君とボクとの恋愛論

かじゅ

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プロローグ

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 ジュースを飲むのを一旦止め、向かい側の人物をマジマジと見つめる。
「何だよその顔はよ?」
「だって今東京に行くって。」
「ああ、言ったよ、東京に行くことんなった。」
「観光?」
自分の言葉に心底呆れた顔をしたのは狭霧摩那乃さぎりまなの
世界各国にも道場を構える、その道では超有名な狭霧流古武術総本家の、末っ子長女である。
その摩那乃の年下の友人であり、
観光?
などと言うまったく的外れなことを言って、摩那乃を心底呆れさせたのは浅川美咲あさかわみさき
摩那乃と美咲は、とあるバンドのライブ会場付近でしつこくナンパされている美咲を助けたことで仲良くなり、かれこれ数年の付き合いになる。
「あのなぁ、たかだか観光行く何て予定を言うだけで、わざわざお前をファミレスに呼び出したりするかよ。」
「あ、あぁ…。」
考えてみればそうか…。
ん?
待ってよ…!
「それってまさか…東京に引っ越すってこと?」
「そういうことだ。」
やっと理解したか。
「何でっ?何で行っちゃうのっ?」
「まぁ、就職みたいなもんだ。」

実は摩那乃、大学を卒業後、大手企業に就職したのだが、配属された部署の部長がセクハラ、パワハラ、モラハラのオンパレード!
それでも誰も逆らわないことに疑問を持った摩那乃。
ある独自…と言うか特別ルートで調査を開始した矢先に、摩那乃の教育係の社員にトラウマ並みのセクハラをしようとして、摩那乃に腕を捩じ上げられるという事態が起きた。
部長は自分のセクハラを棚に上げ、摩那乃の行為を暴力だと喚き散らし訴えると言ってきた。
訴えられたくなかったら、今すぐ辞表を書け!
と掴みかかってきた部長の腕を再度捩じ上げ、乱暴に突き放す。
反動で尻もちをついた部長を見下しながら
「どうなっても知らねぇからな…!」
と言って、常に持ち歩いていた辞表を叩き付けると、
「先輩行きましょう。」
尻もちをついたまま、まだ何かを喚き散らしている部長を放置して、先輩を連れてその場を去った。
その日の夜、狭霧家を訪ねて来たのは摩那乃が勤めていた会社の社長。
実は社長は狭霧道場の門下生だったため、摩那乃のことは幼い頃から知っている。
摩那乃は摩那乃で小さい頃から優しくも厳しく接してくれたこの社長を尊敬していた。
その社長の会社が実力主義だということも知っていたため、摩那乃はその会社を選んだし、社長も忖度なしで摩那乃の実力を認めて雇ったわけだ。
そんな社長が自分の会社で、あんな横暴な人間が役職に就いていることを許すハズがないと、摩那乃は入社当日に社長に直接問いただした。
そこで社長はすぐに調査開始。
するとこの部長、副社長の親戚である自分に逆らったらクビだぞ、というお決まりの脅し文句で部下たちを言いなりにしていたことが判明。
副社長に事情を聞くと、親戚なのは認めたが部長が部下を脅していたことは一切知らなかった。
社長がある程度部長の悪事の証拠を入手したところで今日の事件を聞きつけ、社長自ら慌ててすっ飛んで来たそうで…。
社長から聞いたところによると、部長は部下に横暴な態度を取っていただけでなく、会社のお金を横領していたことも分かった。
その上摩那乃が辞表を叩き付けてそのまま退社した後、それまで我慢していた部下たちがとうとう反旗を翻した。
部長が狭霧さんを訴えるなら、我々は全員で部長を訴える!
となり、かなりの騒ぎになったらしい。
その騒ぎを制したのは副社長。
副社長はそのまま部長を社長室に連行。
社長から直々に悪行に対する証拠を提示され、横領に関する証拠を目の前に出された際は、顔面蒼白を通り越し、土色になっていたそうで…。
結局部長は部下たちからも訴えられることとなり、横領していたわけだから当然懲戒解雇…と思われていたが、今後発生されるであろう慰謝料のことを鑑みて、逃げられないようにと、海外の工場へと左遷とあいなった。
そういうわけだから…。
と社長は辞表はなかったことに…と言ってくれたのだが、摩那乃は摩那乃で
「どんな状況であれ、1度提出した物をそんな簡単に撤回は出来ません。」
と返した。
摩那乃の意思が強いことは知っていたため、
ならせめて…。
と慰謝料の意味も込めて破格の退職金を頂いたのだ。

