障王

泉出康一

文字の大きさ
46 / 211
第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第46障『仕上げはカメッセッセ』

しおりを挟む
インキャーン近海、船の上にて…

船の中央には魔障将イワモミ、彼女の近くにエッチャとニキとカメッセッセ、遠くにはナツカとジャックとヤスとハルカを抱えた雷尿。ナツカ達は落下してくる氷柱つららと、唐突に立ち上る火柱を必死に回避している。

「エッチャ!!!」

雷尿はエッチャを呼んだ。

「えっちゃ、何やねん雷尿⁈」

その時、雷尿は抱えていたハルカをエッチャにパスした。

「えっちゃ、なに…⁈」

驚きながらも難なく受け止めた。

「ドピュっとハルカの言う通りにするんだ!」

そう言うと、雷尿はイワモミの方へ走り出した。
そんな雷尿を、イワモミは嘲笑った。

「無謀ねぇん♡焼き殺してあげるわぁん♡」

するとその時、エッチャが抱えていたハルカが、エッチャに何かを言った。

「えっちゃ、でもそれ、何の意味が…」

ハルカは黙り込んでいる。

「えっちゃ、わかったよ…『球丸マルク』!!!」

エッチャは何かに『球丸マルク』を使った。しかし、辺りに変化は見られない。
だが一人、エッチャのその行動に驚きを隠せない者がいた。

「な、何故…⁈」

イワモミだ。イワモミはエッチャのその行動に対して、大いに焦りを感じていた。
その時、雷尿がイワモミに向けて拳を放った。

「『勃起ビルド』!!!」

雷尿は腕を巨大・硬質化させた。
イワモミはそれを飛んで回避しようとする。

「『貼着ペタン』!!!」

しかし、ニキは床に『貼着ペタン』を使い、それを阻止した。

「ひあぁ~ん!!!」

イワモミは海まで殴り飛ばされた。

「ドピュっと良いオカズでした!!!!!」

氷柱の雨が止んだ。

「ドピュっとナイスサポートだ!ニキ!」
「ありがとうございやす。でもまだ油断は禁物ですぜい…」

エッチャはハルカに問いかけた。

「えっちゃ、ハルカ。アレ、どう言う事なん?」
「あっあっ…え………あっ…」

ハルカは人見知りだ。
その時、海の中からイワモミが飛び出してきた。

「キェェェェェェェェェェェェェェェ!!!?!?!」

イワモミは鬼の形相で雷尿を睨みつけている。

「貴様ァァァァア!!!よくも私の顔を殴ってくれたなァァァァア!!!」

雷尿はイワモミから放たれる殺気に怯んだ。

「今すぐあの世に送ってやるゥゥゥゥゥウ!!!」

イワモミは両手を合わせた。

「『指導者ウロボロス』!!!」

イワモミは合わせた両手をゆっくりと開き始めた。
するとそこには、眩い光が浮遊していた。

「(ドピュっと…何か来る…!)」

雷尿はPSIを纏い、警戒を強めた。

「アカン…!」

ハルカは焦りの声を漏らした。

「あれ…!あの光ってるトコ…!あっこに『球丸マルク』…!」

ハルカはイワモミを指差している。

「えっちゃ、無理やって…!俺のタレント射程外や…!」

次の瞬間、イワモミの両手の平の光から強烈な電流が放たれた。

「『プリズムレイジエレクトロニカ』!!!」

次の瞬間、その電流は雷尿をはじめ、ナツカ達にまで通電した。

「!!!?!?!??!!!」

ナツカ達は意識を失い、床に倒れた。

「ふぅ。スッキリしたわぁん♡」

説明しよう!
イワモミのタレント『指導者ウロボロス』は、粒子の運動を司る能力である。イワモミは空気中の分子や、物体を形成する粒子の運動を操っていたのだ。
物体には3つの状態がある。固体、液体、気体。そして、コレらの状態は粒子の運動に関係が深い。固体では粒子はほとんど動かず、液体では少し動き、気体では粒子は自由に動き回る。イワモミはコレを利用していたのだ。
『コールドゼロ』は粒子の運動を抑える『指導者ウロボロス』の技の一つである。また、この技を使い、空気中の水蒸気や水滴中の粒子の運動を抑える事で、氷を発生させていたのだ。巨大な氷柱を大量に落下させる『森羅の寒罪』も、この『コールドゼロ』の応用技である。
『ホットマックス』はその逆で、粒子の運動を促進・加速させる技だ。固体の物体を構成する粒子の運動を促進させる事で、物体を蒸発させたりする事ができる。エッチャの剣先が消失したのは、この技によって剣が蒸発したからだ。また、巨大な火柱を立ち昇らせる『火炎礁』も、この『ホットマックス』の応用技である。空気中の粒子の運動を促進させ、その運動エネルギーから熱を発生。こうして、巨大な火柱を想像したのだ。そして、電流を発生させる『プリズムレイジエレクトロニカ』も、この『ホットマックス』の応用技である。
気体中の粒子の運動をさらに加速させると、気体はプラズマという状態に変化する。『プリズムレイジエレクトロニカ』の原理としては、このプラズマを利用して、電流を発生させていたのだ。
しかし、このタレントには一つ、最大の弱点がある。それは生物の体を構成する粒子は操れないという点。もし、コレが可能ならば、ナツカ達はイワモミと出会った時点で体を蒸発させられていただろう。
タイプ:操作型

