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第2章『ガイ-過去編-』
第72障『感情移入』
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【19:15、猪頭愛児園、建物内、3階、和室にて…】
顎を蹴り上げられ、姿勢を崩す桜田。対峙するは、桜田のタレントを封じる為に両の鼓膜を自ら破ったヤブ助。
「(僕の障害特権を…僕に一矢報いる為に、あらかじめ自分の鼓膜を破っていたのか…!なんて相手だ…)」
【1階、屋根裏部屋にて…】
18人の子供達は屋根裏部屋で待機している。
「猫さん大丈夫かな…」
友那や他の子供達はヤブ助のことを危惧している。そんな中、将利は疑問を投げかけた。
「でもよ、もっと別のやり方があったんじゃないか?なんでタイマンなんだよ?」
それに対し、勉が答える。
「僕らを巻き込まない為ですよ。」
「んだよ。雑魚扱いかよ。」
「そうじゃありません。」
「どーゆーことだよ?」
「僕らに人殺しをさせないようにさ。友那にさせたあの作戦だって、ヤブ助さんは反対だった。」
ヤブ助は子供達を戦いに巻き込む事を拒んでいた。
【3階、和室にて…】
ヤブ助と桜田が対峙している。
「(正直、ガイさえ助かれば、ガキ共が死のうが生きようがどうでも良かった。そう思っていた。ココに来るまでは…)」
【ヤブ助の回想…】
ヤブ助がココへ来て事情を説明し終えた後の事だ。
「お前らは屋根裏部屋にでも隠れてろ。あとは俺がやる。」
ヤブ助は子供達にそう言った。しかし、友那や将利は首を横に振る。
「ヤダ!アタシ達も戦う!」
「蜂の巣にしてやんぜ!」
彼女らは自分達も戦うと言い張っている。そんな子供達にヤブ助は言った。
「コレは遊びじゃないんだ。死にたいのか?」
ヤブ助は子供達を戦わせたくなかった。足手纏いだと思っていたからだ。
その時、勉がヤブ助に言った。
「良いんですよ。僕ら、もう既に死んでるんですから。」
「は?」
ヤブ助は首を傾げた。
「産まれたばかりの赤児が捨てられたら、どうなるかぐらい想像がつきますよね。そういう意味では、僕達はみんな一度死んでいるんです。それを猪頭先生が救ってくれた。僕らはみんな、先生の為なら命を投げ打つ覚悟です。」
「…」
勉のその発言を聞いたヤブ助の心が揺らいだ。
【現在…】
「(勉、俺も同じだ。俺を救ってくれた者の為なら、命をかけられる。ふっ…感情移入ってやつか…いや、焼きが回ったか…お前もそう思うだろ、ガイ…!)」
ヤブ助はPSIを身に纏った。
「『人間化猫化』!!!」
人間の姿のヤブ助が、猫の体へと徐々に変化していく。すると次の瞬間、ヤブ助は変身を途中で止めた。
ヤブ助は人間のフォルムを保ったまま、猫の特徴を備えた半猫人となった。
「な…ッ⁈」
桜田がヤブ助の変貌に驚嘆したその時、ヤブ助は人間では不可能なスピードで桜田の周りを跳躍した。
「(は、速い…!)」
ヤブ助のスピードと夜の暗黒が相まって、桜田はヤブ助の姿を捉えられずにいる。
次の瞬間、ヤブ助は桜田の背後から襲いかかった。
「(喰らえッ…!)」
ヤブ助が桜田の後頭部を殴りつけようとしたその時、桜田は光る何かを頭上に投げた。
それはスマホだった。
「しまっ……」
ヤブ助はそれを目で追ってしまった。そのスマホの画面には『止まれ』と書かれていた。
その文字を見てしまったヤブ助は床に倒れ込んだ。
「(か、体が動かない…!)」
桜田のタレント『誤謬通信』は他者を操作する能力。条件は媒体を通しての命令。つまり、電話やボイスレコーダーなどの音だけでなく、文字にも効果があるのだ。
「キミが猫で助かったよ。」
暗闇に光るものが突如現れれば、誰だって注意を引かれる。その上、ヤブ助は猫だ。動く物に惹かれるのも無理はない。桜田はそれを利用し、スマホを上に投げたのだ。
「さて。これからどうしようか…」
その時、桜田のスマホに電話がかかってきた。
「電話……まさか…!」
桜田は嫌な予感を感じ、電話に出た。電話の相手は木森だった。
〈大変よ!桜田くん!猪頭が戻ってきた!〉
木森はそれだけを伝えると、すぐに電話を切った。
「(まずい…猪頭さんがココに来たら、勝ち目がない…)」
するとその時、部屋の扉が開いた。
「ッ⁈」
桜田は驚嘆し、振り返った。部屋の出入り口には友那,勝利,勉が居た。ヤブ助を助けに来たのだ。
