7 / 8
第七話 ホストクラブでのあなた
しおりを挟む
このままでは駄目だと感じた僕は、兄の所属するホストクラブを検索して、会いに行くことにした。
客として会いに行けばさすがに避けられてるといっても、会ってくれるだろう。
兄の才能を捨てさせてまで大学を選びたいわけじゃない。
兄さんにはきちんと美大で学んで欲しい気持ちもある。
そこの話もしたいのに、兄さんは今も避けたままだ。
店を調べて、ネオン街の中、深夜に訪れればムードある音楽に包まれた暖色系の照明で照らされる店内。
店内は高級感あって、皮のソファーが惜しげもなくそこら中においてある。
客を大事にしてちゃんと話を聞いてあげてる雰囲気だった。
「あれ!? アデルどうした!?」
「あ、僕は狩屋アデルの弟で……」
「ああ、お兄ちゃんに会いに来たのか」
「お客でも良いです、時間作れませんかアデルの」
「分かりました、お客様ということならこちらでお待ちください。お飲み物はこちらからお選びくださいね。お兄さんがくるまで、誰かつけておきますね」
「はい、お願いします!」
ボーイのお兄さんは愛想良くにこっとわらってくれて、席に案内してくれた。
席に着くとアデル――兄さんと仲いいというホストがついてきてくれて、店内での人間関係を少しだけ話してくれた。
「これから阿佐ヶ谷さんくるから、時間とれるのかなあ」
「阿佐ヶ谷さん?」
「うちの店で三番目くらいに一番金使ってくれる人で、アデルが本指名なんだ」
「そう、なんですか」
こういうところだって分かっていたけれど、兄さんはやっぱり色恋営業してるんだろうかと不安になる。
戸惑っている間に、店内が少しだけ照明を落とされ、音楽の雰囲気が静かめに変わる。
「どうしたんですか」
「ああ、コマンドタイムだ。うちの店、コマンド使って発散するのも売りだからさあ」
「兄さんもコマンド使われるんですか!?」
「そうだよ、あれ、お前の兄さんSubだって知らない?」
まずったかもしれない。
店内で他の人に命令される兄さんを見たくない。
検索してきたけれど、コマンドの説明をしっかりみていなかった僕のミスだ。
「お客さんも使ってみる? お客さんDomでしょ、俺Subだから使って良いよ」
「あ、いや、結構です僕は」
「遠慮しないでほら、いいこだよ、俺結構」
とろんとした眼差しで見られるとどうしていいか戸惑う。
どうしようか悩んでいるうちに、ホストは僕の太ももを摩ってきて、体を寄せてくる。
コマンド一つしないと落ち着かないのかな。
この店のやり方ならしかたないかと、意を決めた瞬間。
「……章吾? 何をやってる」
兄さんが真っ赤な髪の毛のお客さんと同伴で店内に入ってきて、僕と目が合うなりにらみつけてきた。
グレア一歩手前で、皆が驚いてる。皆にはSubだってみせてきたんだろうね。
隣のお客さんまで驚いていて、真っ赤な髪のお客さんは僕を興味深そうに見つめた。
「兄さんに話が合って」
「仕事中だぞ、何考えてるんだ」
「だから! お客としてきたよ!」
「……そういう問題じゃないだろ。阿佐ヶ谷さん、その、少し……」
「コマンドタイムを逃すのは残念だけれど、いいよ。話しておいで」
「すみません、五分で戻ります」
兄さんはきっちり頭を下げて、真っ赤な髪のお客さんはささっと席に案内されていった。
さっきまで僕についていたホストは兄さんがくるまでの間、そちらのお客さんの相手をするようでばいばい、と最後に頬へキスして去って行った。
さあて、兄さんの方を見るのが怖いぞ。異様なオーラを出しているから。
「話ってなんだ」
「今まで僕の生活費やらなにやら、全部兄さんが出してたんだって?」
「……しゃべったか、母さんめ」
「なんで! そこまでのことをするんだよ、兄さんは美大だって行けただろう!?」
「……いいんだよ、俺は」
「駄目だよ、兄さんの美しい世界を壊してまで、僕は大学目指したくない!」
「……その、美しいものが、分からなくなったんだ」
「え……何かあったのか兄さん」
「とにかくお前は気にしなくていいから。おうちに帰りなさい。ここを支払うために働いてるんじゃないぞ俺は」
「……同い年なのに子供扱いする!」
「子供だ、ここが何をする場所かわかってんのか」
兄さんは僕の顎を捉え、じっと間近に見つめ、小さくつぶやく。
