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第2章『ガイ-過去編-』
第67障『好奇と安易』
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【12月13日 、19:20、出口邸前にて…】
広瀬と白マロの死体の前に立ちすくむ有野とチビマル。そして、自責の念に駆られる山口。そんな彼らの前に、個性的な格好をした若い男が現れた。
彼の名は如月満。26歳。桜田達が通う大学のOBで、画家である。彼の絵は見た者にトラウマを与えると評判で、感受性の強い人が見ると自殺するとまで言われる程。故に、彼の作品の全てが賛否分かれるものである。
「失敬。」
その時、如月は持っていたカバンからノコギリを取り出し、死んだ広瀬の頭を削り始めた。
それを見て、有野は言う。
「な、何してるの…⁈」
「見ての通りさ!頭を削ってるんだよ!」
如月はまるで新しいオモチャを手に入れた子供のような表情で広瀬の頭を削っている。
「生で人間の脳を見てみたいんだ!やはり桜田くんの仲間になって正解だったよ!こんな機会に巡り合えるなんて!」
その時、チビマルは広瀬の頭を削り続ける如月の靴に触れた。
「『靴操』!!!」
チビマルは如月の靴を操作し、如月を宙に吊るした。その側には電線がある。
「動くんじゃねぇぞ?電線に当たればどうなるかぐらいわかるよなぁ?」
チビマルは如月の行動を抑制した。しかし、チビマルにはその先がわからなかった。
「(どうする…殺すか…?それとも質問か…?何を…何を聞き出せばいい…?)」
今まで本能のままに、もしくは、ヤブ助の命令のままに動いてきたチビマルにとって、自分で考えて動くという行為ほど難しいものはなかった。
チビマルが次の手を考えていたその時、如月は電線を素手で掴んだ。
「なッ…⁈」
しかし、如月は一切ダメージを受けない。
説明しよう!
如月のタレントは『月光・防御』。月の光を浴びている間、いかなる攻撃やタレントも受け付けない能力である。
このタレントは裏日戸の『日光・攻撃』の守り・月光バージョンだ。実は如月は裏日戸の叔父であり、タレントが似ているのもそれが理由である。性格は全く違うが。
タイプ:付加型
如月はPSIを込め、電線を引きちぎり、それをチビマルの方へ投げた。
漏電する電線がチビマルを襲う。するとその時、有野はポケットから自転車の鍵を取り出した。
「『磁力』!!!」
有野はその鍵に磁力を付加し、屋敷の方へ投げた。すると、電線がそれに引き寄せられ、チビマルは流電を免れた。
その時、有野は巨大な何かに背後から体を掴まれた。
「⁈」
有野は自分を掴むそれを見た。なんと、それは巨大な人の形をした水だった。
その巨大な水人は有野を体の中に閉じ込めた。
「ッ……!」
有野は水人の中でもがいている。呼吸ができなくて苦しそうだ。
「おい…!」
チビマルが有野に駆け寄ろうとしたその時、如月は靴を脱いで地面に着地し、チビマルの前に立ちはだかった。
そして、屋敷の中から桜田の仲間の出口哲也と、血色の悪い若い男がやってきた。おそらく、水人を操っているのは血色の悪い男の方だ。
二人は話をしながら山口達の方へ歩いてきた。
「し、死んでるよね…アレ…如月先輩がやったのかな…」
「いや、死に方からして木森の条件獣だ。」
「どどど、どうしよう!警察に見つかったら僕ら…!」
「何を今更。俺たちにはあの方がついてるだろ。秋なんかよりよっぽど頼りになる奴らが。」
「で、でも…」
その時、出口は懐から拳銃を取り出し、うずくまる山口の後頭部に銃口を押し付けた。一体こんな物、どこで手に入れたのか。出口の言う『あの方』に関係があるのか。
「安心しろ。魔王を復活させたら、お前ら全員、生き返らせてやる。」
「…」
「だから、今は死んでくれ。」
引き金を引こうとする出口。それを止めようとチビマルは山口に向かって走り出した。
しかし、如月はチビマルの体を踏みつけ、それを阻止した。
「くがぁッ!!!」
踏みつけられたチビマルの体から、骨の折れる音が響いた。
有野は水人の中で意識を失い、山口は戦意喪失。誰も、戦える者はいない。このまま全滅か。
出口が引き金を引く次の瞬間、出口はその場に倒れた。
