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29ゲイバー
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扉をくぐると店内は薄暗く、意外と落ち着いた大人な雰囲気だ。
しかしやはり客は全員男性で、入った瞬間全員ちらりとこちらを確認した気がして一気に緊張が高まる。
店員に和やかに声を掛けられロキと二人で空いているカウンターに腰を掛けた。
一応俺の顔を知っている人が居るかもしれないと警戒してローブのフードを被っておく。
勇者がゲイだって噂は多分俺だけではなく各方面の偉い人にまで影響があると思うから、広まらないに越したことはない。
でもナンパとかされたらどうしよう。
そ、それでもしお付き合いとかに発展したらそのうち勇者という身分も明かさなきゃだし…そんな妄想をしていた時期が俺にもありました。
ロキと二人で座っていたが声を掛けられるのはロキの方ばかり。
ロキに声をかけた人は隣の俺を一瞥すると「え?このちんちくりんがツレ?そんなわけないよね?」と鼻で笑われ、俺の存在を無視してロキにモーションをかけ始める。
そうか、この世界でもゲイにモテるのは俺みたいなひょろいモブではなく、ロキのようにがっちりとした筋肉質な男らしいタイプなのか。
俺の付き添いで来ただけのノンケのロキは、声を掛けられすぎてぐったりしている。
俺の方は誰からも相手にされず、かといって自分から声をかける勇気も持てずに完全なる敗者としてうらぶれていた。
ロキに声をかける人が途切れると、二人してため息を吐いた。
「お、俺、ひ、髭でも生やそうかな…」
俺に足りていないのは男らしさだ。
召喚されてから随分と鍛えたが、悲しいかなどんなに頑張っても分かりやすい筋肉が付くことはなかった。
となれば男らしいセックスアピールになるのはもう髭しか思いつかない。
「いや、マサキ様に髭は似合いません」
きっぱりと言い切られて面食らう。
「え、え、そ、そう?で、でも…」
「外見なんて変えなくてもマサキ様は今のままで十分可愛いです」
「う、うん…うん?」
え、え、え!?
今何言われた俺!?
とりあえず頷いてみたものの、ロキの発言の意味を噛みしめ徐々に動悸が起こる。
サラッと何言ったこの人? もう酔ってる?
「今日一緒に来て良かったです。こんなあからさまに声をかけてくる野郎ばかりとは思いませんでしたよ。こんなところは純真無垢なマサキ様には相応しくありせんね。すみません、俺が余計なことを教えたばかりに期待させてしまって」
あ、これ絶対酔ってるわ。
いい歳した男に純真無垢はない。
「こ、こういうところは、だ、大体、そ、そういうものじゃないのかな…」
グラスのビールを一気に飲み干すと、ロキは据わった目で俺に向き直った。
「いいですか、マサキ様。野郎なんて大体ヤることしか考えていない下劣な奴ばかりです。今日はたまたま声を掛けられませんでしたが、マサキ様なんてすぐに食い物にされますよ。俺が同性愛者だったら、なんでも言う事きいてくれそうな大人しくて可愛い子なんて絶対手に入れたいですもん」
「ロ、ロ、ロキ!? きょ、今日どうしたんだ!?」
酔うにしたって様子がおかしい。
正気に戻そうと思わず肩をゆすってみたが、ロキはきょとんとした表情だ。
「何がですか?」
「よ、よ、酔い過ぎだ。へ、変なこと、い、言ってる自覚ないのか?」
「酔ってませんが? だってこれまだ2杯目ですよ。特に変なことも言ってませんし。マサキ様こそどうかしたんですか?」
何を言っているのか分からないとばかりに首を傾げるロキ。
あれ? これ俺の方がおかしいんだっけ?
