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プロローグ
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朝の日差しが少年の背中を照らす。早朝のせいか、普段の喧騒を微塵も感じさせない街を、その少年は駆けていく。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
呼吸を一定のリズムに保ち、ペースを乱さずに走る……その姿にはある種の気迫が感じ取れるようだ。しばらくして、河川敷に差し掛かると少年はペースをゆっくりと緩め、立ち止まると一服するように深く呼吸をした。
「ハァッ、ハァッ……フゥ―」
どれくらい走っていたのだろうか。休憩のために立ち止まった途端、少年の身体を熱が襲い、その火照りを覚ますように少年は土手に体を預ける。
「コォオオオ……」
ドクッドクッ、と早くなった心臓の鼓動を呼吸によって落ち着かせる。そのおかげか段々と体の火照りも収まり、筋肉の疲労も多少なりとも回復した。
「よし、再開するか」
そう言うと少年は再び立ち上がり、歩道に戻ると再び走りだすため、一歩を踏み出す―――
パアァァア……
―――次の瞬間、少年は忽然と姿を消した。
◇
「や、やっと見つけた……」
探索に来た遺跡の最奥、そこまで行ってようやく私は目当ての場所に辿り着いた。
「これだけ厳重に守られてるんだから、きっと中にはスゴいお宝があるに違いないわ!」
ここまで来るのに本当大変だった。一攫千金を狙って遠いところの遺跡に来たはいいものの、トラップがあまりに多すぎて……危うく死ぬかと思ったわ!侵入者避けにしては過剰すぎると思うけど、それだけスゴいお宝が隠されてるってことよね!期待値は十分、さっさと回収しちゃおう。
「さーて、お宝お宝~♪」
部屋を閉ざしてる扉を引くが、錆び付いているのかなかなか開かない。おもいっきり力をいれて引っ張ってようやく、ギイィイと音をたててゆっくりと開き始めた。
「ふん、ぐぎぎぃ~っ!!―――はあっ、はあっ……」
やっと通れるくらい開いたけど……つ、疲れた~……。だけど、この先のお宝のことを考えれば!
呼吸を整えて、意気揚々と扉の先に入る。
「……あれ?」
しかし、入った先にあったのは、壁一面の本棚と机、床に描かれた魔方陣だけの閑散とした部屋だった。
「何これ?お宝は!?お宝はないの!?」
暫く探してみるものの、隠し扉はおろか、宝の地図といったものすら見つからない。
「そ、そんなぁ~……」
どうやら完全に骨折り損だったみたい。どっと疲労感が襲い、私はつい床にへたりこんだ。宝の存在を信じて頑張ったのに、この結果はあんまりじゃないか。
「なんなのよここっ!!あんな厳重だったくせにコインの一つもないなんてっ!?……研究室、みたいだけど……」
叫んで少し冷静になってから、部屋を見回した私はそんな感想を抱いた。大量の本に床の魔方陣、埃まみれの机……いったい何を研究していたのだろう?
「魔導師とかいれば分かったんだろうけど……」
生憎と一人で来ているため、私にはさっぱりだ。仕方ない、ずっとここにいてもしょうがないし、街へ帰ろう……。
「おっと」
立ち上がろうとしたら疲労のせいかバランスを崩してしまい、咄嗟に手を床につく。
―――その瞬間、魔方陣が輝き始めた。私は反射的に立ち上がり、発動した魔法陣を見る。
「な、何で!?もしかして今触っちゃった!?」
部屋を探し回ってたときは踏まないように注意してたけど、落ち込んでたからかつい気が抜けて、さっき手をついたときに触ってしまったのだろう。
「嘘、ここまで来て……」
触れただけで作動する魔法陣なんて、私はトラップ系の魔法しか知らない。あーもう!苦労したのにお宝はないし、最後はトラップに引っ掛かるなんて、どんだけツイてないのよ~!?
「きゃあっ!?」
そのとき魔法陣が一際輝き、咄嗟に顔を腕で覆う。爆発?それともどっかに転移でもするの?どっちにしろロクなことじゃなさそう……
そう思った直後、私の体を衝撃が襲った。
「きゃんっ!?」
「おわっと!?」
思ったよりも衝撃は軽いものの、耐えきれずに床に倒れる。……今、誰かの声が聞こえたような?
