勇者の妹ですが、病弱で死んでしまったら魔王が求婚して生き返らせてくれました!

かぎのえみずる

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星流れのデート編

第三十二話 不機嫌なラクスター

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 ラクスターは材料をつまみ食いしながら、瞬いていた。
「雄叫び聞こえたから何かと思ったら、そういうことか」
 私はお弁当を作りながらこくこくと頷く。
 パンの生地を捏ねて、今は発酵を待っている。休憩時間代わり。
 本当は治癒団の仕事があったのだけれど、ゼロが無理矢理ミディ団長に私の休みを命じた。
 ミディ団長は拗ねながらも見送り、今は厨房で私とラクスターの二人でお弁当作りを頑張っている。

 パンを焼いて、そのパンに合うようなジャムを作ってパンに挟ませて。
 それから、干し肉と果物、甘露水を持って行こう!
 果物も少し加工したほうがいいか悩んでいたら、ラクスターはじっと私の顔を見ている。
「どうしたの?」
「いや、楽しそうだなって。お前も女の子ってえやつなんだなーって」
「そう、なの? あ、そうそう、で、デートの日、護衛要らないわ」
「え?!! ば、馬鹿言うなよ、あったほうがいいだろ?!」
「でも、ゼロがいるから……護衛はつけるなって言われたの」
「はぐれたときどうするんだよ。こんな面白そうな、いや、大変なお出かけなのに」
「本音が出たわね、ラクスター」
 じっと睨むと、ラクスターはえへへと笑ってごまかしてから材料の中にある林檎をまたつまみ食いした。

「しかしあの魔王がお前とデートなあ。よっぽどお前の心欲しいのな」
「あの魔王ってラクスターの知ってるゼロってどんな魔物なの?」
「女人なんて知りません要りません、精々利用したり性欲のはけ口にするだけですって顔してた。心から大事にする奴なんていなかった記憶だぞ」
「今のゼロとまったく違うわね……」
「そう、だから気味悪くてなあ。女なんか侍らせ放題だったくらいだぜ? それがお前がきてからは、お前一筋だ。他の魔物も面食らったりしてないか?」
「シラユキさんがとても応援してるのだけは分かるわ」
「ああ、あの人はそういう話題好きだからな。純愛な話とか好きそうだし、弱そうだしな」

 ラクスターはお留守番だと聞くと、途端に機嫌を曲げて勢いよく林檎を咀嚼し食べ終えた。
 拗ねてるのが分かるけれど、デートというのなら二人きりじゃないといけないから……。

「お土産何か探すわね」
「ちぇっ、無理しないでいいんだぜ」
「私ね、星流れの日はいつも寝込んでいたから楽しみなの」
「……知ってるゥ。調査では、お前は毎度寝込んでいたのうんざりするくらい書いてあったからな」
「天使の情報はすごいわね。だからね、こうしてお出かけ出来るなんて夢みたいなの」

 嬉しくてラクスターに笑いかけると、ラクスターは私の顔をじっと見つめてから、何故かより不機嫌になり厨房から出て行った。
 すれ違いでシラユキが入ってくる。シラユキは振り返り気味に、ラクスターを気にしながら厨房へ入ってきた。

「何だかお気に入りの子でも取り上げられた顔してましたわね。どうしたのかしら」
「分からない。ラクスターにお留守番お願いしたらああなっちゃって」
「ああ、貴方の側がお気に入りでしたからね。それはあの子ならあの顔しちゃうでしょうね。ふふ、可愛いところありますのね、あの子にも。さて! 奥様、私もお弁当作り手伝いますわ、遅れてごめんなさいませ!」


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