無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん

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第76話 「神」

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 ――神という存在は、人によって生まれる。人がなにかを恐れ、信じ、願ったとき、神という概念が生まれる。

 ボクも、そういう過程で生まれた存在だった。
 ボクは人間から邪神、なんて呼び方をされてるけど、それほど適切な名前じゃない。

 ボクが司る概念は――「破壊」。言ってしまえば、破壊神ってところだ。
 人が破壊によってなにかを生み出し、また破壊によって恐怖した時。

 そのエネルギーが集まって、ボクが生まれた。破壊という概念で産み出されたボクは、なにかを壊すことだけが存在意義。

 意味を失った存在は「世界」によって消去される。

 いくら神様って言っても、「世界」そのもののルールには逆らえない。
 神様も「世界」の一部だからね。

 だからこそ、ボクは破壊を求めて地上に降り立った。だけど、神は人間界に直接侵攻することはできない。

 人間の身体を依り代にしないと、人間界で存在を維持できなかった。
 仕方なく、適当な人間を乗っ取って、破壊の限りを尽くした。

 ただひたすらに、意味もなく、理由もない破壊を起こし続けるボクを、人間は「邪神」と呼んだ。

 そんな時だ。奴らが――シオンたちが現れたのは。

「あんたが『邪神』? 見た目は人間と変わらないんだな」

「……」

 呑気なことを言っている。それ以外の感想はなかった。

 この人間も破壊すればいい。どうせ神の力の前には敵わないのだから。
 他の人間に対してもやってきたように、剣を振り、槍を投げ、弓で落としてしまえばそれで終わり。

 その筈、だった――

「これで、トドメだぁ――っ!」

 ボクは負けた。万全の力を持っていたのに。破壊という概念を司る、神なのに。

 驚いている場合じゃない。とにかくこの場から生き延びないと行けない。そう思っているのにボクの身体は動かない。

 ――まずい。まずいまずいまずい。この身体はもう無理だ。肉体はただの人間。こんな身体、捨ててしまえばいい。

 ボクは自らの魂を身体から逃がすことで、奴らの攻撃から逃れることができた。人間界にも、神界でもない、狭間の世界に逃げ込んだ。
 戦いで疲弊し、傷ついたボクという存在は、神界に戻る力もなかった。

 ――とにかく、回復しないと。

 狭間の世界で、ボクは回復を待った。それしか、出来ることはなかった。当時のボクに、憎しみはない。神には本来、人間のような「感情」は存在しない。

 ……本来は。

 ボクは多少感情に近いものを持っているが、それでも合理的に考えて、自分の回復を待つのが最優先だと理解していた。

 それから、ボクが再び意識を取り戻した時、久しぶりに人間の身体を乗っ取って、ボクは異変を感じた。

「力が……使えない……」

 ボクが魂だけを逃がした直前、ボクの中からなにかが失われたような感覚はあったけど、回復を優先したせいで確認する余裕はなかった。
 あの時、力を奪われたんだ。

 力は使えない。傷は完全に癒えてない。神として、存在すら危うい。ボクが回復した先に待っていたのは、先行きの見えない道だけだった。



 世界を歩き回り、何度も人間を乗っ取って知識を集めた。それで分かったことは、ボクが負けてから千年経った世界であること、過去の英雄たちが国を作っていたこと。

 後は冒険者とかダンジョンとか、そういうものが出来ていることだった。

「……千年。思ったよりも時間がかかったんだね」

 狭間の世界では時間感覚なんてない。だから、ボクにとっては一瞬のような気持ちだ。

 そしてまた人間の乗っ取りを繰り返していく内、一人の少年と出会う。

 ――この子供には、乗っ取りが効かない。

 それは、カイリだった。どうして乗っ取りが効かないのか……原因はすぐに分かった。

 ボクの乗っ取りは、身体の主導権を奪う訳じゃない。言い表すなら……「魂の上書き」だ。

 元々存在する魂に、ボクの魂を一時的に上書きする。結果、身体もボクの意思で動かせるようになる。

 それが効かないってことは、魂そのものの強度がボクより上。そして、カイリからはひどく不快な匂いを感じる。

 ――カイリの中に、ボクを倒した奴らの魂が混ざりこんでいる。

 それが、ボクの出した結論だった。ボクは適当な人間を操って、カイリの様子を探ってみることにした。
 何度も接触を図るうちに、なんとなく、ボクと同種の匂いも感じ取ることができた。
 世界を歩き回ってみて、ボクの肉体を封じたという祠は見つかったけど、力を封じた場所は見つけられなかった。
 だとすると、この近しい匂いはもしかして……

