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第一話 邂逅
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(どこだ、ここは?俺はさっきまで、ロードワークで河川敷を走っていたはずだ)
彼は困惑していた。突然光に包まれたと思ったら、いつの間にか河川敷からこの部屋にいたのだ。しかも、光のせいで視界がなかったとはいえ、人にぶつかって押し倒してしまった。
「大丈夫かあんた?ぶつかって悪かったな」
ひとまず先に立ち上がった彼は、まずぶつかって倒してしまった相手に謝罪し、手を差し出す。ぶつかってしまったのは自分の方であるからと、紳士的な対応だ。
彼女の方も差し出された手を抵抗なく握り返し、彼の補助を受けて立ち上がる。ちょうどその時、光が収まって、二人とも目が慣れてきたのか、段々とそれぞれの姿を確認できるようになった。
「「……えっ?」」
お互いの姿を見ての第一声はそれだった。それもその筈、互いの格好が、互いの常識から外れた格好だったのだから。
(な、なんだあの格好、コスプレか?にしちゃあよくできてるな)
彼女の格好は上はロング、下はショートパンツといった服装だが、問題はそれの上に着用されてる装備品にあった。
腰に着用されているポーチは特に気にはならない。が、上に着用されている金属製のチェストプレート、そして太もものホルスターにセットされた大型のナイフ。他にも怪しいところはあるが、その二つの点だけでも彼にとっては非日常的であり、違和感を覚えるには十分だった。
(何あの格好……?)
彼女の方も彼の格好に引っ掛かっていた。
見たことのない滑らかな質感の衣服。袖や裾が長いためほとんど肌が露出していないが、浮き出たシルエットから鍛えこまれているのが分かる。
(顔立ちは、結構若いわね。歳は私と同じくらいかしら?)
髪が短いため顔が確認できるが、しっかりしたラインではあるがその顔立ちは若い。よく見れば身長もそれほど高くはなく、ガッチリとした体格のためそれ以上に大きな印象を彼女に与えていた。
互いに相手に対し観察し、色々考えていたため暫く場は沈黙に包まれていたが、彼が声をかけたことで破られた。
「あーその、色々聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「え、ええ……」
「ここはどこなんだ?」
「ここ?ここはロキド山中のダンジョンよ」
「ロキド?ダンジョン?……おかしなことを言うようだが、俺はさっきまで河川敷を走っていたんだ。なのに気が付けばここに来ていた……何か知らんか?」
「あー、それね。えっとぉ……」
ちらと足元の魔方陣を見る。どう考えてもあれが原因だ。意図せずとはいえ、自分が発動させてしまったせいでどこか遠くから転移されてきたのだろう。それを考えた途端、彼女の頬を嫌な汗が伝う。
「わ、私は知らないわ……」
「……本当か?」
「本当よ!それより、あんたは誰!?どこから来たの!?」
自分のせいであることを悟られないようにするためか、声をあげて話題をそらす。
「……まあいいか。俺は風見龍真、どこから来たっていうか、住んでるのは東京だ」
(トウキョウ?聞いたことないわね。どんだけ田舎なのか、それとも異国なのか)
「んで、君は?」
「私はテオドラ。テオドラ・メルクーリよ」
ここで彼ーーー龍真は一つ疑問をもった。いや、はじめっから疑問だらけなのだが、彼女の、テオドラという名前を訊いてまた一つ疑問が増えた。
名前からして、確実に日本人ではない。なのに、会話が成立しているのだ。
(まあ、日本語が堪能な外人さんなんだろう。気にしたら負けだ)
しかしその疑問はすぐに捨て置かれた。一昔前ならいざ知らず、今の日本は国際社会。あまり珍しくはない。
「……えっと、テオドラ、だっけ」
「な、何よ?」
「とりあえず、外に案内してくれないか?こんな薄暗い所じゃ、話も進まんだろうし」
「あ、そ、そうね。こっちよ、はぐれないようにしっかり着いてきなさい」
そう言って部屋の出入り口の扉に向かいながら、龍真に着いてくるよう促す彼女ーーーテオドラ。その言い方に、龍真は偉そうだな、という感想を抱きつつも、勝手の知らない場所であるため、おとなしくその後ろを言われた通り着いていく。
「あ、あと不用意に周りの物に触らないでよね」
「分かった分かった」
