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15.疲労と空腹にやられた状態でデパ地下に行くと財布の紐が緩むどころか切れる
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「ヴィーガンスイーツのギフトセットに、鱈の西京漬け、猫型生食パン、ブランド林檎のストレートジュース……う~ん、一輝さんが好きそうなのある? 仁ちゃんはどれがいいと思う?」
「……どれもいらねぇと思う」
都内の傍デパ地下にて。
私が列挙した『一輝さんへのギフト候補』を、全てばっさりと切り捨てる仁ちゃん。
「仁ちゃん……」
私は真剣に悩んでいるのに。
『週末はどこかに行こう』というご厚意に甘えて、貴重な休日をギフト選びに潰させてしまってる身で、文句は言えた立場ではないけれど。
「あいつへの貢ぎ物はいらねえって言っただろ。唯を拉致ろうとした連中の黒幕も、まだあげられてない能無しだぞ。何日かあればわかるって大口叩いておいて」
「それでも、一輝さんにとって何の得にもならない調査を、快く引き受けてくれてるわけだし」
「得ならある。俺に恩を売れる」
うーん……仁ちゃん本人に恩を感じている様子がないのに、それはメリットとして成立しているのだろうか。
「あんな奴の事より、今日は唯のリフレッシュの日なんだから。もっと他に行きたいトコなかったのか?」
「仁ちゃんの気持ちは有難いけど……一輝さんへのお礼がまだだと思うと、気持ちが落ち着かなくて」
忘恩の輩。と言ったら大袈裟かもしれないけど。私はそれになってしまうのが怖い。
尽くすべき礼が未完のまま宙ぶらりんになっていると、自分の心も宙ぶらりんでソワソワしてしまうのが、性分なもので。
「……まぁ、唯らしいけど」
店舗ごとにと並んだ、透明なスイーツ・デリケースをキョロキョロと見ながら、仁ちゃんの後ろを歩く。
休日のデパ地下は大勢のお客さんでにぎわってて……体を斜めに傾けないとすれ違えないどころか、それでも肩と肩がぶつかってしまいそうな位、混雑していた。
普通の夫婦やカップルなら……はぐれないようにって手を繋いだりするのかな。
いや、しないか。テーマパークやイベント会場ならともかく、ここはデパ地下だもんね。イチャイチャしながらぶらつく場所じゃない。
そもそも、もしもはぐれてしまっても、スマホで連絡を取り合えばいい話だし。いくら人が多くても、手をつなぐ必要なんかないよね。
うん、たとえ普通の夫婦やカップルでもつながないな、きっと。
なんてゴチャゴチャと理由を並べ立てて、仁ちゃんと手を繋げない寂しさを紛らわせていたら。
「これとか、いいんじゃね?」
前を歩く仁ちゃんが、とあるお店の前で立ち止まった。
「え……お豆腐?」
冷蔵のデリケースに並んでいるのはお豆腐。
どうやら、大豆商品の専門店さんのよう。
「どうせ今日帰りがてら、あいつんちに届ける予定なんだろ? 保冷剤もらえばいけそうだし」
「あ、えと、そういう心配してたわけじゃ……一輝さん、お豆腐好きなの?」
「……さあ?」
「……まさかとは思うんだけど……嫌がらせ……じゃないよね?」
だって、一輝さんは仁ちゃんと同じ25歳。
恐らくは、お魚よりお肉。ロースよりカルビ。というお年頃の男性に、お豆腐を贈って……喜ばれるものだろうか。
そう思って真顔で尋ねてみたのだけど。仁ちゃんは息だけでふっと笑った。
「ちげーよ。俺からじゃなく唯から渡すんだろ? いくら俺でも、唯を加害者にしてまで嫌がらせしねえわ」
「じゃあどうして好きでも無い物を?」
「唯は誰かに何か贈る時、どうやってチョイスしてんの」
「どうって、普通に好きな物を聞いて……それを元に」
今までは、一輝さんに教えてもらった好きな物(スイーツなら生クリーム系、お酒ならワイン、とか)をベースに選んでいた。でもそろそろネタ切れで。
だから、一輝さんの事をよく知っている仁ちゃんに、アドバイスを貰おうと思ったんだけど。
「俺は、嫌いな物、アレルギーとかで食べれない物を聞く派。で、それ以外から選ぶ」
あ、成程。そういう方法もあるんだ。
でも、私にはかなり、ハードルの高いチョイス方法。
「仁ちゃんは色々なお店知ってるし、センスがいいからそういう選び方でも失敗しなさそうだね。私は……選択肢が多いと、相手に喜んでもらえる物を選べる自信が無いかも……」
「俺だってそんな自信ねえけど……物事って、好きか嫌いかだけじゃねえじゃん? 好き嫌い以上に“知らない”っていっぱいあると思わねえ?」
「知らない……?」
思わぬワードの出現。目を瞬かせてしまう。
「例えば、唯がこの前作ってくれた、団子と白菜のショウガスープ。俺、白菜ってあんまり積極的に食べる野菜じゃなかったんだよ。けど、唯は結構、料理に白菜使うだろ」
「うん。そうだね、サラダに炒め物にスープに……私の中で万能野菜にカテゴライズされているから」
「実家にいた頃から、唯がそうやってしょっちゅう白菜料理出してくれたから、俺は知れたんだよ。クタクタ白菜のうまさを。だから、好きでも嫌いでもないモンを贈るのも、新しい世界の開拓になって、いいと思う」
「なるほど……」
確かに、デパ地下で売ってるようなちょっと良いお豆腐って……好きでもなけば食べた事ないかも。
私も、特別お豆腐好きってわけじゃないけど……頂いたら嬉しいな。きっと、普段食べているお豆腐よりも贅沢な味わいなんだろうし。
「ありがとう仁ちゃん。それじゃあ、これにしてみようかな。すいません、この“大豆屋ムサシのなめらか豆腐”を3丁下さい」
説得力ある仁ちゃんの話で、即決。
私はケースの向こう側にいる店員さんに、注文をお願いした。
「ありがとうございます。ご一緒に、ごま油はいかがですか? ネギの香味が含まれている商品で、お豆腐にかけると一層美味しくお召し上がり頂けます」
「あ、じゃあそれも1つお願いしま」
「豆腐3、ごま油1。を、2セット。一つは贈答用、一つは自宅用。支払いはカードで」
私の隣からズイと割り込んで、店員さんにあれこれと伝える仁ちゃん。
「じ、仁ちゃん、いいよ。お代は私が……って言っても、仁ちゃんから頂いた生活費の中からお支払いするわけだけど」
「それは食費と、唯の日用品の為の金だろ」
「でも、私の都合で買うものだし。それに、毎月沢山お預かりしてるから、余剰金がすご」
「ずっと見てたら俺も食いたくなってきたし。今日の晩飯、これ使えるか?」
「そ、それは出来るけど……」
「あの~……どうされますか?」
私と仁ちゃんのやり取りに、困っている様子の店員さん。
「あっ、す、すいません」
「2セットを、カードで」
結局――仁ちゃんに買わせてしまった。
そして更に、ごくごく自然に商品の入った紙袋×2を受け取り、持ってくれる仁ちゃん。お水も入ったお豆腐は、地味に重いのに。
かっこいい。優しい。かっこ優しい。
なんて、改めてそのスマートさに惚れ惚れしてしまうけど……それ以上に心を占めるのは、申し訳ない気持ち。
「なんかごめんね。せっかくのお休みなのに……色々……」
デパートを出て、最寄り駅まで歩きながら……私は仁ちゃんの顔を真っ直ぐ見れないでいた。
「……どれもいらねぇと思う」
都内の傍デパ地下にて。
私が列挙した『一輝さんへのギフト候補』を、全てばっさりと切り捨てる仁ちゃん。
「仁ちゃん……」
私は真剣に悩んでいるのに。
『週末はどこかに行こう』というご厚意に甘えて、貴重な休日をギフト選びに潰させてしまってる身で、文句は言えた立場ではないけれど。
「あいつへの貢ぎ物はいらねえって言っただろ。唯を拉致ろうとした連中の黒幕も、まだあげられてない能無しだぞ。何日かあればわかるって大口叩いておいて」
「それでも、一輝さんにとって何の得にもならない調査を、快く引き受けてくれてるわけだし」
「得ならある。俺に恩を売れる」
うーん……仁ちゃん本人に恩を感じている様子がないのに、それはメリットとして成立しているのだろうか。
「あんな奴の事より、今日は唯のリフレッシュの日なんだから。もっと他に行きたいトコなかったのか?」
「仁ちゃんの気持ちは有難いけど……一輝さんへのお礼がまだだと思うと、気持ちが落ち着かなくて」
忘恩の輩。と言ったら大袈裟かもしれないけど。私はそれになってしまうのが怖い。
尽くすべき礼が未完のまま宙ぶらりんになっていると、自分の心も宙ぶらりんでソワソワしてしまうのが、性分なもので。
「……まぁ、唯らしいけど」
店舗ごとにと並んだ、透明なスイーツ・デリケースをキョロキョロと見ながら、仁ちゃんの後ろを歩く。
休日のデパ地下は大勢のお客さんでにぎわってて……体を斜めに傾けないとすれ違えないどころか、それでも肩と肩がぶつかってしまいそうな位、混雑していた。
普通の夫婦やカップルなら……はぐれないようにって手を繋いだりするのかな。
いや、しないか。テーマパークやイベント会場ならともかく、ここはデパ地下だもんね。イチャイチャしながらぶらつく場所じゃない。
そもそも、もしもはぐれてしまっても、スマホで連絡を取り合えばいい話だし。いくら人が多くても、手をつなぐ必要なんかないよね。
うん、たとえ普通の夫婦やカップルでもつながないな、きっと。
なんてゴチャゴチャと理由を並べ立てて、仁ちゃんと手を繋げない寂しさを紛らわせていたら。
「これとか、いいんじゃね?」
前を歩く仁ちゃんが、とあるお店の前で立ち止まった。
「え……お豆腐?」
冷蔵のデリケースに並んでいるのはお豆腐。
どうやら、大豆商品の専門店さんのよう。
「どうせ今日帰りがてら、あいつんちに届ける予定なんだろ? 保冷剤もらえばいけそうだし」
「あ、えと、そういう心配してたわけじゃ……一輝さん、お豆腐好きなの?」
「……さあ?」
「……まさかとは思うんだけど……嫌がらせ……じゃないよね?」
だって、一輝さんは仁ちゃんと同じ25歳。
恐らくは、お魚よりお肉。ロースよりカルビ。というお年頃の男性に、お豆腐を贈って……喜ばれるものだろうか。
そう思って真顔で尋ねてみたのだけど。仁ちゃんは息だけでふっと笑った。
「ちげーよ。俺からじゃなく唯から渡すんだろ? いくら俺でも、唯を加害者にしてまで嫌がらせしねえわ」
「じゃあどうして好きでも無い物を?」
「唯は誰かに何か贈る時、どうやってチョイスしてんの」
「どうって、普通に好きな物を聞いて……それを元に」
今までは、一輝さんに教えてもらった好きな物(スイーツなら生クリーム系、お酒ならワイン、とか)をベースに選んでいた。でもそろそろネタ切れで。
だから、一輝さんの事をよく知っている仁ちゃんに、アドバイスを貰おうと思ったんだけど。
「俺は、嫌いな物、アレルギーとかで食べれない物を聞く派。で、それ以外から選ぶ」
あ、成程。そういう方法もあるんだ。
でも、私にはかなり、ハードルの高いチョイス方法。
「仁ちゃんは色々なお店知ってるし、センスがいいからそういう選び方でも失敗しなさそうだね。私は……選択肢が多いと、相手に喜んでもらえる物を選べる自信が無いかも……」
「俺だってそんな自信ねえけど……物事って、好きか嫌いかだけじゃねえじゃん? 好き嫌い以上に“知らない”っていっぱいあると思わねえ?」
「知らない……?」
思わぬワードの出現。目を瞬かせてしまう。
「例えば、唯がこの前作ってくれた、団子と白菜のショウガスープ。俺、白菜ってあんまり積極的に食べる野菜じゃなかったんだよ。けど、唯は結構、料理に白菜使うだろ」
「うん。そうだね、サラダに炒め物にスープに……私の中で万能野菜にカテゴライズされているから」
「実家にいた頃から、唯がそうやってしょっちゅう白菜料理出してくれたから、俺は知れたんだよ。クタクタ白菜のうまさを。だから、好きでも嫌いでもないモンを贈るのも、新しい世界の開拓になって、いいと思う」
「なるほど……」
確かに、デパ地下で売ってるようなちょっと良いお豆腐って……好きでもなけば食べた事ないかも。
私も、特別お豆腐好きってわけじゃないけど……頂いたら嬉しいな。きっと、普段食べているお豆腐よりも贅沢な味わいなんだろうし。
「ありがとう仁ちゃん。それじゃあ、これにしてみようかな。すいません、この“大豆屋ムサシのなめらか豆腐”を3丁下さい」
説得力ある仁ちゃんの話で、即決。
私はケースの向こう側にいる店員さんに、注文をお願いした。
「ありがとうございます。ご一緒に、ごま油はいかがですか? ネギの香味が含まれている商品で、お豆腐にかけると一層美味しくお召し上がり頂けます」
「あ、じゃあそれも1つお願いしま」
「豆腐3、ごま油1。を、2セット。一つは贈答用、一つは自宅用。支払いはカードで」
私の隣からズイと割り込んで、店員さんにあれこれと伝える仁ちゃん。
「じ、仁ちゃん、いいよ。お代は私が……って言っても、仁ちゃんから頂いた生活費の中からお支払いするわけだけど」
「それは食費と、唯の日用品の為の金だろ」
「でも、私の都合で買うものだし。それに、毎月沢山お預かりしてるから、余剰金がすご」
「ずっと見てたら俺も食いたくなってきたし。今日の晩飯、これ使えるか?」
「そ、それは出来るけど……」
「あの~……どうされますか?」
私と仁ちゃんのやり取りに、困っている様子の店員さん。
「あっ、す、すいません」
「2セットを、カードで」
結局――仁ちゃんに買わせてしまった。
そして更に、ごくごく自然に商品の入った紙袋×2を受け取り、持ってくれる仁ちゃん。お水も入ったお豆腐は、地味に重いのに。
かっこいい。優しい。かっこ優しい。
なんて、改めてそのスマートさに惚れ惚れしてしまうけど……それ以上に心を占めるのは、申し訳ない気持ち。
「なんかごめんね。せっかくのお休みなのに……色々……」
デパートを出て、最寄り駅まで歩きながら……私は仁ちゃんの顔を真っ直ぐ見れないでいた。
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