障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第58障『魔障王エナバラ』

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昼、ポヤウェスト城下町、広場にて…

ナツカ,エッチャ,パエーザ,ナドゥーラは魔障王コックエナバラと対峙している。

「『料理コック』!!!」

両手に包丁を持ったエナバラは、最前線にいたエッチャに向かって襲いかかってきた。
エッチャはPSIを身に纏い、シャムシールを構えている。

「『みじん切り』!!!」

次の瞬間、エナバラは物凄い速さで包丁を振り回した。その速さ、1秒間に14回の連撃。

「(速ッ…⁈)」

エッチャはシャムシールでその連撃を止めている。

「(一撃が、重いッ…!)」

しかも、エナバラのPSIの量は半端では無い。一撃一撃がエッチャの渾身の剣撃よりも遥か上。一太刀喰らう度に、エッチャの体はわずかに硬直する。そして、その硬直が次第に防御の妨げとなり、エッチャの体に包丁の刃が食い込み始める。

「(まずい…!)『球丸マルク』!!!」

エッチャはエナバラの包丁を球体に変化させた。エナバラは自身の包丁が球体となった事に、少し動揺した。

「(今やッ!!!)」

次の瞬間、エナバラの動揺を見逃さなかったエッチャは、エナバラに向けてシャムシールを振った。

「甘い甘い甘い~ぃい~⤴︎」

しかし、エナバラはすぐさま冷静さを取り戻し、エッチャのシャムシールを回避した。
その時、ナツカが叫んだ。

「微分魔法『x=0バーティカル』!!!」

すると、シャムシールが上方向に曲がった。

「甘ぇのはオメェダ…!」

ナツカによって鉛直上向に曲げられたシャムシールはエナバラの右腕を切断した。それと同時に、ナツカは『微分魔法』を解き、エッチャのシャムシールを元に戻した。

「今ダ!エッチャ!」
「えっちゃぁあ!!!」

エッチャは右腕を切断されたエナバラに向けてシャムシールを振り下ろした。
しかし次の瞬間、エナバラの姿が消えた。

「ちゃ…⁈」

エッチャは困惑した。

「後ろダ!!!」

ナツカのフォローにより、エッチャは背後を振り返った。するとそこには、右腕を切断されたエナバラがいた。

「『タタキ』!!!」

次の瞬間、エナバラは左手に握られていた刃が球体となった包丁で、エッチャの全身を打った。

「ぢぁあぁッ!!!」

エッチャは大きく前方へ飛ばされた。

「エッチャ!!!」

エッチャは全身に重い打撃を喰らい、すぐには立てずにいた。
エナバラはその様子を見たのちに、左腕で切断された自身の右腕を拾った。

「『裁縫ワーク』!!!」

エナバラはエプロンのポケットから針を取り出した。

「『まつり縫い』!!!」

次の瞬間、自身のPSIを糸として、エナバラは千切れた腕の継ぎ目を縫い始めた。
そして数秒後、エナバラの右腕は完全に接合された。

「こんなもんかな~ぁあ~⤴︎」

エナバラは右掌をグーパーグーパーさせている。

「そんな…⁈切断された部位を完全に繋ぎ合わせるなんて…⁈」
「しかもPSIはほとんど消費されていない。再生ではなく縫合…糸の分の極小量のPSIしか使用していないからか…」

ナドゥーラとパエーザは驚き、様々に考察している。

「てかオメェらも戦えや!なんで見てるダけなんダよ!」
「お前も特に何もしてないだろ。」
「しーまーしーたー!『微分魔法』でサポートしーまーしーたー!」
「はいはい。」

すると、パエーザとナドゥーラはPSIを纏い、エナバラに近づいていった。
その時、ナツカは2人の姿を見て、とある事に気がついた。

「オメェら、武器は…?」

パエーザとナドゥーラは立派な鎧を身につけている。しかし、武器は何ひとつ持っていなかったのだ。

「私達に武器は不要よ。」
「そういうタレントだからな。」

パエーザとナドゥーラは目を合わせた。

「ナドちゃん。今回は何で行く?」
「そうね…オーソドックスに剣かしら?相手の武器は包丁。それにあのスピード。槍とかだと、間合いに入られればヤバいもんね。」
「了解。さすがナドちゃん。私の嫁。」
「もぅ~!パエちゃんったら♡」