「Lock」
「あ……」
「Strip……」
兄さんのコマンドだ、頭がくらくらする。
いつもと違ってぶわりと膨らんだ色気に、下腹部が熱くなっていく。
顔中が真っ赤になりながら、兄さんのコマンドにこんなときでも従いたくなる。
頭がぽーっとしながら、ゆっくりシャツのボタンを外して、胸元をはだけると兄さんはそこに吸い付いた。
きつく、痕を。噛み痕と一緒に残して、兄さんが間近で瞳を見つめる。
ああ、怒っている。
怒っているのにどきどきする。たまらなく、体が全身粟立つ。
ぞくぞくとした怒気を兄さんは放ちながら、僕の頭を撫でていいこいいことする。
兄さんにすりすりと甘えれば、兄さんは時間だ、と告げた。
「帰れ」
「でも……」
「お前に、見られたくない」
「……兄さんッ。じゃあ、あとでうちきてくれる?」
「章吾、やっぱり子供だな。このあとは、アフターがあるんだよ」
兄さんはそっと耳元で「体込みの」と告げてくる。
ああ、さっきのひととえっちなことするんだ。
兄さんのことで頭がいっぱいになって泣きそうになる。
どうしよう、どうしよう、と悔しさでいっぱいになってしまう。
「章吾」
「兄さんは、僕のことが好きだと思ったんだ。でも、勘違いだったかな」
「……帰りな。すみません、お会計を」
兄さんは勝手にお会計の段取りをしていく。
僕はボーイさんに連れて行かれて、そのまま外へ。兄さんはさっきの真っ赤な髪の人と話し込んでいて……ああ、僕と目つきが違う。
なんだ、そうか。
そうだったのか。
兄さん確かに僕は子供だったのかもしれない。
僕は、ずっと初恋を追いかけていたから。
客として会いに行けばさすがに避けられてるといっても、会ってくれるだろう。
兄の才能を捨てさせてまで大学を選びたいわけじゃない。
兄さんにはきちんと美大で学んで欲しい気持ちもある。
そこの話もしたいのに、兄さんは今も避けたままだ。
店を調べて、ネオン街の中、深夜に訪れればムードある音楽に包まれた暖色系の照明で照らされる店内。
店内は高級感あって、皮のソファーが惜しげもなくそこら中においてある。
客を大事にしてちゃんと話を聞いてあげてる雰囲気だった。
「あれ!? アデルどうした!?」
「あ、僕は狩屋アデルの弟で……」
「ああ、お兄ちゃんに会いに来たのか」
「お客でも良いです、時間作れませんかアデルの」
「分かりました、お客様ということならこちらでお待ちください。お飲み物はこちらからお選びくださいね。お兄さんがくるまで、誰かつけておきますね」
「はい、お願いします!」
ボーイのお兄さんは愛想良くにこっとわらってくれて、席に案内してくれた。
席に着くとアデル――兄さんと仲いいというホストがついてきてくれて、店内での人間関係を少しだけ話してくれた。
「これから阿佐ヶ谷さんくるから、時間とれるのかなあ」
「阿佐ヶ谷さん?」
「うちの店で三番目くらいに一番金使ってくれる人で、アデルが本指名なんだ」
「そう、なんですか」
こういうところだって分かっていたけれど、兄さんはやっぱり色恋営業してるんだろうかと不安になる。
戸惑っている間に、店内が少しだけ照明を落とされ、音楽の雰囲気が静かめに変わる。
「どうしたんですか」
「ああ、コマンドタイムだ。うちの店、コマンド使って発散するのも売りだからさあ」
「兄さんもコマンド使われるんですか!?」
「そうだよ、あれ、お前の兄さんSubだって知らない?」
まずったかもしれない。
店内で他の人に命令される兄さんを見たくない。
検索してきたけれど、コマンドの説明をしっかりみていなかった僕のミスだ。
「お客さんも使ってみる? お客さんDomでしょ、俺Subだから使って良いよ」
「あ、いや、結構です僕は」
「遠慮しないでほら、いいこだよ、俺結構」
とろんとした眼差しで見られるとどうしていいか戸惑う。
どうしようか悩んでいるうちに、ホストは僕の太ももを摩ってきて、体を寄せてくる。
コマンド一つしないと落ち着かないのかな。
この店のやり方ならしかたないかと、意を決めた瞬間。
「……章吾? 何をやってる」
兄さんが真っ赤な髪の毛のお客さんと同伴で店内に入ってきて、僕と目が合うなりにらみつけてきた。
グレア一歩手前で、皆が驚いてる。皆にはSubだってみせてきたんだろうね。
