神様に売られた女

喜雨と悲雨

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眩しくて、閉じた目が慣れるころには
ザワザワとあたりが騒がしいことに気づいた。

そしてゆっくり目を開くと
そこは、ギリシャ神殿の様な建物の中央

私と同じく犯罪者であったであろう人々が
困惑の表情であたりを見渡していた。
皆の首には白い空間で会った神のシルエットのトップが付いた
ネックレスが付いていた。


恐らくこれが首輪だろう。…ちょうど、私たちは神殿の中央に
集められている。そしてそれを囲むように白いローブを着た人たちが
警戒した様子で立っている…私たちを逃がさないためか。

私が必死に状況把握をしている中

如何にも凶悪犯だったであろう男が
騒ぎ始めた。

「異世界だか知らねーが、俺は自由になったわけだ
 あはははは!一生豚箱の中かと思えばこんな幸運!
 俺は神に見放されていなかった!!
  さぁ!どけえー!!きたねぇゴミどもが!!」

男は建物の外に繋がっていると思われる扉を目指して
歩き出した…が、白いローブの奴らに行く手を阻まれる。

「糞!!死にてーのか?
 退けっていってんだよ!!」

男がついに我慢できず
白いローブの人に殴りかかった。

―――――――――――ぐしゃっ

えっ?
男が一瞬で肉片と化した。

≪№879 今ノ言葉ハ反逆行為ニカウント致シマス。
マタ、市民ヘノ無意味ナ暴力行動ニヨリ死刑。≫


そして突然頭に響く声。

これは…つまり、

「ヒユー…。流石神さん!躊躇ないなぁ
ああ、勘違いしないでね?僕は尊敬の意味で言ってるから」

私の隣にいた男が楽しそうな声を上げた。
そして私に語り掛けてくる。

「こんなスリルのある世界を作れるなんて天才だよね!
 ねぇ?君もそう思うでしょ?ああ!わくわくする!!」

男は一見女の子にも見える可愛らしい顔立ちをしていた。
そして綿菓子の様なふわふわな髪。年齢は20代前半というところだろうか?

しかし、こんなかわいい子が言うようには思えないのだけど
無情にもこれが現実で彼もまた、犯罪者なのだ。

「今の男じゃないけどさー もう見せしめは十分でしょ?
 そこの陰に隠れてる一番偉そうな人!早く説明するならしちゃってくれる?
 僕自分の時間を他人に使われるの大っ嫌いなんだよねー」

美少年が睨むように奥の柱を見つめると
そこから、長髪に長い髭 如何にもな老人が顔を出した。

「ほっほっほ 今回はまた癖のありそうな奴らばかりよのぉ
 そう、死に急ぐものではないぞ? 自分の立場をよく理解するのだ
 お前達の首には一瞬で命を奪う神器が付いておる。神への冒涜
 この世界の住人への無意味な暴行はお前達の寿命を縮めると思え。」

老人はニヒルな顔で私たちを面白そうに観察する。
犯罪者たちはうろたえる。

「さっそくだが、私の名はハーバルド・アルフ 
グリジアの最高神 ノモレクト様の直属の下部。
 そしてお前たちの上司だ。
私がお前たちをこの世界にある5ヵ国に配属する。
 お前たちにはそれぞれマイナスポイントがあり、犯罪の残酷さなどで
 多いか少ないかが決まる。この世界で善い行いをするとこのマイナスポイントは
 減るわけだ。まぁ簡単に言えばお前たちは国の奴隷だの。」

まずは自分のマイナスポイントを知るのだとアルフは
私たちにステータス画面の開き方を教えた。

開き方は簡単、ステータスオープンと唱えるだけ
神殿には次々とステータスオープンの声が広がる
そして、暴言をはいたのか、また何人かここで脱落した。

「…ステータスオープン」

私はつぶやくと目の前にホログラフィックの様な画面が現れた。
これは自分にしか見えないものらしい。
※※※
名前(寺岡・アザミ)
年齢22歳
性別 女
犯罪歴 親殺し 詐欺
マイナスポイント 500000000
ランクD(ギルド所属なし)
※※※

なんかとんでもない数の丸があるが、これは減るのだろうか?
アザミは大きすぎる数字に呆然とする。

「あははは!すごいなぁ 警察にもばれてないことまでしっかりのってるや!
 なにこれマイナスポイント9ばっか!これカンストしてんの?
 笑っちゃうね」

美青年はケラケラ楽しそうに笑っている。
カンスト?一体どれだけの桁があるのだろうか?
自分でも数字が多い方かと思ったが違ったらしい。

神殿も美青年のカンスト発言に一瞬ざわつき
警戒を強めた。

神殿の白いローブの人たちの中にはすごく睨み付け
今にも人を殺しそうな血の気の多い奴もいる。


「そんなに怒っちゃ 頭の血管キレちゃうよ?
それに 僕は死ねない。いや、御幣があるか
僕をその場で殺そうと記憶をそのままこの国の
誰かの赤子に生まれ変われるからね?僕は女性の
産道に興奮するんだ。この中に奥さんが妊娠している人
いるかな?是非パパ呼ばせてもらおうか?」


なんて悪趣味なんだ。
神殿の白いローブの人たちの顔はすぐに
赤から青白くかわった。

…この美青年も、神に特別な願いを聞いてもらったのか。
いわば転生を繰り返す力。彼は死ぬが、私とは縁がありそうな人物だ。
私は冷静に考えた。

「…加護持ちか、またノモレクト様も厄介な奴に目を付けたものじゃ。
 それにカンストとは、どれほど罪を犯したのか想像もつかんな
 こ奴は要注意人物じゃ!目を離すでないぞ!!」

アルフは白いローブの者たちに指示を出し、美少年を引きずるように
どこかに連れ去った。

「いやはや、今年は大変な年になりそうじゃな。
 …では、残った利口な諸君!自分の未来を左右する国選びじゃ
 儂が杖を振るえば、魔法が展開する。あたりは眩い光に包まれ
光が散ればもう、配属先の国に到着済みじゃ。
お前たちの役割はその国の国王が決める。
魔物退治・過酷労働・人体実験 さぁさぁなにが当たるのか
楽しみじゃな?…くれぐれも、口の利き方・行動には気をつけろ。
では武運を祈る」



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