エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

文字の大きさ
29 / 72

29ゲイバー

しおりを挟む
扉をくぐると店内は薄暗く、意外と落ち着いた大人な雰囲気だ。
しかしやはり客は全員男性で、入った瞬間全員ちらりとこちらを確認した気がして一気に緊張が高まる。
店員に和やかに声を掛けられロキと二人で空いているカウンターに腰を掛けた。

一応俺の顔を知っている人が居るかもしれないと警戒してローブのフードを被っておく。
勇者がゲイだって噂は多分俺だけではなく各方面の偉い人にまで影響があると思うから、広まらないに越したことはない。
でもナンパとかされたらどうしよう。
そ、それでもしお付き合いとかに発展したらそのうち勇者という身分も明かさなきゃだし…そんな妄想をしていた時期が俺にもありました。
ロキと二人で座っていたが声を掛けられるのはロキの方ばかり。
ロキに声をかけた人は隣の俺を一瞥すると「え?このちんちくりんがツレ?そんなわけないよね?」と鼻で笑われ、俺の存在を無視してロキにモーションをかけ始める。
そうか、この世界でもゲイにモテるのは俺みたいなひょろいモブではなく、ロキのようにがっちりとした筋肉質な男らしいタイプなのか。

俺の付き添いで来ただけのノンケのロキは、声を掛けられすぎてぐったりしている。
俺の方は誰からも相手にされず、かといって自分から声をかける勇気も持てずに完全なる敗者としてうらぶれていた。
ロキに声をかける人が途切れると、二人してため息を吐いた。

「お、俺、ひ、髭でも生やそうかな…」

俺に足りていないのは男らしさだ。
召喚されてから随分と鍛えたが、悲しいかなどんなに頑張っても分かりやすい筋肉が付くことはなかった。
となれば男らしいセックスアピールになるのはもう髭しか思いつかない。

「いや、マサキ様に髭は似合いません」

きっぱりと言い切られて面食らう。

「え、え、そ、そう?で、でも…」
「外見なんて変えなくてもマサキ様は今のままで十分可愛いです」
「う、うん…うん?」

え、え、え!?
今何言われた俺!?
とりあえず頷いてみたものの、ロキの発言の意味を噛みしめ徐々に動悸が起こる。
サラッと何言ったこの人? もう酔ってる?

「今日一緒に来て良かったです。こんなあからさまに声をかけてくる野郎ばかりとは思いませんでしたよ。こんなところは純真無垢なマサキ様には相応しくありせんね。すみません、俺が余計なことを教えたばかりに期待させてしまって」

あ、これ絶対酔ってるわ。
いい歳した男に純真無垢はない。

「こ、こういうところは、だ、大体、そ、そういうものじゃないのかな…」

グラスのビールを一気に飲み干すと、ロキは据わった目で俺に向き直った。

「いいですか、マサキ様。野郎なんて大体ヤることしか考えていない下劣な奴ばかりです。今日はたまたま声を掛けられませんでしたが、マサキ様なんてすぐに食い物にされますよ。俺が同性愛者だったら、なんでも言う事きいてくれそうな大人しくて可愛い子なんて絶対手に入れたいですもん」
「ロ、ロ、ロキ!? きょ、今日どうしたんだ!?」

酔うにしたって様子がおかしい。
正気に戻そうと思わず肩をゆすってみたが、ロキはきょとんとした表情だ。

「何がですか?」
「よ、よ、酔い過ぎだ。へ、変なこと、い、言ってる自覚ないのか?」
「酔ってませんが? だってこれまだ2杯目ですよ。特に変なことも言ってませんし。マサキ様こそどうかしたんですか?」

何を言っているのか分からないとばかりに首を傾げるロキ。
あれ? これ俺の方がおかしいんだっけ?
混乱で訳が分からなくなっている時だった。

「ふふ」

突然俺の隣から笑いが漏れた。
驚いてそちらに視線をやると、落ち着いた雰囲気の美丈夫がこちらを見て楽しそうに微笑んでいた。

「ああ、突然ごめんね。君のリアクションがあまりに可愛らしくてね。そこの彼の言う通りだと思うよ」
「あ…?」

ロキが反対隣りで低い声を出したが、俺は一気に気分が高揚していた。
ついに俺にも声をかけてくれる人が現れた。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

処理中です...