弱テン才

愚者

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一章【蒼白の洞窟編】

プロローグ

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……あぁ………
目の前に広がる地獄絵図…最愛の親友から感じる恐ろしくも事実を受け入れざる終えない血の臭い

…死のう

俺はそっと立ち上がりマンションの階段をゆっくりと登った。最愛の友を胸に抱え俺はゆっくりと一段を踏みしめて登った。
何度遊んだだろう。何度お互いで笑いあい何度お互いで泣き。苦しみを分かち合っただろうか
わからない程体験した。
たった一つの過ちで…俺は最愛の親友を

殺してしまった。


~~~~


「高校どうする?」
「そうだなぁ…ま。あいつみたいにならないように頑張るわ」
「そうだな!」
俺は机にうずくまるように寝ていたふりをしていた。腕のなかに出来た自分自身で作り出した暗闇のなかに閉じ籠っていた。勉強もずっと登校してなかったせいで何もわからない。運動も部活に行けてなくて分からない。そんな俺は学校で一人浮いていた。高機能自閉症持ちで上手く人と絡めなくてそしておまけに…
「おい。起きろよ奇形児が」
「うーわ…死んだ虫見たいな顔してる」
「やだぁ!こわい!」

「…なに…?」
「お前…」

「いつ見てもキメェ指してんなァ!!」
自分の回りの全ての人間が笑う。俺の小指を見て笑う。
俺の小指には関節がなかった。

「やめろよ!!!!」
「あぁ?なんだよ…お前」
「なんでお前らは人の気持ちを考えないで傷付けるんだ!!!!」
「そんなのきまってんじゃんw」
「だって…面白いから」
「それともあれか?柿崎?お前も弄って欲しいのか?」
「…あぁ!上等だよ!お前らがそんなバカなら俺はお前らが間違ってるって証明してやる!今に見てろ!お前らはその性格で一生後悔することになるぞ!」
柿崎の発言に皆が大爆笑する。俺だけはその時笑いもせず本当に信じて良い人間を知った。
「…悟。行こうぜ」
「あぁ…」


~~~~

「…俺達が進級してからすぐこれだ…」
「なんで助けてくれたんだよ。これじゃお前も巻き込まれるだろ?」
「小学校の頃俺が虐められたとき…お前助けてくれただろ」
「あの時。お前に生き方を教わったんだ。だから俺も真似してみた」
その時彼は優しい顔をしていた。俺は初めて信頼できる友達を見つけた
「……ありがとな…」
「おうよ」

~~~~

「俺は!お前のためを思って!」
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
「今からでも遅くないんだよ。勉強しに行こうぜ…それともあれだ!俺の会社を紹介するよ!な?」
「黙れ!勝ち組の癖に!何が勉強しに行こうだ!何が仕事を紹介するだ!お前だって俺の事バカにしてるんだろ!?キチガイでバカでヘタレだって!」
「そんなことない!俺はお前のことは…」
「偽善者ぶるな!大嘘つき!お前なんか…お前なんかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

~~~~

「…ごめんな……ごめんな…お前が俺に嘘つくわけないのに……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は屋上で一人で泣いた。最愛の親友を自分の手で。この友人が守ってくれた手で奪ったんだ。ゆっくりと死体を置きマンションの鉄柵を越える
「柿崎…今…俺も行く…お前に謝らせて欲しい。」

踏み出した一歩は空白で俺はその重心を空中に投じた。最後に見えた走馬灯は今まで柿崎と行ったさまざまな旅行の数々…あんな俺でも愛してくれた親や兄弟…

もうそろそろ地面だ。俺はその瞬間意識が消えるんだ…恐怖はある。だけど俺に死の拒否権はもうない

…当たった感覚がしない…それどころか身体が軽い。だけど意識はまだ残ってる
あれ…死ってこんなにあっさりだったっけ…


「はぁっ……はぁっ…!…何してるの!?君!?」
声と同時に怖くて閉じてた目をゆっくりとあける。ぼやけた視界が徐々に綺麗になっていくとそこは都会のビルの森でもアスファルトの上でもなかった
俺は足を捕まれていた。そして辺りは何故か暗い。見渡す限りの洞窟。床を見ると深い深い暗闇の穴
足をつかむ正体を見ると
そこには緑髪の角の生えた女の子がバッサバッサと飛びながら俺の足を掴んでいた。

俺は…死んでない…?何が起こっている…?
「とりあえず引っ張りあげるからね!動かないでよ!」
ゆっくり視界が上がっていく…俺は夢でも見てるのか…?分からない…だとしたらこの女の子は天使か悪魔か?
あんな高いところから落ちたんだ。死んでないわけがない。
そう思いながら俺は死を断られるように引っ張られた
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