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第一話 記憶のない鳥かご
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目を醒ましたのは、紅い鳥かごの中だった。
鳥かごの中に、着物を開(はだ)けて自慰をしているのだと気付いた。
自慰をしながら思案しても頭はうまく回らない、気持ちよさだけが只管に疼く。
この気持ちよさを知ってしまったが最後、逃れる術も知恵も無く。快楽に流されるだけ。
少年は紅い鳥かごの中で、疼く身体を押さえるように肩を摩り。吐息をつけば、胸元にするりと手を伸ばす。ゆっくりと半円を画くように撫で回していれば、ぷっくらと膨れてくる。
膨れた乳輪は紅く。乳頭はつんとしていて、掠めるだけでもじんと響く。身体や、芯に悦が行き渡りそうになるのを堪える。
じわりじわりと蝕む熱は甘い蜜を舐めている感覚に近しく。もっともっとと、自分自身に媚びてしまいそうになる。
気持ちよさを求めて只管に突起を虐め倒せば、下腹部が盛り上がっていることに気付く。そうっと長襦袢を捲ればひくひくと雄が天上へ向かって、涎をだらだらとだらしなく流していた。
あと少しで達せるところだ、少年は思わず竿を握り裏筋をじわりと撫でた。
「あっ……やだ、これだめえ……♡ 覚えたらだめなやつう……」
少年は首を振って甘い声を響かせると、くちゅくちゅと手を揺らし夢中になって、白濁を散らせた。
はあはあと呼気を荒げていれば、何人かに見られている感覚。
鳥かごにはカメラがついている。カメラの横に小型のマイクもセットになっていた。
「久遠、拗ねるのもいい加減にしないか。そろそろ客をとってくれ。お前、客の前で喘ぐの好きだったじゃないか」
スピーカー越しに聞こえる酔いそうな程に脳に響く甘い声。低めに制する声は、自分を久遠と喚んだ。久遠は何故ここにいるのか、なぜ花魁衣装を着ているのか、自慰に耽っていたのかも思い出せず。カメラに向かって声をかけた。
「ねえ、お兄さん、ココはどこ? 俺は久遠という名前なの?」
「久遠? そうか、またそうなったか。ココは僕が攫った人間を囲って客をとらせる遊郭だ。お前は売られたんだよ」
「遊郭って……?」
「セックスをする店だ。まあ待て、説明しに向かう。お前を確かめたい」
ぶつっと音声が途絶えれば久遠はまだ火照っている身体を持て余す。
あの甘い響きの男が来るまでは、男の姿でも妄想して自慰を再開しようかと手を弄る。
室内は黒い壁に覆われていて、確かにタンスやベッドも置いてある。ただし、鳥かごの中だが。
真っ赤な着物に白濁がかかる、また胸の刺激で達してしまった。緩やかに癖になっていく刺激がたまらない。手が止まらないうちに目を閉じ、行為に耽っていれば手を掴まれて目を開く。
目の前に臙脂(えんじ)色(いろ)の髪と目の色をした、男が手を掴み久遠を組み敷いた。背丈は百八十近くある。
久遠は着物の中に埋もれ、身を捩る。
男は凍てついた眼差しで久遠の胸板を撫でてから、舌なめずりをした。
「お前、また僕を困らせようって話じゃないよな」
「本当に判らないんだ、お兄さんは誰だ」
「妖しだよ。蜘蛛が人に化けたのが僕だ。八ヶ岳斬(やつがたけきり)という。なんだ本当に記憶喪失か」
「そうだよ、じゃあ俺は誰なんだ」
「お前は僕が手塩に掛けて育てた男娼の、久遠(くおん)庇(ひさし)だ。この店では、くうって呼ばれていた」
男は覆い被さったまま久遠を見下ろし、首根に顔を埋めた。
「まさかえっちの仕方も忘れているんじゃないだろうな」
「……うるさいな、絶対にしなきゃいけないわけじゃないだろ」
「いいや、絶対にしないと困るな。何せお前には客がいっぱいだ。なのにお客様にお出しできなきゃ困る」
斬はゆらりと身体のラインをなぞりながら、膝で股間を押し上げ、胸元を愛撫し始めた。
乳頭をかりかり前歯で引っ掻き、乳輪を強めに吸う。唾液に塗れた舌が乳輪を覆えば、じゅううううと吸いながら引っ張っていく。
「あっ、あっ♡ だめえ、それやだ、きもちいい……」
「感度はそのままだな、仕方だけ忘れているのかね」
斬はぐいぐい竿を刺激し、反応しつつある竿を指に輪っかを作って戒めた。戒めると途端に心地よかった刺激が苦しくなっていく。じわじわと脳天を突きそうな刺激が、理性的に判らせられていく。本能のみで味わうのを許されない。
久遠は首をいやいやとふり続け、涙目になりながら斬の背に手を回した。仄暗い瞳と出くわすと、胸が高鳴る。
