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第71話 「だから、立ち上がって。
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「俺に、なにが残ってんだよ。全部、失くしたのに……」
「まだ残ってるじゃない。あたしも、シャルも」
ソニアが、震える俺の手を、強く握りしめる。
「まだ全部失ったわけじゃない。それに……カイリは空っぽなんかじゃないよ。カイリは自分の力で、自分の意思で、ここまで進んできた。そんな人を、空っぽだなんて思わない」
「力は借り物だ。俺が手に入れたもんじゃない」
「でも、あたしたちを助けたいって思ったのは――紛れもなく、カイリの意思だよ。他の誰かのものじゃない。カイリだけのものなんだよ」
「それだって、その時は力があったから……」
「聞いたよ、カイリあたしたちの為に命がけでウロボロスのダンジョンに挑んでくれたんだってね。ナナちゃんがいなければ、カイリはドロドロに溶けちゃってたって」
確かにあの時、自分だけ逃げるならウロボロスの攻撃を受けることもなかっただろう。
思えば、一時期神も力を失ったのは、封印の鍵――ナナと離ればなれになっていたからだ。
どうしても、見捨てられなかった。力を失っていたのに、俺は助けることを諦めきれなかった。
「あの時は、神の力もでなかったんだって、イオリちゃんが言ってたよ」
そこでようやく、ソニアがウロボロスのダンジョンに挑んだときのことを知っていた理由に気づいた。
「握手会の時か」
俺がアルマジール大森林に向かった時、居残り組はなぜかアイドルになっていた。あの時、ソニアたちはイオリとかなり長い間一緒にいた。話す機会ぐらいいっぱいあっただろう。
「カイリは力なんてなくっても、誰かを助けようとしてくれる人なんだよ。……それこそが、カイリの強さなんだと思う。自分の身を顧みず誰かを助けるなんて普通はできないよ」
「それは……」
「私もカイリには救われた。力のあるなしではない。カイリだからこそ、私たちは救われた。それは、誇っていいことなのだと思うぞ」
俺だから。シャルは嘘を吐いていない。本気で、こんな俺に救われたと思っている。
「でも、今回は守れなかった……所詮俺はその程度の――」
「まだ守れなかったって決めるのは早いじゃない! まだナナちゃんや、みんなが死んだって確かめてない! 城下町の人だって避難してるかもしれない!」
まだ俺自身の目で確かめてないのは事実だ。
悪夢のような情報が一気に襲いかかってきて、脳が考えることを拒否していた。
だからこそ、邪神の言葉を鵜呑みにしてしまった。
もしかしたらまだ間に合うかもしれない、なんて。そんな可能性を考えたことがなかった。
「まだなにも終わってない。それに、カイリが諦めたら……誰があの子たちを救うの?」
「そんなの、誰でも……」
武力を有するカルード帝国は崩壊。俺たちのいる、アウスト王国も主要都市が燃やされた。
この状況を変えられる人間なんて、誰でもできるわけじゃない。
「カイリは、本気で諦めてるの?」
「――俺は」
諦めてるのか? だったらどうして――今もこうして生きている。
ナナたちが本当に死んだと思っていて、全てを諦め絶望したなら、自殺を選んだっておかしくない。
全て投げ捨てて、逃げ出したっていい。だけど俺は、逃げていない。
「あたしだって怖いよ。だけど、カイリが諦めてないんだったら一緒に立ち向かう覚悟はしてる。だって――同郷のよしみじゃん」
「……」
「異世界に居場所がなかった人同士、しんどいときは助け合わなきゃね。二回もあたしは助け合う機会を手放した。……後悔、してたの。自分の身可愛さでカイリの酷い扱いを止めなかった」
二回俺を見捨てた、というのはハルトとの決闘直前も含めているのだろう。
「追放された後、カイリが死んじゃったらどうしようって、本気で怖かった。毎日毎日、カイリが死んだんじゃないかって……怯えてた」
ソニアの身体が震えている。ソニアが怖がっていたのも、多分本当なんだ。
「再開したとき、本当は嬉しかったんだよ。生きててくれたんだって。結局、再開したときもハルトからの視線を気にしちゃって、変な対応したんだけど」
「気にしてないよ。もし、あの時俺が決闘に負けてたらって考えるとハルト側を擁護してたのも理解できる」
「そんなわけだからさ、今度は絶対見捨てないって、そう思ってるの。カイリを見捨ててまで自分を生かそうとする弱い心とは、決別したの」
絶対に俺を見捨てない。だから、自分から魔道具作りを提案してきたんだ。
「強いな、ソニアは」
「強かったら、もっと早く覚悟を決めれてたよ」
誰かを見捨ててまで生きようとする弱い心、か。
――刺さるなぁ。完全に、今の俺じゃないか。
「カイリはさ、本気で諦めてる?」
「……どうなんだろうな」
「本気で諦めて逃げたいって言うならあたしは全力でそっちに協力するけど……諦めないって言うなら、あたしも命を懸けるよ。カイリだけに、全てを預けない」
俺の決断がなんであれ、最後まで付いてくる。その気持ちはシャルも一緒みたいだった。
仲間は、まだ諦めてない。まだ足掻こうと覚悟を決めている。
それなら、俺は――
