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信頼と愛情をミルフィーユのように重ねれば関係は壊れにくい
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「お揃いのネックレス……そんな……じゃあ本当に、お母様とリナルドおじ様が?」
先程の甘々ムードはどこへやら。
兄妹疑惑が生じた経緯について話すと、陛下はひどく動揺された様子で、俺の腕を掴んだ。
「ええ。私も信じられないのですが……」
「そんなわけないわ! 二人とも、不貞を働くような人じゃないでしょう? そんな過ちを犯せば、母は神の啓示を受けられなくなってしまうし……。あなたのお母様……レノックス伯爵夫人には確認したの? 真偽の程を?」
「いえ、実家に帰る余暇もありませんでしたし……それに母が知らなかった場合の事を考えると……。父の死から5年も経っているのに、今更夫の裏切りについて息子から聞かされたら……どれ程傷つくか」
夫を失い息子と離れ、広い屋敷で使用人達と暮らす母の事を想像する。気丈ではあるけれど、夫の不貞に心を痛めない程、鈍感な女性では無い。
「らしくもない。相手の気持ちなんて気にせず、猛進するのがあなたでしょう? 私だって、何度貧乳呼ばわりされた事か。前にも言ったけれど、結構傷付いていたのですよ?」
そうおっしゃり、うつむく陛下。すねた様な表情が、悶絶級に可愛らしい。
「申し訳ありません。ですが、たとえ貧乳でも愛してます。その事実は揺るぎようが無い。ですから悪口という感覚がなく言ってしまっていて」
「だったら、お母様に対しても同じよ。何が起ころうと、あなたがお母様を愛していて、お母様があなたを愛していれば、そこには確かな信頼関係が根付いている筈。何が起きても壊れたりはしない。私達だって、そうだったでしょう?」
「陛下……」
両の手で、俺の手を包み込んで下さる陛下。
そのお手は小さいけれど、女神のような包容力に満ちていて――俺に勇気を与えて下さる。
「……実家に行きます。母に、真実を確かめる為に」
決意を口にした俺を真っ直ぐに見つめ、陛下は静かに頷いた。
「私も、同席しても良い?」
「勿論です。ですが……お時間を作る事は出来ますか? 今日の式典の為に王都を離れるのも、大変な調整が必要だったのでは?」
「レオ、忘れているの? 来月、レノックス伯爵家で集会が開かれるでしょう。リナルドおじ様の、没後5年の追悼記念集会が」
「あ……」
俺は何という親不孝者だろう。父の命日を忘れているなんて。
「私の元にも、伯爵夫人から招待状が届いていたわ。女王が前騎士団長の追悼行事に出席するのは、公務の一環として認められているから、特別なスケジュール調整の必要も無い」
「わかりました。では、よろしくお願い致しま……ふっ……すいません」
言葉の途中でにやけてしまった俺に、首をかしげる陛下。
「また来月、陛下にお会いできるのだと思うと……つい」
「呑気な人ね……。確かめた結果、本当に兄妹だったらどうするつもりなの」
陛下は少し不安気な笑みを浮かべるながら、俺の頬をそっと撫でた。
凛々しい大国の主でいらっしゃるのに、時折みせる頼りなげなお姿が、俺の献身欲求を刺激する。
何があろうと、自分がこの方をお支えするのだという決意を、固くさせる。
この気持ちは、たとえ陛下が妹であったとしても、変わる事はないだろう。
けれど今は、戸惑う陛下に温度を合わせてさしあげたい。
「そうではない事を期待して、胸を膨らませておく事にします。というか……私は陛下が隠しておられる秘密は、血縁の事だと思っていたのですが。兄妹の可能性をご存知なかったのなら、あなたが私を拒んだ理由は一体……?」
「それは、今は置いておきましょう」
小鳥のようにか弱気な表情から一転、キリっとしたお顔で切り返す陛下。
これまで頑なに閉ざしてきた扉を開ける事には、まだ慎重になられているご様子。
「この件がはっきりしたら、お話し頂けますか?」
「その時の状況によるわ」
「打ち明けて頂けると信じております。そのお胸の、作り方と共に」
「……ええ、そうね……。鉄板を入れて男だと信じこませたり、パットをミルフィーユのように重ねて谷間を作ったり。人間、やろうとして出来ない事は無いものね」
あれ。
少々重くなってしまった空気を変えようと、陛下が頬を膨らませそうな事を言ってみたのに。
予想外に落ち着いたリアクションに、目を瞬かせてしまう。
「あなたといると、色んな可能性に気付く事が出来るわ。……ありがとう。レオ」
おっと。そうきましたか。
俺の心を満たす、女神の微笑み。
「あなたに笑って頂けるなら、私はなんだってします。私はあなたの……女王陛下の、護衛騎士ですから」
「いやいや。こんなド田舎に飛ばされた無能騎士が、何ほざいてんだよ」
ほんわかムードをぶち壊す乱暴な言葉。
