弱テン才

愚者

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一章【蒼白の洞窟編】

四話 優しい朝御飯

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目が覚める。
隣ではエメラがぐっすり眠っていて俺の胴体をすべて掴んで眠っている。身動きが取れないし地味に力が強いから痛い。
「……むにゃ……うへへぇ…」
そう寝言を言いながら俺の体に噛みつく。さっきからそれをされまくって俺の横腹は歯形だらけになっているだろう…痛いけど起こそうにも起きないしずっと寝てる。ディアさんに助けを呼ぼうにも声を出すほど喉が潤っているわけでもない。
「……エメラァ~起きてぇ~…」
「あ。おはようございますルテロちゃん…ってそのお腹の横の歯形どうしたんですか?」
「助けてください。力が強すぎて出れないです…」
「あら…ふふっ…分かりました。今離してあげますね」
そういうとあのエメラの手をいとも容易く引き剥がしエメラをお姫様抱っこしてそっと別の場所に移した。
「…あの…ありがとうございます…」
「いえいえ。良いんですよ!それにエメラちゃんを見てるとなんだか昔を思い出すんです」
そういうとエメラの髪の毛を退けるようにおでこを撫でてディアさんは明るい笑顔で
「…可愛いなぁ……ふふっ…起きてください。朝ですよ~」
と小声で言っていた。子供が大好きなんだろう
「さ~て…ルテちゃん!朝御飯は出来てますよ♪」
「は~い」


居間に行くと三人分のホットケーキらしきパンと白い液体…そしてみたことない色した野菜千切りと…理想の朝御飯なのだろうと言うのは分かるが如何せん地球上で作られたもので作ってないことがよく分かる。何年ぶりかな…
「あれ?一気に生活レベルが上がったな」
「どうかしましたか?」
「いえっなにも」
「…まぁ……せっかくここに落ちて来たんですから…ゆっくりお話しながら朝御飯を食べましょう」
「…はい。」
…誰かと一緒に朝食食べるの
「先に食べちゃいましょう!ルテロちゃん。一緒に」 
「食物の全てに感謝して。おいしく食べさせていただきます♪」
そういうとディアさんの前の食事がほのかに光を出し美味しそうな湯気出し始めた。
「食物の……?」
「あれ…ルテロちゃん…?」
これがこの世界のいただきます…か…長いな…?しかもなんか明らかに料理に変化起こってるし…まぁ郷に入ってはって言うし…えっと
「食物の全てに…えっと…感謝して…おいしく…えと…いただきます!」
「…もしかしてルテロちゃん。食べる前の挨拶を知らないのですか?」
「……知らないです…」
「じゃあこれから覚えましょう!もう一回言いますよ!せーの」
「食物の全てに感謝して」
「食物の全てに…感謝して」
「おいしく食べさせていただきます!」
「…おいしく食べさせていただきます…?」
そういうと目の前の料理がほのかに光だし美味しそうになった。
「…おぉ…」
机においてあったナイフで一口サイズにして口にいれてみる。ただのホットケーキモドキなハズなのに良い香りが口のなかで起こり…程よく口で生地が溶ける…うん…悪くない…
「…おはよぉ…ルテロッテ…」
「おはようございます!エメラちゃん!」
「うわぁ!?なにこれ!?」
エメラは目の前の朝食をみると目を輝かせて椅子に座った。そして何事もなかったかのように
「あーん!…………ん?」
「あ。エメラちゃん…」
「…ん~美味しいんだけど…何て言うか…微妙かな……」
「エメラ。一切れ貰って良い?」
「うん。良いよ?」
俺はエメラの朝御飯を一切れ貰って口のなかに入れてみた。さっきの美味しさとは一変。そこには…まぁなんとも言えぬ…美味しい味なのだが何処かインスタントで作ったときに感じる。「味は良いんだけどなんかなぁ」という…感情に飲み込まれた。
「エメラちゃん!ちゃんとご飯には感謝して食べないとダメですよ?感謝して食べないとご飯は美味しくなってくれないんです。」
「…え!?そうなの!?初めて知った…何て言えば良いの?」
「食物の全てに感謝して。おいしく食べさせていただきます。ですよ♪」
「わかった。やってみる!!」
「食物の全てに感謝して!!おいしく食べさせていただきます!!」
あれ?一発で成功してなかったか?…いや俺の物覚えが悪いだけか…
エメラの目の前の食事はほのかに光だし美味しそうになった…。いや…原理が分からんのだが…
「ディアさん…なんでこうなるんですか…?」
「ん?この挨拶の原理を知りたいんですか?それはですね…」
「魔法です!」
……魔法?魔法なんてそんなファンタジックでアメイズィングなことがあるわけないだ…
「これも魔法なの!?すごい!」
ろって言おうと思ったが…まぁドラゴンがいる時点で信じるしかなさそうだ
「そうだ!ルテロちゃん!エメラちゃん!私が二人にいろんな事を教えてあげましょう!この世界は不思議だらけ!多分二人とも興味が湧くと思いますよ!」
「…良いの!?やったぁ!!」
「よろしくお願いします!」
「まぁ…その前に昨日のお話の続きをしたいのですが…よろしいですか?」
昨日の続きですか…
「えぇ…話しますか…」
「昨日の話の続きです。どうして私が落ちてきて欲しくなかったか。それについて長いですがお話しさせてください」
そう言うとディアさんは口を開き話し始めた
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