混乱で訳が分からなくなっている時だった。
「ふふ」
突然俺の隣から笑いが漏れた。
驚いてそちらに視線をやると、落ち着いた雰囲気の美丈夫がこちらを見て楽しそうに微笑んでいた。
「ああ、突然ごめんね。君のリアクションがあまりに可愛らしくてね。そこの彼の言う通りだと思うよ」
「あ…?」
ロキが反対隣りで低い声を出したが、俺は一気に気分が高揚していた。
ついに俺にも声をかけてくれる人が現れた。
しかしやはり客は全員男性で、入った瞬間全員ちらりとこちらを確認した気がして一気に緊張が高まる。
店員に和やかに声を掛けられロキと二人で空いているカウンターに腰を掛けた。
一応俺の顔を知っている人が居るかもしれないと警戒してローブのフードを被っておく。
勇者がゲイだって噂は多分俺だけではなく各方面の偉い人にまで影響があると思うから、広まらないに越したことはない。
でもナンパとかされたらどうしよう。
そ、それでもしお付き合いとかに発展したらそのうち勇者という身分も明かさなきゃだし…そんな妄想をしていた時期が俺にもありました。
ロキと二人で座っていたが声を掛けられるのはロキの方ばかり。
ロキに声をかけた人は隣の俺を一瞥すると「え?このちんちくりんがツレ?そんなわけないよね?」と鼻で笑われ、俺の存在を無視してロキにモーションをかけ始める。
そうか、この世界でもゲイにモテるのは俺みたいなひょろいモブではなく、ロキのようにがっちりとした筋肉質な男らしいタイプなのか。
俺の付き添いで来ただけのノンケのロキは、声を掛けられすぎてぐったりしている。
俺の方は誰からも相手にされず、かといって自分から声をかける勇気も持てずに完全なる敗者としてうらぶれていた。
ロキに声をかける人が途切れると、二人してため息を吐いた。
「お、俺、ひ、髭でも生やそうかな…」
俺に足りていないのは男らしさだ。
召喚されてから随分と鍛えたが、悲しいかなどんなに頑張っても分かりやすい筋肉が付くことはなかった。
となれば男らしいセックスアピールになるのはもう髭しか思いつかない。
「いや、マサキ様に髭は似合いません」
きっぱりと言い切られて面食らう。
「え、え、そ、そう?で、でも…」
「外見なんて変えなくてもマサキ様は今のままで十分可愛いです」
「う、うん…うん?」
え、え、え!?
今何言われた俺!?
とりあえず頷いてみたものの、ロキの発言の意味を噛みしめ徐々に動悸が起こる。
サラッと何言ったこの人? もう酔ってる?
「今日一緒に来て良かったです。こんなあからさまに声をかけてくる野郎ばかりとは思いませんでしたよ。こんなところは純真無垢なマサキ様には相応しくありせんね。すみません、俺が余計なことを教えたばかりに期待させてしまって」
あ、これ絶対酔ってるわ。
いい歳した男に純真無垢はない。
「こ、こういうところは、だ、大体、そ、そういうものじゃないのかな…」
グラスのビールを一気に飲み干すと、ロキは据わった目で俺に向き直った。
「いいですか、マサキ様。野郎なんて大体ヤることしか考えていない下劣な奴ばかりです。今日はたまたま声を掛けられませんでしたが、マサキ様なんてすぐに食い物にされますよ。俺が同性愛者だったら、なんでも言う事きいてくれそうな大人しくて可愛い子なんて絶対手に入れたいですもん」
「ロ、ロ、ロキ!? きょ、今日どうしたんだ!?」
酔うにしたって様子がおかしい。
正気に戻そうと思わず肩をゆすってみたが、ロキはきょとんとした表情だ。
「何がですか?」
「よ、よ、酔い過ぎだ。へ、変なこと、い、言ってる自覚ないのか?」
「酔ってませんが? だってこれまだ2杯目ですよ。特に変なことも言ってませんし。マサキ様こそどうかしたんですか?」
何を言っているのか分からないとばかりに首を傾げるロキ。
あれ? これ俺の方がおかしいんだっけ?
混乱で訳が分からなくなっている時だった。
「ふふ」
突然俺の隣から笑いが漏れた。
驚いてそちらに視線をやると、落ち着いた雰囲気の美丈夫がこちらを見て楽しそうに微笑んでいた。
「ああ、突然ごめんね。君のリアクションがあまりに可愛らしくてね。そこの彼の言う通りだと思うよ」
「あ…?」
ロキが反対隣りで低い声を出したが、俺は一気に気分が高揚していた。
ついに俺にも声をかけてくれる人が現れた。
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