ーーー道中、うっかり罠を発動させてしまったりしたものの、何とか二人は無事に外に出ることができたのであった。
彼は困惑していた。突然光に包まれたと思ったら、いつの間にか河川敷からこの部屋にいたのだ。しかも、光のせいで視界がなかったとはいえ、人にぶつかって押し倒してしまった。
「大丈夫かあんた?ぶつかって悪かったな」
ひとまず先に立ち上がった彼は、まずぶつかって倒してしまった相手に謝罪し、手を差し出す。ぶつかってしまったのは自分の方であるからと、紳士的な対応だ。
彼女の方も差し出された手を抵抗なく握り返し、彼の補助を受けて立ち上がる。ちょうどその時、光が収まって、二人とも目が慣れてきたのか、段々とそれぞれの姿を確認できるようになった。
「「……えっ?」」
お互いの姿を見ての第一声はそれだった。それもその筈、互いの格好が、互いの常識から外れた格好だったのだから。
(な、なんだあの格好、コスプレか?にしちゃあよくできてるな)
彼女の格好は上はロング、下はショートパンツといった服装だが、問題はそれの上に着用されてる装備品にあった。
腰に着用されているポーチは特に気にはならない。が、上に着用されている金属製のチェストプレート、そして太もものホルスターにセットされた大型のナイフ。他にも怪しいところはあるが、その二つの点だけでも彼にとっては非日常的であり、違和感を覚えるには十分だった。
(何あの格好……?)
彼女の方も彼の格好に引っ掛かっていた。
見たことのない滑らかな質感の衣服。袖や裾が長いためほとんど肌が露出していないが、浮き出たシルエットから鍛えこまれているのが分かる。
(顔立ちは、結構若いわね。歳は私と同じくらいかしら?)
髪が短いため顔が確認できるが、しっかりしたラインではあるがその顔立ちは若い。よく見れば身長もそれほど高くはなく、ガッチリとした体格のためそれ以上に大きな印象を彼女に与えていた。
互いに相手に対し観察し、色々考えていたため暫く場は沈黙に包まれていたが、彼が声をかけたことで破られた。
「あーその、色々聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「え、ええ……」
「ここはどこなんだ?」
「ここ?ここはロキド山中のダンジョンよ」
「ロキド?ダンジョン?……おかしなことを言うようだが、俺はさっきまで河川敷を走っていたんだ。なのに気が付けばここに来ていた……何か知らんか?」
「あー、それね。えっとぉ……」
ちらと足元の魔方陣を見る。どう考えてもあれが原因だ。意図せずとはいえ、自分が発動させてしまったせいでどこか遠くから転移されてきたのだろう。それを考えた途端、彼女の頬を嫌な汗が伝う。
「わ、私は知らないわ……」
「……本当か?」
「本当よ!それより、あんたは誰!?どこから来たの!?」
自分のせいであることを悟られないようにするためか、声をあげて話題をそらす。
「……まあいいか。俺は風見龍真、どこから来たっていうか、住んでるのは東京だ」
(トウキョウ?聞いたことないわね。どんだけ田舎なのか、それとも異国なのか)
「んで、君は?」
「私はテオドラ。テオドラ・メルクーリよ」
ここで彼ーーー龍真は一つ疑問をもった。いや、はじめっから疑問だらけなのだが、彼女の、テオドラという名前を訊いてまた一つ疑問が増えた。
名前からして、確実に日本人ではない。なのに、会話が成立しているのだ。
(まあ、日本語が堪能な外人さんなんだろう。気にしたら負けだ)
しかしその疑問はすぐに捨て置かれた。一昔前ならいざ知らず、今の日本は国際社会。あまり珍しくはない。
「……えっと、テオドラ、だっけ」
「な、何よ?」
「とりあえず、外に案内してくれないか?こんな薄暗い所じゃ、話も進まんだろうし」
「あ、そ、そうね。こっちよ、はぐれないようにしっかり着いてきなさい」
そう言って部屋の出入り口の扉に向かいながら、龍真に着いてくるよう促す彼女ーーーテオドラ。その言い方に、龍真は偉そうだな、という感想を抱きつつも、勝手の知らない場所であるため、おとなしくその後ろを言われた通り着いていく。
「あ、あと不用意に周りの物に触らないでよね」
「分かった分かった」
ーーー道中、うっかり罠を発動させてしまったりしたものの、何とか二人は無事に外に出ることができたのであった。
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