169 / 211
第2章『ガイ-過去編-』
第105障『地獄への旅立ち』
しおりを挟む
【3月31日、22:00、猪頭邸にて…】
今日、桜田たちはゴルデンを出港する。しかし、何やら揉めているようだ。
「なんでだよ!なんで俺は着いてっちゃいけねぇんだ!」
山尾は声を荒げる。ヤブ助と桜田に同行を拒否されたからだ。
「俺がガキだからか⁈だったらなんで氷室はOKなんだよ!意味わかんねーよ!」
そんな山尾をなだめようと桜田が説得する。
「キミにはココでやってもらう役目が…」
しかし、山尾は聞く耳を持たない。
「うっるせぇ!俺が足手纏いなんだろ!だったらハッキリそう言えばいいじゃねーか!あ⁈」
その時、人間化したヤブ助が拳銃を取り出し、それを山尾に見せた。
「な、なんだよ…⁈」
そして、ヤブ助はその拳銃を堺に手渡す。
「えっ…?」
動揺する堺。ヤブ助は話を始めた。
「ガイの遺言だ。」
ガイの遺言。その言葉を聞いた為か、山尾は少し冷静さを取り戻す。
「遺言…?」
「『堺。山尾。みんなを守ってくれ。』だ。この意味がわかるだろ。」
『みんな』とは、園の子ども達や友田、そして、地下研究所に有野の事だ。
「白鳥組が手を引いたとは言え、油断はできない。もし奴らがまだお前らに牙を剥くようなら、それを迎え撃つ必要がある。それを対処するのがお前らの役目だ。」
ヤブ助は山尾に話しかける。
「山尾。お前のタレントの機動力なら、万一の時でも『みんな』を避難させられる。だから、お前には残ってもらわなければ困るんだ。」
「……」
山尾は少し納得した表情を見せた。次に、ヤブ助は堺に話しかける。
「堺。お前は山尾のサポートをしろ。」
「で、でも僕…ハンディーキャッパーじゃないし…」
「ガイは言っていた。お前の銃の腕前なら白鳥組の下っ端共など敵じゃないと。」
「障坂くんが…」
「あぁ。だから自信を持て。」
すると、ヤブ助は再び山尾に話しかけた。
「堺と二人で上手くやっていけ。喧嘩するなよ。お前は喧嘩っ早いからな。」
「うるせえな!しねーよ!」
山尾は少し眉を顰める。そして、後ろを振り返った。自身の背後には園の子ども達の姿が。
「(守ってやれ、か…)」
すると、山尾は自身の頬を叩き、こう言った。
「っしゃ!そういう事なら任せとけ!もう誰も死なせねーよ!な!堺!」
「えぇ⁈あ…うん…頑張るよ…」
その時、自信の無い堺に園の子ども達の、友那と将利が話しかけてきた。
「安心しろメガネ。アタシらが居る。何も心配するな。」
「敵なんざ俺一人で蜂の巣にしてやるぜ。」
「あ、ありがとう…」
堺は肩を落とす。
「(一回り近くも年下の子たちに励まされた…)」
堺は自身の不甲斐なさを嘆いた。その時、桜田は小声で氷室に確認した。
「氷室くん。彼らにはガイ君が生きてる事、言ってないよね?」
「はい。勿論です。」
「ホントに?」
「ホントですよ。疑ってるんですか?」
「んまぁ、キミ、前科あるから。」
そして、ヤブ助は堺たちに別れの挨拶を始めた。
「さて。そろそろ行くか。」
「気をつけてね、みんな。」
「死ぬんじゃねぇーぞ!」
その後、ヤブ助たちは陣野が待つ海岸へと向かった。
【4月1日、深夜0時、海岸にて…】
海岸には陣野の姿。そして、彼の背後の海には黒く大きな物が浮かんでいる。そこへヤブ助たちがやってきた。
「待ってたぞ!無謀な若者共!」
陣野は腕を組んで仁王立ちしている。
「「「わぁ………」」」
皆、海に浮かぶそれを見て驚嘆し、口を開けていた。当然だ。何せ彼らは船で出港するものと思っていたからだ。
「どうだ!凄いだろ!俺ん家の潜水艦は!」
そう。陣野はなんと潜水艦を用意してきたのだ。
