エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

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2新しい奴隷

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俺はこの世界の人間ではない。
いわゆる異世界トリップなるものを果たした異世界人である。
恋人居ない歴=年齢の冴えないサラリーマンで、幼い頃から少し吃音気味で対人関係が苦手な故に恋人どころか友達もいなかった。
しかも恋愛対象が同性だったりするものだから、余計に悩んで独りで殻に閉じこもりがちのウジウジジメジメしたキノコが生えそうな男になってしまった。

そんな俺だがある日突然この世界にトリップして、しかも桁外れの魔力を有していたので少し調子に乗って魔物も退治したりして。
どんな魔物だって無尽蔵に湧き出る魔力の前では敵ではない。
気付くと俺の魔力の噂を聞きつけ集まった優秀な仲間達と魔王を倒す冒険の旅をしていた。

どこかの国の貴族出身で英雄と呼ばれる騎士だったり、教会が肝いりで選出された神子だったり、天才的なフィジカルを持つ格闘家だったり。
魔王を倒す為に世界が一丸となり、各国から選ばれし代表エリート達が揃えられた。
そしてうっかり異世界トリップしてしまった俺と合流して魔王退治の旅は始まったのだった。

国の代表になんて選ばれる陽キャの塊のような彼らと、陰キャ代表の俺が心から打ち解けることは出来なかったが、それでも命を預けあって戦った大切な仲間だと思っている。
そんな彼らとの旅が進むに連れて魔物も強くなっていったが、優秀な仲間と無尽蔵に湧き出る魔力の前でそれらは敵ではなくとうとう魔王と呼ばれる存在を討ち滅ぼすことに成功。

仲間達のそれぞれの国から出た報奨金は莫大だった。
異世界からの勇者として祭り上げられた俺に可愛らしいお姫様からの縁談も数多くやってきたが、ゲイの俺からしたらありがた迷惑以外の何物でもない。
俺は報奨金だけ貰い受け、どの仲間の国とも違う比較的平和そうな国に屋敷を建てた。
貰った報奨金は人生を十回以上繰り返して豪遊してもまだあまりある。

人が羨む莫大な金と力を手に入れ…自分を変えられると思った。
だが駄目だった。
前世よりもかなり同性愛に厳しいこの世界で俺の存在は誰にも恋人としては受け入れて貰えなかった。
どんなに頑張ってもそれはトリップの時に手に入れたチートのおかげ。
俺自身の魅力は魔王を倒した今でもやっぱり皆無で、どこまでいってもただの吃りで根暗な真崎(まさき)だ。


「あ、そ、そういえば今日はロキの外出日だった、よな。ひ、一人で行けそうかな?」
「子供ではないので大丈夫でしょう。彼ならすぐに社会復帰してこの屋敷から出て行ってくれると思います」
「ま、まぁ俺はずっとい、い、居てくれてもいいけど」

ジョフィルの眼鏡がキラリと光ったのに気づき慌てて首を振る。

「ち、ち、違うよ。ロキの事はもう諦めたってば。あ、あんなにハッキリと拒絶されたらもう想う訳にはいかないじゃないか」
「まぁ貴方を抱くぐらいならば自死するとまで言われてしまう程ですからね。そこまで嫌悪されている相手を振り向かせるのは至難の業でしょう」

先ほどから名前が出ているロキとは奴隷館の檻の中で見世物にされていた奴隷だ。
元冒険者で、仲間に裏切られて任務失敗による違約金を払えず奴隷になったとか。
そんな経緯で奴隷館に居たロキの引き締まった肉体とこの世の全てを怨んでいるような獰猛な目力に惹かれて、二週間ほど前に金にモノを言わせて購入した。

「噂をすればロキですよ」
「お、おはようロキ。い、い、いい朝だな」
「……っス」

微かに頭を下げたロキに思わずにやけてしまう。
ロキを購入した当初、初対面で告白してしまいそれはもう警戒されて嫌われてしまった。
それがどうにかここまで態度が軟化してくれたのは大いなる進歩だ。

