異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇

文字の大きさ
251 / 369

第252話 ゼガルトベルト男爵 後編

しおりを挟む
日が昇り、多くの兵士がゴブリンの処理をしている中、イールスはゆっくり寝ている。キャリーアルノに起こされて、馬車を降りる
「イールス様、就寝中に大変申し訳ありませんが、使者の騎士とレトリバス騎士爵様が来ています」
ルセトが頭を下げながら言う
「使者の騎士か… アリーオ様が呼んでいるのかな?」
イールスが考えながら周囲を見て、天幕に歩いていく

「イールス将軍様、こちらはアリーオ様よりの使者です」
ラントリウスがイールスの顔を見て言う
「ラントリウス様、本日もお元気そうな顔を拝見できて嬉しく思います。 使者様、アリーオ様より何か伝言でもございますか?」
イールスが丁寧に挨拶を始めると、ラントリウスと使者の騎士が苦笑いする
「イールス様の本陣に誰も居なく、襲われたように柵も壊されていた為、急ぎレトリバス騎士爵様の元に知らせに参りました。 イールス将軍様が無事で安心しております」
騎士が頭を下げながら言う
「初日からゴブリンの一団を軽く潰しました。 徹夜をしていた為、少し休息を取っておりました」
イールスが笑顔で言うと、ラントリウスが苦笑いしている
(は? 軽く? ゴブリンの死体で埋め尽くして言うことなのか? 何を考えている?)
「アリーオ将軍様より、至急の軍議の召集の為、本陣に参陣の要請に参りました」
騎士が頭を下げたまま言う
「アリーオ様より!! 至急向かうように致します」
イールスが笑顔で頭を下げている

イールスはラントリウスとロイド達と共にアリーオの本陣に向かい、天幕に近付くと、中より怒鳴り声が聞こえている

ゼガルトベルト男爵を責めているのかな? 少し聞いているかな?

イールスは聞こえている男爵の言い訳等を聞いていると、ラントリウスが横で頭を押さえながら聞いている
(やったのか? ゼガルトベルト男爵が一方的に責められるとは… 終わったな…)

イールスが天幕に入る
「イールス!! やはり無事だったか!」
アリーオが笑顔でイールスを見ている
「アリーオ様、本日もお元気そうな顔を拝見できて本当に光栄に思います。 軍議に遅れて大変申し訳ないと思っています」
イールスが笑顔で丁寧に挨拶を始めるとレイクルスベルト子爵とフライクルベルト子爵がイールスを見て安心したようにしている
「イールスの本陣が荒らされて… このゼガルトベルト男爵が犯人だが、どのように処分をしたら良いか、決めかねている… 」
アリーオが言うと、レイクルスベルト子爵が詳しく説明してくれる。ゼガルトベルト男爵が物凄い形相でイールスを睨んでいる

「まさか… 本陣が襲われるなんて… 移動して正解でした… ゼガルトベルト男爵様、何故本陣の柵を壊したのですか? 壊さなくても中に入れたのに…」
イールスが驚いた振りをしながら男爵を見ている
「は! 本陣等襲ってない!! 言い掛かりだ!! 名門男爵家を陥れる罠だ!!」
男爵が慌てて怒鳴っている
「アリーオ様、レイクルスベルト子爵様、フライクルベルト子爵様、予定通り本陣に監視役を派遣して貰えてましたか?」
イールスが笑顔で言う
「派遣もしていたが、柵を壊して進む男爵も確認している… それもゴブリンを引き連れていたのも確認済みだ!! 男爵が進み、ゴブリンが本陣に近付くのは阻止させて貰ったが!! 言い訳などで覆らないと解ったか? この馬鹿者!!」
レイクルスベルト子爵が睨んでいる
「弁明の余地もな無いと知れ!!」
フライクルベルト子爵が睨んでいる
「イールス、ユリアリース王女殿下の陣の周囲の殲滅エリアにゼガルトベルト男爵が進入したので、捕えたが… 正直困っている… 言い訳だけ達者だからな…」
アリーオが困ったように言う
「え!! 殲滅エリアに進入したのですか!! 大変な事になりました!! ユリアリース王女様の命を狙うなんて!! どのような処分になるのですか!!」
「殲滅エリアの事を知らないと言い張っている… 捕えたのもカシュー団長だから、どうしたら良いか…」
「アリーオ様、カシュー団長に一任したら良いと思います。 命を狙われたのですから、それ相応の対処しなくては、国家の恥になると思います。 アリーオ様が処分を言い渡しても国王陛下に報告が大変になります」
イールスが笑顔でアリーオと話していると、ゼガルトベルト男爵がイールスを睨んでいる