「オラオラァァァァア!!!」
「蜂の巣にしてやんよォォォォ!」
友那と将利は桜田に殴りかかった。桜田はそれらを対処している。
「(PSI…⁈この子達もハンディーキャッパーか!)」
その時、将利は叫んだ。
「だるまさんがころんだ !!!」
「ッ!!!」
すると、桜田の動きが封じられた。
「オラァァァァァァァァ!!!」
友那がPSIを込めて、桜田を殴り飛ばした。
「ぐはッ!!!」
桜田は窓から外へ放り出された。
「『あっちむいてほい』!!!」
友那は桜田を殴り飛ばした際、桜田の体にシールを貼っていた。友那は窓から落下する桜田を操作し、遥か上空へと上げた。
「解除ッ!!!」
次の瞬間、友那は操作をやめた。すると、桜田は高さ20~30mの地点から落下を始めた。
それと同時に、ヤブ助にかかっていた桜田のタレントが解除され、ヤブ助の体の自由が戻った。
「やめろ友那!殺すな!桜田にはまだ利用価値が…」
子供に殺人など犯して欲しくない。しかし、そんな理由で友那を止める事はできないだろう。だから、ヤブ助はそれっぽい言い訳しようとした。その時だ。部屋に落ちていたスマホが光った。
「ッ…!!!」
唯一、勉がそれに気づき、耳を塞いだ。しかし、気づいた時にはもう遅かった。
そのスマホから桜田の声が辺りに響く。
〈僕を安全に敷地内から出せ!〉
桜田はこうなる事を見越して、万が一の為に部屋にスマホを置いていたのだ。そして、それを遠隔で操作したのだ。
鼓膜の破れたヤブ助と耳を塞いでいた勉以外の二人は、桜田に操られた。
「『あっちむいてほい』!!!」
友那は桜田の体を地面に激突する寸前に横へと方向を変えた。すると、桜田は受け身をとって地面に無事着地した。
「ダメだ!友那ちゃん!」
勉が友那を止めようとしたその時、将利がそれを阻んだ。
「だるまさんがころんだ!!!」
「ッ…!」
勉の動きが止まった。
数秒後、桜田は走って園の外に出た。それと同時に、友那と将利にかけられた洗脳が解けた。
「「あれ……?」」
【猪頭愛児園の外、住宅街にて…】
桜田と木森が話をしながら移動している。
「何故、猪頭園長がココに来たんですか?哲也が足止めしてるはずじゃなかったんですか?」
「私に聞かれても知らないわよ。出口くんに直接聞いたら?」
「それが繋がらないんですよ。」
その時、桜田はとある事が頭によぎった。
「(もしかして、哲也は成金部屋に…)」
この時、桜田はまだ知らなかった。彼らの裏切りを。1周目世界で殺された事実を。
顎を蹴り上げられ、姿勢を崩す桜田。対峙するは、桜田のタレントを封じる為に両の鼓膜を自ら破ったヤブ助。
「(僕の障害特権を…僕に一矢報いる為に、あらかじめ自分の鼓膜を破っていたのか…!なんて相手だ…)」
【1階、屋根裏部屋にて…】
18人の子供達は屋根裏部屋で待機している。
「猫さん大丈夫かな…」
友那や他の子供達はヤブ助のことを危惧している。そんな中、将利は疑問を投げかけた。
「でもよ、もっと別のやり方があったんじゃないか?なんでタイマンなんだよ?」
それに対し、勉が答える。
「僕らを巻き込まない為ですよ。」
「んだよ。雑魚扱いかよ。」
「そうじゃありません。」
「どーゆーことだよ?」
「僕らに人殺しをさせないようにさ。友那にさせたあの作戦だって、ヤブ助さんは反対だった。」
ヤブ助は子供達を戦いに巻き込む事を拒んでいた。
【3階、和室にて…】
ヤブ助と桜田が対峙している。
「(正直、ガイさえ助かれば、ガキ共が死のうが生きようがどうでも良かった。そう思っていた。ココに来るまでは…)」
【ヤブ助の回想…】
ヤブ助がココへ来て事情を説明し終えた後の事だ。
「お前らは屋根裏部屋にでも隠れてろ。あとは俺がやる。」
ヤブ助は子供達にそう言った。しかし、友那や将利は首を横に振る。
「ヤダ!アタシ達も戦う!」
「蜂の巣にしてやんぜ!」
彼女らは自分達も戦うと言い張っている。そんな子供達にヤブ助は言った。
「コレは遊びじゃないんだ。死にたいのか?」
ヤブ助は子供達を戦わせたくなかった。足手纏いだと思っていたからだ。
その時、勉がヤブ助に言った。
「良いんですよ。僕ら、もう既に死んでるんですから。」
「は?」
ヤブ助は首を傾げた。
