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第2章『ガイ-過去編-』
第98障『裏工作』
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【3月?日、夜、猪頭邸、ガイの部屋にて…】
ガイは布団の上で目を覚ました。
「ガイッ!!!」
ガイの周りには猫の姿のヤブ助,秀頼,桜田,氷室,堺,友田が居た。皆、深刻な表情をしている。
ガイは体勢を起こした。
「ヤブ助……俺、何して……」
次の瞬間、友田がガイの胸ぐらを掴んだ。
「アンタのせいで京香は…!京香はッ…!」
それを堺と氷室が取り押さえた。
「お、落ち着いてよ!友田さん!」
ガイは友田の表情から、深刻な事態が発生している事を察した。そして、それが有野に関係すると。
「ヤブ助、何が起こった…⁈」
「…」
ヤブ助は言いづらそうに話し始めた。
「有野が攫われた…」
「なん…だって……⁈」
その時、ガイは咄嗟に部屋に置かれていたデジタル時計を手にした。時計に表示されている日付と時刻を見ると、3月18日の21:50。つまり、あの約束の日から約三日経っていたのだ。
その様子を見た桜田がガイに説明を始めた。
「三日前、キミは近くの公園で倒れていた。猪頭さん曰く、脳へのダメージが大きかったらしくてね。この三日、キミは眠りっぱなしだったんだ。おそらく、白鳥組の連中に襲われたんだろう。」
それを聞いた瞬間、ガイの中に猛烈な怒りが込み上げてきた。
「アイツらッ……」
ガイは怒りのあまり、歯を強く食い縛った。歯茎から血が出る程に。しかし、ガイはすぐさま自分を落ち着かせ、冷静になった。
「(ダメだ怒るな…今は状況整理だ。)」
ガイは襲われた時のことを思い出した。
「(一瞬だった…背後から頸椎を一撃。気配も足音も無い。『Zoo』の仕業で間違いない…はずなんだが…)」
すると、ガイは周りにいる人物の顔をチラ見し始めた。
「(何故だ…俺は多分…そいつを知っている…)」
桜田は説明を続けた。
「それで一昨日の朝、メールが届いたんだ。」
桜田はそのメールをガイに見せた。そこにはこう書かれていた。
〈3月20日午後8時。館林の地下研究所。要障坂ガイ。〉
コレを見たガイにとある疑問が浮かんだ。
「要障坂…俺が必要って事か…?じゃあ俺でなく、何で有野を連れ去ったんだ…?」
「そこが僕も引っかかるんだ。」
どうやら、桜田も同じ疑問を持っていたようだ。
「障坂くんが必要なら、初めから障坂くんを誘拐すれば良かった話だろ?何故こんな二度手間のような真似をするのか…」
すると、桜田の疑問にヤブ助が考えを話し始めた。
「有野の方が、監禁するには楽だと思ったんじゃないのか?」
「いや、そもそも奴らは障坂くんを殺したがってるんだ。三日前のあの時点で障坂くんが殺されてなきゃおかしいんだよ。」
その時、友田が声を上げた。
「そんな事どうでもいいでしょ!早くしないと京香がまた酷い目に…!」
友田は泣き始めた。秀頼がその場を取りまとめるかのように話し始めた。
「彼女の言う通りだ。相手は白鳥組だとわかっている以上、今は打開策を考えた方がいい。奴らが素直に人質を返してくれるとは考えにくいからな。」
「そうですね。」
ヤブ助はそれに頷いた。また、氷室や堺、友田も秀頼の発言に頷く。しかし、ガイは腑に落ちないようだ。
「(確かに、一刻も早く有野を助け出す策を考えるのが打倒だ。けど、有野が攫われた理由がわからなければ、奴らの意図がわからない。有野を助け出せるかどうか、そこにかかっている気がする…)」
ガイは有野を助け出す為の有効的な策を、それらの疑問から考えていた。そして、あの日交わした約束を思い出す。
「(待ってろ有野。必ず、助け出してやるからな。)」
そして、腑に落ちない者はもう一人。そう。桜田だ。
「(障坂くんを殺さなかった理由も気になる。人質が無いと出来ない事を、奴らはしようとしている…いや、もしかしたら、奴らではなく…)」
桜田は既にこの時、疑問の答えにほぼ辿り着いていた。しかし、まだ確証が無い。
「(…だとしたら辻褄が合う。いや、これしかない。もしそうだとしたら、障坂くんが犠牲に…)」
桜田はこの先の展開をほぼ全て読むことができた。そして、それが恐ろしい結末になる事も。
「(どうする…この場で言うべきか…いや、ダメだ。今言ってしまえば、内乱が起こりかねない。)」
桜田は目を閉じた。
「(僕がやるしかない。障坂くん、キミを死なせたりしないよ。)」
この後、皆は大広間に集まり、有野奪還の作戦会議を開いた。しかし、それらが全て無意味な事を、桜田とある人物だけは知っていた。
【3月19日、早朝、桜田の部屋にて…】
桜田,土狛江,氷室の三人が部屋に集まっていた。
「…作戦は以上だ。くれぐれも、他の人に言っちゃダメだからね。」
「念の為、か。」
「そう。念の為。」
土狛江は大きく頷いた。
「任せてよ!この俺、ギャンブル王の土狛江!ブラフには自信あるから!」
「頼りにしてるよ。」
一方、氷室は眉を顰めていた。桜田はそんな氷室に尋ねた。
「やっぱり、難しそうかい?」
「い、いえ…そうではないんですけど…」
すると、氷室は頭を抱えこう言った。
「なんか、裏切られた気分です。俺、あの人の事、信じてたのに…」
そんな氷室に桜田は言った。
「まぁ、あの人はあの人なりに責任があるから。」
「みんなが助かれば、ガイさんはどうでもいいんですか…?」
「だから、僕たちがやるんじゃないか。そうだろ?」
「…」
どうやら氷室は納得がいかないようだ。
「それはそれで、事が終わってから問いただすとしよう。」
【3月20日、1:55、とある病院にて…】
ガイとヤブ助はとある病室に居た。そして、病室のベッドの上には誰かが寝ている。
「ガイ…」
人間の姿のヤブ助の目には、涙が溜まっている。ガイはそんなヤブ助に笑いかけ、こう言った。
「大丈夫。すぐ逢える。」
そして、ガイはベッドの上で寝ている何者かに、何かを突き刺した。
数秒後、ガイはその何かを抜いた。
「コレで良いんだ…俺は、コレで…」
ガイは振り返った。
「だから泣くなよ、ヤブ助。」
ガイは穏やかな笑顔を崩す事はない。しかし、それが逆に、ヤブ助を苦しめた。
「すまないッ…!全部…俺のッ…!」
「ヤブ助のせいじゃない。全部、俺のせいだ。俺が障坂だから。もっと早く、こうすべきだったんだ。そうすれば村上も十谷も、山口も広瀬もみんな、死なずに済んだ。」
そして、ガイはとある事を考え、それを口に出した。
「そうか…わかったよ。親父が何故、俺を『ガイ』と名付けたのか。俺は…この世界の『害』なんだ…そして、みんなの『害』だったんだ…」
それを聞いた時、ヤブ助は叫んだ。
「違うッ!違うぞガイッ!お前は『害』なんかじゃない!だってお前は俺の…」
ヤブ助が何か言いかけたその時、ガイはこう言った。
「ごめんな、ヤブ助。俺の地獄に付き合わせて…」
「ッ……」
ヤブ助は病室を出た。その時の表情は言葉では言い表せない程、悲しみに満ちていた。
ガイは窓から夜空を眺めた。月が見えない、星一つ無い、雲がかった空を。
「何にも見えないな…今日は…」
【3月20日、19:20、伊従村、館林地下研究所にて…】
一面真っ白な部屋。広さは大体バスケットボールコート二つ分。そこには黒服の男たち、白鳥組の連中が三十人ほど立っていた。勿論、その中には幹部である石川、一善や前田、芝見川や時和も居た。そして、そんな彼らの中心には椅子に座る陽道の姿も。
「よぉ。早いじゃねぇか。」
そこへ、ガイと桜田がやってきた。そんな二人を見るなり、芝見川と時和が呟いた。
「ほほぅ。これはこれは。」
「二人ですか。」
白鳥組はガイ達との全面戦争を予期していた。その為、ガイと桜田の二人だけでココへやってきた事への驚きがあった。一方、陽道は二人に質問する。
「約束は午後8時のはずだ。何故40分も前に来た?」
「別にいいだろ。早く有野を返せ。」
ガイが返答した。その後すぐ、陽道は右手を上げた。それを見た白鳥組の連中は銃を取り出し、それを桜田のみに向けた。
「な、何のつもりですか…⁈」
桜田も、自分のみに殺気が向けられている事に気づいているようだ。そんな桜田に陽道はこう言う。
