障王

泉出康一

文字の大きさ
50 / 211
第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第50障『到着!ポヤウェスト王国!』

しおりを挟む
昼間、ポヤウェスト砂漠にて…

ナツカ,エッチャ,カメッセッセ,雷尿,ジャック,ハルカは炎天下の中、ポヤウェスト王国を目指し、歩いていた。

「暑ぃ…しんどい…」
「えっちゃ、水飲みたいわ…」

水はもう無い。

「オレのすぇーえき飲むか?」
「死ね。」

カメッセッセのおふざけに、エッチャは悪口で返事した。いや、カメッセッセはマジで言ったのかもしれない。

太陽ヨウキャがッ…!太陽ヨウキャは無理ぃ~!!!」

ハルカはフードを被り、座り込んだ。

「アハ~!!!サウナ気持ちィィィィ~!!!熱波師呼んでこーい!!!」

ジャックは服を脱ぎ始めた。どうやら、暑さで頭が混乱し、ココをサウナだと思っているようだ。

「もう!みんな!ドピュっとしっかりしろよ!」

雷尿は皆に注意喚起した。

「(でも確かに、この暑さにはドピュっとこたえる…せめてポヤウェストまでの距離が、後どれくらいか分かれば………そうだ!)」

その時、雷尿はとある事を思いつき、ハルカに話しかけた。

「ハルカ!キミのタレントなら、ポヤウェストまでの距離がドピュっと分かるんじゃないか⁈」
「え、あ…確かに…」

それを聞くと、ナツカ達はハルカに近づいてきた。

「んなこと出来んならぁ早よ使えやぁボケカスおらテメェ…!」

ナツカはハルカの胸ぐらを掴んでいる。
その時、雷尿がナツカをハルカから離れさせた。

「ドピュっとやめろナツカ!この暑さでイライラするのはわかるけど!」

雷尿はハルカに話しかけた。

「頼むハルカ。ドピュっとやってくれ。」
「う、うん…」

ハルカは歌い始めた。

「笑えない日々を辿ったって~♪変わらない今を呪ったって~♪」

皆、この暑さに加え、ハルカの下手な歌を聴いたことにより、さらにイライラが増している。

「…わかったで…」
「本当か⁈」

ハルカはタレントを使い、ポヤウェストの位置を探り出したようだ。

「通り過ぎてた…」

次の瞬間、ナツカはハルカを殴った。

「おごふッ…!な、なんで殴んねん…!」
「悪ぃ。イライラした。すまん。」
「俺殴んのはちゃうやろ…!」
「あ"ぁ!ダから謝ってんダろが!」
「謝ったら何でも許されると思うなよ…!」

その時、雷尿は2人の喧嘩を止めた。

「だから喧嘩やめろって!ナツカ最近多いぞ!ドピュっと喧嘩ふっかける癖なおせよ!」

すると、会話の流れを聞いていたエッチャが怒りの声を上げた。

「えっちゃ、そもそも誰やねん地図係!そいつのせいやろ!」

その時、ジャックはバッカスからもらった地図を懐から取り出した。

「俺様だ…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」

それを聞くと、エッチャは再び、声を荒げた。

「えっちゃ、誰やねん!ジャックこんな奴に地図任せたん!」
「す、すまん…ドピュっと俺だ…」

雷尿は申し訳なさそうに手を上げている。

「何してくれちゃってんダよオメェ!」
「えっちゃ、ふざけんなよ!」

ナツカとエッチャはジャックではなく、雷尿を責めている。

「(責める相手間違ってるくない…?)」

夕方、ポヤウェスト城下町、門前にて…

ナツカ達はようやく、ポヤウェスト王国に辿り着いた。しかし、辺りはもう暗くなり始めている。

「えっちゃ、やっと着いたな。」
「水飲みてぇ…」

ナツカ達がポヤウェスト城下町に足を踏み入れようとしたその時、ハルカは奇声を上げた。

「はぁうぅぁぐぁううぁあ!!!?!?!」

皆、足を止め、ハルカの方を向いた。

「急に奇声を上げるな…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」
「えっちゃ、お前が言うな。」

雷尿はハルカに話しかけた。

「ドピュっと何かあったのか?」
「町…魔物だらけやで…」

ハルカのその言葉を聞いた瞬間、ナツカ達は動揺した。

「まさか、それって…」

その時、いつになく真面目な顔のカメッセッセが話に入ってきた。

「決まってるやろ。ポヤウェストはもう、魔王軍に落とされてんねん。」

すると、ナツカ達は落胆した。

「マジかよ…無駄骨じゃねぇか。せっかく、このクソ暑い中、何時間も歩いて来たってのによぉ…」
「えっちゃ、どうするん?城、落とされてんなら、障王の末裔も殺されてるやろ?別んトコ行くん?」

