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第三章 アレクサンドル編
第六十話 先生からのお説教
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「すごいわね、二人の女性を一気に妬かせるなんて」
「し、シルビア、その」
「いいわよ、別に。しょうがありませんもの、キャロライン姫様を諦めさせるには有効的ですし? 私とは何も約束を交えてないものね、今の貴方は」
「シルビア……戦いにきたのか?」
「話をずらすのは貴方とメビウスの特権ですわね。いえ、私は此処で見守ってますの。メビウスが負けるのを」
シルビアはメビウスの味方であるのにどういうことだ?
シルビアとメビウスの目的は一緒だと先ほど言っていたのに。
「ヴァスティが闘ってるからか?」
「そう、あのお姫様のパーティーの中にヴァスティがいるのは貴重なの。此処で戦いに私達が勝ってしまっては、ヴァスティとキャロライン姫様が仲違いしてしまうだけだわ。それはね、私達の目的にそぐわないの」
「……目的は何なんだよ、お前らは…………」
「ここまであからさまでも判らない? 私は貴方を、メビウスは……ヴァスティを生かす為に動いているのよ。それ以上は言えない。誰にも内緒よ」
「メビウスが?!! 破滅の神なのに?!」
「理由は全て終わってから聞くといいわ、あのお姫様と神様が完全に結ばれた頃に。今はでも敵だから。大人しくしてくださってね」
シルビアは短剣を取り出すと、俺に動くなと言わんとし、そっと首の近くに短剣を置く。
短剣を置きながら、シルビアはアレク先生の方向を見やり、微笑む。
「ああ、先生はどうぞ詠唱し続けてくださいませ。この人の場合予定外の行動しやすいから、こうして脅してるだけですの。先生のお力なく、この戦いは貴方達にとっては不利ですから」
アレク先生は一通り詠唱を終えたらしく、鳳の魔導書をばちんと閉じると、辺りが暗くなり、真翠の灯りがアレク先生に集う。
「シルビアさん、協力はできないんですか、君とリーチェくんが手を組めば、出来事はきっと簡単ですけれど」
「それはね、きっと無理なの。私はどうあっても悪役というポジションですの、メビウスもね。理解されようとも思いません、理由を問われれば言えるけれど、きっと許されない行為をしているのも判ってますわ。運命という筋書きに則しながら、私もメビウスも一番大事な出来事を完遂しようとしていますの」
「私からは、運命という筋書きが本当にあるのであれば、……この世界がリーチェくんの言う通り、ゲーム通りにしかいかない世界であれば、ゲーム通りでないリーチェくんとシルビアさんの二人が手を組むことが、最善だと思うのですけれどね。だってそしたら、奇跡を起こせるじゃないですか」
「先生、――……私もリーチェも、奇跡を起こせなかったの。だからこその今よ」
「なるほど、貴方は確かリーチェくんの話では二回目の世界だと仰っていたらしいですからね、手を組んだ過去もあったのでしょう、納得です。しかしてどうして一回で諦めるのかは、疑問ですね。何回も転んでも起き上がれるのは、若者の特権でしょう?」
「! ……先生」
シルビアは瞬き、アレク先生をじっと見やってから躊躇いを初めて見せた。
「さぁ少し離れてください、初めての召喚魔法ですから」
アレク先生はシルビアから視線を外し、壁に追い詰められて奥歯を噛みしめてヴァスティを睨むメビウスへ、真翠の灯りを大きな鳥の姿にして向かわせる。
「コモレド・サンチェルド・ドルフ――現れ給え、風の善王シルフィード!」
現れた真翠の鳥はメビウスをかっ喰らうように体当たりすると、真翠の灯りはメビウスの身体を傷つける。
メビウスは血反吐を吐きながら、シルビアへ視線を向け、笑った。
シルビアは俺から短剣を外し、メビウスの元へ参ろうとしていたから、咄嗟にシルビアの手を掴んだ。
「俺は」
「感情的に不用意なことを言わない方が宜しくてよ。お姫様が、見てる」
「俺は! どうしてか判らないけど! 君が悪に染まろうとするのが、悲しいんだ! それが運命通りだとしても!」
シルビアは俺の顔をじっと見つめ、小さく顔を歪ませ、俺の頭を撫でた。
「貴方は何度でも、私を揺るがすのね。いいわ、それなら少しだけ記憶を返してあげる。その上で判断するといいわ――この飴玉を、一人で。もしくはイミテさんしかいないときに、食べて眠るとよろしいわ。これは過去が見えるの」
シルビアは俺に緑のきらきらとした飴玉を一粒寄越すと、それきり俺を見ることなく、メビウスを支えてキャロライン達に何か悪役の口上を告げてから去って行く。
キャロラインは豪炎茸を手にして、喜ぶも、すぐに倒れるヴァスティに気付くと、悲鳴をあげてヴァスティに駆け寄った。
会場が一気に固まりが溶けたのか人々が動き出し、キャロライン達のほうへ集まっていく。
アレク先生だけは、俺を見守っていた。
「……先生」
「何ですか、タバスコなら飲みませんよ」
態と場を和ます言葉を告げるアレク先生に、大人らしさを感じた。
思わず、微苦笑し俺は飴玉を大事にタブレットにいれ仕舞う。
「……俺がもしも、シルビアやメビウス側へいったらどうします?」
「そのときにならないと分かりませんね、事情があるのは分かり始めましたし」
「し、シルビア、その」
「いいわよ、別に。しょうがありませんもの、キャロライン姫様を諦めさせるには有効的ですし? 私とは何も約束を交えてないものね、今の貴方は」
「シルビア……戦いにきたのか?」
「話をずらすのは貴方とメビウスの特権ですわね。いえ、私は此処で見守ってますの。メビウスが負けるのを」
シルビアはメビウスの味方であるのにどういうことだ?
