障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第59障『料理バトル』

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昼、ポヤウェスト城下町、広場にて…

「えっちゃ、今やッ!!!」

ナツカ,エッチャ,パエーザ,ナドゥーラはエナバラに斬りかかった。

「下等生物共が~…全員まとめて逝かせてやんよ~ぉお~⤴︎」

4人はエナバラに畳み掛けた。
しかし、エナバラはそれらを2本の包丁で対処している。

「(4対1で五分ごぶ…いや、コイツらの方が少し優勢か~…)」

その時、エナバラは更にPSIを纏った。

「(もうちょっとだけ、本気、出すかな~ぁあ~⤴︎)」

すると、エナバラの剣撃はより一層速く、より一層力強くなった。

「(速いッ…!)」

ナツカ達は押され始めている。
しかしその時、エッチャがタレントを使い、エナバラの包丁を球体に変化させた。

「(球体化…⁈あのハゲか!!!)」

エナバラは隙を見て球体となった包丁を捨て、新たな包丁を取り出した。
しかし、今度はナドゥーラがエナバラの包丁にタレントを使い、包丁を破壊した。

「(次から次へと…!)」

エナバラは苛立ちを覚え始めた。

「(攻撃が単調になってきたな…!)」

次の瞬間、パエーザはエナバラの苛立ちを冷静に対応し、PSIを針状に実体化してエナバラに放った。

「くッ…⁈」

エナバラは姿勢を仰け反らせてそれを回避した。
だが、間髪入れずにナツカ達は斬りかかった。

「死ねぇぇえええええ!!!」

ナツカ達の剣がエナバラに触れかけたその時、エナバラは怒り、叫んだ。

「この生ゴミ共がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!!!!!」

次の瞬間、エナバラは今までとは桁違いのPSIを身に纏い、地面を両拳で叩いた。
すると、大地が砕け、深い地割れができた。
ナツカ達はそれに巻き込まれないよう、大きく背後へ飛んだ。

「な、なんて奴なの…⁈」

ナドゥーラ含め、皆の顔が青ざめた。その理由は、地面を砕いた事ではない。エナバラのPSIの量だ。明らかに、ナツカ達4人のPSI合計の何十倍もある。

「えっちゃ、さっきまで手ぇ抜いてたんか…⁈」

エッチャの予想はあながち間違いではない。エナバラはナツカ達を見下していた。しかし、決してギリギリの勝負をしようとしていた訳でもない。しかし、実際はそうなっていた。何故、エナバラは追い込まれていたのだろうか。
その理由は、エナバラの判断ミス。エナバラはナツカ達を見下し過ぎた。それ故、手を抜き過ぎ、ナツカ達に追い込まれてしまったのだ。
エナバラは怒りを露わにしている。自身の判断ミスに。そして、その怒りの矛先は、ナツカ達に向けられるのであろう。エナバラのPSIが、そう言っている。

「もうお遊びは終わりや!!!お前らには、確実な死をくれてやる~ぅう~!!!」

その時、エナバラは両手を上に掲げ、手を叩いた。

「『血塗られた調理実習ハイプリエステス』!!!」

次の瞬間、エナバラの姿が消えた。

「消えた…⁈」
「完全に気配が無いわ…⁈」

パエーザとナドゥーラは困惑している。
その時、ナツカはとある事に気がついた。

「お、おい!エッチャもいねぇぞ!」

とある空間にて…

「…ちゃ…?」

エッチャは可愛らしいエプロンを付けて、調理場のような場所に立っていた。

「えっちゃ、何やねんコレ⁈」

エッチャの正面には、見覚えの無い人間の男が立っていた。

「あぁ…また呼び出されてしまった…」

男は無気力な目をしている。
その時、エッチャにスポットライトが当てられた。それと同時に、辺りにエナバラの声が響く。

「ようこそぉ~ぉお~⤴︎私の調理場へ~ぇえ~⤴︎」

するとその時、アクリル板に囲まれた部屋が現れた。その中にはエナバラが椅子に座っている。

「えっちゃ、お前…!」

エッチャはエナバラの姿を見た。その後、エッチャは辺りを見渡し、正面の男に話しかけた。

「えっちゃ、何やねん!何処やねんココ!」

すると、死んだ目をした男は口を開いた。

エナバラアイツのタレントだよ…」
「は…?」

すると、エナバラはエッチャに話しかけた。

「支配型のタレントは初めてかぁ~ぁあ~い⤴︎」
「えっちゃ、支配型…?」
「そう!ココは私がタレントで作り出した空間!外界とは完全に隔離された孤立無縁の宇宙なのよぉ~ぉお~⤴︎」

