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第一部――第二章 喧嘩なんざ買わねぇよ
第九話 衣服を選びながらの相談
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――とにかく私たちはお互い仲が悪いですし、むかつくし、顔も見たくない。だけど、願いが同じなのは判っているでしょう?
――痛み虫を集めさせて、誰もが人と認めない程の強靱にして人々に疎外させて、僕らだけに依存させる。
――そのために奪われない、奪わせられないように、こいつを守る。
「って三人が企んでる夢を、見たんだよ」
次の日、服屋で服を選びながら陽炎は、冠座に話す。
冠座はショートカットのつり目の可愛らしい女の子で、黒い衣服のまま、自分の衣服も探しつつ、主人にあいそうな服を探す。
スタイルに自信のない彼女は、スタイルの良いマネキンに嫉妬しながらも、主人の話を聞いて、ふぅんとだけ答えた。
その返答に、それだけかよ、と陽炎はため息をついた。
もっとこう真剣に答えてくれそうな者に言えば良かっただろうか、と相談する度に繰り返す後悔を少ししながらも、陽炎は冠座に投げ渡された服を手に試着室へ入る。
彼女は衣服選び担当なのだ。本人はセンスと言い張る抜群の色彩感覚が能力。
――ただし、そのセンスは全く対象者には抜群に外れている衣服へと働くのだが。
「だって、陽炎。あの三人は、愛属性なんだから何があってもおかしくないよ」
「……だからって、まさかあの水瓶座と鴉座まで……」
「気になるんだったら本人に聞けばいいじゃない。蟹座なんて案外、嘘がつけないんだから正直に言ってくれるかも知れないよ」
「馬鹿ッ! あんなのを用事がないときに呼び出したら、またぶん殴られてドメスティックの始まりだぜ!!」
「陽炎がマゾだったら、丁度いいのにねー」
「冗談やめろよ!!」
少しムキになって試着室からばっと出てきた陽炎。その服は、きっと若い子ならば誰もが選ばない、おばちゃん好みの衣服で、センスのない二人は似合わないということに気づかない。陽炎にもセンスはなかったので、オシャレと言う彼女を信じている。
冠座は自分はオシャレだと思っているので、その衣服を見て、うん上出来と頷く。
その言葉に思わず出てきてしまったのは、大犬座の幼女。
「ちょっと、冠ちゃんやめてよ!! 陽炎ちゃんには、もっとシンプルな服を着させなきゃ!」
「わっ! おおいぬ座、勝手に出てくるなよ……」
そう言われると、幼女はつぶらで大きな緑の瞳にうるうると涙を溜めて、陽炎を見上げる。
見かけの年は九才ぐらいだろうか。生意気盛りだと言われそうな年頃に見える。
髪の毛は焦げ茶で、ポニーテールにしていて、少し猫っ毛でふわふわとしているのが彼女の自慢だ。
自慢になったのも陽炎がその髪の触り心地を気に入ってくれているからで、それまではただの面倒な髪だと思っていたが、大切に扱うようになった。
大切に大切に伸ばして、早く大人に見えるように髪を大切にしている。
彼女の夢はいつか子供が出来るくらい成長して、お色気で陽炎に迫って子供を作って子供で陽炎を縛ること。
なんとませた子供で、凄まじい愛属性だろうか。
蟹座が乙女座で困るという理由は、こういう輩が出てこられると困るからと言う理由なのも含まれている。幸い、大犬座は子供で陽炎の好みの範疇外だったが。
一方好みの中に入ってる冠座は、忠実のほうで、大犬座に言われて一番陽炎に似合わないと思うものを持ってくるように言われて探している。
冠座が衣服を渋々選び直している間に、大犬座は陽炎へ説教をしだす。
「陽炎ちゃん、衣服っていうのはね、外見とそぐわなきゃ駄目だし、外見以上に変なのも駄目!」
「俺の外見が変なのは知ってるよ」
「違う! 陽炎ちゃんは、外見じゃなくてセンスが変! おばちゃん服は着ちゃ駄目だし、かっこいいのも駄目だし、へそだしルックも駄目! だってあの三人みたいなホモ野郎が増えちゃうじゃない……ッ!」
その言葉に陽炎は呆れながら苦笑い。大犬座は本気で、恐ろしいッと震えて、いやあああと陽炎にモザイクがかかりそうなことを想像して戦慄いている。
陽炎はそんなことを想像している彼女が予測つくので、そっちに戦慄き最早引きつった笑みを浮かべることしか出来なかった。体中には勿論鳥肌。
「第一、何で二人とも服のセンスがないわけ?! もっと鳳凰ちゃんを見習いなさいよ!」
あれは逆に似合いすぎて怖い、と心の中で陽炎は呟いた。
まぁそれはおいといて、大犬座にも先ほどの夢の話をしてみると、大犬座はまたしてもいやぁああと震えて、頭を抱える。