「産まれたばかりの赤児が捨てられたら、どうなるかぐらい想像がつきますよね。そういう意味では、僕達はみんな一度死んでいるんです。それを猪頭先生が救ってくれた。僕らはみんな、先生の為なら命を投げ打つ覚悟です。」
「…」
勉のその発言を聞いたヤブ助の心が揺らいだ。
【現在…】
「(勉、俺も同じだ。俺を救ってくれた者の為なら、命をかけられる。ふっ…感情移入ってやつか…いや、焼きが回ったか…お前もそう思うだろ、ガイ…!)」
ヤブ助はPSIを身に纏った。
「『人間化猫化』!!!」
人間の姿のヤブ助が、猫の体へと徐々に変化していく。すると次の瞬間、ヤブ助は変身を途中で止めた。
ヤブ助は人間のフォルムを保ったまま、猫の特徴を備えた半猫人となった。
「な…ッ⁈」
桜田がヤブ助の変貌に驚嘆したその時、ヤブ助は人間では不可能なスピードで桜田の周りを跳躍した。
「(は、速い…!)」
ヤブ助のスピードと夜の暗黒が相まって、桜田はヤブ助の姿を捉えられずにいる。
次の瞬間、ヤブ助は桜田の背後から襲いかかった。
「(喰らえッ…!)」
ヤブ助が桜田の後頭部を殴りつけようとしたその時、桜田は光る何かを頭上に投げた。
それはスマホだった。
「しまっ……」
ヤブ助はそれを目で追ってしまった。そのスマホの画面には『止まれ』と書かれていた。
その文字を見てしまったヤブ助は床に倒れ込んだ。
「(か、体が動かない…!)」
桜田のタレント『誤謬通信』は他者を操作する能力。条件は媒体を通しての命令。つまり、電話やボイスレコーダーなどの音だけでなく、文字にも効果があるのだ。
「キミが猫で助かったよ。」
暗闇に光るものが突如現れれば、誰だって注意を引かれる。その上、ヤブ助は猫だ。動く物に惹かれるのも無理はない。桜田はそれを利用し、スマホを上に投げたのだ。
「さて。これからどうしようか…」
その時、桜田のスマホに電話がかかってきた。
「電話……まさか…!」
桜田は嫌な予感を感じ、電話に出た。電話の相手は木森だった。
〈大変よ!桜田くん!猪頭が戻ってきた!〉
木森はそれだけを伝えると、すぐに電話を切った。
「(まずい…猪頭さんがココに来たら、勝ち目がない…)」
するとその時、部屋の扉が開いた。
「ッ⁈」
桜田は驚嘆し、振り返った。部屋の出入り口には友那,勝利,勉が居た。ヤブ助を助けに来たのだ。
「オラオラァァァァア!!!」
「蜂の巣にしてやんよォォォォ!」
友那と将利は桜田に殴りかかった。桜田はそれらを対処している。
「(PSI…⁈この子達もハンディーキャッパーか!)」
その時、将利は叫んだ。
「だるまさんがころんだ !!!」
「ッ!!!」
すると、桜田の動きが封じられた。
「オラァァァァァァァァ!!!」
友那がPSIを込めて、桜田を殴り飛ばした。
「ぐはッ!!!」
桜田は窓から外へ放り出された。
「『あっちむいてほい』!!!」
友那は桜田を殴り飛ばした際、桜田の体にシールを貼っていた。友那は窓から落下する桜田を操作し、遥か上空へと上げた。
「解除ッ!!!」
次の瞬間、友那は操作をやめた。すると、桜田は高さ20~30mの地点から落下を始めた。
それと同時に、ヤブ助にかかっていた桜田のタレントが解除され、ヤブ助の体の自由が戻った。
「やめろ友那!殺すな!桜田にはまだ利用価値が…」
子供に殺人など犯して欲しくない。しかし、そんな理由で友那を止める事はできないだろう。だから、ヤブ助はそれっぽい言い訳しようとした。その時だ。部屋に落ちていたスマホが光った。
「ッ…!!!」
唯一、勉がそれに気づき、耳を塞いだ。しかし、気づいた時にはもう遅かった。
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勉が友那を止めようとしたその時、将利がそれを阻んだ。
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「ッ…!」
勉の動きが止まった。
数秒後、桜田は走って園の外に出た。それと同時に、友那と将利にかけられた洗脳が解けた。
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「何故、猪頭園長がココに来たんですか?哲也が足止めしてるはずじゃなかったんですか?」
「私に聞かれても知らないわよ。出口くんに直接聞いたら?」
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