 そこでボクは、更にカイリと関わっていくことに決めた。

 意外なことに、カイリはボクのことも、千年前の出来事も覚えていない。

 ――これは、使える。

 ボクがカイリを誘導できるようになれば、ボクの力も、もしかしたら奴らの力さえも、利用できるかもしれない。

 カイリにとって、この世界で頼れる存在がボクだけになった時、カイリはボクの言うことを素直に聞くだろう。

 そう思って、カイリが加入したパーティーのリーダーを乗っ取っては理不尽な理由でカイリを追い出した。

 二回くらい追放させた後で直接接触を図った。

「神様……って、それ本当なのか?」

『本当だよ。ボクはこの世界のあらゆることを知っている。訳あって、キミの力になりたいと思ってね。いつでも頼りにしてほしい』

 予想していた通り、カイリはボクの言葉を受け入れた。追放されて、味方もいない状況なら、そうなると思っていた。

 これでカイリに取り入る第一段階は成功。それからも何度かパーティーから追放されるよう仕向けた後、予想外の出来事が起きた。

「私も、パーティーを抜けてきたから、カイリ君と一緒に行こうと思って」

 カイリの所属していたパーティーの女――アリシアが、やってきた。カイリを都合よく動かすのに、頼りにするのはボクだけの方が良かったけど、無理やり引きはがして怪しまれても困る。

 仕方ない、我慢するか。そう思って一旦見逃した。その夜、宿に泊まっていたアリシアの身体を乗っ取り、記憶を覗いてみた。
 どうしてカイリに付いてきたのか、その理由を確かめる為に。

 そして、ボクは知ってしまった。アリシアの、歪んだ性質を。

 この女は、使えるかもしれない。ボクが再びこの世界に降臨するとき、依り代として。

『やぁ、キミがアリシアだね』

「わ、なんで、どこから話しかけてるの!?」

『神様だから、この世界のどこでもない場所だよ。それより、アリシア。キミはカイリに随分執心しているようだね。――それはとても歪んだモノだけど』

「……へぇ、私のことそんなに分かってるんだ」

『神様だって言葉に説得力があるだろう?』

「まあ、ね。それで、神様が私になんの用なの? 私はカイリのことだけで頭いっぱいなんだけど」

『キミと交渉がしたくてね』

「交渉?」

『カイリに近づいて欲しい。カイリがアリシアを好きになるくらい、積極的に』

 ボクは常にカイリの様子を監視できるわけじゃない。ボクの力を取り戻すためにも、色々動く必要がある。ボクが関わらない間もアリシアが好感度を稼いでくれれば、アリシアを乗っ取った時にカイリの油断を誘える。

「そんなことでいいの? 私も最初からそうするつもりだったけど。そうしないと、上手くカイリを誘導できないし」

 ――考えていることは同じ、か。

『そう言ってくれるのは嬉しいよ。交渉って話だし、もちろんキミに対する報酬は用意する』

「報酬ってどんなもの? 正直、なにを貰っても嬉しいと思えないんだけど」

『ボクがキミに渡すのは、物じゃない。――機会だ』

 アリシアはいまいち理解できてないような顔をしている。

『ボクは人間を意のままに操ることができる。それを使えば、カイリを死の淵まで追い込むことは簡単だ。それこそがボクから与える報酬だ。キミの望みに沿っていると思うよ』

 アリシアはボクの提案を受け入れた。
 ボクはアウスト王国の国王を操り、カイリの元に兵士を派遣した。それをアリシアは黙認し、結果カイリたちは追いつめられることになった。

 もちろん、ボクはカイリを殺すつもりはない。殺した場合、カイリの中にあるボクの力がどうなるか分からなかったから。そんな危険は冒したくなかった。
 もしカイリが捕まればボクが兵士を操って逃がせばいい。もし逃げきれたらそれはそれで問題ない。

 そう考えていたら……

「――うわぁ!」

 カイリは出会ってしまった。ボクが秘密裏に抹殺しようとしていた、アウスト王国の王女――ナナリィと。

『駄目だ! その子に近づくな!』

 ボクは思わずそう言っていた。
 ナナリィ王女はボクの乗っ取りが効かなかった。つまり……カイリと同じく、「英雄の魂」を継承した人間だったんだ。
 そんな人間とカイリが出会ったらどうなるか分からない。奴らの子孫が集まってボクに敵対すると、弱ったボクでは太刀打ちできない。

