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第13話 「過去との決別」
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無理やり決められ、ハルトがギルドから出ていく。
「アリシア、俺は絶対に決闘に勝つよ。だから、安心して待っててくれ」
気持ちが入り過ぎて思わずアリシアの手を握ってしまう。後からそれに気づいて慌てて手を離す。
そんな俺の反応を楽しむように、アリシアは笑顔を浮かべた。
「ありがとう。カイリ、かっこいいよ。私、そんなカイリが大好き。パーティーにいた時から、ずっと」
アリシアが頬を赤らめて話す。俺がそんなことを言われる日が来るなんて想像もしてなかったから、にやけが止まらない。
「……むぅ」
くい、と俺の腕が引き寄せられる。見ると、ナナが両腕で俺の手を抱えていた。頬を膨らませてアリシアを見つめている。
「カイリ様は、わたしのです。期間はアリシアさんの方が長くても、わたしも同じくらいカイリ様のこと大好きですから」
「え、イオリちゃんのものでしょ。だってカイリはイオリちゃんのアイドルだもん」
いやいや、なんか戦いが始まってるんだけど!? 俺は一体どっちにつけば……って、そもそもそんな場合じゃない!
そして、イオリって自分のこと「イオリちゃん」って呼んでんのか。自分大好きすぎだろ。
「三人とも、気持ちは嬉しいんだけど……それより決闘の方に、ね」
ナナの抱きしめる力が強くなってる。血が止まりそうで怖いんだけど。
俺の言葉で休戦? したのか、二人とも俺についてギルドに入ってくれる。ナナも一緒だけど、まぁなにか言われたらその時対処しよう。
俺がギルドから出て、決闘の会場となる広場に行く。
「やっと来たか。無能のクセに人を待たせる能力だけは一人前だね。すごい才能だ」
俺の顔を見た途端にこの悪口だ。そっちの悪口の方がすごい才能だろ、もはや。
「剣も持ってないのか? 丸腰でオレに勝てるわけないだろ」
ハルトの怒りはもはや一周回って呆れに変わっている。確かに、決闘の場にいるのに武器を持ってないのは自殺行為だ。いや、殺されはしないけど。……しないよな?
「そんなに無様な負け姿を見せたいなら、望み通りにしてやるよ」
ハルトは腰に差した片手剣を抜き、俺に向ける。煌びやかな宝石を付けた剣が太陽の光を反射して輝いている。
広場に集まった観衆が「おお……」と感嘆の声を上げる。ハルトの持っている剣はダンジョンから手に入ったレアアイテムって聞いたことがあるし、その反応も当然だろう。
「あの剣、相当な業物だぜ……」
「欲しいな……あれがあればどんな強い魔物も倒せるだろうし……」
周囲の冒険者がなにか喋っている。ハルトの剣、俺が思っているよりすごいものだったんだな。
決闘が始まるというのに呑気すぎることを考えてる自覚はある。ちゃんと切り替えないと、と思ったところで立ち合いの衛兵が俺とハルトの顔を交互に見る。
「では、決闘――始めっ!」
衛兵の掛け声と共にハルトが剣を構えて突っ込んでくる。
「うおおおおおおお!」
パーティーにいた時は戦闘においてずっとハルトを頼ってきたから、それが敵になっていると不安になる。けど、今の俺は力を手に入れている。これまでの俺とは違うんだ。
「――限定解除」
俺の言葉と意思に応えて大剣が出現する。
「なっ、なんだあれは!?」
広場にいたっ全員が驚いていた。さっきまで俺の手にはなにもなかったのに、急に身の丈くらいの得物が出てきたのだから、それも当然か。
俺は大剣を構え、ハルトの攻撃を防御しようとする。得物同士がぶつかり、火花を散らす――こともなく。
「……ええええええええええ!」
観客が目を剥いて驚いている。俺も驚いてる。だって……
「お、折れた……?」
ハルトの剣が根元から折れていた。跡形もないほど、完璧に。俺はハルトの剣を壊そうと思ってなかった。というか、攻撃する意思すらなかった。
「う、嘘だ……こんなの、なにかの間違いだぁ!」
ハルトが現実を受け止めきれず喚いている。しりもちをついて、剣だったものを見つめている。
「ハルトが負けただと……」
「相手は一体誰なんだ!?」
「あの人見たことあるぞ! ゴーレムを一発で倒した冒険者だ!」
「うおおおおお! 新人の希望だ!」
「冒険者の未来が明るいぞおおおおお!」
なんか期待が重くなってる!? このままここにいるととんでもないことになりそうだ。
「じゃ、じゃあ……俺はこれで……」
広場から離れようとしたところで、俺はやるべきことを思い出した。
「リーダー……いや、ハルト」
「……」
ハルトはなにか言いたげに俺を見上げている。けど、ここまで完璧に負かされては噛みつくこともできなくなったようだ。
「負けた方はなんでも言うことを聞くんだったよな。なら、俺が言うことは一つだけだ――二度と俺たちに近づくな」
「アリシア、俺は絶対に決闘に勝つよ。だから、安心して待っててくれ」
気持ちが入り過ぎて思わずアリシアの手を握ってしまう。後からそれに気づいて慌てて手を離す。
そんな俺の反応を楽しむように、アリシアは笑顔を浮かべた。
「ありがとう。カイリ、かっこいいよ。私、そんなカイリが大好き。パーティーにいた時から、ずっと」
アリシアが頬を赤らめて話す。俺がそんなことを言われる日が来るなんて想像もしてなかったから、にやけが止まらない。
「……むぅ」
くい、と俺の腕が引き寄せられる。見ると、ナナが両腕で俺の手を抱えていた。頬を膨らませてアリシアを見つめている。
「カイリ様は、わたしのです。期間はアリシアさんの方が長くても、わたしも同じくらいカイリ様のこと大好きですから」
「え、イオリちゃんのものでしょ。だってカイリはイオリちゃんのアイドルだもん」
いやいや、なんか戦いが始まってるんだけど!? 俺は一体どっちにつけば……って、そもそもそんな場合じゃない!
