異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

第58話 アーネと薬草 前編

イールスは、宿屋で朝食を食べている
「兵士さん、鎧が壊れていますが大丈夫ですか？」
少女が心配してイールスを見ている
「昨日結構強いモンスターと戦ったので、破損してしまいました。この村に鍛冶士が居ないのが、残念です」
微笑みながら少女を見て言う
「申し訳ありません、田舎の村で…」
少女が慌てて頭を下げている
「謝らないで下さい、こちらこそ大変申し訳ない事を申し上げました。申し訳ありません」
丁寧に頭を下げると、少女が挙動不審になっている
「本来なら王都の冒険者ギルドで村が資金を拠出して、調査をしないといけない事なのに、伯爵家のお手をわずらせて申し訳ありません」
少女が頭を下げている
「え？ 申し訳ありませんが…イールスと申します」
イールスが慌てて立ち上がり頭を下げながら丁寧に挨拶をする
「イールス様？ あっ！ アーネです。この村の領主兼村長の孫娘です」
アーネが慌てて頭を下げる
「何故、宿屋で働いているのですか？」
「貧乏なので…それに人手も足りないので…」
アーネが慌てて言う
「もし宜しければ、少し村の現状を教えて貰えませんか？ 」
「はい、解る範囲なら…伯爵様に報告は止めて欲しいのですが…」
アーネが申し訳なさそうに言うと、村の収入源と村の成り立ちなどを教えて貰っている

山菜採取もするなら、何故薬草採取をしないのだろう？ もしかして、知識が無いから？ もし、そうなら、誰かが教えたら、この村も助かるのかな？

「アーネさん、次に山菜採取にはいつ行かれるのですか？」
「え！ モンスターが居ますので…危険なので行けません…食料も困窮を始めています」
アーネが悔しそうな顔をしている
「もし良ければ、調査に同行しませんか？ 昨日は北側でしたので、本日は南側か東側を探索します」
「ご迷惑になりませんか？」
「調査ついでです。 村が困っているなら…少し手伝いたいと思います」
イールスが笑顔で言う
「お祖父様に相談してきます」
アーネが慌てて言うと、宿屋の主人に話してから、出ていく。護衛達がイールスを微笑みながら見ている
（イールス様、朝から女性と楽しく会話していました…）

「イールス様、食料も確保しましたが、直ぐに出掛けますか？」
護衛が笑顔で聞く
「アーネさんを護衛して、山菜採取します。それに少し地図を作りたいと思います。 この村の財政難の手助け出来るかも知れないです」
笑顔で言うと、護衛達が微笑んでいる

宿屋を出て、村の出口で待っていると、アーネが籠を持って走ってくる
「お待たせしました。お祖父様に許可して貰いました」
アーネが笑顔で言うと、村長が遠目に心配そうに見ている
「無茶はしませんが、もしもの時は、一目散に逃げてくださいね」
笑顔で言うと、村を出て森に入っていく

森に入ると、アーネの案内で山菜の採取場所に向かい、アーネと護衛１人が採取をしている。イールスは時々周囲を見ながら、薬草も採取している

「イールス様、何故草を採取しているのですか？」
不思議そうにイールスを見ている
「少し調査です。この草は、良く見かけますか？」
「はい、奥には多く生えています。食べれないので、残念です」
アーネが残念そうに言う
「そうですか…」
イールスが考えている

やっぱり、薬草の知識が無いのか…食べれる野草しか、目的になっていないからか？ 正確な知識と採取のプロが必要なのか？

その後もアーネの籠が一杯になるまで、山菜を採取して、村に戻ると、入口で村長が待っている
「お祖父様、沢山山菜が取れました」
アーネが満面の笑顔で言う
「それは良かった…兵士殿、護衛感謝しますが、宜しいのですか？調査途中で山菜採りなど護衛して…」
村長が睨みながら言う
「今日は、本当に助かりました。広範囲調査出来ました。 本当に感謝申し上げます」
深々と頭を下げながら言う
「は？ それなら良いが…変わった兵士だな」
村長が不思議そうにイールスを見ながら言う
「森には、村人の人達は、良く入るのですか？」
「狩人が大体同行していますが、モンスターが現れてからは、狩人も獲物が減って、別の村に出稼ぎに行っている…早く対応しなかった、私の責任です…村人に申し訳無い」
村長が苦虫を噛み締めるような顔で言う
「伯爵家に頼ろうと思わなかったのですか？」
「それは…見ての通り、貧しい村ですので…税もかなり免除して貰い、何とか生活出来ている状態です…伯爵様に助けを求めても…この先の事を考えたら…どうしても言い出せませんでした」
「アーネさん、明日は東の森の山菜採取に行きましょう」
アーネを見て言うと、村長が驚いている
「え！ 宜しいのですか！ 嬉しいのですが…ご迷惑では？」
「元々東の森の調査もしたいと思ってました。御一緒して頂けるなら、道に迷わず助かります。御助力お願い申し上げます」
「イールス様…お祖父様宜しいですか？」
アーネが驚きながら村長を見ている
「アーネ…行って来なさい…今しか自由は無いかも知れない」
村長が迷いながら、アーネを見ている
（この状況…アーネは、伯爵家に差し出さないといけないから、自由な内に…）
「はい！ 頑張って山菜を採取してきます」
アーネが嬉しそうに言うと、イールス達は宿屋に戻っていく

部屋でイールスが地図に印を着けていると、護衛がやって来る
「イールス様、何故アーネさんの山菜採取を手伝うのですか？」
護衛が考えながら聞く
「この地図を見てください。森を効率的に回れます。 それにモンスター調査は、北側中心にしてますが、予想が当たれば、この村の重要度が増します。 後、この手紙をアーセリオドール様に送って下さい」
手紙の束を護衛に手渡す
「え！ 何かを調査しているのですか？ 」
「まだ言えませんが、もしかしたら、良い事が起きます」
笑顔で言うと、護衛が手紙を持って出ていく