「とぼけんじゃねぇ、桜田。俺を誰だと思ってやがる。」
その時、陽道は一善に命令した。
「一善。」
「はい。」
次の瞬間、ガイの体がバラバラに斬り裂かれた。その間、一善はガイに近づく事はおろか、ノーモーションのままだ。
「いい度胸だなぁ、桜田。」
そう。コレはガイの偽物。氷室のタレントで作ったガイを模した肉人形に、土狛江の土を操るタレントでそれを操っていたのだ。そして、陽道はそれを見抜いた。
「何故、偽物わかったんですか…?」
「勘だ。」
「勘…ですか…」
「あぁ。俺はお前と違って考えるのは好きじゃねぇからよぉ。」
それを聞き、桜田はこう思った。
「(やり難い…)」
桜田の長所は頭の良さ。ガイとは違い作戦型の戦術だ。相手の裏の裏、そのまた裏をかく事ができる。しかし、陽道のような恐ろしい勘の良さを持つ人間に対しては、それらが全て無駄になる。
「(偽物が見破られる事はある程度予期してた。その後の対処策も既にある…けど、用意した策がこの男に通じるのかどうか…)」
桜田に戦う気は無い。戦ったところで勝てないのは目に見えているからだ。つまり、桜田は交渉や取引でこの場を対処するつもりなのだ。
「(用意は万全…のはずなのに…)」
桜田は震えている。恐怖しているのだ。陽道という男に。
「(この人と対峙すると…何故だか、全部失敗に終わる気がする…)」
桜田の目に映っている陽道を一言で表すのなら、それは『巨大』。物理的な意味では決して無い。しかし、この時の桜田は自身を『獅子を前にした子兎』に錯覚する程、陽道が『巨大』に見えていたのだ。
「(勝てない…)」
そんなイメージが桜田の中で大きくなる。
「(けど、やるしかない。僕がやるしかないんだ。でないと、障坂くんが死ぬ…!)」
桜田は震えを誤魔化す為、拳を強く握った。
「(僕がやるしかないんだ…!)」
その時、桜田の背後から声が聞こえてきた。
「もういいよ、桜田。」
桜田はその声を聞き、驚愕する。
「ど、どうして…⁈」
桜田は振り返った。そこに居たのは紛れもない、本物のガイ。背後には人間化したヤブ助,氷室,秀頼,土狛江が居た。
「来てやったぞ。陽道。」
ガイは布団の上で目を覚ました。
「ガイッ!!!」
ガイの周りには猫の姿のヤブ助,秀頼,桜田,氷室,堺,友田が居た。皆、深刻な表情をしている。
ガイは体勢を起こした。
「ヤブ助……俺、何して……」
次の瞬間、友田がガイの胸ぐらを掴んだ。
「アンタのせいで京香は…!京香はッ…!」
それを堺と氷室が取り押さえた。
「お、落ち着いてよ!友田さん!」
ガイは友田の表情から、深刻な事態が発生している事を察した。そして、それが有野に関係すると。
「ヤブ助、何が起こった…⁈」
「…」
ヤブ助は言いづらそうに話し始めた。
「有野が攫われた…」
「なん…だって……⁈」
その時、ガイは咄嗟に部屋に置かれていたデジタル時計を手にした。時計に表示されている日付と時刻を見ると、3月18日の21:50。つまり、あの約束の日から約三日経っていたのだ。
その様子を見た桜田がガイに説明を始めた。
「三日前、キミは近くの公園で倒れていた。猪頭さん曰く、脳へのダメージが大きかったらしくてね。この三日、キミは眠りっぱなしだったんだ。おそらく、白鳥組の連中に襲われたんだろう。」
それを聞いた瞬間、ガイの中に猛烈な怒りが込み上げてきた。
「アイツらッ……」
ガイは怒りのあまり、歯を強く食い縛った。歯茎から血が出る程に。しかし、ガイはすぐさま自分を落ち着かせ、冷静になった。
「(ダメだ怒るな…今は状況整理だ。)」
ガイは襲われた時のことを思い出した。
「(一瞬だった…背後から頸椎を一撃。気配も足音も無い。『Zoo』の仕業で間違いない…はずなんだが…)」
すると、ガイは周りにいる人物の顔をチラ見し始めた。
「(何故だ…俺は多分…そいつを知っている…)」
桜田は説明を続けた。
「それで一昨日の朝、メールが届いたんだ。」
桜田はそのメールをガイに見せた。そこにはこう書かれていた。
〈3月20日午後8時。館林の地下研究所。要障坂ガイ。〉
コレを見たガイにとある疑問が浮かんだ。