「これなら例え追跡されても侵入は不可能!待ち伏せも位置特定もクリア!しかも対魚雷システムも整備!なんならこっちから攻められるぐらいだ!それにゴルデン海域特有の霧なんかも無視できるしな。」
桜田は潜水艦に触れた。
「すごいじゃないですか。操縦者は誰ですか?」
陣野が名乗った。
「俺だ。」
「え…」
桜田は急に不安になった。
「大丈夫ですか?」
「操縦はな。まぁほとんど自動操縦だし。あ、ちなみに念の為の整備士はもう中にいるぞ。八人。」
「まぁ、それなら…」
その時、ヤブ助は質問した。
「その整備士共、信用できる人物なのか?」
「あぁ。俺がガキの頃からの友人だ。白鳥組とのコンタクトが無いかどうかも調査済みだ。」
「なるほど。」
すると、陣野は潜水艦に乗り込もうとした。
「ほら。全員揃ったなら早く行くぞ。あまり長居してたらバレるだろ。」
それに対して、ヤブ助は言った。
「待て。もう一人来る。」
それを聞いた陣野は眉を顰める。
「はぁ?遅刻かぁ?時間にルーズな奴は嫌いだぞ?」
「大目に見てやってくれ。病み上がりなんだ。」
「そうかい。んで、誰が来るんだよ?」
「出港したら話す。事情もな。」
「?」
【同時刻、伊従村、館林の地下研究所にて…】
武夫が化け物と化した有野と話をしている。
「ごめん。約束、守れそうにない。コレが終わったら、俺…」
ガイは有野を見る。有野は絶えずうめき声を上げるだけだ。
「…もう時間だ。」
ガイは有野に背を向けた。
「バイバイ…」
【4月1日、深夜1時、海岸にて…】
武夫がヤブ助達の元へとやってきた。しかし、ヤブ助と氷室、桜田と土狛江以外はそれが誰だかわかっていない。
「遅かったな、ガイ。」
「悪い。寝坊した。」
ガイは首に巻いたマフラーを少しずらし、口を出した。
「さて、行こうか。」
この日、ガイ達はゴルデンを旅立った。
今日、桜田たちはゴルデンを出港する。しかし、何やら揉めているようだ。
「なんでだよ!なんで俺は着いてっちゃいけねぇんだ!」
山尾は声を荒げる。ヤブ助と桜田に同行を拒否されたからだ。
「俺がガキだからか⁈だったらなんで氷室はOKなんだよ!意味わかんねーよ!」
そんな山尾をなだめようと桜田が説得する。
「キミにはココでやってもらう役目が…」
しかし、山尾は聞く耳を持たない。
「うっるせぇ!俺が足手纏いなんだろ!だったらハッキリそう言えばいいじゃねーか!あ⁈」
その時、人間化したヤブ助が拳銃を取り出し、それを山尾に見せた。
「な、なんだよ…⁈」
そして、ヤブ助はその拳銃を堺に手渡す。
「えっ…?」
動揺する堺。ヤブ助は話を始めた。
「ガイの遺言だ。」
ガイの遺言。その言葉を聞いた為か、山尾は少し冷静さを取り戻す。
「遺言…?」
「『堺。山尾。みんなを守ってくれ。』だ。この意味がわかるだろ。」
『みんな』とは、園の子ども達や友田、そして、地下研究所に有野の事だ。
「白鳥組が手を引いたとは言え、油断はできない。もし奴らがまだお前らに牙を剥くようなら、それを迎え撃つ必要がある。それを対処するのがお前らの役目だ。」
ヤブ助は山尾に話しかける。
「山尾。お前のタレントの機動力なら、万一の時でも『みんな』を避難させられる。だから、お前には残ってもらわなければ困るんだ。」
「……」
山尾は少し納得した表情を見せた。次に、ヤブ助は堺に話しかける。
「堺。お前は山尾のサポートをしろ。」
「で、でも僕…ハンディーキャッパーじゃないし…」
「ガイは言っていた。お前の銃の腕前なら白鳥組の下っ端共など敵じゃないと。」
「障坂くんが…」
「あぁ。だから自信を持て。」
すると、ヤブ助は再び山尾に話しかけた。