エッチャはそれを聞き、困惑した。

「隔離って…えっちゃ、何やねんそれ!早よ帰らせろや!」
「それは…無理だ…」

すると、死んだ目の男が言った。

「ある条件を満たさなければ…キミは…ココからは出られない…」
「えっちゃ、条件…?」

次の瞬間、男の口から衝撃の言葉が発せられた。

「私と…料理バトルをするんだ…」
「…は?」

エッチャは呆気に取られている。

「そして…負けた方が…死ぬ…!」

説明しよう!
エナバラのトリプルタレント『血塗られた調理実習ハイプリエステス』は、自身の作り出した空間に隔離し、料理対決をさせる能力である。『何言ってんだ?』って思うかもしれないが、マジである。
料理対決を終えれば、エナバラを含め、空間内の3人は現実空間へと解き放たれる。しかし、料理対決で負けた方は現実世界に帰った瞬間にペナルティ、即ち、死に匹敵するダメージを与えられる。また、対決に勝利した方はこの空間に記憶され、次またエナバラがこのタレントを誰かに発動すれば、記憶された人間はいついかなる状況でも再びこの空間へ転送され、料理対決をさせられる。
タイプ:支配型

という事を、男はエッチャに解説した。

「えっちゃ、って事はお前…ココ来た事あんの…?」
「あぁ…」

すると、エッチャは男に問いかけた。

「何回…?」
「さぁ…100を過ぎたあたりから…数えてないよ…」

100回。それは男がこの空間に転送され、料理バトルをした回数。また同時に、料理対決で男が勝利した回数でもある。

「私の名前はオリーブ松尾…元料理人だ…」

オリーブ松尾は話を続けた。

「5年前、私はエナバラにこのタレントをかけられた…初めての料理バトル…しかし、私は料理人という事もあり、先代のシェフに勝てた…」

それを聞くと、エナバラは舌なめずりをした。

「先代のレモン斎藤も、良い腕だったわ~ぁあ~⤴︎」

オリーブ松尾はエッチャに話を続けた。

「私達はこの空間から解放された…しかし、先代のシェフは負けたペナルティを負う事となり……死んだ………」

それを聞くと、エッチャは恐怖した。

「料理バトルが終われば、私達は元いた場所へと転送される…私は自分の部屋に…キミはポヤウェスト城下町に…」

ポヤウェスト。松尾は何故、それを知っているのか。エッチャは疑問だった。

「えっちゃ、なんで…俺がポヤウェストにおるって知ってんねん…⁈」
「私はこの空間に記憶されている…同時に、私もこの空間を…そして、タレント使用者であるエナバラの記憶すら共有しているんだ…だから…キミがどういう人間かも…ペナルティで死んでいった者達も…全てわかる…」

すると、松尾は頭を抱え、震え始めた。

「料理は人を幸せにする為にある…食べてもらう為…健康を養ってもらう為…成長を促進させる為………喜んで………もらう為…………」

次の瞬間、松尾は床に膝をついた。

「全部ッ!愛だッ!そんな愛がッ!今ッ!殺人の道具にされているッ!そしてッ!私はその愛でッ!何百人と殺してきたッ!」

松尾は泣きじゃくった。

「こんなの間違っている…あれだけ好きだった料理が………もう…作りたくない…」

次の瞬間、松尾は調理台にあった包丁を手に取り、自身の首に突き刺そうとした。

「えっちゃ、やめろ!!!」

しかし、包丁の刃が松尾の喉に触れた瞬間、松尾の手が止まった。

「ダメなんだ…この空間に記憶されている者は…死ねない……不死身なんだ………ココを出た後も………」

松尾はエッチャに話しかけた。

「このまま何もしなかったら、キミは餓死する…食材を口にできるのは…点数をつける…エナバラだけだから…」

松尾は続けた。

「そしてもう1つ…この空間では嘘はつけない…エナバラが料理の点数をつける際も…そして…料理の際も…だから私は手を抜けない…」

松尾はエプロンの紐をしっかりと結び、包丁を持って、調理台の前に立った。

「私に勝ってくれ…そうすれば…キミは不死身になれる…そして………」

その時、松尾は指パッチンをした。すると、調理台に食材や調味料が現れた。

「現実空間で…エナバラを……倒してくれ………」

エッチャは松尾の目を見た。倦怠と絶望にまみれた松尾の瞳。しかし、エッチャは彼の瞳の奥から決死の覚悟を感じ取った。

「…えっちゃ、わかった。」

その時、エッチャもエプロンの紐をしっかりと結び、包丁を持って、調理台の前に立った。

「エッチャ!!!作ります!!!」

料理バトル開始!!!
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