「要障坂…俺が必要って事か…?じゃあ俺でなく、何で有野を連れ去ったんだ…?」
「そこが僕も引っかかるんだ。」
どうやら、桜田も同じ疑問を持っていたようだ。
「障坂くんが必要なら、初めから障坂くんを誘拐すれば良かった話だろ?何故こんな二度手間のような真似をするのか…」
すると、桜田の疑問にヤブ助が考えを話し始めた。
「有野の方が、監禁するには楽だと思ったんじゃないのか?」
「いや、そもそも奴らは障坂くんを殺したがってるんだ。三日前のあの時点で障坂くんが殺されてなきゃおかしいんだよ。」
その時、友田が声を上げた。
「そんな事どうでもいいでしょ!早くしないと京香がまた酷い目に…!」
友田は泣き始めた。秀頼がその場を取りまとめるかのように話し始めた。
「彼女の言う通りだ。相手は白鳥組だとわかっている以上、今は打開策を考えた方がいい。奴らが素直に人質を返してくれるとは考えにくいからな。」
「そうですね。」
ヤブ助はそれに頷いた。また、氷室や堺、友田も秀頼の発言に頷く。しかし、ガイは腑に落ちないようだ。
「(確かに、一刻も早く有野を助け出す策を考えるのが打倒だ。けど、有野が攫われた理由がわからなければ、奴らの意図がわからない。有野を助け出せるかどうか、そこにかかっている気がする…)」
ガイは有野を助け出す為の有効的な策を、それらの疑問から考えていた。そして、あの日交わした約束を思い出す。
「(待ってろ有野。必ず、助け出してやるからな。)」
そして、腑に落ちない者はもう一人。そう。桜田だ。
「(障坂くんを殺さなかった理由も気になる。人質が無いと出来ない事を、奴らはしようとしている…いや、もしかしたら、奴らではなく…)」
桜田は既にこの時、疑問の答えにほぼ辿り着いていた。しかし、まだ確証が無い。
「(…だとしたら辻褄が合う。いや、これしかない。もしそうだとしたら、障坂くんが犠牲に…)」
桜田はこの先の展開をほぼ全て読むことができた。そして、それが恐ろしい結末になる事も。
「(どうする…この場で言うべきか…いや、ダメだ。今言ってしまえば、内乱が起こりかねない。)」
桜田は目を閉じた。
「(僕がやるしかない。障坂くん、キミを死なせたりしないよ。)」
この後、皆は大広間に集まり、有野奪還の作戦会議を開いた。しかし、それらが全て無意味な事を、桜田とある人物だけは知っていた。
【3月19日、早朝、桜田の部屋にて…】
桜田,土狛江,氷室の三人が部屋に集まっていた。
「…作戦は以上だ。くれぐれも、他の人に言っちゃダメだからね。」
「念の為、か。」
「そう。念の為。」
土狛江は大きく頷いた。
「任せてよ!この俺、ギャンブル王の土狛江!ブラフには自信あるから!」
「頼りにしてるよ。」
一方、氷室は眉を顰めていた。桜田はそんな氷室に尋ねた。
「やっぱり、難しそうかい?」
「い、いえ…そうではないんですけど…」
すると、氷室は頭を抱えこう言った。
「なんか、裏切られた気分です。俺、あの人の事、信じてたのに…」
そんな氷室に桜田は言った。
「まぁ、あの人はあの人なりに責任があるから。」
「みんなが助かれば、ガイさんはどうでもいいんですか…?」
「だから、僕たちがやるんじゃないか。そうだろ?」
「…」
どうやら氷室は納得がいかないようだ。
「それはそれで、事が終わってから問いただすとしよう。」
【3月20日、1:55、とある病院にて…】
ガイとヤブ助はとある病室に居た。そして、病室のベッドの上には誰かが寝ている。
「ガイ…」
人間の姿のヤブ助の目には、涙が溜まっている。ガイはそんなヤブ助に笑いかけ、こう言った。
「大丈夫。すぐ逢える。」
そして、ガイはベッドの上で寝ている何者かに、何かを突き刺した。
数秒後、ガイはその何かを抜いた。
「コレで良いんだ…俺は、コレで…」
ガイは振り返った。
「だから泣くなよ、ヤブ助。」
ガイは穏やかな笑顔を崩す事はない。しかし、それが逆に、ヤブ助を苦しめた。
「すまないッ…!全部…俺のッ…!」
「ヤブ助のせいじゃない。全部、俺のせいだ。俺が障坂だから。もっと早く、こうすべきだったんだ。そうすれば村上も十谷も、山口も広瀬もみんな、死なずに済んだ。」
