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第三話 セーフワードをきめよう
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一週間後、兄は今度は夜間に来て、ホストらしいスーツ姿ではなかった。
ニットセーターに黒いスキニージーンズにブーツ。どこか垢抜けた格好だった。
それに反して僕はぼさぼさの髪に黒縁眼鏡、母親から貰ってもったいなくて捨てられないカーディガンに、だぼっとしたジャージパンツ。
どこか芋くさい印象をもたれるかもしれない。
身なりにお金をかける余裕がないんだ、学生時代は逆で僕のがおしゃれだったから悔しい。
兄さんは食料を山ほど買ってきてくれて、手料理を作ってくれた。
「あまりたいしたものはつくれないけど」
「まあまずはご飯ですよね、生命体として正解です」
兄さんの作ったボンゴレパスタに海鮮サラダ、ジャガイモのポタージュは美味しくて、舌がめろめろになっているのがとてもわかる。
僕好みの味を、さすが長年の付き合いで分かっている!!
食べ終わって食器を洗い終わると、兄さんは勉強する僕の耳に、様々なピアスをかざす。
最初は行動が理解できなかったが、徐々に十個くらいつけるかどうか分からないピアスを買ってきたのだと気づいた。
「こ、れ。十万って書いてありますけど……」
「こっちは二千円だね」
「こっちにします……」
「ええー……この十六万のが、似合いそうだよ」
「二千円で十分なんです!!」
けたけたと嗤う兄に翻弄される。
兄さんに耳を冷やされて、ピアッサーで込められる一瞬の痛みにじくりとする。
勉強をやめた僕は兄さんに抱きかかえられながら、穴を開けられて、胸の高鳴りに涙目になる。
はーっはーっと吐息が荒くなると、兄さんは頭を撫でてよしよしとした。
「ねえ。予定今度から送って」
「どうしてですか、僕らコマンドをするだけの関係でしょう」
「……やだ。管理させて。俺の欲も満たせよ」
兄さんは少しだけ寂しげに、むうと膨れたので。
僕はああもうこの人可愛いな!!!と、承諾し、メッセージアプリで今度から何をしていて、何をする予定かの連絡をする約束をした。
僕が他の人にDomだからDomの欲求は痛いほど分かる。
兄さんはそれと同時に他の人にはSubだから、僕の欲求も分かるのだろう。
「さあほら。今日の分だ。シよ」
「妖しい言い方しないでください!! えっちなひとですね!」
「!? ふつうにいったのに……」
「いいえ、いまなんかえっちでした!!」
兄さんは頭をぼりぼりと掻きながら、僕を抱きかかえたまま、Kneel、と囁いた。
腹の奥がじくり、と粟立つ。快楽がじくりと押し寄せてくるのが分かる。
僕は兄さんの上に座り直して、次のコマンドを待つ。
「そうだな。Roll」
兄さんのコマンドに従い、僕は兄さんの膝の上に頭を寄せる。
膝枕の状態になると、わしゃわしゃと頭を撫でてもらい、「グッボーイ」と褒めてもらえた。
ぶわわっとよぎる多幸感がこれ、本当によくないんだ。
こんなの当たり前になったら、兄さんがいなくなったときサブドロップしてしまいそうだ。
そんな残酷なことも、この人予想してないんだろうな。
「ねえ。章吾。あのさ、セーフワード決めない? 今更、だけど」
「そうですね……じゃあ、『受験』で」
「うん。分かった。ねえ、章吾。Lick」
「ふざけんな!」
「はは、だめか」
兄さんは僕を見下ろして笑うも、僕と目が合うと、顔を間近に寄せて。
「ほんとに……だめ?」
「だ、めです……」
「セーフワードをそれなら、言えば良い」
「……ッ、あー、だからいやだったんだあああ。セーフワードなんて!!」
僕は兄さんの顔をがしっとつかんで、鼻頭を舐めた。
兄さんはきょとんとしてから、大笑いして、僕を可愛い可愛いと撫でてくれた。
「はまっちゃいそうだなあ」
僕はとっくに、貴方にはまってますよ。
貴方だけ逃げるなんて許さない、と思うくらいにはね!
