異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

第102話 ビーレルバウムの調査

シリカローレンの案内で商人達が集まる部屋に向かう
「ロイホール様、お初に御目に掛かります。この町の商会を代表して最初に挨拶をさせて貰います」
豪華な服を着た男が笑みを浮かべながら挨拶する
「この町に通商について教えて貰いたいと思います」
ロイホールが笑顔で言うと、商人が笑顔で色々な話をしている。イールスは、話の輪に入れない商人に挨拶をしながら、少しずつ話をして回っている

商人達とロイホールの話が終わると、シリカローレンと共に部屋に戻り、商人達が帰っていく
「イールス御兄様、疲れました…話を合わせるのが、こんなに大変なんて思いませんでした」
ロイホールが疲れたように言うと、シリカローレンも苦笑いしている
「ロイホール様のお陰で何人か誠実そうな商人を見付けました。シリカローレン様、この商人ですがどの様な噂が有るか調べられますか？」
イールスが笑顔で説明をしている。シリカローレンが商人の名前を聞いて考えている
（この人達…全部小さい商会ですが…大きな商会でないので、詳しくは把握してません…数日かけて調査した方が良いかもしれませんが…あの時間で性格を調べていたなんて、思ってないでしょう）

「失礼します。ロイホール様、イールス様、執事達や屋敷の人達の話し合いは終わりました。 思ったより忠誠心が高く安心しました」
執事が入ってくると、２人の侍女も入ってくる
「御苦労様です。しがらみは有りますか？」
「イールス様、マルケフガードナー様はシリカローレン様の様子から何か読み取り、この部屋に誰も近付かない様にしてくれています。その代わり少し離れた場所に２人ずつ、常に待機させてます。兵士達も視界に入らない様に、警備を固めてくれています」
執事が裏方から見た事を見て説明をしていると、シリカローレンも驚いている
（え！ 知りませんでした…もしかして今までも…賊が侵入も無いのは…全て警備をしていてくれたからなのですか？）
「マルケフガードナー様は信用が出来そうです。警護がしっかりしているなら、山に向かい調査を早く終わらせてきます」
「本日、研究者と薬師は、護衛と共に町中を回ったそうです」
執事が詳しく説明をしている

町の市場を見たなら…見物したかったな…今後を考えると先に商人と領地の把握が必要とはいえ、羨ましい…少し散策もすれば良かったかな？

翌朝、イールスは護衛３人と共に薬師と研究者達と合流する
「今回の護衛を担当します。ビーレルバウム男爵家のローレルベウムと申します。準騎士爵家から３人ずつと男爵家４人で合わせて、１０人になります」
ローレルベウムは、礼儀正しく頭を下げている。他の兵士達も頭を下げている
「案内をお願いします。まずは、この村の付近から山に入りたいと思います」
イールスが地図を見せて説明をしている
「ここから？ 危険ですが…この頃魔物も増えています」
ローレルベウムが考えてから言う
「それなら…村人の為に魔物も討伐しましょう」
「え！ 何故？ 薬草の調査と伺ってましたが…討伐を？」
「魔物を討伐しないと、山を探索は出来ません！ 薬師と研究者の護衛を頼みます」
「え！ 若い…無理をしたら命がいくつ有っても足りませんが…」
ローレルベウムがイールスを睨んでいる
（考えが若すぎる！ これでは護衛をしきれないぞ…シリカローレン様の依頼でも、少しは痛い目を見て貰わないと…魔物が現れたら、動けないだろうから）

村に到着すると、兵士が村人に話をしてから、イールス達は山の方を見ている。護衛２人が村人に聞き込みに向かう
「イールス様、無茶はしないで下さい。薬師と護衛の兵士まで守りきれません」
護衛がイールスの横で言う
「はい、出来る限り戦闘は避けますが、未熟者の為に犠牲者を出す訳にいきません…もしもの時は護衛の兵士さん達に先に撤退して貰います」
山を見ながら言うと、護衛が苦笑いしながらイールスを見ている
（護衛もイールス様が撤退しないと帰れません！ それよりも実力を見せ付けないで下さい！ そっちの方が大変な事になります…イールス様に言えませんが…）

護衛達が村人を１人連れて戻ってくる
「山の案内を頼めましたが、この頃タイガーが出没しているそうですので、警戒して進みましょう」
護衛がどんなタイガーが出没しているか説明を始め、村人にも話を聞いてから、山に向かって歩いていく

「あ！ これは！ 研究者さん」
イールスが木の根元を見て言うと、研究者が近付きじっくり見てから、採取している
「霊芝で間違いないです。この大きさなら申し分無いです。 あそこの大きさは、まだまだ大きくなるので、今回は採取しません」
研究者がイールスに霊芝を見せながら説明をしている
「こっちは、傷薬の薬草だ」
薬師が草を見て言うと、研究者もじっくり見ている
「あの蔓は、芋でしたか？」
イールスが細い蔓を見て言うと、村人が近付いて穴を掘っている。研究者と薬師は、周囲を見て回っている。兵士達は離れないように警戒をしながら歩いている

「中々の大きさだな…この大きさなら高く売れる」
村人が長い芋を持ってきて笑顔でイールスを見ている
「その芋も栄養が有って、病人に食べさせれば良いと書いてありました」
イールスが笑顔で言うと、村人が頷いている。護衛の兵士が慌てた様に戻ってくる
「魔物の糞が有った、近くに居る可能性が有る」
護衛の兵士が緊張したように言う
「こんなに近くに？ 村の事を考えたら、討伐しないと危ないかな…糞の場所に案内して下さい。薬師と研究者は、この付近で待機をお願いします」
イールスが考えてから言うと、護衛の兵士が驚いて、ローレルベウムを呼びに向かう

ローレルベウムが止める様に言うが、イールスは糞が有った方に歩いていき、周囲を警戒をしている。

イールスが獣道を見付けて奥に向かい、大きなタイガーと目線が合った瞬間、タイガーがイールス目掛けて飛び付いてくる。イールスは剣を抜きながら振り抜き、タイガーとスレ違い際にタイガーの首が宙を舞っている
「あ！ 血が！！」
イールスが苦笑いしていると、護衛が血まみれになっている
「首を飛ばすなら、後ろの確認を…」
護衛が苦笑いしながらイールスを見ていると、布で血を拭き取っている
「弱いタイガーで良かった！ あ！ あの枯れ草…薬草だね」
イールスが枯れ草を見て言うと、護衛達がため息をしている

護衛が兵士を呼びに行き戻ってくると、兵士達が驚いて立ち尽くしている
「このタイガー持って帰って解体をお願いします」
イールスが笑顔で言うと、全員イールスを見ている
「一撃で倒したのか？」
ローレルベウムが苦笑いしている
「運が良かっただけです。弱いタイガーで助かりました」
「は？ 弱いタイガー？ 何を言っている！！」
「はい、弱かったので、簡単に倒せました。もっと恐ろしいタイガーだったら、噛み殺されていたと思います」
「何を…」
ローレルベウムが苦笑いして護衛を見ていると、護衛がローレルベウムに何か話して、ローレルベウムが苦笑いしながらイールスを見ている
（は？ 弱い？ タイガーを一撃で倒して…そもそも弱いタイガー？ サーベルタイガーだぞ！！ ふざけているのか！！ 自分が弱いと思っているのは傲らなくて良いが…未熟者だと思えない！！何者だ！！）