皆、雷尿の方を見た。

「…」

雷尿は腕を組んで考え事をしている。
しばらく悩んだ後、雷尿はハルカに話しかけた。

「ハルカ。この国に居るのは、ドピュっと魔物だけか?」
「えっ、いや…城の地下に100人ぐらい、人おるけど…」
「ドピュっとありがとう。ハルカ。」

その時、雷尿は皆の顔を見た。

「捕虜となっている人達がいる今、やる事はひとつだ。」

雷尿のその発言を聞くと、ナツカ達の顔つきが変わった。

「ドピュっと助ける…!」

皆、その表情から察するに、満場一致のようだ。

「作戦はどうする…アハァん???」
「こっちにはハルカがいる。ハルカのタレントなら、城の構造、捕虜の場所、敵の位置がドピュっと全てわかる。」

その時、エッチャが雷尿に問いかけた。

「えっちゃ、でも捕虜全員助けても、その後どうすんねん?100人連れてデカマーラまで行かれへんやろ?」

雷尿はそれに答える。

「そこでだ。ドピュっと3チームに分かれて、作戦を行おうと思う。」

雷尿は続けた。

「1つ目は陽動チーム。城下町で魔物達の気を引き、残り2チームの城内潜入のリスクを下げる。2つ目は捕虜救出チーム。敵との遭遇を極力避け、城の地下に幽閉されている人達の元までまっすぐ向かい、救出する。そして3つ目、ボス討伐チーム。」
「ボス?」

ナツカ達は首を傾げた。

「魔物がいるって事は、それらを従える隊長クラスの魔物が、何処かにいるって事だ。つまり、そいつさえ倒せば、この国にいる魔物全てを倒さなくても、ドピュっとケリがつく。」
「えっちゃ、なるほどな。国取り返せば、100人連れて歩く必要もないって事か。」

雷尿は頷いた。

「次に、誰がどのチームになるか、だ。」

その時、カメッセッセが両手を上げた。

「オレ陽動すぃたい~!!!」
「え…良いんですか?」
「もてぃろん。オレ1人でえーでー。強いすぃ。」
「…確かに、カメッセッセさんは強いです。しかし、ドピュっと良いのですか?かなり危険ですよ?」

すると次の瞬間、カメッセッセはパンツを脱いだ。

「…って事や。」

カメッセッセは自身の短小ペニスを雷尿に見せつけている。

「は、はぁ…(どういう事だ…?)」

雷尿は困惑している。

「じゃ、じゃあ、陽動チームはカメッセッセさん1人で…」

数分後、それぞれのチームのメンバーが決まった。

陽動チーム:カメッセッセ
捕虜救出チーム:雷尿,ハルカ
ボス討伐チーム:ナツカ,エッチャ,ジャック

「みんな。作戦を実行する前に、これだけはドピュっと聞いて欲しいんだ。」

雷尿は真剣な表情で皆に語りかけた。

「インキャーンでは、非常に悔しい思いをした。助けられなかったから…だからみんな、きっと今、こう思ってるはずだ。『あの時の失敗を取り戻そう』って。」

ナツカ達は真剣な眼差しで雷尿の話を聞いている。

「そんなみんなにだからこそ、言う。そんな事は思わないでくれ。」

皆、雷尿のその発言を聞き、キョトンとしている。
『あの時の失敗を取り戻そう』。雷尿はこの言葉で自分達を奮起させるつもりだ。皆、そう思っていたからだ。しかし、雷尿の口から出た言葉は、まさにその真逆だった。

「船での戦いで思い知っただろ。俺達は弱い。カメッセッセさんが居なかったら、とっくに死んでる。意地や気合いじゃなんとかならない…」

皆、黙って雷尿の話を聞いている。

「負けても良い。逃げ出しても良い。でも、死んだらダメだ。だから…」

雷尿は拳を突き出した。

「死なない程度に頑張ろう!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...