そして、ガイはとある事を考え、それを口に出した。
「そうか…わかったよ。親父が何故、俺を『ガイ』と名付けたのか。俺は…この世界の『害』なんだ…そして、みんなの『害』だったんだ…」
それを聞いた時、ヤブ助は叫んだ。
「違うッ!違うぞガイッ!お前は『害』なんかじゃない!だってお前は俺の…」
ヤブ助が何か言いかけたその時、ガイはこう言った。
「ごめんな、ヤブ助。俺の地獄に付き合わせて…」
「ッ……」
ヤブ助は病室を出た。その時の表情は言葉では言い表せない程、悲しみに満ちていた。
ガイは窓から夜空を眺めた。月が見えない、星一つ無い、雲がかった空を。
「何にも見えないな…今日は…」
【3月20日、19:20、伊従村、館林地下研究所にて…】
一面真っ白な部屋。広さは大体バスケットボールコート二つ分。そこには黒服の男たち、白鳥組の連中が三十人ほど立っていた。勿論、その中には幹部である石川、一善や前田、芝見川や時和も居た。そして、そんな彼らの中心には椅子に座る陽道の姿も。
「よぉ。早いじゃねぇか。」
そこへ、ガイと桜田がやってきた。そんな二人を見るなり、芝見川と時和が呟いた。
「ほほぅ。これはこれは。」
「二人ですか。」
白鳥組はガイ達との全面戦争を予期していた。その為、ガイと桜田の二人だけでココへやってきた事への驚きがあった。一方、陽道は二人に質問する。
「約束は午後8時のはずだ。何故40分も前に来た?」
「別にいいだろ。早く有野を返せ。」
ガイが返答した。その後すぐ、陽道は右手を上げた。それを見た白鳥組の連中は銃を取り出し、それを桜田のみに向けた。
「な、何のつもりですか…⁈」
桜田も、自分のみに殺気が向けられている事に気づいているようだ。そんな桜田に陽道はこう言う。
「とぼけんじゃねぇ、桜田。俺を誰だと思ってやがる。」
その時、陽道は一善に命令した。
「一善。」
「はい。」
次の瞬間、ガイの体がバラバラに斬り裂かれた。その間、一善はガイに近づく事はおろか、ノーモーションのままだ。
「いい度胸だなぁ、桜田。」
そう。コレはガイの偽物。氷室のタレントで作ったガイを模した肉人形に、土狛江の土を操るタレントでそれを操っていたのだ。そして、陽道はそれを見抜いた。
「何故、偽物わかったんですか…?」
「勘だ。」
「勘…ですか…」
「あぁ。俺はお前と違って考えるのは好きじゃねぇからよぉ。」
それを聞き、桜田はこう思った。
「(やり難い…)」
桜田の長所は頭の良さ。ガイとは違い作戦型の戦術だ。相手の裏の裏、そのまた裏をかく事ができる。しかし、陽道のような恐ろしい勘の良さを持つ人間に対しては、それらが全て無駄になる。
「(偽物が見破られる事はある程度予期してた。その後の対処策も既にある…けど、用意した策がこの男に通じるのかどうか…)」
桜田に戦う気は無い。戦ったところで勝てないのは目に見えているからだ。つまり、桜田は交渉や取引でこの場を対処するつもりなのだ。
「(用意は万全…のはずなのに…)」
桜田は震えている。恐怖しているのだ。陽道という男に。
「(この人と対峙すると…何故だか、全部失敗に終わる気がする…)」
桜田の目に映っている陽道を一言で表すのなら、それは『巨大』。物理的な意味では決して無い。しかし、この時の桜田は自身を『獅子を前にした子兎』に錯覚する程、陽道が『巨大』に見えていたのだ。
「(勝てない…)」
そんなイメージが桜田の中で大きくなる。
「(けど、やるしかない。僕がやるしかないんだ。でないと、障坂くんが死ぬ…!)」
桜田は震えを誤魔化す為、拳を強く握った。
「(僕がやるしかないんだ…!)」
その時、桜田の背後から声が聞こえてきた。
「もういいよ、桜田。」
桜田はその声を聞き、驚愕する。
「ど、どうして…⁈」
桜田は振り返った。そこに居たのは紛れもない、本物のガイ。背後には人間化したヤブ助,氷室,秀頼,土狛江が居た。
「来てやったぞ。陽道。」
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