「堺と二人で上手くやっていけ。喧嘩するなよ。お前は喧嘩っ早いからな。」
「うるせえな!しねーよ!」
山尾は少し眉を顰める。そして、後ろを振り返った。自身の背後には園の子ども達の姿が。
「(守ってやれ、か…)」
すると、山尾は自身の頬を叩き、こう言った。
「っしゃ!そういう事なら任せとけ!もう誰も死なせねーよ!な!堺!」
「えぇ⁈あ…うん…頑張るよ…」
その時、自信の無い堺に園の子ども達の、友那と将利が話しかけてきた。
「安心しろメガネ。アタシらが居る。何も心配するな。」
「敵なんざ俺一人で蜂の巣にしてやるぜ。」
「あ、ありがとう…」
堺は肩を落とす。
「(一回り近くも年下の子たちに励まされた…)」
堺は自身の不甲斐なさを嘆いた。その時、桜田は小声で氷室に確認した。
「氷室くん。彼らにはガイ君が生きてる事、言ってないよね?」
「はい。勿論です。」
「ホントに?」
「ホントですよ。疑ってるんですか?」
「んまぁ、キミ、前科あるから。」
そして、ヤブ助は堺たちに別れの挨拶を始めた。
「さて。そろそろ行くか。」
「気をつけてね、みんな。」
「死ぬんじゃねぇーぞ!」
その後、ヤブ助たちは陣野が待つ海岸へと向かった。
【4月1日、深夜0時、海岸にて…】
海岸には陣野の姿。そして、彼の背後の海には黒く大きな物が浮かんでいる。そこへヤブ助たちがやってきた。
「待ってたぞ!無謀な若者共!」
陣野は腕を組んで仁王立ちしている。
「「「わぁ………」」」
皆、海に浮かぶそれを見て驚嘆し、口を開けていた。当然だ。何せ彼らは船で出港するものと思っていたからだ。
「どうだ!凄いだろ!俺ん家の潜水艦は!」
そう。陣野はなんと潜水艦を用意してきたのだ。
「これなら例え追跡されても侵入は不可能!待ち伏せも位置特定もクリア!しかも対魚雷システムも整備!なんならこっちから攻められるぐらいだ!それにゴルデン海域特有の霧なんかも無視できるしな。」
桜田は潜水艦に触れた。
「すごいじゃないですか。操縦者は誰ですか?」
陣野が名乗った。
「俺だ。」
「え…」
桜田は急に不安になった。
「大丈夫ですか?」
「操縦はな。まぁほとんど自動操縦だし。あ、ちなみに念の為の整備士はもう中にいるぞ。八人。」
「まぁ、それなら…」
その時、ヤブ助は質問した。
「その整備士共、信用できる人物なのか?」
「あぁ。俺がガキの頃からの友人だ。白鳥組とのコンタクトが無いかどうかも調査済みだ。」
「なるほど。」
すると、陣野は潜水艦に乗り込もうとした。
「ほら。全員揃ったなら早く行くぞ。あまり長居してたらバレるだろ。」
それに対して、ヤブ助は言った。
「待て。もう一人来る。」
それを聞いた陣野は眉を顰める。
「はぁ?遅刻かぁ?時間にルーズな奴は嫌いだぞ?」
「大目に見てやってくれ。病み上がりなんだ。」
「そうかい。んで、誰が来るんだよ?」
「出港したら話す。事情もな。」
「?」
【同時刻、伊従村、館林の地下研究所にて…】
武夫が化け物と化した有野と話をしている。
「ごめん。約束、守れそうにない。コレが終わったら、俺…」
ガイは有野を見る。有野は絶えずうめき声を上げるだけだ。
「…もう時間だ。」
ガイは有野に背を向けた。
「バイバイ…」
【4月1日、深夜1時、海岸にて…】
武夫がヤブ助達の元へとやってきた。しかし、ヤブ助と氷室、桜田と土狛江以外はそれが誰だかわかっていない。
「遅かったな、ガイ。」
「悪い。寝坊した。」
ガイは首に巻いたマフラーを少しずらし、口を出した。
「さて、行こうか。」
この日、ガイ達はゴルデンを旅立った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる