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第53話 「開けるべきモノ」

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「入場できるのは、ナナリィ王女様と、カイリ様だけですので……」

「ええええええ!?」

 ナナがびっくりしてる。パーティー全員で王城に向かったけれど、門番に入城を許されたのは俺とナナだけだった。

「お客様としてお連れする分には良いのですが、正式に手順を踏まないといけないので、時間がかかってしまうかと……」

「ど、どうしましょう……」

「まあ仕方ねえよ。身内だけあんまり特別扱いしすぎると国民的にも嬉しくないだろうし。とりあえず手続きだけしてもらって、受理されるまで俺とナナで王城を探検しよう」

 俺が知識を持てば、案内できる人間が増えるってことだし、悪くないだろう。

 他のみんなも納得してくれたみたいで、みんなと別れて俺たちは王城の門をくぐる。

「敷地にはお花畑があるので、眺めてるだけでも結構楽しいですよ。わたしは昔、この敷地から出られなかったので、よくここに来ていました」

 ナナが指す先に辺り一面の花畑があった。確かに、見てるだけで楽しいって言うのも分かるほど、色とりどりの花で埋め尽くされている。

 フラワーアーチが並ぶ道を抜けると、王城の扉に着く。

「この扉、近くに人が来ると自動で開くんですよ。とっても便利なんです」

 俺たちが扉の前に立つと、内開きの扉がゆっくりと開かれる。

 王城の中で、一番最初に俺たちを迎えたのは真紅のカーペット。
 柔らかな質感を足の裏に感じる。内装は俺のイメージした通りの城だった。

 天井にはシャンデリアがあり、よく分からないオシャレな柱が立ってたり、偉人っぽい絵も飾られている。

「やっぱり綺麗だな、城って」

「でしょう! それでまず、カイリ様に見てもらいたいところが……」

 ナナに腕を引っ張られて城内を連れ回される。



 食堂や応接室、風呂場など、色んな部屋を見て回って来たけど、どれも俺の予想通りというか、期待通りのものだった。

「あと案内してないところ言えば……書庫ですかね」

「書庫か。王城の中にそんなもんあるんだな」

「お父様がよく本を読まれていたので。図書館にも負けないくらいあるんですよ」

 ナナの発言通り、書庫の中は壁一面に本が並んでいた。
 本棚も高くて台に乗らないと一番上まで手が届かない。

「本当にすごい量あるな……」

「わたしもここでよく本を読んでましたね。何度か台から足を踏み外して落っこちて、お父様に怒られてました」

 ナナって意外とやんちゃなんだな。
 本棚を眺めていると、きっちり並んだ本棚の中で、一部途切れている場所があった。

 その隙間には扉が付いていた。

「この扉はなんだ?」

「そこは……秘密の部屋です」

「秘密の部屋……入れないのか?」

「いえ、入れますよ。ただ、その部屋に大したものは置いてないんですよ。あるのは宝箱が一つだけ……って、そういえばカイリ様宝箱見たいって言ってましたね」

「中に入っても良いのか?」

「大丈夫ですよ。今は、わたしやカイリ様の所有物ですから」

 俺は扉を開けると部屋の中に入る。ナナの言う通り、中には宝箱がポツンと置いてあった。

「宝箱には武器が入ってるのは定番だけど……ちょっと小さくね?」

「宝箱の中身まではわたしも知らないんですよね。お父様が『その人物が来ればいずれ開く』って言ってましたけど、その人物が誰なのかはお父様も分かってないみたいでした」

 なにが入っているか分からない宝箱。興味をそそられるけど、流石に開かないだろう。

 ナナや前国王ですら開かなかったんだから。と、思いつつも一縷の望みを持って宝箱に触れてみる。

 すると――

「――開いた?」

 宝箱はあっさりと、その中身を晒した。
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