「きょ、今日はギルドに行くんだよな。大丈夫そう? キ、キ、キツそうなら、む、む、無理しなくてもいいからな。ほ、他にも鍛冶屋とか、ふ、服飾人とかのツテもあるから無理に冒険者に戻らなくても、だ、大丈夫だから」

この世界は奴隷制度が横行しておりそれは最早人々の暮らしの一部と言っていいほど馴染んだものだった。
平和な国に移住して大きな屋敷を建てた後、次に俺がしたことは奴隷を買うこと。
買った奴隷に恋人になって貰おうと思ったからだ。
しかし残念ながら誰一人として恋人になってもいいという奴隷はいなかった。
同性愛にかなり厳しい世界なので仕方のないことだと、振られればすぐに諦めるよう心がけている。
嫌がる人間に強制出来るほど俺の心は頑丈ではない。

今まで沢山の奴隷の男を購入したが見事全員に速攻で振られまくり、その後は皆すぐに奴隷の身分から解放する手続きをして就職の手伝いをしている。
残念ながら皆恋人にはなってくれなかったが、この屋敷は広くて綺麗なので居心地が良いのか結構な人数の元奴隷が就職しても同居してくれている。
ジョフィルは仕事が増えるので出て行って欲しいようだが、俺としては賑やかで嬉しい限り。
広い屋敷を買った甲斐があるというものだ。

「…本当に職の斡旋をしてくれるんだな」
「ん?」

何か呟いたが聴き取れずに聞き返したが、緩く首を振られる。
ロキはまた冒険者をすると言うが、冒険者仲間に裏切られて奴隷落ちしたこともあり心配だ。
心身衰弱していたところを買い取り、療養してようやく外に出られるまで回復したのは良いのだが、すぐにまた働くというのも気になる。
俺は金だけはあるし好きに使って欲しいと思っても、そんな事を気軽に提案すれば下心でもあるのかと疑われそうで言い出せない。

「冒険者の仕事は元々好きでしていたことだから大丈夫です。それに冒険者をしていれば何れ奴らの居場所も掴めると思うので」

奴らとは恐らく裏切った仲間のことだろう。
その目は復讐心に燃えている。
心配だがあまり口を出すのもな。

「な、何はともあれ、き、気をつけて」
「…はい」
「こ、こ、これ。お金。こ、これで、ひ、必要な装備とか、そ、揃えて」
「いや多過ぎるだろ」

ロキのために用意したお金入りの巾着を渡すと、中を見て呆れた様子のロキ。
俺としては金だけは余りあるので持って行って欲しい。

「あーマサキ様また奴隷に貢いでんのかよ」
「そういう下心がキモいって気づいた方がいいぞ」

「ち、違…違うから」

ショーンとアルが通りすがりに揶揄う。
二人はこの屋敷の庭師として働いてくれており、恐らく朝食前の一仕事にやって来たのだろう。
ショーンとアルも俺が一目惚れして買った元奴隷で、あっさりと振られてしまった。
しかし二人は比較的同性愛に寛容だったのか、奴隷から解放しても嫌悪せずに屋敷で働いてくれている。
まぁたまにこうして揶揄われるのには困るが、こんな俺にも気さくに接してくれる気のいい二人には感謝している。

「こ、これはみんなに渡しているものだから。へ、へ、変な意味とかな、ないし、じ、自立への支援金だと思って受け取って、ほ、欲しい」
「俺らも貰ったし気負わず貰って大丈夫だぞ」
「そうそう。ここに来た元奴隷には全員に配ってるものだから。受け取っても見返りとか要求されねぇから安心しろ」

二人の後押しが効いたようで、ロキは微妙そうな顔をしたあと小さくお礼を言って巾着を懐にしまった。

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