「――もう一回、頑張ってみるよ。弱くて、頭も良くないけど。こんな俺を、信用してくれるなら。その期待に、応えたい」
一歩、前に踏み出す決意をした。
「まだ残ってるじゃない。あたしも、シャルも」
ソニアが、震える俺の手を、強く握りしめる。
「まだ全部失ったわけじゃない。それに……カイリは空っぽなんかじゃないよ。カイリは自分の力で、自分の意思で、ここまで進んできた。そんな人を、空っぽだなんて思わない」
「力は借り物だ。俺が手に入れたもんじゃない」
「でも、あたしたちを助けたいって思ったのは――紛れもなく、カイリの意思だよ。他の誰かのものじゃない。カイリだけのものなんだよ」
「それだって、その時は力があったから……」
「聞いたよ、カイリあたしたちの為に命がけでウロボロスのダンジョンに挑んでくれたんだってね。ナナちゃんがいなければ、カイリはドロドロに溶けちゃってたって」
確かにあの時、自分だけ逃げるならウロボロスの攻撃を受けることもなかっただろう。
思えば、一時期神も力を失ったのは、封印の鍵――ナナと離ればなれになっていたからだ。
どうしても、見捨てられなかった。力を失っていたのに、俺は助けることを諦めきれなかった。
「あの時は、神の力もでなかったんだって、イオリちゃんが言ってたよ」
そこでようやく、ソニアがウロボロスのダンジョンに挑んだときのことを知っていた理由に気づいた。
「握手会の時か」
俺がアルマジール大森林に向かった時、居残り組はなぜかアイドルになっていた。あの時、ソニアたちはイオリとかなり長い間一緒にいた。話す機会ぐらいいっぱいあっただろう。
「カイリは力なんてなくっても、誰かを助けようとしてくれる人なんだよ。……それこそが、カイリの強さなんだと思う。自分の身を顧みず誰かを助けるなんて普通はできないよ」
「それは……」
「私もカイリには救われた。力のあるなしではない。カイリだからこそ、私たちは救われた。それは、誇っていいことなのだと思うぞ」
俺だから。シャルは嘘を吐いていない。本気で、こんな俺に救われたと思っている。
「でも、今回は守れなかった……所詮俺はその程度の――」
「まだ守れなかったって決めるのは早いじゃない! まだナナちゃんや、みんなが死んだって確かめてない! 城下町の人だって避難してるかもしれない!」
まだ俺自身の目で確かめてないのは事実だ。
悪夢のような情報が一気に襲いかかってきて、脳が考えることを拒否していた。
だからこそ、邪神の言葉を鵜呑みにしてしまった。
もしかしたらまだ間に合うかもしれない、なんて。そんな可能性を考えたことがなかった。
「まだなにも終わってない。それに、カイリが諦めたら……誰があの子たちを救うの?」
「そんなの、誰でも……」
武力を有するカルード帝国は崩壊。俺たちのいる、アウスト王国も主要都市が燃やされた。
この状況を変えられる人間なんて、誰でもできるわけじゃない。
「カイリは、本気で諦めてるの?」
「――俺は」
諦めてるのか? だったらどうして――今もこうして生きている。
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全て投げ捨てて、逃げ出したっていい。だけど俺は、逃げていない。
「あたしだって怖いよ。だけど、カイリが諦めてないんだったら一緒に立ち向かう覚悟はしてる。だって――同郷のよしみじゃん」
「……」
「異世界に居場所がなかった人同士、しんどいときは助け合わなきゃね。二回もあたしは助け合う機会を手放した。……後悔、してたの。自分の身可愛さでカイリの酷い扱いを止めなかった」
二回俺を見捨てた、というのはハルトとの決闘直前も含めているのだろう。
「追放された後、カイリが死んじゃったらどうしようって、本気で怖かった。毎日毎日、カイリが死んだんじゃないかって……怯えてた」
ソニアの身体が震えている。ソニアが怖がっていたのも、多分本当なんだ。
「再開したとき、本当は嬉しかったんだよ。生きててくれたんだって。結局、再開したときもハルトからの視線を気にしちゃって、変な対応したんだけど」
「気にしてないよ。もし、あの時俺が決闘に負けてたらって考えるとハルト側を擁護してたのも理解できる」
「そんなわけだからさ、今度は絶対見捨てないって、そう思ってるの。カイリを見捨ててまで自分を生かそうとする弱い心とは、決別したの」
絶対に俺を見捨てない。だから、自分から魔道具作りを提案してきたんだ。
「強いな、ソニアは」
「強かったら、もっと早く覚悟を決めれてたよ」
誰かを見捨ててまで生きようとする弱い心、か。
――刺さるなぁ。完全に、今の俺じゃないか。
「カイリはさ、本気で諦めてる?」
「……どうなんだろうな」
「本気で諦めて逃げたいって言うならあたしは全力でそっちに協力するけど……諦めないって言うなら、あたしも命を懸けるよ。カイリだけに、全てを預けない」
俺の決断がなんであれ、最後まで付いてくる。その気持ちはシャルも一緒みたいだった。
仲間は、まだ諦めてない。まだ足掻こうと覚悟を決めている。
それなら、俺は――
「――もう一回、頑張ってみるよ。弱くて、頭も良くないけど。こんな俺を、信用してくれるなら。その期待に、応えたい」
一歩、前に踏み出す決意をした。
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