そして、イオリって自分のこと「イオリちゃん」って呼んでんのか。自分大好きすぎだろ。
「三人とも、気持ちは嬉しいんだけど……それより決闘の方に、ね」
ナナの抱きしめる力が強くなってる。血が止まりそうで怖いんだけど。
俺の言葉で休戦? したのか、二人とも俺についてギルドに入ってくれる。ナナも一緒だけど、まぁなにか言われたらその時対処しよう。
俺がギルドから出て、決闘の会場となる広場に行く。
「やっと来たか。無能のクセに人を待たせる能力だけは一人前だね。すごい才能だ」
俺の顔を見た途端にこの悪口だ。そっちの悪口の方がすごい才能だろ、もはや。
「剣も持ってないのか? 丸腰でオレに勝てるわけないだろ」
ハルトの怒りはもはや一周回って呆れに変わっている。確かに、決闘の場にいるのに武器を持ってないのは自殺行為だ。いや、殺されはしないけど。……しないよな?
「そんなに無様な負け姿を見せたいなら、望み通りにしてやるよ」
ハルトは腰に差した片手剣を抜き、俺に向ける。煌びやかな宝石を付けた剣が太陽の光を反射して輝いている。
広場に集まった観衆が「おお……」と感嘆の声を上げる。ハルトの持っている剣はダンジョンから手に入ったレアアイテムって聞いたことがあるし、その反応も当然だろう。
「あの剣、相当な業物だぜ……」
「欲しいな……あれがあればどんな強い魔物も倒せるだろうし……」
周囲の冒険者がなにか喋っている。ハルトの剣、俺が思っているよりすごいものだったんだな。
決闘が始まるというのに呑気すぎることを考えてる自覚はある。ちゃんと切り替えないと、と思ったところで立ち合いの衛兵が俺とハルトの顔を交互に見る。
「では、決闘――始めっ!」
衛兵の掛け声と共にハルトが剣を構えて突っ込んでくる。
「うおおおおおおお!」
パーティーにいた時は戦闘においてずっとハルトを頼ってきたから、それが敵になっていると不安になる。けど、今の俺は力を手に入れている。これまでの俺とは違うんだ。
「――限定解除」
俺の言葉と意思に応えて大剣が出現する。
「なっ、なんだあれは!?」
広場にいたっ全員が驚いていた。さっきまで俺の手にはなにもなかったのに、急に身の丈くらいの得物が出てきたのだから、それも当然か。
俺は大剣を構え、ハルトの攻撃を防御しようとする。得物同士がぶつかり、火花を散らす――こともなく。
「……ええええええええええ!」
観客が目を剥いて驚いている。俺も驚いてる。だって……
「お、折れた……?」
ハルトの剣が根元から折れていた。跡形もないほど、完璧に。俺はハルトの剣を壊そうと思ってなかった。というか、攻撃する意思すらなかった。
「う、嘘だ……こんなの、なにかの間違いだぁ!」
ハルトが現実を受け止めきれず喚いている。しりもちをついて、剣だったものを見つめている。
「ハルトが負けただと……」
「相手は一体誰なんだ!?」
「あの人見たことあるぞ! ゴーレムを一発で倒した冒険者だ!」
「うおおおおお! 新人の希望だ!」
「冒険者の未来が明るいぞおおおおお!」
なんか期待が重くなってる!? このままここにいるととんでもないことになりそうだ。
「じゃ、じゃあ……俺はこれで……」
広場から離れようとしたところで、俺はやるべきことを思い出した。
「リーダー……いや、ハルト」
「……」
ハルトはなにか言いたげに俺を見上げている。けど、ここまで完璧に負かされては噛みつくこともできなくなったようだ。
「負けた方はなんでも言うことを聞くんだったよな。なら、俺が言うことは一つだけだ――二度と俺たちに近づくな」
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