エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

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28初恋の人

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すっかり夜が更けてから、仕事終わりのロキとギルドの前で待ち合わせすることになった。
先日約束したゲイバーに連れて行ってもらうためだ。
ここ数日このイベントのせいでいつも上の空でセイレスの頬を何度も膨れさせてしまった。
 
「お、お、お待たせ」
「俺も今きたところです」
「お、遅くまで、ご、ご苦労さま」
 
何気ない会話がちょっとデートみたいだとこっそり思ったが、ロキとの関係性は買い主と元奴隷であり、決してそんな甘いものではないと承知している。
でもロキは本当に親切でいい男だから、ちょっと妄想するくらい許して欲しい。
バーまでの夜道を隣に並んで歩く。
 
「セ、セイレスが、な、なかなか自分の寝室で、ね、寝ようとしなくて、じ、時間がかかっちゃった」
「ジョフィルさんじゃないですが少し甘やかしすぎではないですか?」
「セ、セイレスは可愛いから、き、厳しくするのは、お、俺には無理だ」
 
 きっぱり首を振るとロキから呆れた視線が飛んできた。

「ところであれからジョフィルさんの様子はどうですか?」
「あ、相変わらず、く、口きいてくれない…」

うっかりジョフィルのブランデーに手をつけて以降、ジョフィルは会話をしてくれなくなった。
屋敷の仕事はきちんとこなすし、俺の身の回りの細かいサポートはいつも通りだが、小言というか雑談がなくなった。

ちなみに討伐報酬として莫大な資産を手に入れた俺は、旅で出会った見どころのありそうな商会や冒険者パーティ、領主や起業家に出資をしており、その資産は未だに増え続けている。
それらの報告書に目を通したり、勇者と繋がりを持ちたい各国の王侯貴族たちの手紙に無難な返事を書いたりと何気に忙しい。
ジョフィルにはそれらの秘書のような役割も任せている関係上、どうしても二人でいる機会も多く気まずい沈黙が続くのはお小言を聞き続けるのよりもよほど辛い。

「だ、だから今日は、ジョ、ジョフィルの気にいるような、ウ、ウイスキーがないか、さ、酒場の店主にも、ア、アドバイスを貰えないか、た、頼もうと思ってる」
「…前から思ってたのですが、ジョフィルさんって元奴隷なんですよね?」

何故か不機嫌そうに唐突な質問をするロキ。

「う、うん」
「それにしてはあの人ちょっとマサキ様に対する態度が悪すぎませんか?」
「そ、そうかな? ジョフィルは誰にでも、あ、あんな感じだと、お、思うけど」
「いや、他の奴ら対するものより明らかにマサキ様への当たりが強すぎますって。大体主人を無視する執事がどこにいるってんですか」

ロキの言わんとすることは分かるのだが、それでも抜け殻のようになんの反応もなかったあの頃を思うとどうしても動いて喋っているだけでなんだか嬉しくて俺への態度なんて正直どうでもいいと思ってしまう。

「マサキ様はあのエルフにも甘いですが、ジョフィルさんにもかなり甘いと思いますよ。マサキ様は屋敷の連中には大抵甘いですが、それにしたってジョフィルさんにはかなり下手というか…なんでですか?」

ロキの質問に一瞬ぎくりとする。

「そ、それに…ジョ、ジョフィルは、お、俺の、は、初恋の人だから…」
「は?初恋?」
「う、う、うん。こ、この世にこんなに、き、綺麗なヒトが居るんだって、しょ、衝撃をうけた。そ、それで、こ、恋の暴走で、か、かなり強引に引き取って、い、色々とやらかしたから、あ、頭が上がらないんだ」
「……へぇ」

ロキの声のトーンが一段下がった気がして、己の失言に気付き血の気が引く。

「あ、あ、今はもう、す、好きとかは、お、思ってないから!ぜ、絶対、そ、それだけは、あ、ありえないから!」

ここは声を大にして主張しておかねば、間違ってまだジョフィルに好意があるなんて本人の耳に入ったら死ぬほど恐ろしい。
それに元奴隷に対して未だに懸想しているなんて思われたらロキも安心してあの屋敷で暮らせないだろう。

「へぇ」

よし、いいぞ。
今度の相槌は先ほどのものより明るく、表情も穏やかになった。

「あ、マサキ様、ここです、ここ。この酒場に同性愛者が集まってるって話です」

話に夢中になっていたが気づいたら目的地に着いていたらしい。
こじんまりとした店の佇まいは一見普通の酒場と変わりない。
見上げながら緊張で喉がごくりとなる。

「は、は、入ろうか…」

汗ばんだ手のひらで入口の取っ手を掴み、扉を開けた。
いざ行かん、異世界ゲイバー。
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