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第62話 「そうして、少年は召喚された」
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俺の発言で思い当たる節があったのは、フィオナだった。
「カイリ殿、もしや貴方が異世界からやってきたというのもそれと関係しているのか?」
厄災との戦いが始まる前、俺はフィオナに故郷の話をした。
その時は初対面だったし、信じてくれなかったけど……今は、信頼してくれている。
「カイリ様が異世界からって……それは本当なんですか!?」
「本当だよ。ナナは覚えてるか分からないけど、前に車とか自転車の話をしたんだけど、あれはナナが知らなくて当然だったんだ。だって、異世界の乗り物だからな」
「覚えてますよ! わたし、記憶力いいんですよ」
なに聞いても大体「勉強してました」って言って答えてくれる、記憶力がいいのは俺も分かってる。
「日本に封印されたシオンの魂は、その後に生まれてくる日本人の身体に継承された。それが、俺だ」
俺が日本にいたときから……じゃなく、俺が世界に生まれてくる前から、俺の魂にシオンは宿っていた。
「シオンは俺のことを『生まれ変わり』って言ってたんだけど、ちょっと違うかもな。宿主って方が合ってるかもしれない」
俺とシオンは常に同時に存在していた。
あの精神世界でやけにシオンがフランクだったのは、シオンが俺と十年以上共に過ごしたからだろう。
「そう考えると、俺が異世界を割とあっさり受け入れられたのも、シオンの影響だと思うし、俺が日本でファンタジーを好んで読んでいたのもそういうことだったのかもな」
俺の中にある、シオンの魂はこの世界こそが「故郷」だ。だから、宿主である俺も異世界に来て、安心したのかもしれない。
実家のような安心感って言葉があるけど、まさにそんな感じだ。
「俺の中に封印された邪神の力には、枷がかけてあったんだ。本の記憶を見る限り、シオンはこの枷のことを『鍵』って呼んでたな。万が一、シオンの魂を持った人間が悪い奴だった場合、邪神の力を悪用して、第二の邪神になる恐れがある」
もちろん、そんな悪い奴に移動しないように対策はしていたと思うけど、それでも可能性が全くないわけではない。
対策なんて、やりすぎるくらいで丁度いい。
「邪神の力を封じる『鍵』ってのは物理的なもんじゃない。原理は俺にシオンの魂が宿っているのと同じだ。シオン以外の四人の英雄が、『鍵』の役割になって、子孫へ、その魂を継承していった」
「英雄はそれぞれ国を作った……なら、王族には英雄の魂が宿っている可能性があるということですか?」
「実際、ナナとフィオナには宿ってた。それは確認済みだ」
「そうなんですか?」
「邪神の力は、その代の『鍵』が『許可』をすることで段階的に解放される。或いは、鍵が鍵として機能しなくなったとき――鍵が何者かによって殺されたときも、解放される。俺が神の力を解放できたのは、そういう理屈で、邪神が鍵を殺そうとするのも、そういうことだ」
鍵が簡単に解放できないように、でも、もしもの時は引き出せるように、ちゃんとルールが定められていた。
『わたしを――助けて!』
『私を――救ってくれ!』
一度目はナナ。二度目はフィオナ。その共通点を考えれば分かりやすかった。
俺は二度も、王族から助けを求められた。心から俺に救ってほしいと伝えることこそが、神の力を解放する条件。
「これは本人にしか分からないことだけど、もしかすると、ナナのお父さんは邪神に身体を乗っ取られてたのかもしれない。だって俺が異世界に来た一年前、急にナナを襲ったんだろ? 俺が来たことで、ナナの『鍵』としての力が発現したから、邪神はナナを狙ったのかもしれない」
俺がナナと出会ったとき、邪神は酷く焦っていた。
俺が自分の役目に気づく前に力を取り戻したかったんだろう。そのためにあらかじめ「鍵」を始末しておいて、力を解放しておく必要があった。
俺がナナを保護してしまったせいで、邪神はプランの変更を余儀なくされた。
流石に俺の目の前でナナを殺すわけにもいかないし、どうしてか、俺やナナを乗っ取ることはできないらしいし。
ナナが自主的に力を解放させるまで、待たなくてはならなくなってしまった。
俺が二段階目まで力を解放しても、俺が邪神の正体に気づくまで動いてこなかったのは、完全に力が解放されてから奪いたかったから。
あの時、不用意に邪神を疑ってしまったせいで被害を出したと罪悪感があったが、むしろ早めに言及しておいて良かったかもしれない。
全ての鍵が解放されてからでは、手遅れになる可能性が高かった。
「『鍵』は俺――シオンの魂の場所を知ることができるようになってるらしい」
「わたしがカイリ様に感じた『運命』……あれも、わたしの『鍵』としての力だったんですね」