ああ、この目が好きだ――久遠は瞬時に察した。
記憶を無くす前、この男がきっと好きだったのではないかと。
鳥かごの中に、着物を開(はだ)けて自慰をしているのだと気付いた。
自慰をしながら思案しても頭はうまく回らない、気持ちよさだけが只管に疼く。
この気持ちよさを知ってしまったが最後、逃れる術も知恵も無く。快楽に流されるだけ。
少年は紅い鳥かごの中で、疼く身体を押さえるように肩を摩り。吐息をつけば、胸元にするりと手を伸ばす。ゆっくりと半円を画くように撫で回していれば、ぷっくらと膨れてくる。
膨れた乳輪は紅く。乳頭はつんとしていて、掠めるだけでもじんと響く。身体や、芯に悦が行き渡りそうになるのを堪える。
じわりじわりと蝕む熱は甘い蜜を舐めている感覚に近しく。もっともっとと、自分自身に媚びてしまいそうになる。
気持ちよさを求めて只管に突起を虐め倒せば、下腹部が盛り上がっていることに気付く。そうっと長襦袢を捲ればひくひくと雄が天上へ向かって、涎をだらだらとだらしなく流していた。
あと少しで達せるところだ、少年は思わず竿を握り裏筋をじわりと撫でた。
「あっ……やだ、これだめえ……♡ 覚えたらだめなやつう……」
少年は首を振って甘い声を響かせると、くちゅくちゅと手を揺らし夢中になって、白濁を散らせた。
はあはあと呼気を荒げていれば、何人かに見られている感覚。
鳥かごにはカメラがついている。カメラの横に小型のマイクもセットになっていた。
「久遠、拗ねるのもいい加減にしないか。そろそろ客をとってくれ。お前、客の前で喘ぐの好きだったじゃないか」
スピーカー越しに聞こえる酔いそうな程に脳に響く甘い声。低めに制する声は、自分を久遠と喚んだ。久遠は何故ここにいるのか、なぜ花魁衣装を着ているのか、自慰に耽っていたのかも思い出せず。カメラに向かって声をかけた。
「ねえ、お兄さん、ココはどこ? 俺は久遠という名前なの?」
「久遠? そうか、またそうなったか。ココは僕が攫った人間を囲って客をとらせる遊郭だ。お前は売られたんだよ」
「遊郭って……?」
「セックスをする店だ。まあ待て、説明しに向かう。お前を確かめたい」
ぶつっと音声が途絶えれば久遠はまだ火照っている身体を持て余す。
あの甘い響きの男が来るまでは、男の姿でも妄想して自慰を再開しようかと手を弄る。
室内は黒い壁に覆われていて、確かにタンスやベッドも置いてある。ただし、鳥かごの中だが。
真っ赤な着物に白濁がかかる、また胸の刺激で達してしまった。緩やかに癖になっていく刺激がたまらない。手が止まらないうちに目を閉じ、行為に耽っていれば手を掴まれて目を開く。
目の前に臙脂(えんじ)色(いろ)の髪と目の色をした、男が手を掴み久遠を組み敷いた。背丈は百八十近くある。
久遠は着物の中に埋もれ、身を捩る。
男は凍てついた眼差しで久遠の胸板を撫でてから、舌なめずりをした。
「お前、また僕を困らせようって話じゃないよな」
「本当に判らないんだ、お兄さんは誰だ」
「妖しだよ。蜘蛛が人に化けたのが僕だ。八ヶ岳斬(やつがたけきり)という。なんだ本当に記憶喪失か」
「そうだよ、じゃあ俺は誰なんだ」
「お前は僕が手塩に掛けて育てた男娼の、久遠(くおん)庇(ひさし)だ。この店では、くうって呼ばれていた」
男は覆い被さったまま久遠を見下ろし、首根に顔を埋めた。
「まさかえっちの仕方も忘れているんじゃないだろうな」
「……うるさいな、絶対にしなきゃいけないわけじゃないだろ」
「いいや、絶対にしないと困るな。何せお前には客がいっぱいだ。なのにお客様にお出しできなきゃ困る」
斬はゆらりと身体のラインをなぞりながら、膝で股間を押し上げ、胸元を愛撫し始めた。
乳頭をかりかり前歯で引っ掻き、乳輪を強めに吸う。唾液に塗れた舌が乳輪を覆えば、じゅううううと吸いながら引っ張っていく。
「あっ、あっ♡ だめえ、それやだ、きもちいい……」
「感度はそのままだな、仕方だけ忘れているのかね」
斬はぐいぐい竿を刺激し、反応しつつある竿を指に輪っかを作って戒めた。戒めると途端に心地よかった刺激が苦しくなっていく。じわじわと脳天を突きそうな刺激が、理性的に判らせられていく。本能のみで味わうのを許されない。
久遠は首をいやいやとふり続け、涙目になりながら斬の背に手を回した。仄暗い瞳と出くわすと、胸が高鳴る。
ああ、この目が好きだ――久遠は瞬時に察した。
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