隣のお客さんまで驚いていて、真っ赤な髪のお客さんは僕を興味深そうに見つめた。
「兄さんに話が合って」
「仕事中だぞ、何考えてるんだ」
「だから! お客としてきたよ!」
「……そういう問題じゃないだろ。阿佐ヶ谷さん、その、少し……」
「コマンドタイムを逃すのは残念だけれど、いいよ。話しておいで」
「すみません、五分で戻ります」
兄さんはきっちり頭を下げて、真っ赤な髪のお客さんはささっと席に案内されていった。
さっきまで僕についていたホストは兄さんがくるまでの間、そちらのお客さんの相手をするようでばいばい、と最後に頬へキスして去って行った。
さあて、兄さんの方を見るのが怖いぞ。異様なオーラを出しているから。
「話ってなんだ」
「今まで僕の生活費やらなにやら、全部兄さんが出してたんだって?」
「……しゃべったか、母さんめ」
「なんで! そこまでのことをするんだよ、兄さんは美大だって行けただろう!?」
「……いいんだよ、俺は」
「駄目だよ、兄さんの美しい世界を壊してまで、僕は大学目指したくない!」
「……その、美しいものが、分からなくなったんだ」
「え……何かあったのか兄さん」
「とにかくお前は気にしなくていいから。おうちに帰りなさい。ここを支払うために働いてるんじゃないぞ俺は」
「……同い年なのに子供扱いする!」
「子供だ、ここが何をする場所かわかってんのか」
兄さんは僕の顎を捉え、じっと間近に見つめ、小さくつぶやく。
「Lock」
「あ……」
「Strip……」
兄さんのコマンドだ、頭がくらくらする。
いつもと違ってぶわりと膨らんだ色気に、下腹部が熱くなっていく。
顔中が真っ赤になりながら、兄さんのコマンドにこんなときでも従いたくなる。
頭がぽーっとしながら、ゆっくりシャツのボタンを外して、胸元をはだけると兄さんはそこに吸い付いた。
きつく、痕を。噛み痕と一緒に残して、兄さんが間近で瞳を見つめる。
ああ、怒っている。
怒っているのにどきどきする。たまらなく、体が全身粟立つ。
ぞくぞくとした怒気を兄さんは放ちながら、僕の頭を撫でていいこいいことする。
兄さんにすりすりと甘えれば、兄さんは時間だ、と告げた。
「帰れ」
「でも……」
「お前に、見られたくない」
「……兄さんッ。じゃあ、あとでうちきてくれる?」
「章吾、やっぱり子供だな。このあとは、アフターがあるんだよ」
兄さんはそっと耳元で「体込みの」と告げてくる。
ああ、さっきのひととえっちなことするんだ。
兄さんのことで頭がいっぱいになって泣きそうになる。
どうしよう、どうしよう、と悔しさでいっぱいになってしまう。
「章吾」
「兄さんは、僕のことが好きだと思ったんだ。でも、勘違いだったかな」
「……帰りな。すみません、お会計を」
兄さんは勝手にお会計の段取りをしていく。
僕はボーイさんに連れて行かれて、そのまま外へ。兄さんはさっきの真っ赤な髪の人と話し込んでいて……ああ、僕と目つきが違う。
なんだ、そうか。
そうだったのか。
兄さん確かに僕は子供だったのかもしれない。
僕は、ずっと初恋を追いかけていたから。
20
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
ゲームにはそんな設定無かっただろ!
猫宮乾
BL
大学生の俺は、【月の旋律 ~ 魔法の言葉 ~】というBLゲームのテストのバイトをしている。異世界の魔法学園が舞台で、女性がいない代わりにDomやSubといった性別がある設定のゲームだった。特にゲームが得意なわけでもなく、何周もしてスチルを回収した俺は、やっとその内容をまとめる事に決めたのだが、飲み物を取りに行こうとして階段から落下した。そして気づくと、転生していた。なんと、テストをしていたBLゲームの世界に……名もなき脇役というか、出てきたのかすら不明なモブとして。 ※という、異世界ファンタジー×BLゲーム転生×Dom/Subユニバースなお話です。D/Sユニバース設定には、独自要素がかなり含まれています、ご容赦願います。また、D/Sユニバースをご存じなくても、恐らく特に問題なくご覧頂けると思います。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる