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第2章『ガイ-過去編-』
第95障『狂と記憶』
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【翌日(3月11日)、昼、猪頭邸、とある部屋にて…】
ガイは布団の上で眠っている。あの後、ヤブ助達に屋敷まで運ばれたのだ。
「うッ……」
ガイはうなされている。よくない夢でも見ているようだ。
「はッ…‼︎」
ガイは布団から飛び起きた。
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!ハァ…!」
ガイは息を切らしながら、自身の両手を見た。そして、昨日起こった事を思い出す。
「十谷…‼︎村上…‼︎」
次の瞬間、ガイは自身の首を絞め始めた。
「アッ…ガッ……‼︎」
【猪頭邸、大広間にて…】
猪頭邸は純和風。囲炉裏のある大広間では、人間の姿のヤブ助,氷室,堺が居た。
「ガイさんの傷は治しました。顔の方も元通りに。毒の影響も無さそうです。」
「そうか。ありがとう、氷室。お前のタレントにはいつも助けられてるよ。」
「そんな事ないです。結局あのお二人も、助けられなかったですし…」
「…」
氷室の言うあの二人、それは十谷と村上の事である。三人はガイを助けた後、平塚水棟病院へと向かった。そこで十谷と村上の遺体を発見したのだ。
「いや、いいんだ。仕方ない事だ。」
すると、ヤブ助は堺に話しかけた。
「堺。お前にも感謝している。ありがとう。」
「ううん。こんな僕でも役に立てて嬉しいよ。」
「そう言ってくれると助かる。」
その時、部屋の外が騒がしい事に気づいた。
「なんだ…?」
「行ってみよう。」
【調理場にて…】
調理場へやってきたヤブ助達は驚愕した。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!?!?!??!!!」
調理場では、ガイが叫びを上げながら調理器具で自害を図っていた。
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」
しかし、それはどれも直前で雷世に止められ、全て未遂で終わっていた。喉に包丁を突き刺そうとすれば、位置がずれて肩に刺さる。他にも焼死や溺死を試した痕がガイの体にあった。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!?!?!??!!!」
ガイは壁に頭を打ちつけ始めた。
「やめろッ!ガイッ!」
ヤブ助はガイを押さえつけようとした。しかし、ガイは暴れ続ける。
「すまんッ…!」
次の瞬間、ヤブ助はガイを手刀で気絶させた。
意識を失ったガイの体をヤブ助は抱えた。
「氷室。手を貸してくれ。ガイを布団まで運ぶ。」
「は、はい…!」
氷室とヤブ助はガイを運んだ。調理場の入り口には有野の姿が。有野はこの一部始終を見ていたようだ。
「ガイ…」
この日以降、ガイは目を覚ますと錯乱状態になり、自殺を図るようになった。それ故、ヤブ助達は猪頭邸の使用人に頼み、ガイを専用のベッドに拘束した。
【3月14日、夜、大広間にて…】
大広間には、ヤブ助,氷室,堺はもちろん、有野や友田、園の子供達の友那,勉,将利も集まっていた。
「おんな兄ちゃん、大丈夫かな…」
「今朝も叫んでたし…」
友那と将利はガイを心配していた。一方、勉はあまり関心を持っていないようだ。
その時、友田は堺に尋ねた。
「ねぇ。ガイ、何でああなった訳?」
「わからない。あの病院で何が起こったのか、僕らは見てないから。」
そう。誰も見ていない。ガイが自ら十谷と村上を手にかけたところを。故にヤブ助達は、十谷と村上はフリートに殺されたと思っていた。
「これから、どうします…?」
氷室がヤブ助にそう質問した。
「ガイは…もうダメかもしれん…」
「そうなった場合、僕らだけでやるしかないですよね…」
「あぁ…」
ガイがあんな状態では、今後の戦いには参加させられない。しかし、ガイの離脱は戦力的にかなりダメージが大きい。これから先、ガイ無しでやっていけるのか。不安が募る一同。
「いや、そうはさせない。」
その時、大広間の扉が開き、秀頼と山尾が入ってきた。
「話は聞いている。そして、それを打開する方法もある。」
「方法…?」
すると、ある人物が大広間に入ってきた。
「お前らッ…⁈」
それは桜田だった。
「やぁ。久しぶり。」
桜田に続いて、角野,不知火,土狛江,裏日戸が大広間に入ってきた。そして、秀頼と山尾が説明を始める。
「私はこの数日間、桜田達を探していた。」
「そんで、移動手段として俺がこき使われてたって訳。」
その時、ヤブ助は秀頼に質問した。
「まさかとは思いますが、そいつらと手を組むとか言いませんよね…?」
「全くもってその通りだ。コイツらと手を組む。」
ヤブ助は立ち上がり、それを拒否した。
「反対です。そいつはガイを拷問したクソ野郎です。そもそも、そいつらがガイを誘拐しなかったら、俺たちは今、こんな事になっていません。」
「異論は認めん。今日から仲間だ。いいな?」
「嫌です。仲良くできません。」
「仲良くなる必要はない。必要最低限のコミュニケーションさえできればな。」
「ですが…」
ヤブ助が何か言いかけた瞬間、秀頼はこう言った。
「桜田なら、今のガイを元に戻せる。」
「ッ……」
それを聞いたヤブ助は一瞬で反論を止めた。
その時、氷室が桜田に質問した。
「元に戻すって、具体的にはどうするんですか?」
「僕のタレントを使って、障坂君を半永久的に洗脳する。安心して。洗脳と言っても、忘れてもらうだけだから。」
「忘れてもらう…?」
「うん。話を聞くに、四日前が原因だ。だから『3月10日から今日までの記憶を消せ』って僕が命令すれば、おそらく障坂君は元に戻る。」
「なるほど。」
桜田の説明が終えると、秀頼は再びヤブ助に確認した。
「という訳だ。異論は無いな?」
「有りまくりですけど…まぁ…はい…」
ヤブ助の優先事項は何を置いてもガイ。そんなヤブ助に断る事などできるはずもなかった。
「じゃあ早速ガイの元へ…」
「待って…!」
その時、有野が立ち上がり、叫んだ。
「なんだ?」
「ガイは…このままで良いと思う…」
その発言に、皆は困惑した。
「どういう事だ?」
「ガイに、これ以上…辛い目に遭って欲しくない…」
有野の切実な願いが、皆の言葉を詰まらせた。
有野は話を続ける。
「ガイがああなる度に、記憶を消すつもり…なんですか…?そんなの、ただの道具じゃないですか…」
何も言えなかった。有野の言う通りだったからだ。
しかし、秀頼は言った。
「もう逃げ道は無い。ガイにも、私たちにも。戦うしか無いんだ。例え、操り人形になろうとも。」
「そう…ですか……」
その後、桜田はガイを洗脳し、ガイの3月10日~14日の記憶を消した。
ガイは布団の上で眠っている。あの後、ヤブ助達に屋敷まで運ばれたのだ。
「うッ……」
ガイはうなされている。よくない夢でも見ているようだ。
「はッ…‼︎」
ガイは布団から飛び起きた。
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!ハァ…!」
ガイは息を切らしながら、自身の両手を見た。そして、昨日起こった事を思い出す。
「十谷…‼︎村上…‼︎」
次の瞬間、ガイは自身の首を絞め始めた。
「アッ…ガッ……‼︎」
【猪頭邸、大広間にて…】
猪頭邸は純和風。囲炉裏のある大広間では、人間の姿のヤブ助,氷室,堺が居た。
「ガイさんの傷は治しました。顔の方も元通りに。毒の影響も無さそうです。」
「そうか。ありがとう、氷室。お前のタレントにはいつも助けられてるよ。」
「そんな事ないです。結局あのお二人も、助けられなかったですし…」
「…」
氷室の言うあの二人、それは十谷と村上の事である。三人はガイを助けた後、平塚水棟病院へと向かった。そこで十谷と村上の遺体を発見したのだ。
「いや、いいんだ。仕方ない事だ。」
すると、ヤブ助は堺に話しかけた。
「堺。お前にも感謝している。ありがとう。」
「ううん。こんな僕でも役に立てて嬉しいよ。」
「そう言ってくれると助かる。」
その時、部屋の外が騒がしい事に気づいた。
「なんだ…?」
「行ってみよう。」
【調理場にて…】
調理場へやってきたヤブ助達は驚愕した。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!?!?!??!!!」
調理場では、ガイが叫びを上げながら調理器具で自害を図っていた。
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」
しかし、それはどれも直前で雷世に止められ、全て未遂で終わっていた。喉に包丁を突き刺そうとすれば、位置がずれて肩に刺さる。他にも焼死や溺死を試した痕がガイの体にあった。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!?!?!??!!!」
ガイは壁に頭を打ちつけ始めた。
「やめろッ!ガイッ!」
ヤブ助はガイを押さえつけようとした。しかし、ガイは暴れ続ける。
「すまんッ…!」
次の瞬間、ヤブ助はガイを手刀で気絶させた。
意識を失ったガイの体をヤブ助は抱えた。
「氷室。手を貸してくれ。ガイを布団まで運ぶ。」
「は、はい…!」
氷室とヤブ助はガイを運んだ。調理場の入り口には有野の姿が。有野はこの一部始終を見ていたようだ。
「ガイ…」
この日以降、ガイは目を覚ますと錯乱状態になり、自殺を図るようになった。それ故、ヤブ助達は猪頭邸の使用人に頼み、ガイを専用のベッドに拘束した。
【3月14日、夜、大広間にて…】
大広間には、ヤブ助,氷室,堺はもちろん、有野や友田、園の子供達の友那,勉,将利も集まっていた。
「おんな兄ちゃん、大丈夫かな…」
「今朝も叫んでたし…」
友那と将利はガイを心配していた。一方、勉はあまり関心を持っていないようだ。
その時、友田は堺に尋ねた。
「ねぇ。ガイ、何でああなった訳?」
「わからない。あの病院で何が起こったのか、僕らは見てないから。」
そう。誰も見ていない。ガイが自ら十谷と村上を手にかけたところを。故にヤブ助達は、十谷と村上はフリートに殺されたと思っていた。
「これから、どうします…?」
氷室がヤブ助にそう質問した。
「ガイは…もうダメかもしれん…」
「そうなった場合、僕らだけでやるしかないですよね…」
「あぁ…」
ガイがあんな状態では、今後の戦いには参加させられない。しかし、ガイの離脱は戦力的にかなりダメージが大きい。これから先、ガイ無しでやっていけるのか。不安が募る一同。
「いや、そうはさせない。」
その時、大広間の扉が開き、秀頼と山尾が入ってきた。
「話は聞いている。そして、それを打開する方法もある。」
「方法…?」
すると、ある人物が大広間に入ってきた。
「お前らッ…⁈」
それは桜田だった。
「やぁ。久しぶり。」
桜田に続いて、角野,不知火,土狛江,裏日戸が大広間に入ってきた。そして、秀頼と山尾が説明を始める。
「私はこの数日間、桜田達を探していた。」
「そんで、移動手段として俺がこき使われてたって訳。」
その時、ヤブ助は秀頼に質問した。
「まさかとは思いますが、そいつらと手を組むとか言いませんよね…?」
「全くもってその通りだ。コイツらと手を組む。」
ヤブ助は立ち上がり、それを拒否した。
「反対です。そいつはガイを拷問したクソ野郎です。そもそも、そいつらがガイを誘拐しなかったら、俺たちは今、こんな事になっていません。」
「異論は認めん。今日から仲間だ。いいな?」
「嫌です。仲良くできません。」
「仲良くなる必要はない。必要最低限のコミュニケーションさえできればな。」
「ですが…」
ヤブ助が何か言いかけた瞬間、秀頼はこう言った。
「桜田なら、今のガイを元に戻せる。」
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それを聞いたヤブ助は一瞬で反論を止めた。
その時、氷室が桜田に質問した。
「元に戻すって、具体的にはどうするんですか?」
「僕のタレントを使って、障坂君を半永久的に洗脳する。安心して。洗脳と言っても、忘れてもらうだけだから。」
「忘れてもらう…?」
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「なるほど。」
桜田の説明が終えると、秀頼は再びヤブ助に確認した。
「という訳だ。異論は無いな?」
「有りまくりですけど…まぁ…はい…」
ヤブ助の優先事項は何を置いてもガイ。そんなヤブ助に断る事などできるはずもなかった。
「じゃあ早速ガイの元へ…」
「待って…!」
その時、有野が立ち上がり、叫んだ。
「なんだ?」
「ガイは…このままで良いと思う…」
その発言に、皆は困惑した。
「どういう事だ?」
「ガイに、これ以上…辛い目に遭って欲しくない…」
有野の切実な願いが、皆の言葉を詰まらせた。
有野は話を続ける。
「ガイがああなる度に、記憶を消すつもり…なんですか…?そんなの、ただの道具じゃないですか…」
何も言えなかった。有野の言う通りだったからだ。
しかし、秀頼は言った。
「もう逃げ道は無い。ガイにも、私たちにも。戦うしか無いんだ。例え、操り人形になろうとも。」
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