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見るからに柄の悪い奴はちょっと優しくするだけで物凄くいい人に思われてちょっと羨ましい
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「お前がレオナルド・レノックス? 」
第30駐屯地に着任して一週間。
一通りの事務手続きや、関係各所への挨拶を終え……ようやく迎えた実務初日。
宿舎内の食堂で朝食をとろうとしていた所に、俺と同じ騎士服を着た、見るからに柄の悪そうな男達が話し掛けてきた。
「そうだが。何か?」
「やっぱり! 」
おそらく俺と同年代であろうリーダー格の男は、俺の返事に嬉々とした表情を浮かべ、断りもなく隣の席にどかっと座る。
「なぁなぁお前、女とモメて女王の護衛騎士をクビになったってマジなの?」
「せっかくのエリート人生を、女如きで棒に振るなんて馬鹿だねえ~!」
「つーか噂じゃ、お前女王ともイイ関係だったんだろ? 女王ってどんな女なの? 俺、肖像画でしか見た事ねぇわ!」
俺とリーダー男をぐるりと取り囲むように立ち、次々と質問を投げかけてくる若い騎士達。
こんな田舎町にまで例の噂が流れていようとは。どうして人は、他人のスキャンダルにこれほど興味を示すのか……。
「護衛騎士は、自らの意志で辞した。その理由等々に関して、品を欠いた初対面の相手に語るつもりは無い。陛下との関係も同様だ」
冷めた目で連中を見ながら淡々と答えると、男達の何人かが声を上げて笑い出した。
「品だってよ! さすが、名門貴族のエリート騎士様はおっしゃる事が違うよなあ! 」
「お顔立ちも、実に品が良くていらっしゃる! こんなのに迫られたら、そりゃ女王も啓示そっちのけで色狂うわなぁ!」
「色狂う?」
聡明なあのお方には不似合いな、下品な言葉にすかさず反応する。
「だってあの女王は、先月ノースリーフを台風が直撃する事だって、知らせてくれなかったじゃねえか! 男遊びにかまけて、天災を知らせる神の啓示を受けていなかった証拠だろ?」
「陛下は祖国の為、民の為に日夜尽くしておられる。なんの根拠もない推測とはいえ、無礼な物言いはやめるんだな」
「へへ、庇うのか。やっぱりそういう仲なんじゃねえか。こっちは家も畑もダメになって、町民が何人も死んだっつーのに。その間もあの女王は神の声も聞かず、美男騎士といちゃこらしてたわけだ。さすが一国の女王陛下様。いいご身分だな」
ガタン。
聞くに堪えぬ暴言の数々に、勢いよく立ち上がった。
普段ならば、有象無象の戯言など気にもとめないけれど。
この一週間、陛下に拒絶された理由を考え続け、衰弱していた神経は、安っぽい挑発の言葉にも容易に逆立てられてしまって。
「俺の事は好きに言えばいい。だが、あの方を口汚く罵るのは許さない」
「おっ! なんだ? やるのか?」
茶化したような笑みを浮かべながら立ち上がり、ファイティングポーズをとる、リーダー男。
それに呼応したかのように、取り巻き達が盛り上がり始める。
「やっちまえ! 王宮のお飾り騎士に、ガチ騎士の力をみせてやれ!」
「かなうわけねぇのになぁ~。こいつの腕っぷしの強さは基地一番だぜ?」
「はは、誰か救護班に連絡しといてあげて~?」
食堂にいた他の騎士達は、その様子を遠目で眺めるばかり。誰も止めようとはしない。
「この拳は陛下をお守りする為に鍛え上げたもの。お前のような下衆に振りかざすつもりは無い」
「かっこいいねぇ~。そうやって女王も口説いたのか? 世間知らずの小娘は、さぞ簡単に落ちただろうな?」
リーダー男の軽口に、俺の中で何かが切れた。
「んなわけあるかぁあああ!!!」
第30駐屯地に着任して一週間。
一通りの事務手続きや、関係各所への挨拶を終え……ようやく迎えた実務初日。
宿舎内の食堂で朝食をとろうとしていた所に、俺と同じ騎士服を着た、見るからに柄の悪そうな男達が話し掛けてきた。
「そうだが。何か?」
「やっぱり! 」
おそらく俺と同年代であろうリーダー格の男は、俺の返事に嬉々とした表情を浮かべ、断りもなく隣の席にどかっと座る。
「なぁなぁお前、女とモメて女王の護衛騎士をクビになったってマジなの?」
「せっかくのエリート人生を、女如きで棒に振るなんて馬鹿だねえ~!」
「つーか噂じゃ、お前女王ともイイ関係だったんだろ? 女王ってどんな女なの? 俺、肖像画でしか見た事ねぇわ!」
俺とリーダー男をぐるりと取り囲むように立ち、次々と質問を投げかけてくる若い騎士達。
こんな田舎町にまで例の噂が流れていようとは。どうして人は、他人のスキャンダルにこれほど興味を示すのか……。
「護衛騎士は、自らの意志で辞した。その理由等々に関して、品を欠いた初対面の相手に語るつもりは無い。陛下との関係も同様だ」
冷めた目で連中を見ながら淡々と答えると、男達の何人かが声を上げて笑い出した。
「品だってよ! さすが、名門貴族のエリート騎士様はおっしゃる事が違うよなあ! 」
「お顔立ちも、実に品が良くていらっしゃる! こんなのに迫られたら、そりゃ女王も啓示そっちのけで色狂うわなぁ!」
「色狂う?」
聡明なあのお方には不似合いな、下品な言葉にすかさず反応する。
「だってあの女王は、先月ノースリーフを台風が直撃する事だって、知らせてくれなかったじゃねえか! 男遊びにかまけて、天災を知らせる神の啓示を受けていなかった証拠だろ?」
「陛下は祖国の為、民の為に日夜尽くしておられる。なんの根拠もない推測とはいえ、無礼な物言いはやめるんだな」
「へへ、庇うのか。やっぱりそういう仲なんじゃねえか。こっちは家も畑もダメになって、町民が何人も死んだっつーのに。その間もあの女王は神の声も聞かず、美男騎士といちゃこらしてたわけだ。さすが一国の女王陛下様。いいご身分だな」
ガタン。
聞くに堪えぬ暴言の数々に、勢いよく立ち上がった。
普段ならば、有象無象の戯言など気にもとめないけれど。
この一週間、陛下に拒絶された理由を考え続け、衰弱していた神経は、安っぽい挑発の言葉にも容易に逆立てられてしまって。
「俺の事は好きに言えばいい。だが、あの方を口汚く罵るのは許さない」
「おっ! なんだ? やるのか?」
茶化したような笑みを浮かべながら立ち上がり、ファイティングポーズをとる、リーダー男。
それに呼応したかのように、取り巻き達が盛り上がり始める。
「やっちまえ! 王宮のお飾り騎士に、ガチ騎士の力をみせてやれ!」
「かなうわけねぇのになぁ~。こいつの腕っぷしの強さは基地一番だぜ?」
「はは、誰か救護班に連絡しといてあげて~?」
食堂にいた他の騎士達は、その様子を遠目で眺めるばかり。誰も止めようとはしない。
「この拳は陛下をお守りする為に鍛え上げたもの。お前のような下衆に振りかざすつもりは無い」
「かっこいいねぇ~。そうやって女王も口説いたのか? 世間知らずの小娘は、さぞ簡単に落ちただろうな?」
リーダー男の軽口に、俺の中で何かが切れた。
「んなわけあるかぁあああ!!!」
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