ヤブ助だ。ヤブ助が死角から現れて人間化し、出口の後頭部を殴ったのだ。
「『人間化猫化』!!!」
皆が動揺している隙に、ヤブ助は山口を猫化し、山口を抱え上げた。また、脱げた山口の服も手に取った。
そしてヤブ助はその場から走り出した。
「(すまない…)」
チビマルや有野を置いて、ヤブ助は逃げ出した。仲間を見捨てたのだ。しかし、その判断は正しい。この状況下で、ヤブ助のタレントだけではどうする事もできない。
【出口邸付近、住宅街にて…】
人間化した全裸のヤブ助は猫化した山口を抱え、住宅街を走る。そして、それを追う如月。
「(このままじゃ追いつかれる…)」
ヤブ助は人間の体には慣れていない。当然、このままでは如月に追いつかれてしまう。
その時、山口は口を開いた。
「俺のせいだ…入るなって言われてたのに…俺が…門を開けたから…」
「…」
「広瀬と白マロが死んだのは俺のせいだ…!」
山口の目から涙が溢れ出した。
「本当は俺は…ガイを助けたいなんて思ってなかったんだ……ただ、面白そうだったから…」
ヤブ助は走りながら、無言で山口の言葉を聞いている。
「ていの良い理屈を並べて…みんなを巻き込んだ……けど、こんな事になるなら…最初から…」
その時、ヤブ助は尋ねた。
「何故、俺が出てくるまで待てなかった…?」
「言っただろ!こんな事になるなんて思わなかったんだよ!!!」
次の瞬間、ヤブ助は山口を人間に戻し、山口の顔面を殴った。
「がぁッ…!」
殴られた山口は地面に倒れた。そんな山口に向かって、ヤブ助は言い放った。
「お前が死ねばよかったんだ…!」
ヤブ助は振り返り、如月の方を向いた。そして、ヤブ助はそのまま山口に言った。
「お前は家に帰れ。二度とガイに近づくなクズが。」
「でも、お前は…」
「消えろ!!!」
ヤブ助の剣幕に押され、山口は自身の衣服を持ち、『飛翼』でその場を去った。
【数分後、大学近くの公園にて…】
山口は服を着ている。その時、ズボンのポケットに入っていたスマホに電話がかかってきた。相手は友田だ。
山口は電話に出た。
「もしもし…」
〈もしもし!山口!大変よ!友那ちゃんが攫われた!〉
「な、なんで…⁈」
〈園に桜田がやってきて…それで堺も怪我してて…!猪頭さんに連絡しても繋がらないし、京香も広瀬も全然繋がんなかったし…一体何が起こってんの!どうすればいいのよ⁈〉
友田はややパニックに陥っている。しかし、そんな事、今の山口に聞かされたところでどうする事もできない。
「…」
山口は黙っている。
〈ねぇ!聞いてんの!山口!山口ってばぁ!〉
その時、山口は電話を切った。
「こっちだってわかんねぇよ…!」
再び、友田から電話がかかってきた。しかし、山口が電話に出る事はなかった。
広瀬と白マロの死体の前に立ちすくむ有野とチビマル。そして、自責の念に駆られる山口。そんな彼らの前に、個性的な格好をした若い男が現れた。
彼の名は如月満。26歳。桜田達が通う大学のOBで、画家である。彼の絵は見た者にトラウマを与えると評判で、感受性の強い人が見ると自殺するとまで言われる程。故に、彼の作品の全てが賛否分かれるものである。
「失敬。」
その時、如月は持っていたカバンからノコギリを取り出し、死んだ広瀬の頭を削り始めた。
それを見て、有野は言う。
「な、何してるの…⁈」
「見ての通りさ!頭を削ってるんだよ!」
如月はまるで新しいオモチャを手に入れた子供のような表情で広瀬の頭を削っている。
「生で人間の脳を見てみたいんだ!やはり桜田くんの仲間になって正解だったよ!こんな機会に巡り合えるなんて!」
その時、チビマルは広瀬の頭を削り続ける如月の靴に触れた。
「『靴操』!!!」
チビマルは如月の靴を操作し、如月を宙に吊るした。その側には電線がある。
「動くんじゃねぇぞ?電線に当たればどうなるかぐらいわかるよなぁ?」
チビマルは如月の行動を抑制した。しかし、チビマルにはその先がわからなかった。
「(どうする…殺すか…?それとも質問か…?何を…何を聞き出せばいい…?)」
今まで本能のままに、もしくは、ヤブ助の命令のままに動いてきたチビマルにとって、自分で考えて動くという行為ほど難しいものはなかった。
チビマルが次の手を考えていたその時、如月は電線を素手で掴んだ。
「なッ…⁈」
しかし、如月は一切ダメージを受けない。
説明しよう!
