障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第125障『整備士おぢさんは諦めない』

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【4月1日、20:00、フリージア王国、城下町門前にて…】

前田との戦闘を終えたヤブ助と氷室は気絶した裏日戸を背負ってフリージア城下町門前に戻ってきた。

「おおお遅いじゃないかチミ達!」

そこには整備士唯一の生き残りである柴垣が居た。

「おぢさんはねぇ、チミ達と違って戦う術が無いんだよ!あまり長い間一人にしないで!怖いから!」

柴垣はまるで産まれたての子鹿のように膝を震わす。寒さと恐怖で膝がパニックなのだ。

「そんな事より先を急ぐぞ。」

フリージア王国にガイは居ない。ヤブ助はさらに北、魔王が封印されている神殿へ向かう事を命令した。

「そんな事…」

柴垣はヤブ助を心底酷い奴と認定した。

「他の人は?桜田さん達は置いていくんですか?」
「…奴らは死んだ。」

氷室の問いに対し、ヤブ助は淡々と話し始めた。

「港で奴らの死体を発見した。白鳥組幹部の一人、一善の死骸と共にな。」

その話を聞いた柴垣と氷室は驚嘆した。

「そんな…」
「あの桜田さんがられるなんて…」
「それだけ敵は侮れんという事だ。」

ヤブ助は皆に念を押す。

「気を緩めるな。情けなどかけるな。殺せる時に殺せ。」

ヤブ助の言葉に改めて気を引き締める氷室達。

「さて。じゃあ行くとするか。」

それを確認し、ヤブ助は歩みを進めようとした。

「行かない…」

その時、氷室に背負われる裏日戸が目を覚まし、そう呟いた。

「私は行かない。」

裏日戸は氷室の背中から降り、顔をうつ伏せてそう言った。

「私はまだ…死にたくない…‼︎」

前田との戦いで精神的に滅入ってしまった裏日戸。死というものの恐怖を間近で感じてしまったのだ。ヤブ助と氷室は彼女の心境を察した。

「わかった。」

ヤブ助は裏日戸の意思を尊重した。

「だが、もうゴルデンには帰れない。お前はコレからどうする?」
「…」

裏日戸は何も答えない。一刻も早くガイを追いかけねばならない状況、ヤブ助は裏日戸の返答を急かそうとしたその時、整備士の柴垣が口を開いた。

「ちょっといいかな…?」

柴垣の唐突な発言に、皆は彼の方を向いた。

「裏日戸くん…だっけ?チミ、おぢさんとこの国に残らないかい?」
「え…?」

首を傾げる裏日戸に、柴垣は話を続けた。

「帰りたいでしょ?ゴルデンに。おぢさんもそうだし。フリージアで部品やら調達してさ、船作って一緒にゴルデン帰ろうよ。ほら、おぢさん一応整備士だからさ。」
「できるのか…?」
「わからない。何年かかるかも分からない。けど、おぢさんは諦めないよ。早く娘に逢いたいから。」

その後、裏日戸は柴垣の提案を呑み、柴垣と共にフリージア城下町に残った。

裏日戸りひと陽香ようか。19歳。離脱。
柴垣しばがきトキヤ。44歳。離脱。

【4月2日、朝9時、フリージア王国よりさらに北、コールの村にて…】

ココはフリージア王国と魔王が封印されている神殿の中間地点にある最北端の村。

「ギィヤァイダぃぃァァアィィィァァィヤァイダぃぃァァアィィィァぁぃぁィィぃぁぃぁィィィィィィッッ!!!!!!!!」

民家からは絶えず断末魔が響いていた。

【コールの村、とある民家にて…】

白鳥組幹部の二人、時和と芝見川が民家内に居た。そんな彼らの目の前には、全裸にされ、体を縛られたコールの村人達。

「嫌ッ‼︎やめてッ‼︎死にたくないッ‼︎死にたくないぃぃッ!!!」

芝見川は男性の腕や足を斧で切断している。そして、小さくなった人間の部品を暖炉の中へと放り込む。どうやら、人間を薪がわりにしているようだ。

「ほっほ~い!外人の締め付けもなかなかよのぉ~!」

一方、女性の村人は時和に強姦されていた。

「ほぉれ!泣け!もっと泣くんじゃ!もっとワシを滾らせろ!」

時和は強姦している女性の顔面を殴り、腕の骨を折る。そして、女性が痛がる顔を見ては、満面の笑みを浮かべていた。

「嫌……嫌ッ……‼︎」

他の白鳥組の男達も、二人と同様の事をしていた。そんな部屋の隅には、勇者を目指して白鳥組に入ったもょもとの姿が。

「ッ……」

もょもとは床にうずくまり、耳を塞いで目を閉じていた。

「いやァァァァァァァァァァァァアぁぃァアァアァァァァァァァァッ!!!!!!!!」

しかし、耳を塞いでも尚、村人達の悲痛な叫びが彼の鼓膜を刺激する。

「ほうれ新人よ。そんな所に塞ぎ込んでないでコッチに来んか。気持ちいいぞぉ。」
「……」

しかし、もょもとは返事をしない。

「(もう…やめてくれッ…‼︎)」

もょもとは涙を流し、歯を食いしばりながら耳を塞ぎ続ける。

「(逃げたい…一刻も早くこの場から去りたい…!でも…そんな事したら…今度は…俺が……)」

もょもとは恐る恐る目を開けた。目の前には地獄が広がっている。するとその時、もょもとは自分と同い年くらいの一人の少女と目が合った。

「助け…て…………」

その少女は手足を切り落とされ、白鳥組の男に強姦されている。

「うッ……‼︎」

もょもとは再び目を閉じた。

「(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……)」

もょもとは心の中で謝り続けた。

「(誰か…助けてくれよぉ…‼︎)」

次の瞬間、民家の壁に大きな穴が空いた。外から何者かが破壊したのだ。

「なッ…⁈」

もょもとは驚嘆した。他の白鳥組の男達も同じだ。しかし、芝見川と時和だけは全く動じていない。それどころか、その何者かが来る事を知っていたような雰囲気だ。

「ほほう。やっとか。」
「えぇ、そのようですね。お師匠。」

壁を破壊した者は民家へと入った。と同時に、白鳥組の男達はその侵入者に向かって銃口を向ける。
しかし、侵入者は男達が引き金を引くよりも早く、右手に持たれた骨刀で、一瞬にして彼らの首を切断した。

「相変わらず…胸糞が悪くなる…」

侵入者ガイは家の中を見渡し、時和と芝見川を睨みつけた。

「お前らだけは…絶対に…俺が殺すッ…‼︎」

そんなガイの姿を見て、もょもとはこう呟いた。

「勇者……」

人々を助け、世界を救う者。明らかに自分よりも実力のある者達にすら臆せず立ち向かう。その姿は、もょもとの想う勇者像そのものだった。
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