驚いて、声がした方へと振り返る、俺と陛下。
墓地内の木陰から現れたのは、金髪碧眼の男。
この俺がたじろいでしまう程の、完璧な美男だった。
先程の甘々ムードはどこへやら。
兄妹疑惑が生じた経緯について話すと、陛下はひどく動揺された様子で、俺の腕を掴んだ。
「ええ。私も信じられないのですが……」
「そんなわけないわ! 二人とも、不貞を働くような人じゃないでしょう? そんな過ちを犯せば、母は神の啓示を受けられなくなってしまうし……。あなたのお母様……レノックス伯爵夫人には確認したの? 真偽の程を?」
「いえ、実家に帰る余暇もありませんでしたし……それに母が知らなかった場合の事を考えると……。父の死から5年も経っているのに、今更夫の裏切りについて息子から聞かされたら……どれ程傷つくか」
夫を失い息子と離れ、広い屋敷で使用人達と暮らす母の事を想像する。気丈ではあるけれど、夫の不貞に心を痛めない程、鈍感な女性では無い。
「らしくもない。相手の気持ちなんて気にせず、猛進するのがあなたでしょう? 私だって、何度貧乳呼ばわりされた事か。前にも言ったけれど、結構傷付いていたのですよ?」
そうおっしゃり、うつむく陛下。すねた様な表情が、悶絶級に可愛らしい。
「申し訳ありません。ですが、たとえ貧乳でも愛してます。その事実は揺るぎようが無い。ですから悪口という感覚がなく言ってしまっていて」
「だったら、お母様に対しても同じよ。何が起ころうと、あなたがお母様を愛していて、お母様があなたを愛していれば、そこには確かな信頼関係が根付いている筈。何が起きても壊れたりはしない。私達だって、そうだったでしょう?」
「陛下……」
両の手で、俺の手を包み込んで下さる陛下。
そのお手は小さいけれど、女神のような包容力に満ちていて――俺に勇気を与えて下さる。
「……実家に行きます。母に、真実を確かめる為に」
決意を口にした俺を真っ直ぐに見つめ、陛下は静かに頷いた。
「私も、同席しても良い?」
「勿論です。ですが……お時間を作る事は出来ますか? 今日の式典の為に王都を離れるのも、大変な調整が必要だったのでは?」
「レオ、忘れているの? 来月、レノックス伯爵家で集会が開かれるでしょう。リナルドおじ様の、没後5年の追悼記念集会が」
「あ……」
俺は何という親不孝者だろう。父の命日を忘れているなんて。
「私の元にも、伯爵夫人から招待状が届いていたわ。女王が前騎士団長の追悼行事に出席するのは、公務の一環として認められているから、特別なスケジュール調整の必要も無い」
「わかりました。では、よろしくお願い致しま……ふっ……すいません」
言葉の途中でにやけてしまった俺に、首をかしげる陛下。
「また来月、陛下にお会いできるのだと思うと……つい」
「呑気な人ね……。確かめた結果、本当に兄妹だったらどうするつもりなの」
陛下は少し不安気な笑みを浮かべるながら、俺の頬をそっと撫でた。
凛々しい大国の主でいらっしゃるのに、時折みせる頼りなげなお姿が、俺の献身欲求を刺激する。
何があろうと、自分がこの方をお支えするのだという決意を、固くさせる。
この気持ちは、たとえ陛下が妹であったとしても、変わる事はないだろう。
けれど今は、戸惑う陛下に温度を合わせてさしあげたい。
「そうではない事を期待して、胸を膨らませておく事にします。というか……私は陛下が隠しておられる秘密は、血縁の事だと思っていたのですが。兄妹の可能性をご存知なかったのなら、あなたが私を拒んだ理由は一体……?」
「それは、今は置いておきましょう」
小鳥のようにか弱気な表情から一転、キリっとしたお顔で切り返す陛下。
これまで頑なに閉ざしてきた扉を開ける事には、まだ慎重になられているご様子。
「この件がはっきりしたら、お話し頂けますか?」
「その時の状況によるわ」
「打ち明けて頂けると信じております。そのお胸の、作り方と共に」
「……ええ、そうね……。鉄板を入れて男だと信じこませたり、パットをミルフィーユのように重ねて谷間を作ったり。人間、やろうとして出来ない事は無いものね」
あれ。
少々重くなってしまった空気を変えようと、陛下が頬を膨らませそうな事を言ってみたのに。
予想外に落ち着いたリアクションに、目を瞬かせてしまう。
「あなたといると、色んな可能性に気付く事が出来るわ。……ありがとう。レオ」
おっと。そうきましたか。
俺の心を満たす、女神の微笑み。
「あなたに笑って頂けるなら、私はなんだってします。私はあなたの……女王陛下の、護衛騎士ですから」
「いやいや。こんなド田舎に飛ばされた無能騎士が、何ほざいてんだよ」
ほんわかムードをぶち壊す乱暴な言葉。
驚いて、声がした方へと振り返る、俺と陛下。
墓地内の木陰から現れたのは、金髪碧眼の男。
この俺がたじろいでしまう程の、完璧な美男だった。
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