「でも危なかったわぁん。まさか私のタレントのが居たなんて…」

イワモミの言うとは、イワモミのタレントを封じるタレントを持つ者。すなわち、エッチャである。
エッチャの『球丸マルク』は物体を球体にする能力。その詳細は、物体を構成する粒子を強制的に移動させ、球体を形作らせるものだ。つまり、イワモミがいくら『ホットマックス』で粒子の運動を促進・加速させても、エッチャがそこに『球丸マルク』を使うだけで、それらの運動は止まるのだ。事実、雷尿がイワモミに拳を食らわす直前、エッチャはハルカの指示で、雷尿の足元の空気に『球丸マルク』を使い、粒子の運動を止め、『火炎礁』による攻撃を防ぐ事ができた。
そして、それらをハルカは見抜いていた。ハルカのタレント『歌視ミエル』は、肉眼では見る事のできない粒子を見ることができる。それ故、誰よりも早く、イワモミのタレントの正体に気づき、雷尿やエッチャに指示を送ったのだ。
これらの巧妙なタレントバトル。ハルカの感知能力が無ければ、ここまで戦えてはいないだろう。しかし、今立っているのはイワモミだけ。ナツカ達は、またしても負けたのだ。

「魔王城に連れて帰って、拷問でもしたいところだ・け・ど…」

イワモミは床に倒れている雷尿に向けてモリをかざした。

「油断禁物♡ココで殺して首だけお持ち帰りするわぁん♡」

イワモミが雷尿に向けてモリを放とうとしたその時、誰かがイワモミの耳元で囁いた。

「セッセン。」

カメッセッセだ。カメッセッセは『M付加サービス』を使っていたらしく、気絶どころかダメージすら受けていない。

「ッ⁈」

イワモミは驚き、飛び退いた。

「さすがは元魔障将…恐れられてるだけの事はあるわぁん…」

その時、カメッセッセは普段では絶対に見せないような真面目な顔をした。

「ここまでですぇ。」

カメッセッセはPSIを纏い、イワモミに向かって歩き始めた。

「『ホットマックス』!!!」

イワモミはカメッセッセの足元の粒子を加速させた。

「『火炎礁』!!!」

次の瞬間、カメッセッセの足元から巨大な火柱が立ち昇った。

「なぬぁッ⁈」

イワモミは驚きの声を上げた。
なんと、その火柱はカメッセッセには当たらなかったのだ。

じゃ当たりまへーん。」

火柱は確実にカメッセッセを捉えた。しかも、カメッセッセは回避すらしていない。それなのに、攻撃は当たらなかったのだ。
その時、ナツカ達は目を覚まし始めてきた。

「な、なにが…!」
「えっちゃ…痺れる…!」

しかし、体はまだ動かないようだ。
ナツカ達は床に倒れながら、カメッセッセとイワモミの戦いを見ている。

「そ、それなら…!『コールドゼロ』!!!」

イワモミはカメッセッセの頭上の水分子の運動を抑制した。

「『森羅の寒罪』!!!」

すると次の瞬間、カメッセッセの頭上から巨大な氷柱が大量に落下してきた。
しかし、カメッセッセには一つたりとも直撃しない。

「(一つも当たらないなんておかしい…!まさか、情報には無いタレント…⁈発現してたの⁈トリプルタレントが!)」

イワモミは船尾に向かって走った。

「(あの時と同じ…)」

ニキはインキャーンでの戦いを思い出した。
その時、イワモミはカメッセッセからある程度の距離を取ると、カメッセッセの方を振り返った。
そして、そんなイワモミの両手の平の間には、プラズマが作られていた。

「『プラズムレイジエレクトロニカ』!!!」

イワモミはカメッセッセに向けて電流を放った。しかし、それでも尚、カメッセッセに攻撃は当たらない。

「な、なんなの…⁈」

カメッセッセはイワモミにゆっくりと近づいていく。

「貴方…それほどまで圧倒的なタレントを持っていながら、なぜ今まで使わなかったの…⁈」

イワモミの問いにカメッセッセは答えた。

「オレが全部やったら、コイツら育たんやろ。」

そう。カメッセッセはあえて本気を出さなかったのだ。全てはナツカ達を成長させる為。しかし、今のナツカ達では、イワモミに勝てない。そう思ったからこそ、カメッセッセは本気を出した。

「仕上げはカメッセッセや。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...