パエーザは両手の平にPSIを集め始めた。

「『PSI変容バリエ』!!!」

次の瞬間、パエーザのPSIが2本の剣の形を成した。
そして、パエーザはPSIで作った2本の剣のうち、1本をナドゥーラに渡した。

説明しよう!
パエーザのタレント『PSI変容バリエ』は、PSIを実体化させる能力である。通常、PSIは波動性のエネルギー体で、直接手で触れても感触は無く、PSIを対象に放ってもダメージを与える事はできない。しかし、『PSI変容バリエ』はそれを可能にする。今、パエーザはPSIを剣の形に整え、それに『PSI変容バリエ』を使い、実体化させているのだ。
しかし、このタレントはPSIを武器にし、さらにそのPSIに『PSI変容バリエ』を使わなくてはならない。つまり、PSIの消費が激しいタレント。多用は厳禁。かと言って、持久戦に向かない訳ではない。実体化させたPSIはパエーザの意志以外では絶対に消えたり壊れたりしない。すなわち、半永久的にPSI武器を持続できるのだ。
タイプ:変質型

パエーザとナドゥーラはPSI剣でエナバラに斬りかかった。
それに対処すべく、エナバラはさらに隠し持っていた包丁を2本取り出した。

「(PSIで作った剣…破壊はおそらく…)」

エナバラは2人の剣撃を包丁で対処しながら、様子を伺っていた。

「(無理…)」

エナバラは2人の攻撃を2本の包丁で受け止め、その感触でPSI剣の破壊は不可能だと悟った。

「(さらにこの女共の連携…防御に回る他ないわ~…)」

パエーザとナドゥーラは見事な連携でエナバラを追い込んでいく。

「(私とパエちゃんは、幼い頃からずっと一緒に訓練してきたの!例え、貴方がどれだけ強かろうと、私たち2人なら…!)」

その時、ナドゥーラがエナバラの左手の包丁を宙に弾いた。エナバラは左腕を上に上げた状態になっている。

「(勝てるッ!!!)」

その隙を突き、パエーザはエナバラにトドメを刺そうとした。

「『ミキサー』!!!」

エナバラが叫ぶと、弾かれていた包丁はひとりでに向きを変え、パエーザに向かって勢いよく飛んできた。

「パエちゃん上!!!」

先に気づいたナドゥーラの一言により、パエーザもその包丁に気がつくことごできた。

「『PSI変容バリエ』!!!」

パエーザは首付近のPSIを実体化させ、包丁を弾いた。
しかし次の瞬間、それに気を取られたパエーザに向けて、エナバラは包丁を突き出した。

「しまっ…⁈」

パエーザに刺さる直前、ナドゥーラはその包丁に触れた。

「『脆弱カイム』!!!」

すると次の瞬間、エナバラの包丁が砕け散った。

説明しよう!
ナドゥーラのタレント『脆弱カイム』は、触れた物体の耐久力を0にする能力である。また、生物にも有効であるが、対象は1つのみ。例えば、生物と無生物を同時に触れ、『脆弱カイム』を発動した場合、タレントの影響を受けるのはナドゥーラが強く意識した方。つまり、タレントの対処をあらかじめ決めておかねばならない。
また、このタレントを攻撃に使うには、あまりにも危険すぎる。槍や弓などの中距離・遠距離武器を用いる相手に対しては、懐に潜り込み、直接相手の肌に触れれば勝負は決まる為、有効である。しかし、今回の場合、エナバラの武器は包丁。超至近武器に対して『相手の肌に直接触れる』という行為はあまりにも愚か。それならば、武器を持って牽制した方が有利である。それ故、ナドゥーラはパエーザからPSI剣を譲り受けたのだ。
タイプ:変質型

ナドゥーラがエナバラの包丁を破壊した事により、パエーザは難を逃れた。
次の瞬間、武器を失ったエナバラの背後から、エッチャが斬りかかった。

「ちゃぁぁあ!!!」

しかし、エナバラはPSI感知により、エッチャの接近に気がついていた。
エナバラは上に大きく飛んで回避した。

「『PSI変容バリエ』!!!」

パエーザはPSIで弓矢を創造し、PSIの矢を宙にいるエナバラに向けて放った。
しかし、エナバラはまたもや包丁を取り出し、その矢を弾こうとした。

「微分魔法『y=0ホライゾン』!!!」

すると、矢の軌道は変わり、エナバラの包丁を回避した。

「なにッ…⁈」
「解除!!!」

次の瞬間、PSIの矢の進行方向が戻り、エナバラに襲いかかった。

「(まずい…!!!)」

矢はエナバラの顔面に突き刺さった。

「やった…!」

かのように思えた。

「なんダとぉ⁈」

なんと、エナバラはPSIの矢を噛み止めていた。

「(なんて奴…全力で撃った私の矢を、歯で止めるなんて…⁈)」

その時、エッチャは叫んだ。

「えっちゃ、怯むな!!!」

皆、エッチャの方を見た。

「アイツが着地した時がチャンスや!今度は4人全員でやるぞ!!!」

ナツカ達はエッチャの言葉により鼓舞された。
エナバラは4人に囲まれる形で地面に着地した。

「えっちゃ、今やッ!!!」

皆、一斉にエナバラに斬りかかった。

「下等生物共が~…全員まとめて逝かせてやんよ~ぉお~⤴︎」
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