異世界転生した攻略キャラから提案ですが姫様隠しキャラ落としませんか?

かぎのえみずる

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第四章 アッシュ編

第六十九話 もう後ろは振り向かない、前だけを見る

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 夢から目が覚めれば、俺とアッシュは起き抜けのけだるさにやられていた。
 夢の中で、納得のいく答えが見れたならいいのだが。
 起き上がるなりアッシュのほうを見やれば、アッシュは目元を隠しながら、笑っていた。


「間抜けだな。俺は。妹と家族にすべて背負わせてしまったことすら、忘れていたようだ」
「暗殺ってぇわけでもなさそうだ、あいつの考えてることがいよいよわからない」
「メビウス、か……一つ、意趣返しをしてやりたい。待ってろ、意趣返しになりそうなものを一つ持っているんだ俺は」

 アッシュは自室のデスクから、やたらきらきらと紫色に光るそれを取り出して、にやりと笑いかけた。

「それ、もしかして」
「なぜだか、持っていた。ピュアクリスタルだ、俺にはもういらない。君に闇に傾きかけているなど心配されるという、稀有な体験は二度とごめんだな」

 紫色のピュアクリスタルを受け取るなり、俺の中で何かがひらめいた。
 これは、……多分アイテムを生み出すときのレシピを覚える感覚に似ている。
 脳裏によぎった単語は、「聖乙女のティアラ」――これはアイテム名だろうか。
 まじまじとピュアクリスタルを見つめる。
 そもそもあいつらはなぜピュアクリスタルに拘るのだろうか。
 あいつらなら自力で願いすら叶えられそうなのだけれど。

 紫色のピュアクリスタルは、不思議と昔から持っていたかのように、手になじんだ。






 後日きちんと金色香草と仰々しい手紙が届いた。
 個人的な手紙だというので、こっそりあけてみれば、王様からひと言メッセージが書かれていた。


『我が子らは、君の采配にかかっているかもしれないな』


 手紙をしまいながら歩いていると、キャロラインと話すアッシュに出くわす。
 どうやら先日の婚約者候補にあがっている話について、語り合っているようだった。

「俺は随分君の心を大事にしない態度を取ってきていたと思う。君や、とある馬鹿を見ていて、人を愛する思いの伝え方を学んだつもりだ」
「アッシュ様……あの」
「大丈夫、君が誰を好いているかは分からなくとも、俺は選ばれないのは分かっているんだ。断っておくから安心して思い人と結ばれるといい――幸せにならないと、この俺をふるんだから許さないぞ」
「っふふふ、はい、分かりました! 絶対に……幸せになります」

 盗み聞きした話は知らんぷりしたほうがよさそうだ。

 ただ後で果物を差し入れしたところ、盗み聞きがばれて俺は怒られるし、何故だかため息もつかれた。

 アッシュの顔つきはそれでも、つきものがとれたようにすっきりとしていたのでほっとはした。

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