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第25話 「帰還」
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「どうして、なんだ……私たちは、お前を……カイリを無碍に扱ったというのに……」
最初に声を出したのはシャルだった。騎士と言うだけあって度胸もあるし、ハルトを支える副リーダーみたいなポジションだった。
だから、いち早く動揺から立ち直ってくれたんだろう。
「俺にも分かんねえよ。本当なら、恨んだり見捨てたりするのが普通なのかもな。だけど……そうしたかったんだ。もしかしたら、なんの能力もなかったころの俺と、なにもできなくて倒れてるお前たちを重ねてたのかもしれない」
なにが真実なのか、俺にも分からない。俺は自分を追放したパーティーの子を助けた、という結果があるだけだ。
「まあ、そんな感じだから、あんまり気にしないでくれ」
「……ありがとう。本当に、ありがとう」
ダンジョンから出て街へ帰る。
ダンジョンのクリア報告もしないと行けないからな。
「それじゃあ、ギルドに直接向かうの? イオリちゃん、そろそろ寝転びたーい!」
「ギルドに行く前に寄らないと行けないところがあるんだ。これだけはやっとかねえと」
「……ふぇ?」
今の俺たちがやるべき一番大切なこと。それは――
◇
ガシャンガシャン、と鉄が揺れ動く音が響く。
「ねえ、カイリ」
近くからはアリシアの声。本性を知る前と、全く変わらない、優しい大人びた声だ。
「私――どうして牢屋の中にいるの?」
「逆になんで入れられないと思ったの?」
俺たちが真っ先にやるべきこと……それは、アリシアの捕縛だった。
アリシアに追放は意味がない。追放された俺を追いかけてくるんだから、突き放しても自分から関わってくる。
それに、アリシアから目を離すと絶対碌でもないことしかしない。
かと言って殺すこともできない……いや、違うな。
たとえどんなに狂気的な人物であっても、アリシアは追放されてなにもなかった俺を支えてくれた。
――そんな人を、殺したくはなかった。
「なにをやっても駄目なら、捕まえとくしかない。即席だから強いスキルで壊せる程度の強度だけど、アリシアに牢を壊せる力がないのは俺が一番よく分かってる」
「これ完全に嫌われちゃったなぁ……はぁ、失敗だ」
「あの性格で好かれることはないと思うぞ」
自分を殺そうとした奴と好き好んで仲良くするのって聖人くらいだろ。
「これで一番の問題はとりあえず解消したし、ギルドに報告しに行くよ」
「そうなんだ。行ってらっしゃい、カイリ。――愛してるよ」
その言葉には、嘘偽りはない。アリシアは俺を本気で好きなのだ。
だけどアリシアの好意を受け入れるだけの心の余裕は、今の俺にはなかった。
◇
「カイリさん、おかえりなさい! あの……もしかして、ウロボロス討伐できちゃったんですか」
「できたよ。ダンジョンに潜ってた人もほとんど助けられたし」
「すっごーい! もう上位の冒険者に引けを取らない功績ですよ!」
「そ、そうなのか……?」
上位の冒険者なんて、俺にとっては無関係だとずっと思ってたから、そう言われても実感が湧かない。
受付嬢がギルド内で思いっきり大声を出したからか、俺がウロボロスを討伐したことは瞬く間に広まった。
「聞いたかよ今の……」
「やべえよやべえよ」
「俺、実はカイリさんのファンなんだよね」
「カッコよすぎる……」
前に決闘した時もだったけど、注目を集めると気まずくなっちゃうんだよな……
「これがウロボロスのコアだ。鑑定しておいてくれ。換金した時、半分はギルドの資金にしていいから」
「こ、こんなレアなアイテムだったら半分でも十分遊んで暮らせますよ!? あわわわ、大切に扱わないと……」
受付嬢の手が震えている。あのままだと落としそうで不安なんだけど。
俺は周りの目から逃げるようにギルドを後にした。
最初に声を出したのはシャルだった。騎士と言うだけあって度胸もあるし、ハルトを支える副リーダーみたいなポジションだった。
だから、いち早く動揺から立ち直ってくれたんだろう。
「俺にも分かんねえよ。本当なら、恨んだり見捨てたりするのが普通なのかもな。だけど……そうしたかったんだ。もしかしたら、なんの能力もなかったころの俺と、なにもできなくて倒れてるお前たちを重ねてたのかもしれない」
なにが真実なのか、俺にも分からない。俺は自分を追放したパーティーの子を助けた、という結果があるだけだ。
「まあ、そんな感じだから、あんまり気にしないでくれ」
「……ありがとう。本当に、ありがとう」
ダンジョンから出て街へ帰る。
ダンジョンのクリア報告もしないと行けないからな。
「それじゃあ、ギルドに直接向かうの? イオリちゃん、そろそろ寝転びたーい!」
「ギルドに行く前に寄らないと行けないところがあるんだ。これだけはやっとかねえと」
「……ふぇ?」
今の俺たちがやるべき一番大切なこと。それは――
◇
ガシャンガシャン、と鉄が揺れ動く音が響く。
「ねえ、カイリ」
近くからはアリシアの声。本性を知る前と、全く変わらない、優しい大人びた声だ。
「私――どうして牢屋の中にいるの?」
「逆になんで入れられないと思ったの?」
俺たちが真っ先にやるべきこと……それは、アリシアの捕縛だった。
アリシアに追放は意味がない。追放された俺を追いかけてくるんだから、突き放しても自分から関わってくる。
それに、アリシアから目を離すと絶対碌でもないことしかしない。
かと言って殺すこともできない……いや、違うな。
たとえどんなに狂気的な人物であっても、アリシアは追放されてなにもなかった俺を支えてくれた。
――そんな人を、殺したくはなかった。
「なにをやっても駄目なら、捕まえとくしかない。即席だから強いスキルで壊せる程度の強度だけど、アリシアに牢を壊せる力がないのは俺が一番よく分かってる」
「これ完全に嫌われちゃったなぁ……はぁ、失敗だ」
「あの性格で好かれることはないと思うぞ」
自分を殺そうとした奴と好き好んで仲良くするのって聖人くらいだろ。
「これで一番の問題はとりあえず解消したし、ギルドに報告しに行くよ」
「そうなんだ。行ってらっしゃい、カイリ。――愛してるよ」
その言葉には、嘘偽りはない。アリシアは俺を本気で好きなのだ。
だけどアリシアの好意を受け入れるだけの心の余裕は、今の俺にはなかった。
◇
「カイリさん、おかえりなさい! あの……もしかして、ウロボロス討伐できちゃったんですか」
「できたよ。ダンジョンに潜ってた人もほとんど助けられたし」
「すっごーい! もう上位の冒険者に引けを取らない功績ですよ!」
「そ、そうなのか……?」
上位の冒険者なんて、俺にとっては無関係だとずっと思ってたから、そう言われても実感が湧かない。
受付嬢がギルド内で思いっきり大声を出したからか、俺がウロボロスを討伐したことは瞬く間に広まった。
「聞いたかよ今の……」
「やべえよやべえよ」
「俺、実はカイリさんのファンなんだよね」
「カッコよすぎる……」
前に決闘した時もだったけど、注目を集めると気まずくなっちゃうんだよな……
「これがウロボロスのコアだ。鑑定しておいてくれ。換金した時、半分はギルドの資金にしていいから」
「こ、こんなレアなアイテムだったら半分でも十分遊んで暮らせますよ!? あわわわ、大切に扱わないと……」
受付嬢の手が震えている。あのままだと落としそうで不安なんだけど。
俺は周りの目から逃げるようにギルドを後にした。
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