「ビックリするくらいの額の退職金頂いたけど、それだって無限じゃないし、もしものときのためにとっておきたいからな。」
「でもでも、今だって働いてないわけじゃないじゃない?道場のお手伝いしてるじゃない。」
「道場の方はウサギ兄さんだけで事足りてるんだ、あたしがいなくても問題ない。」
摩那乃がウサギ兄さんと呼んでいるのは狭霧家の次男、零兎のこと。
「それに新婚のウサギ兄さん夫婦の邪魔したくねぇしなぁ。」
と言ってちぅ~っ、とジュースを飲む。
「何で東京なのぅ~?東京じゃなくても良くないぃ?」
東京もそんなに遠くないけど、でもだからって、今みたいに簡単に会える距離じゃなくなっちゃぅぅぅ!
とまで考えてハッとする。
「まさか零兎さんの奥さんに何か嫌がらせをっ?」
と言った美咲をチラッと見る。
何でこいつはこぅ的外れなことばっか考え付くんかなぁ。
天然のせいか?
まぁそんなトコも可愛いんだけどさぁ。
「あのウサギ兄さんが義妹いびりをするような人を嫁さんにすると思うか?むしろ…。」
「むしろ何っ?」
「泣かれた…。」
「泣かれたっ?」
摩那乃は恥ずかしそうにテーブルに突っ伏す。
「折角可愛い妹が出来るって嬉しかったのに、どうして出て行っちゃうの?出て行かないで~!て、泣かれた。」
「………、ぷぅっ!」
「笑うな…!」
だから言いたくなかったんだ!
「て言うかお前、あたしが東京に出るって聞いても何も思い付かないのかよ。」
そして再び呆れ顔。
「だってぇ…。」
「たくぅ…あたしがお前をわざわざ呼び出して言うんだ、リョウちゃん絡みだと思わないのか?」
「あ!」
微塵も思わなかったんだなぁ、この天然ちゃんは。
「向こうでビッグプロジェクトが動き出すらしくてな、あたしにも協力してほしいらしい。」
「じゃあとうとうrunaがメジャーデビューってこと?」
「まぁな。」
「そっかぁ!」
でもまぁちゃんが東京行っちゃうの、寂しいなぁ…。
「時にお前、あたしが東京行っちまうの寂しいとか思ってるみたいだが…お前も東京に行きたいんじゃないのか?」
「えっ!へっ!どうしてそれをっ?」
只今美咲は大学2年生。
美咲が尊敬している人が、とある大学の教授となり教鞭を取ることになったと聞いてから、その大学に編入したいと思っていた。
だがしかし!
美咲の両親は長女である美咲に対して超過保護。
東京の大学に編入したいと言ったところで絶対反対されると思い、なかなか言えずにいたのだ。
「お前が東京の大学の資料を親に内緒で取り寄せている、と美波から聞いたんだ。」
「美波からっ?いつ会ったのっ?」
「数日前にたまたまな。」
「もぅ!」
美波ってば勝手にペラペラと!
美波とは美咲の妹で高校生。
こちらも美咲同様超過保護に育てられていたのだが、中学に入った頃、その超過保護を完全拒絶する程の壮絶な反抗期に突入。
流石の両親も美波に対しては、超過保護から放任主義に切り替えるしかなかった。
「とりあえずあたしが上京して落ち着くまで待ってろ。」
「え…!」
「何とかする。」
「まぁちゃん!」
「何だよ?」
「ありがとう!大好き!」
「へいへい。」
こういう単純なトコ、可愛いんだよなぁ。