「殲滅エリアの事など知らん!! 聞いてないと言っているだろ!!」
ゼガルトベルト男爵が叫んでいる
「え! 説明しましたよ!! あ! レトリバス騎士爵様、聞いてますよね?」
イールスが振り返りラントリウスを見ている
「約束をしました… サインも致しました」
ラントリウスが苦笑いしている
「あ! これにサインして貰いました」
イールスが笑顔で書類を魔法の鞄から出してアリーオに見せている
「あ!! あの時の!! 偽物だーーーー 嵌められただけだ!!」
男爵が慌てて叫んでいる
「これは…丁寧にサイン入りか… 終わりだな」
レイクルスベルト子爵が書類のサインを見て呟く
「最初から認めておれば… もう終わりだな」
フライクルベルト子爵が男爵を見て呟く
「イールス、手際が良すぎるだろ… カシュー団長、どの様な罪が良いか?」
アリーオがカシューを見ている
「反逆罪として処分を任せます…… 男爵は処刑、男爵家は取り潰しが妥当と思われます」
カシューが考えてからイールスを見て言う
「国王陛下に報告の使者を出しておくが… このまま移送しても時間が掛かるだけになるな…」
アリーオが男爵を見て言うと、男爵が放心状態になっている

男爵が引き摺られて連れていかれる
「イールス、戦況はどうだった?」
アリーオがイールスを見つめながら言う
「初日ですから、少しゴブリンを倒しました。 騎士様なら余裕でゴブリン等倒せると兵士達が理解したと思います。 兵士達に認めて貰える様に説得をするように致します」
イールスが笑顔で言うと、ラントリウスが驚いたように目を見開いている
「少し戦ったのか? 無茶はしないように」
「下賤な身の未熟者の半人前ですから、無理などしないように気を付けています。 大群が現れたら、撤退も考えています」
イールスが笑顔で説明している
「イールス将軍、撤退は良くないが、無理して軍が崩壊しないように気を付けて欲しい」
レイクルスベルト子爵が微笑みながら言う
「御忠告感謝します」
イールスが笑顔で頭を下げる
「イールス疲れているだろう、少し休んでから帰るか?」
アリーオが笑顔で言うと、レトリバス騎士爵を見ている
「アリーオ様、大変申し訳ないのですが、少し休んでから戻るように致します」
イールスが頭を下げて言うと、アリーオ達に見送られてイールスが天幕を出ていく

「レトリバス騎士爵の驚いた顔、イールス何かしたのか? 正式な報告書はクーセスが送ってくるだろうが…」
アリーオがイールスの後ろ姿を見て呟く
「あの様子ならば、少なくてもレトリバス騎士爵の部隊とは連携が取れるのだろう…」
レイクルスベルト子爵が微笑みながら呟く
「ゼガルトベルト男爵が襲ってくるのを知っていて、監視を先に依頼を出している時点で男爵は終わっていたな… それも変わらない笑顔で何事も無い顔をしていたな… 腹芸も出来ているのか?」
フライクルベルト子爵が微笑みながらイールスの後ろ姿を見ている
「イールスだからな… これで安心して一軍を任せられる… 自重だけはして欲しいが…」
アリーオが呟くと、急に不安になったような顔をしている
しおりを挟む
感想 296

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

解雇されたけど実は優秀だったという、よくあるお話。

シグマ
ファンタジー
 突如、所属している冒険者パーティー[ゴバスト]を解雇されたサポーターのマルコ。しかし普通のサポート職以上の働きをしていたマルコが離脱した後のパーティーは凋落の一途を辿る。そしてその影響はギルドにまでおよび……  いわゆる追放物の短編作品です。  起承転結にまとめることを意識しましたが、上手く『ざまぁ』出来たか分かりません。どちらかと言えば、『覆水盆に返らず』の方がしっくりくるかも……  サクッと読んで頂ければ幸いです。 ※思っていた以上の方に読んで頂けたので、感謝を込めて当初の予定を越える文量で後日談を追記しました。ただ大団円で終わってますので、『ざまぁ』を求めている人は見ない方が良いかもしれません。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

処理中です...