無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん

文字の大きさ
78 / 81

第78話 「逆転の手札」

しおりを挟む
 俺は封印の祠でシオンの剣を手にした時、自分の身体になにかが入り込む感覚があった。
 それがシオンの力だったのだろう。高速で繰り出される邪神の攻撃が、俺の目には止まって見える。

「――しぶとい、奴だな! キミは! 早くやられろよ!」

「それは俺の台詞だっての! 何回吹っ飛ばしてると思ってんだ!」

 向かってくる邪神を吹き飛ばしては回復され……というやり取りを数えきれないくらい繰り返した。

 力に振り回されてる俺では決定打を入れられないのはなんとなく分かっていた。

 邪神に疲れは見えない。感情をむき出しにしてはいるが、それくらいだ。
 邪神の表情は怒りというより――焦っているようで。なにに焦っているのかは知らないけど、そのおかげか攻撃が単純で防ぎやすい。

「くそ、くそくそくそ! なんでボクは、こんな奴に――っ!」

 俺に攻撃が当たらないことに嘆いてるけど、俺からしても今の状況はだいぶヤバい。

 邪神には体力なんて概念がなさそうだから、やろうと思えば一生戦い続けることも出来るだろう。
 だけど俺は違う。時間をかければかけるほど体力を消耗して疲弊してしまう。

 長期戦は不利だ。でも、決定打がないからトドメを刺せない。

 ――俺の中にも、焦りが沸き上がってくる。

「負けられないんだ……ボクは、人間なんかに……!」

 負けられないのは、俺だって同じだよ。邪神に何度も負けてきた。その度に沢山の被害が出た。負傷者も死傷者も数えきれないほど見てきた。

 俺がここで負ければ、あの光景が再現されてしまう。

 神槍が、俺の横腹をえぐる。神経が死んだのか、痛みすら感じない。血液だけが大量に吹き出している。

 出血はまずい。早く治療しないと。治療といえば――

「――あぁ、そうか。先にそっちを狙えば良かったんだ。ボクとしたことが焦りすぎてたね」

 邪神が笑みを浮かべる。
 俺が一瞬、ナナの方に目線を向けた瞬間、全てを察した邪神がナナの方に向かう。

「しまっ……」

 初動が遅れた俺は邪神の速度に追い付けない。ナナたちも反応できず、その場で立ち尽くしている。

 ――こんなところで、俺はまた犠牲を出すのか。

「くっ……間に合え……っ!」

 邪神がナナの元に着く前に。
 早く、早くしろ。俺は俺の身体を必死に動かすけれど、邪神との距離は縮まらない。

 既に邪神は攻撃体勢に入っている。神剣と神槍がナナを襲う――

「――もう十分溜まった頃合いだな」

 あと数秒で神器が届く、その直前だった。フィオナがナナの前に出て、神器を受け止めた。

「……っ!」

 邪神もまさか自分の攻撃が止められると思ってなかったのだろう。

 戸惑う邪神を突き飛ばして、俺はフィオナの元に駆け寄る。

「助かった! フィオナ、あいつの攻撃止めれるんだな」

「いいや、私一人の力ではあの武器を防ぐことはできない。スキルを使ったとはいえな」

「じゃあどうして……」

「カイリ殿も感じる筈だ。自らの内から力が沸き上がるようなこの感覚を」

 言われてみれば、そんな気がしてきた。今ならなんでも出来そうな万能感が俺を満たしている。

 ふと視線を向けると、エリザベスと目が合った。そして、俺は確信する。
 ――これは、エリザベスの仕業だと。



 スキルというのは先天的なものと、後天的に獲得するものの二つがある。
 妾は、後者であった。

 ――最初はただ、守りたかった。

「は、はじめまして! 今日から貴方にお仕えすることになりました! よ、よろしくお願いします!」

 初々しく、似合わないスーツを着こんだ少年。彼の家系は代々妾の家に仕えていた。
 妾が十歳になるころ、同年代の少年が執事見習いとして送られてきたのだった。

 執事になるべく育てられた少年と、王になるべく育てられた妾。将来を期待されている者同士で親近感があったように思う。

「お姫様! おはようございます!」

 おおよそ執事とは思えぬ気安い態度であったが、それが妾にとっては心地よかった。

「あ、あのぅ……先日父親に、敬語がなってないって怒られちゃったんですけど……お姫様、不愉快にさせてたなら申し訳ありません」

「構わぬ。誰も彼もが同じ態度だとつまらんからな」

「そっか……良かったです!」

 妾は元々付いていた執事を置いて、少年と二人で出掛けることが多くなった。
 父親からは小言を言われたが、大人の執事よりも、少年と話している時の方が遥かに楽しかった。

「お姫様! そちらは危険です!」

 妾が気まぐれでダンジョンへ向かった時、執事がひどく動揺していた。
 妾一人で魔物を追い払える。ある程度戦い方を学んでいた妾は何度かダンジョンに潜った経験があった。

 だから――

「姫様!」

 ――妾の身長の倍以上ある体躯の魔物に襲われた時も、妾に動揺はなかった。
 しかし、執事は違った。妾の実力を知らないわけじゃないのに、執事は魔物の攻撃から身を呈して妾を守った。

