異世界?知ったことか!俺はプロレスラーになるんだ!!

D・ケンタ

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プロローグ

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 朝の日差しが少年の背中を照らす。早朝のせいか、普段の喧騒を微塵も感じさせない街を、その少年は駆けていく。

「ハッ、ハッ、ハッ……」

 呼吸を一定のリズムに保ち、ペースを乱さずに走る……その姿にはある種の気迫が感じ取れるようだ。しばらくして、河川敷に差し掛かると少年はペースをゆっくりと緩め、立ち止まると一服するように深く呼吸をした。

「ハァッ、ハァッ……フゥ―」

 どれくらい走っていたのだろうか。休憩のために立ち止まった途端、少年の身体を熱が襲い、その火照りを覚ますように少年は土手に体を預ける。

「コォオオオ……」

 ドクッドクッ、と早くなった心臓の鼓動を呼吸によって落ち着かせる。そのおかげか段々と体の火照りも収まり、筋肉の疲労も多少なりとも回復した。

「よし、再開するか」

そう言うと少年は再び立ち上がり、歩道に戻ると再び走りだすため、一歩を踏み出す―――

パアァァア……

―――次の瞬間、少年は忽然と姿を消した。



「や、やっと見つけた……」

 探索に来た遺跡ダンジョンの最奥、そこまで行ってようやく私は目当ての場所に辿り着いた。

「これだけ厳重に守られてるんだから、きっと中にはスゴいお宝があるに違いないわ!」

 ここまで来るのに本当大変だった。一攫千金を狙って遠いところの遺跡ダンジョンに来たはいいものの、トラップがあまりに多すぎて……危うく死ぬかと思ったわ!侵入者避けにしては過剰すぎると思うけど、それだけスゴいお宝が隠されてるってことよね!期待値は十分、さっさと回収しちゃおう。

「さーて、お宝お宝~♪」

 部屋を閉ざしてる扉を引くが、錆び付いているのかなかなか開かない。おもいっきり力をいれて引っ張ってようやく、ギイィイと音をたててゆっくりと開き始めた。

「ふん、ぐぎぎぃ~っ!!―――はあっ、はあっ……」

 やっと通れるくらい開いたけど……つ、疲れた~……。だけど、この先のお宝のことを考えれば!
 呼吸を整えて、意気揚々と扉の先に入る。

「……あれ?」

 しかし、入った先にあったのは、壁一面の本棚と机、床に描かれた魔方陣だけの閑散とした部屋だった。

「何これ?お宝は!?お宝はないの!?」

 暫く探してみるものの、隠し扉はおろか、宝の地図といったものすら見つからない。

「そ、そんなぁ~……」

 どうやら完全に骨折り損だったみたい。どっと疲労感が襲い、私はつい床にへたりこんだ。宝の存在を信じて頑張ったのに、この結果はあんまりじゃないか。

「なんなのよここっ!!あんな厳重だったくせにコインの一つもないなんてっ!?……研究室、みたいだけど……」

 叫んで少し冷静になってから、部屋を見回した私はそんな感想を抱いた。大量の本に床の魔方陣、埃まみれの机……いったい何を研究していたのだろう?

「魔導師とかいれば分かったんだろうけど……」

 生憎と一人ソロで来ているため、私にはさっぱりだ。仕方ない、ずっとここにいてもしょうがないし、街へ帰ろう……。

「おっと」

 立ち上がろうとしたら疲労のせいかバランスを崩してしまい、咄嗟に手を床につく。
 ―――その瞬間、魔方陣が輝き始めた。私は反射的に立ち上がり、発動した魔法陣を見る。

「な、何で!?もしかして今触っちゃった!?」

 部屋を探し回ってたときは踏まないように注意してたけど、落ち込んでたからかつい気が抜けて、さっき手をついたときに触ってしまったのだろう。

「嘘、ここまで来て……」

 触れただけで作動する魔法陣なんて、私はトラップ系の魔法しか知らない。あーもう!苦労したのにお宝はないし、最後はトラップに引っ掛かるなんて、どんだけツイてないのよ~!?

「きゃあっ!?」

 そのとき魔法陣が一際輝き、咄嗟に顔を腕で覆う。爆発?それともどっかに転移でもするの?どっちにしろロクなことじゃなさそう……
 そう思った直後、私の体を衝撃が襲った。

「きゃんっ!?」
「おわっと!?」

 思ったよりも衝撃は軽いものの、耐えきれずに床に倒れる。……今、誰かの声が聞こえたような?

「痛ったぁ~」
「あっぶねぇ……なんなんだ一体?」

 やっぱり誰かいる。魔法陣の光でよく見えないけど、どうやら誰かがぶつかってきて、一緒に倒れてしまったみたい。
 段々と光が収まってきているものの、まだ影になって周囲の状況は確認できないが、一緒に倒れた誰かが立ち上がるのは分かった。

「……どこだ、ここ?って、大丈夫かあんた?ぶつかって悪かったな」

 その誰かが手を差し伸べてきたので、私はその手を掴んで引き上げられるのと同時に立ち上がる。声の感じからして男性だろうか。
 やがて完全に光が収まると、ようやくその人物の姿が見えてきた。

「「……えっ?」」

 これが私、テオドラ・メルクーリと、異世界から来た、プロレスラーを目指す少年、風見かざみ 龍真たつまの出会いだった。
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