法。」
「は?」

ナツカはカメッセッセの唐突な応答により、聞き返した。

「今なんつった?」
「確率魔法や。すぉれ以上でもすぉれ以下でもない。」

次の瞬間、船が大きく揺れた。

「ドピュっと何だ⁈」

すると、だんだんと船が沈み始めた。

「おいおい!沈んでんじゃねぇか船!」
「えっちゃ、海の魔物が船攻撃してんねん!」
「何とかせねば、このまま海に投げ出されたら、勝ち目が無いぞ!アハ~!!!オワタ~!!!オワタ~!!!」

その時、ニキは閃いた。

「そうだ!カメさん!船に『M付加サービス』をかけるんでさぁ!」

カメッセッセの『M付加サービス』は物体に対しても有効。再生する際、服すらも直っていたのはその為だ。

「あかん。もう遅ぉい。」

カメッセッセの『M付加サービス』は、破壊される前に使用しないと効果がない。だから、ニキの右目もエッチャの剣も再生されなかったのだ。
船はどんどん沈んでいく。

「おい!どうすんダよ!やべぇぞ!」
「もう無理や!踊れー!」

カメッセッセは踊り出した。
そして、船は沈んだ。

海上にて…

ナツカ達は海の魔物達に囲まれ、海に浮いていた。
その時、アグニがナツカ達の前にやってきた。

「万事休すっすね。」
「うるせぇ!船壊すなんて卑怯ダぞオメェら!」

ナツカは水をバシャバシャしている。

インキャーン近海こんな所に来るからっすよww」

アグニはニヤニヤしている。

「ドピュっとどうします…カメッセッセさん…」

雷尿はカメッセッセに話しかけた。

「調子乗ってごめんなすぁい調子乗ってごめんなすぁい調子乗ってごめんなすぁい調子乗ってごめんなすぁい調子乗ってごめんなすぁい調子乗ってごめんなすぁい…」

カメッセッセの顔からは、滝のように汗が流れ出ていた。どうやら流石のカメッセッセも、海の上で敵に囲まれた今の状況では、万事休すのようだ。

「よくやったわぁん…アグニ…♡」

部下達に抱えられている瀕死のイワモミが、アグニに投げキッスをした。

「帰ったら…お汁…かけてあげるわぁん…♡」
「最高じゃないですかww」

アグニはナツカ達を指差した。

「そういう事なんで…死んでもらいますよ。」

アグニが部下の魔物達に指示を出したその時、大砲の弾が瀕死のイワモミに直撃した。

「…え…」

アグニはイワモミの方を振り返った。
そこには、グチャグチャになった部下の魔物達やイワモミの姿が海に浮かんでいた。
イワモミは死亡した。

「えっちゃ、アレ…!」

エッチャが指差した先、そこには5隻の船がこちらに向かっていた。

「まさか、あの船は…!」

ニキはそれらの船に見覚えがあるようだ。
次の瞬間、それらの船から一斉に大砲の弾が飛んできた。

「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!!」

魔物達は次々と大砲の弾にやられていく。
ナツカ達は、カメッセッセとナツカの『微分魔法』で弾を対処していた。
数十秒後、魔物達はほとんど一掃され、大砲の弾も止んだ。

「やっぱりそうだ…」

船が近づくにつれ、ニキは確信した。

「えっちゃ、どうしてん?」
「バッカス海賊団。アッシの馴染みでさぁ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...