エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

文字の大きさ
30 / 72

30ナンパ

しおりを挟む
突然隣に現れたその人は痩身でまるでモデルのように手足が長い。
顔立ちもバランスの取れた完璧なパーツの配置をしておりまるで人形のようだが、浮かんだ表情は柔らかく温かみを感じる。
イケメンだけど優しそうな人、という印象だ。

「良かったら顔も見せてくれないかな? フード失礼するよ」
「あ…」
「おい!」

ロキの非難めいた声を気にすることなく俺のフードを取ってしまう隣人。
現れた俺の平凡そのものな顔をまじまじと見つめて、満足そうに微笑んだ。

「うん、思った通り可愛いね。僕はデイビッド。良かったら一緒に飲まないかい?」
「悪いな。俺達もう帰るところだ。いきましょう、マサキ様」
「え、あ、あ」

ロキは落とされたフードをもう一度俺に被せて立ち上がろうとした。
俺は突然起こった展開について聞けずに戸惑う事しかできない。

「マサキというのか。是非君と話してみたいな」
「おい聞けよ!」
「なんだい君は? 僕は彼と交流したいのであって君には興味ないよ。帰りたいのなら一人で帰ればいいじゃないか。それとも君はマサキの恋人かい?」
「……っ」

ロキは質問の答えに詰まっている。
いかん、せっかく一緒に来てくれたロキが誤解されたては申し訳ない。

「ち、ち、違います。ロ、ロキと俺は全然、そ、そんなんじゃなくて、た、ただの同居人です!」
「ああ。ルームメイトというやつか」
「は、はい。と、ところで、お、俺なんかと話したいって、な、なぜですか?」
「はは、可愛い子に声をかけるのは男のさがだよ」
「お、俺は、き、聞いてのとおり、しゃ、喋るのは苦手で、い、イライラさせるかもしれませんが、だ、大丈夫ですか?」
「そのたどたどしい口調も魅力の一つだと僕は思うな」

そう言ってインクを寄越されてしまった。
この人凄い手慣れてる感じがする。
しかしコンプレックスだったどもりをこんな風に肯定してくれた人は初めてで思わずときめいてしまった。
俺と恋人だと一瞬でも誤解されたのが不快だったのか俯いてしまったロキが気になるが、もう少しこの人と話してみたい。

「ロ、ロキ。お、俺、もう少しデイビッドと、は、話してから帰るから、さ、先に屋敷に戻っててくれるか?」
「いけません! 初対面の男と二人きりなんて無防備すぎます!」

ロキは俺の事を箱入り娘か何かと勘違いしていないか?
まさかの発言に返答に困っているとデイビッドが鼻で笑った。

「ルームメイトくんはまるで心配性の父親のようだな。それか、嫉妬深い彼氏か…」
「…っ、とにかくもう帰りましょう!」

興奮した様子のロキに手首をつかまれ強引に引っ張られて席を立つ羽目になった。

「ちょ、ロ、ロキ!?」
「いいから!行きますよ!」

テーブルに金を乱暴に置いたロキは俺の手を放してくれずにそのままグイグイと出口に進む。
デイビッドの方を見ると、呆れたようにロキの行動を見守っていたが俺と目が合うと優しく微笑んでひらひらと手を振った。

「僕はここの常連で、大抵この店にいるから。また会いに来てくれると嬉しいな」
「もう来ねぇよ!」

頷こうとしたが、その前にロキが乱暴に扉を閉めてしまった。
そのまま夜の街を足早に進む。
掴まれた腕がそのままなことが気にかかったが、ロキはそれに気づくことなく歩き続ける。
誰かに見られたらロキが誤解されてしまうのではないかとハラハラする。

「ロ、ロキ!て、手が…」

俺の声に反応したロキはようやく止まった。

「すみません。強く掴みすぎました。痛かったですよね」
「だ、大丈夫。そ、そのまま歩くから、き、気になっただけ」

ロキは俺の手首を心配そうに確認すると、はぁと大きなため息を吐いた。

「ああ、俺って本当に馬鹿ですね。あんなところを教えて危うくマサキ様が汚されるところでした。いいですか?もうあの酒場には金輪際近づかないでください」
「え、え、で、でも、お、俺また、デ、デイビッドに会いたい…」

小声で反論するとロキの顔が険しくなる。
その表情はジョフィルが小言を言う時とそっくりで思わずぎくりとしてしまう。

「あれは相当に遊び慣れてますよ。マサキ様なんて弄ばれるに決まってます」

確かにかなり遊んでそうだとは思った。
色々手を出して飽きてきたので、俺みたいな変わり種に興味を示したのではないかと分析してみる。
たとえもしそうだとしても、沢山いたなかで俺なんかを選んで声をかけてくれたのは嬉しく思ってしまった。

しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

処理中です...