 数日後、自宅の勉強部屋にてホワイトボードに何やら難しい数式をサラサラと書き、途中で手を止めてう~ん、と唸っているのは美咲。
「あの数式を当てはめて応用すれば…。」
ブツブツ言いながら再び数式を書こうとしていると、ノックもなしに勢い良くドアが開いた。
「うひゃっ!」
「あごめ~ん!驚かせちゃった?」
と言いながら入って来たのは美波。
「まったくぅ、ノックくらいしなさいっていつも言ってるじゃない。」
ああビックリしたぁ。
「ごめんごめん、それよりお姉ちゃん、まぁちゃんに会った?」
「あ!そうだそれよ!美波!まぁちゃんにあたしが編入したがってること言ったでしょ!」
と詰め寄ると
「言ったよ。」
悪びれもなく答える。
「どうして勝手に言っちゃうのよ。」
「だってまぁちゃん魔法使いじゃん?魔法使いだから何とかしてくれるじゃん?」
「してくれるじゃん?じゃないわよまったくぅ。」
「でもまぁちゃん、何とかしてやるって言ってくれたんでしょ?」
「まぁ…そうだけど…。」
「じゃあ良かったじゃん。」
超絶過保護のパパとママに、唯一認められてるまぁちゃんから言われれば、流石の過保護モンスターも首を縦に振るだろうし。
「お姉ちゃんさ、あの教授の下で勉強したいんでしょ?」
「そりゃまぁ、尊敬してる人だし。」
「それにさ、そろそろあのパパとママから離れてもいいと思うよ、お姉ちゃんだって一生あの過保護モンスターの監視下にいたいわけじゃないんでしょ?それなら今のうちに離れるって選択肢、あたしは妥当だと思うよ。」
「それはそうだけど…。」
まぁちゃんに甘えてばかりなのもなぁ、心が痛む。
「それにお姉ちゃんがパパとママから離れるの、あたし的には罪滅ぼしみたいなトコあるし、そうなるとまぁちゃんに甘えたのはあたしかなぁ。」
「どういう意味?」
「あたし中学生になってすぐ、あの超絶過保護が嫌ですんごい反抗期になったじゃん?そのお陰であたしはあの過保護モンスターから逃げること出来たけど、そのせいでお姉ちゃんに対して更に過保護になっちゃったのは、申し訳ないと思ってるし…。」
「あ…。」
美波、そんな風に思っていてくれたんだ…。
「だからお姉ちゃんが大学編入したいと思ってるのに気付いたとき、お姉ちゃんを解放するチャンスかなって思って。」
「美波…ありがとう、そこまで考えてくれてた何て気付かなかった、ホントにありがとう。」
「あたしはお姉ちゃんが幸せならそれでいいし、パパとママもお姉ちゃんから離れれば少しはマトモになるかもしれないしねぇ。」
「何かあったらすぐに連絡するのよ、いい?」
「あ~、大丈夫大丈夫、そのときはまぁちゃんに連絡するから、まぁちゃん頼りになるじゃん?」
「何よ~!」











 門をくぐって外に出る摩那乃の荷物はリュックひとつ。
東京に引っ越すと言っても必要最低限の荷物は既に指定された住所に送ってあるため、こんな軽装で済んでいる。
迎えはまだみたいだな。
何て思いながら背伸びをしていると、零兎とその妻すみれが現れた。
「忘れ物ない?」
優しく微笑みかけて問いながら、零兎は少しだけずり落ちた眼鏡を直す。
「平気だよ、忘れちゃいけない物はあらかじめ東京に送ってあるし。」
「東京…。」
すみれは呟くと、途端にダバダバと涙を流す。
「ちょっ!すみれちゃん!」
納得したんじゃなかったのかよぅ!
若干動揺している摩那乃とは違い、零兎は優雅にハンカチを取り出すと、すみれの涙を拭いてやる。
「昨夜、泣かずに見送るって約束したでしょう?」
「で、で、でもぅ、やっぱり、寂しぃっ。」
「はいはい、気持ち分かるけど泣かないの、折角の美人が台無しだよ?」
優しく涙を拭きながら、自分の妻をサラリと美人と言ってしまう辺り、ウサギ兄さん相変わらず天然のタラシだよなぁ。
尊敬に値する。
などと思っていると、滑るように1台のリムジンが現れた。
「おぉ。」
まさかリムジンで迎えに来るとは…。
後部座席のドアが開くと、
「よぅ。」
「あれ、リョウちゃんどうしたの?」
「可愛いお前を迎えに来たんだ。」
とまで言って言葉を切ると、零兎に視線を向ける。
「久し振り零兎、今日から摩那乃を預かります。」
「よろしくね遼平、君たちに預けるなら安心だよ。」
「ありがとう、て…すみれさん大丈夫なのか?」
「まぁちゃん行っちゃうのぅ?」
「ごめんねすみれちゃん、たまには帰って来るから…ウサギ兄さん、後はよろしく。」
「分かってる、行ってらっしゃい、遼平たちが一緒だから何もないと思うけど、何かあったらすぐに帰って来るんだよ。」
「うん、ありがとう、じゃあ行ってきます!」

号泣するすみれを何とかなだめすかしながら、サササッとリムジンに乗り込む。
「大丈夫か?」
車内で待っていた人物はそう言うと、向かいに座った摩那乃と遼平に飲み物を勧めた。
「まぁ何とか、あとはウサギ兄さんがどうにかしてくれるから大丈夫、それより今回、あたしを雇ってくれてありがとね、咲樹さん。」
「礼を言うのはこっちだ、今回は俺の申し出に答えてくれて助かった。」
そう言って大人の微笑みを見せたのは瀬奈咲樹せなさかき
狭霧家と昔から付き合いのあるこの男性。
世界にその名を轟かせる瀬奈エンタープライズの次男坊にして実業家。
「だいぶ頑張ったから、あとは愛する妻とイチャイチャさせてもらうよ。」
というバカップルみたいな理由で早期リタイアした父親(仕事は超出来ますし、至って常識人ですが、妻への愛が強すぎなだけです)に代わり、長男の咲也さくやが跡を継ぎ、そんな咲也を支えているのがこの咲樹。
そして摩那乃を迎えに来たもう1人の男性は川瀬遼平かわせりょうへい、狭霧道場の門下生だった少年時代に摩那乃と知り合った、いわゆる幼馴染みというやつだ。
そんな遼平はrunaというバンドでインディーズ活動をしていたのだが、咲樹から
「1年インディーズで実力を磨いてくれ。」
と言われ、runaの面々は理由が分からないながらも、
咲樹さんがいい加減なことを言うハズがない。
とインディーズ界でメキメキと実力を付け、1年が経った先日のこと。
「それだけの実力が付いたのなら問題ない、コネなどと下らないことを言う輩などいないだろう。」
そう言った咲樹に告げられたのは、
芸能事務所を設立し、そこからrunaをメジャーデビューさせる。
という驚きの内容だった。
「兄は優秀だからな、多少俺が好きなことをやっても問題ない。」
そう言いながらシャンパンを手渡してくる。
「相変わらずやることが規格外だねぇ。」
摩那乃は受け取ったシャンパンで喉を潤してから言った。
「で、あたしは何処でメイドをやればいいんだ?」
先日、遼平から
お前にしか頼めない仕事。
と称して、ある場所でメイドをしてほしいと頼まれた。
詳細は会ってから話す、という何ともアバウトな言い方ではあったものの、付き合いが長く気心の知れた仲であるため、
ま、悪いようにはならんだろ。 という気持ちで受けた。
「何も話していないのか?」
呆れ顔の咲樹に渡されたシャンパンをひとくち飲んでから、
「咲樹さんから説明した方がいいかと思って、だって咲樹さんが雇い主じゃん?」
「まったく…。」
やれやれ、と言いたげな顔をしてから摩那乃に向き直る。
「実はrunaを始めとする事務所所属のアーティストには、特に本人から断られない限り、俺の用意したマンションに住んでもらうことになってな。」
説明を始める咲樹の隣でスマホを操作すると、
「ちなみにこれがマンション。」
遼平は摩那乃に画像を見せた。
「あのさ咲樹さん、アーティストってどんだけいんの?」
「今のところはまだ4組のバンドのみ確定だが…。」
「それでこのタワマンっ?」
相変わらず規格外でグレイトだな!
「居住スペースの他に事務所も入っているし、ジムや大浴場、レコーディングルームに会議室等、あとは多少の娯楽施設も入っている、ちなみに最上階とその下の階はそれぞれワンフロアぶち抜きになっていて、最上階ではパーティなどの催し物が出来るようになっている、そしてその下の階はrunaの居住スペース、客間、所属アーティストが自由に出入りし、食事が出来るリビングがある。」
そこまでの説明を受けて、摩那乃は真顔かつ無言で遼平を見つめる。
「どうした?」
「いや、ここまで徹底的だと逆に冷静になれるものなんだなと。」
咲樹さんとは昔から付き合いあるし、瀬奈家が超が付く程のお金持ちなのも知ってるけどさぁ。
目の当たりにすると、凄過ぎてもうさぁ。
「摩那乃、さっきの質問から察するに、遼平からうちの所属アーティストすら聞かされていないんだな?」
「うん、ある場所でメイドして欲しいとしか聞かされてないよ。」
そう言う摩那乃から遼平に視線を移してから、頭を抱え盛大な溜め息。
「えぇ~、そんなに呆れるぅ?」
「お前たちが互いを強く信頼しているのは分かるが、もう少し詳しく話せ、そして聞け。」
「だってリョウちゃんがあたしを騙しても仕方ないしさぁ。」
あっけらかんに言う摩那乃に、咲樹はタブレットを渡す。
「これが所属アーティストの資料だ。」
「お、サンキュ。」

runa
ボーカル ミツ 松戸充樹まつどみつき
ギター リョウ 川瀬遼平かわせりょうへい
ベース ケン 北里健永きたさとけんと
ドラム ユキ 佐々本優希也ささもとゆきや
からなるバンド。
充樹、遼平の幼馴染みコンビが中学時代に知り合った友人、健永と優希也を誘ってバンドを結成。
そこから地元である地方都市にてめきめきと実力を磨き、今ではインディーズながらもリリースされる曲がランク入りするくらい実力、人気とも兼ね備えている。
今回咲樹が芸能事務所を構えるに当たり、いよいよメジャーデビューとなった。


mvl
ボーカル シュウ 神川秀一かみかわしゅういち
ギター カズ 外山和誠とやまかずなり
からなるロックバンド。
この2人に加え、
ベース シゲ 山野繁士やまのしげと
ドラム ユウト 里山佑斗さとやまゆうと
キーボード ケイ 梅山恵二うめやまけいじ
という3人の固定サポートメンバーで形成している。
元々秀一が超人気ロックバンドのボーカルだったのだが、とある出来事でそのバンドが消滅。
そんなときに秀一に寄り添い、支えたのが和誠。
そこから時間を掛けて少しずつ秀一と共に歩み、結成されたのがmvlなのだ。
秀一の復帰を願うファン、和誠の前バンドからのファン、そして新規のファンも混ざり合い、人気、実力共に今やモンスターバンドにまで成長。
秀一と和誠のこだわりから、基本ライブハウスでのプレイが多いため、毎回熾烈なチケット争奪戦が繰り広げられている。

ashes
ボーカル テル 春川輝はるかわひかる
ギター タクミ 夏野拓海なつのたくみ
ギター ヒサ 秋田尚徳あきたひさのり
ベース トール 冬園透流ふゆぞのとおる
4人組のロックバンド。
元々光と拓海が学生時代、バンドを結成しようとメンバー探しを始め尚徳、透流をスカウトし結成。
秀一の前バンドとはメジャーデビューが近かったこともあり、お互い切磋琢磨して互いを磨き合った良きライバル。
mvl同様、こちらもモンスターバンドへと成長した。

shien
ボーカル&ギター ヒビキ 久我山響くがやまひびき
ベース トシ 川瀬俊仁かわせとしひと
ドラム ナナ 姫野七海ひめのななみ
3人共中学校で出会い、バンドを結成の腐れ縁。
遼平と俊仁がイトコ同士であるため、runaとは長い付き合い。
インディーズで地盤を固め人気、実力を兼ね備えた後、1年前にメジャーデビュー。
mvlやashesには劣るが売れっ子。特に10代からの支持が厚い。

住人の資料を見てから、何か言いたげな目を遼平に向けてから深い溜め息。
くそ…。
やっぱ住人が誰かくらい聞いときゃ良かった…!
「今更辞退する何て言わないよな?」
「あたしがそんな無責任な女だ何て思ってないだろ。」
「まぁな。」
それに嫌がってんじゃなくて戸惑ってんだろし。
「これだけの人数だしそれぞれスケジュールがあるからな、すべてをお前だけに任せるわけじゃない。」
「分かってる、一緒に仕事してくれる面々の秘密を守るためにもあたしにしか出来ないんだろ?」
摩那乃の問いに咲樹は満足そうに微笑むと、
「話しが早くて助かる。」
と言った。
「だが本当に嫌なら、なるべく避けるように組むことも出来るが…。」
と言葉を繋げた咲樹の表情を見た摩那乃は、心底呆れた顔をする。
「咲樹さん、そういうことはニヤニヤしながら言うことじゃないよ。」
「フフフ、ついな…。」
「だったら分かってんでしょ、あたしが嫌がってんじゃなくて戸惑ってるだけだって…リョウちゃんも。」
「そりゃあまぁ、お前のことをずっと見守ってたわけだし、俺はもうお前の兄貴みたいなもんだしな。」
「へいへいそうですかい。」
軽くあしらうように言って、再びタブレットに目を落とす。
まさかこんな形で近くにいられるようになる何て…。
だけどそれは物理的に近くにいられるようになるだけ…。
ただそれだけのことだ。
きっとあたしがこの手をどんなに伸ばしても、あの人たちにこの手が届くこと何てないのだろう。
苦行だなぁ…。
それよりもまずは…。
「咲樹さん…あたしにも多少好き嫌いはあるよ。」
「お前が言いたいことは分かっている、そこは考慮するさ。」
「助かる。」
「それに俺もミツもいるし大丈夫だよ。」
「ありがとう。」
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