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自分のせいだと泣く奴の9割が「そんな事ないよ」待ち
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父が訃報が入ったのは、大雨の夜だった。
あの日は……数日前から、建国以来最大量ではないかという程の豪雨が、王都とその周辺一帯に降り続いていて。
重大な任務だから、どうしても行かなければと言ってきかない父を、俺も母も必死になって止めたが――
父は一人馬に跨がり、発った。そして死んだ。山中の道なき道を駆けている時に、崖崩れに巻き込まれて。
後で騎士団の重役達に確認したが……リナルド・レノックス団長が何をしに、どこへ行こうとしていたのか。重大な任務とは一体何なのか――
把握している者は一人もいなかった。
わかっているのはただ一つ。
父の死は、間違い無く事故だったという事。
けれど今、俺の前に立つ麗しい人は……彼を殺したのは自分だと言う。
「父の死は事故です。あなたが殺したなんて……あり得ない……!」
そうは言いつつも、神妙な面持ちの陛下を前に、嘘をおっしゃっているわけではない事は理解できて――。
無意識に、肩に力が入ってしまう。
「いいえ私のせいよ。私が神の啓示を授かっていれば……リナルドおじ様の事故を防げたんだもの……!」
「……え……」
一気に緊張が緩んだ。
いつだかの陛下のお言葉では無いが……『ものすごくベタな展開』が見えてしまった気がして。
これは多分あれだ。
性格の良い登場人物が、誰かが自分をかばって死んだ、とか、事故等の原因にちょこっとだけ自分が関わっていた、というだけで、『私が殺した!』って言っちゃってる、物語にありがちなやつだ。
「え、ええとローラ様。あなたは責任感が強いゆえに、何でもかんでも自分のせいにして、悩み苦しみがちなお方だという事は存じておりますが……あの崖崩れを、啓示を元に予期出来なかったからといって、あなたが父を殺した事にはなりません」
「違う……違うの、私が女王として至らなかったせいで……神は……」
俺は全面的に陛下の責任を否定したけれど。当の御本人は、涙を流しながら首を横に振る。
あぁ……真面目すぎるのも考えものだ。
つまり陛下は……自分が啓示を授かれなかったせいで、父を事故死から守れなかったと悔やんでいらして。だから、息子である俺に申し訳が立たず、交際に踏み切れない……と、思い悩んでいらっしゃったのだ。
『え……そんな事ですか?』
それが、今の俺の正直な感想。
陛下には大変失礼だが、ここ数ヶ月の自分の苦悩がバカバカしくさえ思える。
だが、考えようによっては、良かったのかもしれない。
そういう事なら、俺がうまい事フォローして、お気持ちを楽にして差し上げれば、解決する。
『気にし過ぎです! あなたのせいじゃありません!』
そう繰り返し訴えて、理解して頂ければ……俺達の仲を阻む壁は無くなるのだ。
俺は深呼吸を一つ挟み、愛する陛下を説得すべく、腹に力を込めた。
「ローラ様! 啓示で天災人災を防げる確率は、100パーセントでは無いでしょう? それは、歴代どの女王陛下の時だって同じだった筈です。被害を防げない事故や事件は数多くもあった。たった一度の自然災害を防げなかったからといって……それがたまたま、父が関わる事故だったからといって……ご自分を責める必要は――」
「……無いの」
「は……? 無い? 何がです?」
「たまたまじゃ、無い」
「え、ああ、そういう――」
「私は……神の啓示を受けた事が無いの。女王になってから5年間……一度も」
「あ、え? 啓示を………受け………一度も…………???」
ええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!
