異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

第225話 野営 前編

イールスは令嬢達に一通り挨拶を終わらせて、馬車に向かい乗り込み、クリストファー達騎士が先頭に行軍を始める

見送る人々は馬車が見えなくなるまで見送り、それぞれ帰っていく
「リーシア帰りますわ」
シンシリアがリーシアノリアを微笑みながら見ている
「御姉様、最後まで見送りさせて頂き、ありがとうございます」
リーシアノリアが笑顔で頭を下げている
「未来の夫の出征の大切な見送りです。 リーシア、周囲を見なさい、早々に帰る人や馬車が見えなくなっても動かない人…人それぞれです。 イールスも罪な人ですね… アリシナさんだけてなく、多くの人に慕われていたのは確実ですね… 王女様も完全に恋する乙女になってましたね」
シンシリアが微笑みながらリーシアノリアをみている
「イールス様は…憧れの御兄様です」
リーシアノリアが笑顔でシンシリアを見ている。シンシリアが少し嬉しそうな笑みを見せている

メサリアは見送りが終わると、馬車に乗り込み立ち尽くしているアリシナの後ろ姿を微笑みながら見ている
「いつまで見ているのですか？」
アーメリアが呆れ気味に聞く
「アリシナさんとお茶会したいですのーー もう少しで既成事実出来たのに残念ですの…」
「手紙の方も心配ですね」
「多くの申し入れ楽しみですの」
「メサリア様、寂しいと顔に顔に出てますわ」
「え！ シィーですの！！」
メサリアが慌ててアーメリアを見ている
「しばらくは静かな屋敷になりそうですわ」
アーメリアが微笑みながらメサリアを見ている
「イールスがいないと、面白くないですのーーーー」
「頭は悩ませなくて済みますわ… 帰ってきた時の為にしっかり準備をしましょう」
「楽しみに待ってますのーーーー」
メサリアが笑みを浮かべている


行軍は順調に進み、日が傾いてくると、馬車が止まる
「イールス様、クリストファー様よりここで野営をした方が良いとの事です」
イールスが乗る馬車に騎士がやって来て言う
「了解しました。 ロイド、馬車を止める場所を確認してきて」
イールスが馬車から騎士を見てから、ロイドに指示をする。ロイドと騎士がクリストファーの元に向かっていくと、イールスは馬車を降りて周囲を見ている。ルセトが馬車から降りてイールスの元に来る

「イールス様、ここで野営ですか？」
「ルセト、クリストファー様がここで野営するのが良いと判断されたみたいです」
「畏まりました。 馬車の止める場所が決まりましたら、火起こしの事を騎士に確認してきます」
ルセトが笑顔で頭を下げる
「火起こし？ 不要かな」
イールスが微笑みながら言う
「火起こししないのですか？ 初日ですから良いですが… 馬車の周囲の警戒に灯りが必要になると思いますが…」
（火起こししないと、スープ等を作れませんが…初日から干し肉とパンですませるのですか？  警備も甘く考えてないですか？ 王女様もいるのを忘れてないですか？ ）
「ランプは有るので… 」
「え？ ランプ？ ランプの油の量を考えたら良くないと思います」
ルセトが少し驚きながら言う
「魔法のランプですから、魔力が必要なだけです」
イールスが笑顔で言うと、グランが慌てて近付いてきてルセトに説明を始めている
（は？ 魔法のランプ…家宝物ですが…こんな野営で使うのですか？ イールス様は何を考えているのでしょうか？ 盗難されたら大問題になりますが… どのように兵士達を納得させるのですか？）

馬車を止めると、イールス達は馬車を降りて、リシリアが馬車の扉に鍵をかけている
「イールス様、何をしたら良いですか？」
従者達が集まって並んでいる
「馬車の警備は…５人がいるから… 一緒に来てください。 食事の手伝いをしてください」
イールスが笑顔で言うと、９号車と１０号車の方に歩いていく

「イールス様、ここで作って良いのか？」
御者の男が笑顔で言う
「テーブルを出して、準備してください」
イールスが笑顔で言う
「準備は出来ているぞ！ 後は水を汲んで来れれば良いが」
「先に準備しましょう」
イールスが笑顔で言うと、御者と従者達が手伝いながらテーブルと鍋を準備している

ランクスルバウム男爵家の兵士が笑顔で近付いてくる
「イールス様、あのような素晴らしい馬車を使わせてもらい、感謝の言葉が浮かばないくらい感激しています」
ホルキンが頭を下げている
「辛くなかったですか？ 乗り心地が良かったなら、良かったです」
「夜の警戒は任せて下さい！ 実は馬車で皆寝ていました」
ホルキンが笑いながら言う
「警戒は任せますが、無理はしないで下さい」
「勿体無いお言葉感謝しています」
ホルキンが笑顔で言うと、御者が樽を出して鍋も準備が終わっている

「兄様、アクアで良いのですか？」
リシリアがイールスの横で笑顔で聞く
「リシリア頼んだよ」
イールスが微笑みながら言う
「魔力の源よ、水となりてあらわれよ！アクア」
リシリアが手をかざして魔法を使い、水の玉が出来上がり鍋に水を落として、直ぐに次の魔法で樽などにも水を落としている
「はーーーー！！ 魔法で水を…だから樽は空で…便利な魔法だな」
御者が驚いたように言うと、ホルキンが目を見開いたまま立ち尽くしている
「加熱してスープを頼みました」
イールスが笑顔で言う
「任せておけ！！ 加熱」
御者が笑顔で言うと、魔石が少し輝いている
「リシリア、後で魔力の補充をしておこうね」
「はい、兄様」
リシリアが笑顔で言う
「料理の手伝いと皿だし等を手伝っておいてね」
イールスが呆然としている従者達を見て言う
「… 」
従者達が理解できない様に立ち尽くしている
「イールス様が指示してますよ、返事をしてください」
クレオとリシアが直ぐに揺すってから言う
「へ？ 返事を…」
「イールス様が料理と皿だし等の手伝いを指示してますよ」
「え！ イールス様申し訳ありません」
従者達が慌てて頭を下げている
「任せたよ」
イールスが笑顔で言うと、周囲を見てから歩いていく。従者達は頭を下げたままでいる
（イキナリ、指示を聞いてなかった… 怒られるかも… 後で謝らないと… でも魔法で水を出すなんて…思ってなかった）