「本気で、本気で狙いだしてるッ! 本気で手を出そうとしているッ! 奴らが本気になり始めてしまったのね……! 蟹座っちが愛の時点でおかしいと思ったけど……! 陽炎ちゃん、もうこうなったら、あいつらより先にあたしと……」
「お前は、もうちょっと自分を大事にしなさい。それとガキは範疇外。大人に乗り移っても駄目」
陽炎は大犬座の言葉を予感だけで当ててからそう言ってから、大犬座の文句も聞かず彼女が先ほど口にした言葉を反芻する。
――痛み虫を集めさせて、誰もが人と認めない程の強靱にして人々に疎外させて、僕らだけに依存させる。
――そのために奪われない、奪わせられないように、こいつを守る。
「って三人が企んでる夢を、見たんだよ」
次の日、服屋で服を選びながら陽炎は、冠座に話す。
冠座はショートカットのつり目の可愛らしい女の子で、黒い衣服のまま、自分の衣服も探しつつ、主人にあいそうな服を探す。
スタイルに自信のない彼女は、スタイルの良いマネキンに嫉妬しながらも、主人の話を聞いて、ふぅんとだけ答えた。
その返答に、それだけかよ、と陽炎はため息をついた。
もっとこう真剣に答えてくれそうな者に言えば良かっただろうか、と相談する度に繰り返す後悔を少ししながらも、陽炎は冠座に投げ渡された服を手に試着室へ入る。
彼女は衣服選び担当なのだ。本人はセンスと言い張る抜群の色彩感覚が能力。
――ただし、そのセンスは全く対象者には抜群に外れている衣服へと働くのだが。
「だって、陽炎。あの三人は、愛属性なんだから何があってもおかしくないよ」
「……だからって、まさかあの水瓶座と鴉座まで……」
「気になるんだったら本人に聞けばいいじゃない。蟹座なんて案外、嘘がつけないんだから正直に言ってくれるかも知れないよ」
「馬鹿ッ! あんなのを用事がないときに呼び出したら、またぶん殴られてドメスティックの始まりだぜ!!」
「陽炎がマゾだったら、丁度いいのにねー」
「冗談やめろよ!!」
少しムキになって試着室からばっと出てきた陽炎。その服は、きっと若い子ならば誰もが選ばない、おばちゃん好みの衣服で、センスのない二人は似合わないということに気づかない。陽炎にもセンスはなかったので、オシャレと言う彼女を信じている。
冠座は自分はオシャレだと思っているので、その衣服を見て、うん上出来と頷く。
その言葉に思わず出てきてしまったのは、大犬座の幼女。
「ちょっと、冠ちゃんやめてよ!! 陽炎ちゃんには、もっとシンプルな服を着させなきゃ!」
「わっ! おおいぬ座、勝手に出てくるなよ……」
そう言われると、幼女はつぶらで大きな緑の瞳にうるうると涙を溜めて、陽炎を見上げる。
見かけの年は九才ぐらいだろうか。生意気盛りだと言われそうな年頃に見える。
髪の毛は焦げ茶で、ポニーテールにしていて、少し猫っ毛でふわふわとしているのが彼女の自慢だ。
自慢になったのも陽炎がその髪の触り心地を気に入ってくれているからで、それまではただの面倒な髪だと思っていたが、大切に扱うようになった。
大切に大切に伸ばして、早く大人に見えるように髪を大切にしている。
彼女の夢はいつか子供が出来るくらい成長して、お色気で陽炎に迫って子供を作って子供で陽炎を縛ること。
なんとませた子供で、凄まじい愛属性だろうか。
蟹座が乙女座で困るという理由は、こういう輩が出てこられると困るからと言う理由なのも含まれている。幸い、大犬座は子供で陽炎の好みの範疇外だったが。
一方好みの中に入ってる冠座は、忠実のほうで、大犬座に言われて一番陽炎に似合わないと思うものを持ってくるように言われて探している。
冠座が衣服を渋々選び直している間に、大犬座は陽炎へ説教をしだす。
「陽炎ちゃん、衣服っていうのはね、外見とそぐわなきゃ駄目だし、外見以上に変なのも駄目!」
「俺の外見が変なのは知ってるよ」
「違う! 陽炎ちゃんは、外見じゃなくてセンスが変! おばちゃん服は着ちゃ駄目だし、かっこいいのも駄目だし、へそだしルックも駄目! だってあの三人みたいなホモ野郎が増えちゃうじゃない……ッ!」
その言葉に陽炎は呆れながら苦笑い。大犬座は本気で、恐ろしいッと震えて、いやあああと陽炎にモザイクがかかりそうなことを想像して戦慄いている。
陽炎はそんなことを想像している彼女が予測つくので、そっちに戦慄き最早引きつった笑みを浮かべることしか出来なかった。体中には勿論鳥肌。
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「お前は、もうちょっと自分を大事にしなさい。それとガキは範疇外。大人に乗り移っても駄目」
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