体中に、電流が駆け巡るような、衝撃。
目も口も、体中の毛穴さえ全開にして、驚愕する。
「ちょ、あ、う、ええ!? だって、じゃあ今までの啓示は!? 今まで陛下は、何度も自然災害や、農作物の凶作や、反国家勢力の反乱を……啓示を元に予期して……実際に被害を防いだりしてこられたじゃありませんか!! あなたが神の啓示を受けた事が無いとおっしゃるなら……あれはどうやって!?」
「その理由は……これよ……」
涙を拭いながら、恵みの間へと……俺を誘なう陛下。
「……こ、これは……!?」
目の前には、なんとも意外な光景が広がっていた。
あの日は……数日前から、建国以来最大量ではないかという程の豪雨が、王都とその周辺一帯に降り続いていて。
重大な任務だから、どうしても行かなければと言ってきかない父を、俺も母も必死になって止めたが――
父は一人馬に跨がり、発った。そして死んだ。山中の道なき道を駆けている時に、崖崩れに巻き込まれて。
後で騎士団の重役達に確認したが……リナルド・レノックス団長が何をしに、どこへ行こうとしていたのか。重大な任務とは一体何なのか――
把握している者は一人もいなかった。
わかっているのはただ一つ。
父の死は、間違い無く事故だったという事。
けれど今、俺の前に立つ麗しい人は……彼を殺したのは自分だと言う。
「父の死は事故です。あなたが殺したなんて……あり得ない……!」
そうは言いつつも、神妙な面持ちの陛下を前に、嘘をおっしゃっているわけではない事は理解できて――。
無意識に、肩に力が入ってしまう。
「いいえ私のせいよ。私が神の啓示を授かっていれば……リナルドおじ様の事故を防げたんだもの……!」
「……え……」
一気に緊張が緩んだ。
いつだかの陛下のお言葉では無いが……『ものすごくベタな展開』が見えてしまった気がして。
これは多分あれだ。
性格の良い登場人物が、誰かが自分をかばって死んだ、とか、事故等の原因にちょこっとだけ自分が関わっていた、というだけで、『私が殺した!』って言っちゃってる、物語にありがちなやつだ。
「え、ええとローラ様。あなたは責任感が強いゆえに、何でもかんでも自分のせいにして、悩み苦しみがちなお方だという事は存じておりますが……あの崖崩れを、啓示を元に予期出来なかったからといって、あなたが父を殺した事にはなりません」
「違う……違うの、私が女王として至らなかったせいで……神は……」
俺は全面的に陛下の責任を否定したけれど。当の御本人は、涙を流しながら首を横に振る。
あぁ……真面目すぎるのも考えものだ。
つまり陛下は……自分が啓示を授かれなかったせいで、父を事故死から守れなかったと悔やんでいらして。だから、息子である俺に申し訳が立たず、交際に踏み切れない……と、思い悩んでいらっしゃったのだ。
『え……そんな事ですか?』
それが、今の俺の正直な感想。
陛下には大変失礼だが、ここ数ヶ月の自分の苦悩がバカバカしくさえ思える。
だが、考えようによっては、良かったのかもしれない。
そういう事なら、俺がうまい事フォローして、お気持ちを楽にして差し上げれば、解決する。
『気にし過ぎです! あなたのせいじゃありません!』
そう繰り返し訴えて、理解して頂ければ……俺達の仲を阻む壁は無くなるのだ。
俺は深呼吸を一つ挟み、愛する陛下を説得すべく、腹に力を込めた。
「ローラ様! 啓示で天災人災を防げる確率は、100パーセントでは無いでしょう? それは、歴代どの女王陛下の時だって同じだった筈です。被害を防げない事故や事件は数多くもあった。たった一度の自然災害を防げなかったからといって……それがたまたま、父が関わる事故だったからといって……ご自分を責める必要は――」
「……無いの」
「は……? 無い? 何がです?」
「たまたまじゃ、無い」
「え、ああ、そういう――」
「私は……神の啓示を受けた事が無いの。女王になってから5年間……一度も」
「あ、え? 啓示を………受け………一度も…………???」
ええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!
体中に、電流が駆け巡るような、衝撃。
目も口も、体中の毛穴さえ全開にして、驚愕する。
「ちょ、あ、う、ええ!? だって、じゃあ今までの啓示は!? 今まで陛下は、何度も自然災害や、農作物の凶作や、反国家勢力の反乱を……啓示を元に予期して……実際に被害を防いだりしてこられたじゃありませんか!! あなたが神の啓示を受けた事が無いとおっしゃるなら……あれはどうやって!?」
「その理由は……これよ……」
涙を拭いながら、恵みの間へと……俺を誘なう陛下。
「……こ、これは……!?」
目の前には、なんとも意外な光景が広がっていた。
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