「お主が危険を犯す必要はなかった。妾であればあの程度、容易く葬れる」

「そう、ですよね……それは、分かってた……つもりなんです。でも、身体が……勝手に、動いて……」

「もう話さなくていい。即刻帰還し、治療させる。お主は死なないようにだけ気を付けろ」

「ありがとう、ございます……こんな、無能な執事のために……」

「ふん、主人を守ろうと己が命を投げ捨てる者を、無能だと罵る人間はいない。その覚悟は――誇っていい」

 危なっかしい奴。妾の印象を端的に話せばそうなる。

 それからしばらくして、妾の訪れた街に魔物が出現する事件が起きた。

「姫様、早く安全な場所へ」

「……お主はどうするつもりだ」

「魔物の頭目を発見しました。私めが倒しにいくつもりです。それが出来れば、この度の騒ぎも収まるかと」

 出会ってから数年経ったからか、敬語も上手くなり、態度も執事らしくなってきた。
 けど、危なっかしいところは変わらない。主人を助けようと、自らの安全を考慮しないところも。

「妾も出るぞ。お主だけでは心許ない」

「それは――」

「妾の意見に歯向かう気か?」

「……分かりました。ですが、御身を最優先に考えてくださいね。本当に、王になろうかという人が危険に踏み入るなんて……普通そんなことはしないですよ」

「そういうものなのか?」

「そういうものです」

 執事が心配だから戦地に赴く王族……確かにそんな例を聞いたことはない。

 集団の中で一番巨大な魔物が統率をとっていた。
 執事が先頭に立ち、少し後ろから妾が攻撃する。もっと前に出たかったが、執事に怒られたため我慢している。

「くっ、強い……」

 実力的にも妾の方が強い。合理的に考えれば妾が最前線で戦うべきだ。だが、ここで激しく戦闘し、傷ついたりすれば国に迷惑をかける。

 中途半端に戦っていたせいか、執事の形成は不利になっていった。見る度に傷が増え、血で汚れていく。

「撤退しても良いのだぞ。ここまで時間を稼げば、避難は終わっている」

「ここで逃げて……他に被害が出るくらいなら、私めが……」

 守りたい、とそう思った。かつてダンジョンで妾がされたように。
 だが、身を呈して庇うのは立場上出来ない。妾の命は、妾一人だけのものではなかったから。

 ――その時、「スキル」が、覚醒した。



「そのためには――カメラを用意する必要があるな」

「カメラ、ですか……」

 空ではカイリと邪神が得物を交えている。そんな中でカメラを用意する必要があると、ナナには思えなかった。

「妾にはスキルがある。だが、それは簡単に扱えるものではなくてな」

「スキルを発動する条件に、カメラが必要ってことですか?」

「全く違うが……まあ良い」

「良くはないと思いますけど……」

 なにをするか分からないまま協力するのは不安だ。
 エリザベスの方から無言の圧を感じて、アイテムボックスからカメラを取り出す。以前配信をしていた時に使っていたものだ。

「配信を始めろ。全世界に、カイリの戦闘を映すのだ」

「は、配信って……ここでですか!? そんな場合じゃ……」

「早くしろ」

 せめてもう少し説明がほしい。と思ったけれど、エリザベスがこちらを振り回すのは今に始まったことじゃない。

 手慣れた動きで配信の準備をし、激しい戦闘を繰り広げるカイリをカメラに映す。

「……妾はな、守りたかったのだ」

「守り、たかった……?」

 不意に語りかけてくるエリザベスの言葉に、思わず首を傾げる。

「故にこそ、このスキルが発現した。……あの時使えていたら、変わっていたのやもしれぬな」

 エリザベスはどこか遠くを見ているような目をしていた。

「今は物思いに耽ている場合ではないな。……妾は人の感情、想い、願いといった正の感情を力へ変換するスキルを保有しておる」

「願いを、力に……」

「想いが強ければ強いほど、その想いを向けた相手に与える力は強くなる。つまりは、貴様がカイリへ強い感情を向ければ、妾のスキルでそのまま力へと変換し、カイリの力を増してやることが出来る」

「それはとっても強力なスキルですが……どうして今まで使わなかったんですか? エリザベスさん自身をパワーアップさせれば邪神とも渡り合えたかもしれないですよね」

「唯一、妾自身には効かないのだ。元より、『分け与えるため』の力だからな」

 自分が強くなるのではなく、自分が他人を支えることで、エリザベスは大切な人を守ろうとした。
 その想いがスキルを発現させたのだ。だからこそ、自分に使うことだけはできなかった。

「妾が配信を付けろと入った理由はそれだ。カイリは次代の英雄と称されているのだろう? そんな人間が、世界を破壊せんとする脅威と戦っている。配信を見ている連中はこう思うだろう。『あの邪神を倒してくれ』と。世界中のその願いを、妾のスキルで力に変換し、カイリに与える」

 世界中から力を貸してもらえるのであれば、邪神を倒す力が手に入るかもしれない。
 やってみる価値は、十分にある。

「しっかりと映しておけよ。それこそが――逆転への一手だ」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...