シルビアとメビウスの目的は一緒だと先ほど言っていたのに。
「ヴァスティが闘ってるからか?」
「そう、あのお姫様のパーティーの中にヴァスティがいるのは貴重なの。此処で戦いに私達が勝ってしまっては、ヴァスティとキャロライン姫様が仲違いしてしまうだけだわ。それはね、私達の目的にそぐわないの」
「……目的は何なんだよ、お前らは…………」
「ここまであからさまでも判らない? 私は貴方を、メビウスは……ヴァスティを生かす為に動いているのよ。それ以上は言えない。誰にも内緒よ」
「メビウスが?!! 破滅の神なのに?!」
「理由は全て終わってから聞くといいわ、あのお姫様と神様が完全に結ばれた頃に。今はでも敵だから。大人しくしてくださってね」
シルビアは短剣を取り出すと、俺に動くなと言わんとし、そっと首の近くに短剣を置く。
短剣を置きながら、シルビアはアレク先生の方向を見やり、微笑む。
「ああ、先生はどうぞ詠唱し続けてくださいませ。この人の場合予定外の行動しやすいから、こうして脅してるだけですの。先生のお力なく、この戦いは貴方達にとっては不利ですから」
アレク先生は一通り詠唱を終えたらしく、鳳の魔導書をばちんと閉じると、辺りが暗くなり、真翠の灯りがアレク先生に集う。
「シルビアさん、協力はできないんですか、君とリーチェくんが手を組めば、出来事はきっと簡単ですけれど」
「それはね、きっと無理なの。私はどうあっても悪役というポジションですの、メビウスもね。理解されようとも思いません、理由を問われれば言えるけれど、きっと許されない行為をしているのも判ってますわ。運命という筋書きに則しながら、私もメビウスも一番大事な出来事を完遂しようとしていますの」
「私からは、運命という筋書きが本当にあるのであれば、……この世界がリーチェくんの言う通り、ゲーム通りにしかいかない世界であれば、ゲーム通りでないリーチェくんとシルビアさんの二人が手を組むことが、最善だと思うのですけれどね。だってそしたら、奇跡を起こせるじゃないですか」
「先生、――……私もリーチェも、奇跡を起こせなかったの。だからこその今よ」
「なるほど、貴方は確かリーチェくんの話では二回目の世界だと仰っていたらしいですからね、手を組んだ過去もあったのでしょう、納得です。しかしてどうして一回で諦めるのかは、疑問ですね。何回も転んでも起き上がれるのは、若者の特権でしょう?」
「! ……先生」
シルビアは瞬き、アレク先生をじっと見やってから躊躇いを初めて見せた。
「さぁ少し離れてください、初めての召喚魔法ですから」
アレク先生はシルビアから視線を外し、壁に追い詰められて奥歯を噛みしめてヴァスティを睨むメビウスへ、真翠の灯りを大きな鳥の姿にして向かわせる。
「コモレド・サンチェルド・ドルフ――現れ給え、風の善王シルフィード!」
現れた真翠の鳥はメビウスをかっ喰らうように体当たりすると、真翠の灯りはメビウスの身体を傷つける。
メビウスは血反吐を吐きながら、シルビアへ視線を向け、笑った。
シルビアは俺から短剣を外し、メビウスの元へ参ろうとしていたから、咄嗟にシルビアの手を掴んだ。
「俺は」
「感情的に不用意なことを言わない方が宜しくてよ。お姫様が、見てる」
「俺は! どうしてか判らないけど! 君が悪に染まろうとするのが、悲しいんだ! それが運命通りだとしても!」
シルビアは俺の顔をじっと見つめ、小さく顔を歪ませ、俺の頭を撫でた。
「貴方は何度でも、私を揺るがすのね。いいわ、それなら少しだけ記憶を返してあげる。その上で判断するといいわ――この飴玉を、一人で。もしくはイミテさんしかいないときに、食べて眠るとよろしいわ。これは過去が見えるの」
シルビアは俺に緑のきらきらとした飴玉を一粒寄越すと、それきり俺を見ることなく、メビウスを支えてキャロライン達に何か悪役の口上を告げてから去って行く。
キャロラインは豪炎茸を手にして、喜ぶも、すぐに倒れるヴァスティに気付くと、悲鳴をあげてヴァスティに駆け寄った。
会場が一気に固まりが溶けたのか人々が動き出し、キャロライン達のほうへ集まっていく。
アレク先生だけは、俺を見守っていた。
「……先生」
「何ですか、タバスコなら飲みませんよ」
態と場を和ます言葉を告げるアレク先生に、大人らしさを感じた。
思わず、微苦笑し俺は飴玉を大事にタブレットにいれ仕舞う。
「……俺がもしも、シルビアやメビウス側へいったらどうします?」
「そのときにならないと分かりませんね、事情があるのは分かり始めましたし」
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