婚約者様と私は世界一のずっ友~公爵様はゲイですが腐女子にはたまりません~

かぎのえみずる

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第二十二話 壊れないでほしい硝子細工たち

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「ガニメデ様、あまりサリスを虐めないであげて」
「やあやあローズ、今日の君も美しいね。今日の君には黄色いドレスが似合うかな」

 リーゼルグ先生の授業を受けに来れば、教室に先に入っているガニメデ様。
 妾は呆れて、腕を組んで睨み付けた。
 殿方はこうやって腕を組んで胸を強調してお願いすれば、だいたいは話を聞いてくれるのに、ガニメデ様は流石に聞いてくれない。
 王族の傲慢さが彼をそうさせるのか、それとも彼だから傲慢なのかは判らない。

「ローズ、君は忘れているものが一つあるなあ」
「なあに、何にも忘れてないわ妾。ここのところ物覚えがいいの」
「そうじゃないな~~~なにかないかな」
「締め切りかしら? この前のアシュ×ルルの妄想本の締め切りはもう終わって無事出したし……」
「はっはっは、君は本当に! 自分のことになると記憶喪失になるね!?」

 ガニメデ様は机の上に妾を乗せて、顔を引き寄せた。
 キスの手前で止まるのは、妾が咄嗟に掌で口元をあてたから。

 そうだった。この方から。妾は婚姻を迫られていたんだったわ。

 妾の仕草で快活に笑ってから、ガニメデ様は不満を目に現す。

「やっとか。ボクだって男なんだよ、判るかね。この数日君は。サリスサリスと」
「だって可愛いんだもの」
「ボクだって可愛いだろう!? 見てくれサリスに負けない可愛さだし、世界が誇る美しさだ!」
「そういうところ、嫌いよ」
「君は! それならいったいボクのどういったところを好きになってくれる!?」
「なあんにもないの、ごめんなさい」
「ひどい話だな。ボクは思うんだ、ボクたちは相互理解が足りないのではないかと」
「そうかしら? 充分足りてるわ。貴方は変人、妾は聖女。それでいいじゃない」
「……ボクはね、君のこと。ドールにする以上に興味がでてきたんだけどな」

 そんなこと顎に手を添えられて見つめられても。
 何故だか貴方にはぐっとこないのよね。
 変人だからかしら。
 にらみ合っていれば、教室にやってきたリーゼルグ先生に咳払いされる。

「殿下、授業の時間です。出て行っていただけませんか」
「聖女の力が増強される時間か、それは確かに邪魔できない。またね、ローズ姫。はやいところボクのものになってくれよ」
「お断りよ、馬鹿殿」
「あっ、ばか殿つったな!?」
「早く帰って。授業できないの~」
「ああもうっ。小憎たらしいところさえも愛くるしいね!? またね!?」
「転移・マジャヨカバ!」
「普通に帰ろうとしたのにわざわざ地中から埋めて帰そうとしなくていいよ!? あれ結構痛いんだからな!?」
「痛みは、全部、妾からのなら好きデショ」
「……まったく、君はたまらないなあ!」

 足蹴にしてやれば、ガニメデ様は消え去った。
 リーゼルグ先生からの同情した眼差しが印象的で、妾は溜息をついたの。

 *


 今日は騎士隊についていって、訓練あとの騎士の怪我を手当てしていくお役目。
 アシュは訓練の先生をつとめている。
 アシュに皆いなされて、打ち身状態。アシュはルルとくっついてから、絶好調ね。
 怪我を妄想しながら手当てしていけば鐘が沢山つかれる。
 最近はロス様をあまり見かけない。それでも祝福があるのだから、ロス様はどこかでしっかり妾を見ているのだろうけれど。

「ローズ、どうだね。休憩にしないか」

 アシュが救護班のテントにやってきて、お茶と軽食を見せてくれた。
 妾は有難く頷き、区切りのいいところで手当を終える。
 テントから出て、外の簡易テーブルと簡易席につけば、アシュはご機嫌だ。

「君の愛しの人は最近どうだね」
「そうね、まるで朝顔みたい。話しかけるとぱっと顔を向けるけど、照れて俯いちゃってるの」
「ははははは、本当に可愛らしい奴だな。ルルが駄目になったら粉掛けてみよう」
「駄目よ、あの子のこと気に入ってるんだから」
「おや、ホモ大歓迎の君が珍しい」
「……ルルに言いつけるわよ?」
「それは勘弁してくれ。折角の蜜月なんだよ」
「そのおはなし、詳しくしてほしいのだけれど」
「だあめ。君にすれば、町中に流布されてしまう、本の形で」
「誰も分かりやしないわ、見た目はサリスにしてるもの」
「そうだね、ぱっとみ君の教師とサリスの恋バナだ。素晴らしい趣味だ」

 アシュはお茶を淹れてくれながら笑い、軽食を妾にあーんした。

「それで。私は君にも幸せになって貰いたいけれど。
 本当に六ヶ月後、式でいいのかい」
「いいわよ。あの子に覚悟がないならそれまでのはなしだし、もし結婚後に恋となっても、離婚となるから。そのほうが貴方には都合がいいでしょう?」
「それはそうなんだが、そうだな。こう言えば判るかな。君に幸せになってほしい、もう私たちは親友のようなものだろう?」
「そうね、深い繋がりの友達よ」
「君だけが幸せにならないで結婚というのもな。サリスのことなら、私もあいつならば応援してやっても構わないんだがね」
「……どうなるかしらね、そもそもサリスはアシュを嫌っているのでは?」

 僅かに笑ってアシュは頷いた。


「君と仲が良すぎて妬いてしまうらしいよ。ルルも言っていた。可愛らしい人達だ」

 妾はお茶を飲み終わると席を立ち、また回復をしだす。その横でアシュは構わず席に座っている。
 
「一度だけね、サリスに聞いたことがあるんだ」
 アシュはカップケーキに口をつけながら、語り始める。
 妾は他の人を手当てしながら、他の方に手当している。
 訓練兵を手当てしている横でアシュは休憩をとり、語り始めた。

「サリスは私のことが憎くないのかと。なんとこたえたとおもう?」
「きらいとかこのくそ、とかじゃないの、あの人のことだから」
「……美しい友情で綺麗な壊れないで欲しい硝子細工だ、だと。美的センスが確かだね」

 サリスの言葉に心から感心している姿が連想できて思わずはにかむ。
 その顔を見逃さなかったアシュがほうら、と笑った。

「そんな顔をするのなら、さっさと手に入れてしまえばいいのに」
「いやね、獲物はじっくり苅るものでしょう?」

 妾の声に、アシュは「気持ちはとてもわかる」と噴き出している。
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