ニットセーターに黒いスキニージーンズにブーツ。どこか垢抜けた格好だった。
それに反して僕はぼさぼさの髪に黒縁眼鏡、母親から貰ってもったいなくて捨てられないカーディガンに、だぼっとしたジャージパンツ。
どこか芋くさい印象をもたれるかもしれない。
身なりにお金をかける余裕がないんだ、学生時代は逆で僕のがおしゃれだったから悔しい。
兄さんは食料を山ほど買ってきてくれて、手料理を作ってくれた。
「あまりたいしたものはつくれないけど」
「まあまずはご飯ですよね、生命体として正解です」
兄さんの作ったボンゴレパスタに海鮮サラダ、ジャガイモのポタージュは美味しくて、舌がめろめろになっているのがとてもわかる。
僕好みの味を、さすが長年の付き合いで分かっている!!
食べ終わって食器を洗い終わると、兄さんは勉強する僕の耳に、様々なピアスをかざす。
最初は行動が理解できなかったが、徐々に十個くらいつけるかどうか分からないピアスを買ってきたのだと気づいた。
「こ、れ。十万って書いてありますけど……」
「こっちは二千円だね」
「こっちにします……」
「ええー……この十六万のが、似合いそうだよ」
「二千円で十分なんです!!」
けたけたと嗤う兄に翻弄される。
兄さんに耳を冷やされて、ピアッサーで込められる一瞬の痛みにじくりとする。
勉強をやめた僕は兄さんに抱きかかえられながら、穴を開けられて、胸の高鳴りに涙目になる。
はーっはーっと吐息が荒くなると、兄さんは頭を撫でてよしよしとした。
「ねえ。予定今度から送って」
「どうしてですか、僕らコマンドをするだけの関係でしょう」
「……やだ。管理させて。俺の欲も満たせよ」
兄さんは少しだけ寂しげに、むうと膨れたので。
僕はああもうこの人可愛いな!!!と、承諾し、メッセージアプリで今度から何をしていて、何をする予定かの連絡をする約束をした。
僕が他の人にDomだからDomの欲求は痛いほど分かる。
兄さんはそれと同時に他の人にはSubだから、僕の欲求も分かるのだろう。
「さあほら。今日の分だ。シよ」
「妖しい言い方しないでください!! えっちなひとですね!」
「!? ふつうにいったのに……」
「いいえ、いまなんかえっちでした!!」
兄さんは頭をぼりぼりと掻きながら、僕を抱きかかえたまま、Kneel、と囁いた。
腹の奥がじくり、と粟立つ。快楽がじくりと押し寄せてくるのが分かる。
僕は兄さんの上に座り直して、次のコマンドを待つ。
「そうだな。Roll」
兄さんのコマンドに従い、僕は兄さんの膝の上に頭を寄せる。
膝枕の状態になると、わしゃわしゃと頭を撫でてもらい、「グッボーイ」と褒めてもらえた。
ぶわわっとよぎる多幸感がこれ、本当によくないんだ。
こんなの当たり前になったら、兄さんがいなくなったときサブドロップしてしまいそうだ。
そんな残酷なことも、この人予想してないんだろうな。
「ねえ。章吾。あのさ、セーフワード決めない? 今更、だけど」
「そうですね……じゃあ、『受験』で」
「うん。分かった。ねえ、章吾。Lick」
「ふざけんな!」
「はは、だめか」
兄さんは僕を見下ろして笑うも、僕と目が合うと、顔を間近に寄せて。
「ほんとに……だめ?」
「だ、めです……」
「セーフワードをそれなら、言えば良い」
「……ッ、あー、だからいやだったんだあああ。セーフワードなんて!!」
僕は兄さんの顔をがしっとつかんで、鼻頭を舐めた。
兄さんはきょとんとしてから、大笑いして、僕を可愛い可愛いと撫でてくれた。
「はまっちゃいそうだなあ」
僕はとっくに、貴方にはまってますよ。
貴方だけ逃げるなんて許さない、と思うくらいにはね!
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