「ナナが俺の危機を察知できるのも、な。恐らくエリザベスがアウスト王国にやってきたのも、フィオナがアウスト王国へ避難してきたのも……偶然なんかじゃない。俺が来た時、『鍵』が集まるようになってるんだ」
「カイリ殿、もしや貴方が異世界からやってきたというのもそれと関係しているのか?」
厄災との戦いが始まる前、俺はフィオナに故郷の話をした。
その時は初対面だったし、信じてくれなかったけど……今は、信頼してくれている。
「カイリ様が異世界からって……それは本当なんですか!?」
「本当だよ。ナナは覚えてるか分からないけど、前に車とか自転車の話をしたんだけど、あれはナナが知らなくて当然だったんだ。だって、異世界の乗り物だからな」
「覚えてますよ! わたし、記憶力いいんですよ」
なに聞いても大体「勉強してました」って言って答えてくれる、記憶力がいいのは俺も分かってる。
「日本に封印されたシオンの魂は、その後に生まれてくる日本人の身体に継承された。それが、俺だ」
俺が日本にいたときから……じゃなく、俺が世界に生まれてくる前から、俺の魂にシオンは宿っていた。
「シオンは俺のことを『生まれ変わり』って言ってたんだけど、ちょっと違うかもな。宿主って方が合ってるかもしれない」
俺とシオンは常に同時に存在していた。
あの精神世界でやけにシオンがフランクだったのは、シオンが俺と十年以上共に過ごしたからだろう。
「そう考えると、俺が異世界を割とあっさり受け入れられたのも、シオンの影響だと思うし、俺が日本でファンタジーを好んで読んでいたのもそういうことだったのかもな」
俺の中にある、シオンの魂はこの世界こそが「故郷」だ。だから、宿主である俺も異世界に来て、安心したのかもしれない。
実家のような安心感って言葉があるけど、まさにそんな感じだ。
「俺の中に封印された邪神の力には、枷がかけてあったんだ。本の記憶を見る限り、シオンはこの枷のことを『鍵』って呼んでたな。万が一、シオンの魂を持った人間が悪い奴だった場合、邪神の力を悪用して、第二の邪神になる恐れがある」
もちろん、そんな悪い奴に移動しないように対策はしていたと思うけど、それでも可能性が全くないわけではない。
対策なんて、やりすぎるくらいで丁度いい。
「邪神の力を封じる『鍵』ってのは物理的なもんじゃない。原理は俺にシオンの魂が宿っているのと同じだ。シオン以外の四人の英雄が、『鍵』の役割になって、子孫へ、その魂を継承していった」
「英雄はそれぞれ国を作った……なら、王族には英雄の魂が宿っている可能性があるということですか?」
「実際、ナナとフィオナには宿ってた。それは確認済みだ」
「そうなんですか?」
「邪神の力は、その代の『鍵』が『許可』をすることで段階的に解放される。或いは、鍵が鍵として機能しなくなったとき――鍵が何者かによって殺されたときも、解放される。俺が神の力を解放できたのは、そういう理屈で、邪神が鍵を殺そうとするのも、そういうことだ」
鍵が簡単に解放できないように、でも、もしもの時は引き出せるように、ちゃんとルールが定められていた。
『わたしを――助けて!』
『私を――救ってくれ!』
一度目はナナ。二度目はフィオナ。その共通点を考えれば分かりやすかった。
俺は二度も、王族から助けを求められた。心から俺に救ってほしいと伝えることこそが、神の力を解放する条件。
「これは本人にしか分からないことだけど、もしかすると、ナナのお父さんは邪神に身体を乗っ取られてたのかもしれない。だって俺が異世界に来た一年前、急にナナを襲ったんだろ? 俺が来たことで、ナナの『鍵』としての力が発現したから、邪神はナナを狙ったのかもしれない」
俺がナナと出会ったとき、邪神は酷く焦っていた。
俺が自分の役目に気づく前に力を取り戻したかったんだろう。そのためにあらかじめ「鍵」を始末しておいて、力を解放しておく必要があった。
俺がナナを保護してしまったせいで、邪神はプランの変更を余儀なくされた。
流石に俺の目の前でナナを殺すわけにもいかないし、どうしてか、俺やナナを乗っ取ることはできないらしいし。
ナナが自主的に力を解放させるまで、待たなくてはならなくなってしまった。
俺が二段階目まで力を解放しても、俺が邪神の正体に気づくまで動いてこなかったのは、完全に力が解放されてから奪いたかったから。
あの時、不用意に邪神を疑ってしまったせいで被害を出したと罪悪感があったが、むしろ早めに言及しておいて良かったかもしれない。
全ての鍵が解放されてからでは、手遅れになる可能性が高かった。
「『鍵』は俺――シオンの魂の場所を知ることができるようになってるらしい」
「わたしがカイリ様に感じた『運命』……あれも、わたしの『鍵』としての力だったんですね」
「ナナが俺の危機を察知できるのも、な。恐らくエリザベスがアウスト王国にやってきたのも、フィオナがアウスト王国へ避難してきたのも……偶然なんかじゃない。俺が来た時、『鍵』が集まるようになってるんだ」
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