 引き剝がしたいけど、強引な行動が出来なくて、結局カイリは王女と共に行動することになった。

 仕方ない。プランを変えよう。兵士どもと戦い始めてから、どさくさに紛れて殺せばいい。兵士を一人乗っ取れば、ボクは怪しまれない。

 そのプランすら、思い通りにはいかなかった。

「――限定解除」

 カイリが、ボクの力を覚醒させてしまったんだ。

 カイリが覚醒した条件。二つしか考えられない。カイリが危機的状況になるか、または――英雄の子孫から、なんらかの合図を受け取った時。

 ボクはそれを確かめるために、カイリに情報を渡さず、傍観に徹した。アリシアがピンチの状況を作るだろうし、解放の条件は確かめられる。

 ゆっくり待てばいい。千年も待ったんだ。今更、何年かかろうが大した差じゃない。

 ボクが死ぬ前に残した魔物、「厄災」もいる。奴はボクが復活する日に備えて待機させていた。
 カイリがボクの力に目覚めたことで、ボクが復活したと勘違いして人間たちに侵攻を始めてしまったけど、問題はない。

 ボクは厄災を口実に「魂喰い」を取りに行かせた。最悪、カイリがボクを怪しんだとき、英雄の魂を傷つけて、傷口から強引に力を引っ張り出すために。

 まだ一段階しか解放出来てないから、できればもう少し……欲を言えば、全部の力を解放してから奪いたい。

 ――もう少しだ。完全に詰んだと思っていた。目覚めたとき、ボクになにも残されていなかったから。

 もう少しで、完全に復活できる。

「――お前は、俺の敵だな?」

 そのはず、だったのに。
 どうして気づかれた? なんでボクは失敗した? どうしてこうもボクの思い通りにいかない?

 ……仕方ない。ここで動くしかない。二段階も解放したカイリが本気でボクを警戒し始めたら、隙を突くこともできない。

「返してもらうよ、ボクの力を」



 なにもかもボクにとって都合の悪い状況になっている。それでもまだ挽回できる。二段階でも十分な力だ。

 だってほら、カルード帝国まで追って来たエリザベスという女も、ボクの力には適わなかった。

 帝国の人間を全て殺し、ボクは更なる力を手に入れた。残るボクの脅威と言えば……

「カイリ……キミを殺し、英雄の魂を消せばボクに勝てる相手はいなくなる」

 アウスト王国に急いで戻り、カイリの元へ向かう。
 カイリはどういう訳か、新しい力を手に入れていたみたいだ。一瞬の隙を突かれて逃げられる。
 せっかく復活できたのに、トドメをさせなかったことにイラついていると、エリザベスたちがまたしてもボクの前に立ちはだかった。

「苛立ち八つ当たりをする今の貴様は……まるで人間だな」

 その言葉が、ボクの怒りを爆発させた。――ボク自身が認めたくなかったことを、突きつけられてしまったから。

 ボクは神の力で人間の魂を乗っ取った。復活できるまで、何度も何度も。魂を乗っ取り、まるで人間のようにふるまうことで、ボクは次第に人間へと近づいて行ってしまった。

 神に感情はない。そう言ったけど、人間の魂と同調していたボクには……いつの間にか感情が芽生えていた。
 だから苛立ちも喜びも落胆も、人間と同じように感じられる。

 神として、そんなことはあってはならない。神は信仰され、恐れられ、超常的なものだと認識されないと神としての存在が危ぶまれる。

 人間から「人間みたい」と思われる神は、神じゃない。「世界」からそう判断されると、ボクという神は消え、新しい破壊神がこの世に生まれる。

 感情を持たなければ焦らなかったけど、今のボクには感情がある。消えたくないと思うようになっていた。

 人間に近づいても存在が消える。破壊を否定すれば、存在が消える。人に負け、力を奪われ、全てを失った。
 ここまで苦労を重ねてきて、「世界」に消滅させられる結末なんて、絶対に認められない。認めたくなんか、ない。

 世界を破壊しつくして、ボクは神の立場を取り戻す。できなきゃ――消される。エリザベスたちを殺して、恐れられないと。
 ボクは神槍をもって、エリザベスとフィオナの二人を殺そうとした。逃げられる筈がない。だって、こいつらはデュランダルだけでいっぱいいっぱいだから。

 神槍が二人の身体を貫く――直前。一本の剣によって、攻撃が防がれた。

「――なんとか、ギリギリ間に合ったな」

 嫌な匂いがする。ボクを倒した――シオンと同じ匂い。だとしたら、この剣は……

 ――あぁ、またしても。またしても、キミはボクの邪魔をするのか。だけど、今度こそ、ボクは負けられない。
 一度負けたとしても、リベンジを果たしてやる。



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