「痛ったぁ~」
「あっぶねぇ……なんなんだ一体?」
やっぱり誰かいる。魔法陣の光でよく見えないけど、どうやら誰かがぶつかってきて、一緒に倒れてしまったみたい。
段々と光が収まってきているものの、まだ影になって周囲の状況は確認できないが、一緒に倒れた誰かが立ち上がるのは分かった。
「……どこだ、ここ?って、大丈夫かあんた?ぶつかって悪かったな」
その誰かが手を差し伸べてきたので、私はその手を掴んで引き上げられるのと同時に立ち上がる。声の感じからして男性だろうか。
やがて完全に光が収まると、ようやくその人物の姿が見えてきた。
「「……えっ?」」
これが私、テオドラ・メルクーリと、異世界から来た、プロレスラーを目指す少年、風見 龍真の出会いだった。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
呼吸を一定のリズムに保ち、ペースを乱さずに走る……その姿にはある種の気迫が感じ取れるようだ。しばらくして、河川敷に差し掛かると少年はペースをゆっくりと緩め、立ち止まると一服するように深く呼吸をした。
「ハァッ、ハァッ……フゥ―」
どれくらい走っていたのだろうか。休憩のために立ち止まった途端、少年の身体を熱が襲い、その火照りを覚ますように少年は土手に体を預ける。
「コォオオオ……」
ドクッドクッ、と早くなった心臓の鼓動を呼吸によって落ち着かせる。そのおかげか段々と体の火照りも収まり、筋肉の疲労も多少なりとも回復した。
「よし、再開するか」
そう言うと少年は再び立ち上がり、歩道に戻ると再び走りだすため、一歩を踏み出す―――
パアァァア……
―――次の瞬間、少年は忽然と姿を消した。
◇
「や、やっと見つけた……」
探索に来た遺跡の最奥、そこまで行ってようやく私は目当ての場所に辿り着いた。
「これだけ厳重に守られてるんだから、きっと中にはスゴいお宝があるに違いないわ!」
ここまで来るのに本当大変だった。一攫千金を狙って遠いところの遺跡に来たはいいものの、トラップがあまりに多すぎて……危うく死ぬかと思ったわ!侵入者避けにしては過剰すぎると思うけど、それだけスゴいお宝が隠されてるってことよね!期待値は十分、さっさと回収しちゃおう。
「さーて、お宝お宝~♪」
部屋を閉ざしてる扉を引くが、錆び付いているのかなかなか開かない。おもいっきり力をいれて引っ張ってようやく、ギイィイと音をたててゆっくりと開き始めた。
「ふん、ぐぎぎぃ~っ!!―――はあっ、はあっ……」
やっと通れるくらい開いたけど……つ、疲れた~……。だけど、この先のお宝のことを考えれば!
呼吸を整えて、意気揚々と扉の先に入る。
「……あれ?」
しかし、入った先にあったのは、壁一面の本棚と机、床に描かれた魔方陣だけの閑散とした部屋だった。
「何これ?お宝は!?お宝はないの!?」
暫く探してみるものの、隠し扉はおろか、宝の地図といったものすら見つからない。
「そ、そんなぁ~……」
どうやら完全に骨折り損だったみたい。どっと疲労感が襲い、私はつい床にへたりこんだ。宝の存在を信じて頑張ったのに、この結果はあんまりじゃないか。
「なんなのよここっ!!あんな厳重だったくせにコインの一つもないなんてっ!?……研究室、みたいだけど……」
叫んで少し冷静になってから、部屋を見回した私はそんな感想を抱いた。大量の本に床の魔方陣、埃まみれの机……いったい何を研究していたのだろう?
「魔導師とかいれば分かったんだろうけど……」
生憎と一人で来ているため、私にはさっぱりだ。仕方ない、ずっとここにいてもしょうがないし、街へ帰ろう……。
「おっと」
立ち上がろうとしたら疲労のせいかバランスを崩してしまい、咄嗟に手を床につく。
―――その瞬間、魔方陣が輝き始めた。私は反射的に立ち上がり、発動した魔法陣を見る。
「な、何で!?もしかして今触っちゃった!?」
部屋を探し回ってたときは踏まないように注意してたけど、落ち込んでたからかつい気が抜けて、さっき手をついたときに触ってしまったのだろう。
「嘘、ここまで来て……」
触れただけで作動する魔法陣なんて、私はトラップ系の魔法しか知らない。あーもう!苦労したのにお宝はないし、最後はトラップに引っ掛かるなんて、どんだけツイてないのよ~!?
「きゃあっ!?」
そのとき魔法陣が一際輝き、咄嗟に顔を腕で覆う。爆発?それともどっかに転移でもするの?どっちにしろロクなことじゃなさそう……
そう思った直後、私の体を衝撃が襲った。
「きゃんっ!?」
「おわっと!?」
思ったよりも衝撃は軽いものの、耐えきれずに床に倒れる。……今、誰かの声が聞こえたような?
「痛ったぁ~」
「あっぶねぇ……なんなんだ一体?」
やっぱり誰かいる。魔法陣の光でよく見えないけど、どうやら誰かがぶつかってきて、一緒に倒れてしまったみたい。
段々と光が収まってきているものの、まだ影になって周囲の状況は確認できないが、一緒に倒れた誰かが立ち上がるのは分かった。
「……どこだ、ここ?って、大丈夫かあんた?ぶつかって悪かったな」
その誰かが手を差し伸べてきたので、私はその手を掴んで引き上げられるのと同時に立ち上がる。声の感じからして男性だろうか。
やがて完全に光が収まると、ようやくその人物の姿が見えてきた。
「「……えっ?」」
これが私、テオドラ・メルクーリと、異世界から来た、プロレスラーを目指す少年、風見 龍真の出会いだった。
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