如月のタレントは『月光・防御』。月の光を浴びている間、いかなる攻撃やタレントも受け付けない能力である。
このタレントは裏日戸の『日光・攻撃』の守り・月光バージョンだ。実は如月は裏日戸の叔父であり、タレントが似ているのもそれが理由である。性格は全く違うが。
タイプ:付加型
如月はPSIを込め、電線を引きちぎり、それをチビマルの方へ投げた。
漏電する電線がチビマルを襲う。するとその時、有野はポケットから自転車の鍵を取り出した。
「『磁力』!!!」
有野はその鍵に磁力を付加し、屋敷の方へ投げた。すると、電線がそれに引き寄せられ、チビマルは流電を免れた。
その時、有野は巨大な何かに背後から体を掴まれた。
「⁈」
有野は自分を掴むそれを見た。なんと、それは巨大な人の形をした水だった。
その巨大な水人は有野を体の中に閉じ込めた。
「ッ……!」
有野は水人の中でもがいている。呼吸ができなくて苦しそうだ。
「おい…!」
チビマルが有野に駆け寄ろうとしたその時、如月は靴を脱いで地面に着地し、チビマルの前に立ちはだかった。
そして、屋敷の中から桜田の仲間の出口哲也と、血色の悪い若い男がやってきた。おそらく、水人を操っているのは血色の悪い男の方だ。
二人は話をしながら山口達の方へ歩いてきた。
「し、死んでるよね…アレ…如月先輩がやったのかな…」
「いや、死に方からして木森の条件獣だ。」
「どどど、どうしよう!警察に見つかったら僕ら…!」
「何を今更。俺たちにはあの方がついてるだろ。秋なんかよりよっぽど頼りになる奴らが。」
「で、でも…」
その時、出口は懐から拳銃を取り出し、うずくまる山口の後頭部に銃口を押し付けた。一体こんな物、どこで手に入れたのか。出口の言う『あの方』に関係があるのか。
「安心しろ。魔王を復活させたら、お前ら全員、生き返らせてやる。」
「…」
「だから、今は死んでくれ。」
引き金を引こうとする出口。それを止めようとチビマルは山口に向かって走り出した。
しかし、如月はチビマルの体を踏みつけ、それを阻止した。
「くがぁッ!!!」
踏みつけられたチビマルの体から、骨の折れる音が響いた。
有野は水人の中で意識を失い、山口は戦意喪失。誰も、戦える者はいない。このまま全滅か。
出口が引き金を引く次の瞬間、出口はその場に倒れた。
ヤブ助だ。ヤブ助が死角から現れて人間化し、出口の後頭部を殴ったのだ。
「『人間化猫化』!!!」
皆が動揺している隙に、ヤブ助は山口を猫化し、山口を抱え上げた。また、脱げた山口の服も手に取った。
そしてヤブ助はその場から走り出した。
「(すまない…)」
チビマルや有野を置いて、ヤブ助は逃げ出した。仲間を見捨てたのだ。しかし、その判断は正しい。この状況下で、ヤブ助のタレントだけではどうする事もできない。
【出口邸付近、住宅街にて…】
人間化した全裸のヤブ助は猫化した山口を抱え、住宅街を走る。そして、それを追う如月。
「(このままじゃ追いつかれる…)」
ヤブ助は人間の体には慣れていない。当然、このままでは如月に追いつかれてしまう。
その時、山口は口を開いた。
「俺のせいだ…入るなって言われてたのに…俺が…門を開けたから…」
「…」
「広瀬と白マロが死んだのは俺のせいだ…!」
山口の目から涙が溢れ出した。
「本当は俺は…ガイを助けたいなんて思ってなかったんだ……ただ、面白そうだったから…」
ヤブ助は走りながら、無言で山口の言葉を聞いている。
「ていの良い理屈を並べて…みんなを巻き込んだ……けど、こんな事になるなら…最初から…」
その時、ヤブ助は尋ねた。
「何故、俺が出てくるまで待てなかった…?」
「言っただろ!こんな事になるなんて思わなかったんだよ!!!」
次の瞬間、ヤブ助は山口を人間に戻し、山口の顔面を殴った。
「がぁッ…!」
殴られた山口は地面に倒れた。そんな山口に向かって、ヤブ助は言い放った。
「お前が死ねばよかったんだ…!」
ヤブ助は振り返り、如月の方を向いた。そして、ヤブ助はそのまま山口に言った。
「お前は家に帰れ。二度とガイに近づくなクズが。」
「でも、お前は…」
「消えろ!!!」
ヤブ助の剣幕に押され、山口は自身の衣服を持ち、『飛翼』でその場を去った。
【数分後、大学近くの公園にて…】
山口は服を着ている。その時、ズボンのポケットに入っていたスマホに電話がかかってきた。相手は友田だ。
山口は電話に出た。
「もしもし…」
〈もしもし!山口!大変よ!友那ちゃんが攫われた!〉
「な、なんで…⁈」
〈園に桜田がやってきて…それで堺も怪我してて…!猪頭さんに連絡しても繋がらないし、京香も広瀬も全然繋がんなかったし…一体何が起こってんの!どうすればいいのよ⁈〉
友田はややパニックに陥っている。しかし、そんな事、今の山口に聞かされたところでどうする事もできない。
「…」
山口は黙っている。
〈ねぇ!聞いてんの!山口!山口ってばぁ!〉
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