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ジョフィルを引き取った当初、まるで人形のぼんやりして反応が全くなかった。
よほどショックなことがあったのだろう。
ジョフィルの状態と比べるのはおこがましいが、当時の俺もまた途方に暮れていた。
魔王の討伐直後で元の世界に帰る事も出来ず、完全に目標を見失った。
そんな時にジョフィルに出会い、抜け殻のような彼にシンパシーを感じて一目ぼれをした。
俺がこの人を幸せにしたいと強く思った。
しかし現実はそううまくいかない。
なんの反応も示さなかったジョフィルの世話を嬉々として焼いたのだが、彼が初めて喋った言葉は「俺に触れるな」だった。
ジョフィルは俺が世話をしなくとも気づくと勝手に立ち直っていた。
その逞しさがまた良い…!と思ったが口に出しては怒られるだろうから黙っている。
という訳で触れるなと言われた日から直接ジョフィルに触れることがないように気を付けていたのに。
一体全体これはどういうことだろうか。
何故にジョフィルは俺を抱きしめている?ご乱心?
「ど、ど、どうしたんだ!?」
「……てください」
「え?」
「私を…捨てないでください」
「ん?んんん?」
やっぱりジョフィルが乱心してる。
「あ、あの、な、なんのこと…?ジョ、ジョフィルがいないと、や、屋敷が回らないし、お、俺が、こ、困る」
むしろいつ俺を見限っていつ屋敷を出て行ってしまうか気が気ではないのはこちらなのだが。
「デ、デイビッドに、な、何か言われたのか…?」
あまり疑いたくはないが、未だかつてジョフィルがこんな状態になったことはない。
何かあったとしか思えない。
「私では…ダメですか? 私をあなたの恋人に…してもらえませんか…?」
ええええええ??
ジョフィルが絶対に口にしないだろう台詞ナンバーワンが飛び出て混乱はピークに達する。
一体全体どんな感情で言っているのかと表情を確認しようとするが、ジョフィルの胸に頭を押さえつけられているので見えない。
押さえつけられたそこから聞こえる鼓動は凄く速い。
「ジョ、ジョフィル。ジョフィル。い、一旦、と、止まって。く、詳しく話してくれ」
落ち着かせる為に背中に手を回してトントンと叩くと、ふっと力が抜けて拘束から解放された。
ようやく目にしたジョフィルは迷子の子供のように不安そうに瞳を揺らしている。
「あの男はあなたの恋人になったのだと言っていました。愛し合っているとまで…」
「ええ?」
デイビッドはなんでそんなことを突然…。
第一付き合うまでは行っていない。
「男同士で付き合うなんて許されることではありません」
「ジョ、ジョフィルは知らないだろうけど、しょ、庶民では、ど、同性同士で、つ、付き合うことも、め、珍しいけど、あ、あり得るんだって…」
「そんなこと知っています」
知ってたの!?
庶民には同性愛が存在すると知ったらさぞ衝撃を受けるだろうと思っていたが、あっけなく返されこちらが衝撃を受ける羽目になった。
「しかしあなたは勇者であって庶民ではない。こんなの認められるわけがない…」
「お、俺…ゆ、勇者の肩書を捨ててもいいと、お、思ってる。お、俺は、ど、同性にしか、ひ、惹かれない。そ、それは一生変わらないから。そ、それが勇者に、ふ、相応しくないのであれば、お、俺は勇者を辞めたい」
「辞める…勇者を…? そんなことが?」
以前から用意していた回答を出すと、ジョフィルは驚いたように呟く。
反対されてもこれだけは譲れないと気合を入れて眉間に皺を寄せたが、ジッとこちらを見つめてくるジョフィルの眼力に少し怯む。
「だったら…勇者を辞めるというのなら、もうあなたは普通の男だ。そして私も貴族でもなんでもない。だからどうか、私を選んでください」
「んん…?」
俺の良いところなんて勇者の肩書きだけなんだから、てっきり反対されると思っていたのにすんなり受け入れられてしまった。
それどころか選んでくださいって…。
まるで告白されているようだ。
「あのデイビッドという者はマサキ様と結ばれれば、この屋敷を取り仕切ると言っておりました。私もあの者に忠誠を誓うようにと笑っていた…」
おお…デイビッド、そんなことを考えてたのか。
怒りなのか悲しみなのかジョフィルの声は震えている。
「マサキ様とあの者が仲睦まじく恋人として生活するのを、私がずっと側で支え見守る…そんなことは耐えられないっ…!」
辛さが悲痛が混じった言葉が吐き出され、俺は納得した。
同性愛反対過激派であるジョフィルに同性カップルのラブラブっぷりを始終見せつるのは確かに酷だ。
「だ、だからって、ジョ、ジョフィルが、お、俺の犠牲になることはない。も、もっと、じ、自分を大切に、す、すべきだ」
いくら見たくないとは言え、それで自分が嫌々俺の恋人役を演じるなんて本末転倒だ。
俺だってそんなの嫌だし。
「っ、犠牲など…」
言葉に詰まるジョフィルに微笑みかける。
「だ、大丈夫。ま、万が一、デ、デイビッドと俺が、む、む、結ばれることがあっても、こ、この屋敷には住まないから。そ、その時は、ジョ、ジョフィルに全部任せるよ」
「この屋敷を出て行くと…?」
「う、うん。セ、セイレスは連れて行くと思うけど。し、資産も殆ど置いて行くから、お、俺のことは気にせず、じ、自由に暮らしてくれ」
てっきり喜んでくれるかと思ったが、ジョフィルの顔色は真っ青だ。
「私はやはり…捨てられるのですか…」
「……?」
泣きそうにクシャリと歪む表情の意味が分からず首を傾げる。
「お、俺が言いたかったのは、お、俺はもう2度とジョフィルに、れ、恋愛感情を、も、持たないってこと。ぜ、絶対に、こ、恋人にはならないから、も、もう変な考えは持っちゃ、ダメだ」
「……そう…ですか」
納得したのかしてないのか、蚊の鳴くような声で頷くと、覚束ない足取りで部屋を出て行った。
よほどショックなことがあったのだろう。
ジョフィルの状態と比べるのはおこがましいが、当時の俺もまた途方に暮れていた。
魔王の討伐直後で元の世界に帰る事も出来ず、完全に目標を見失った。
そんな時にジョフィルに出会い、抜け殻のような彼にシンパシーを感じて一目ぼれをした。
俺がこの人を幸せにしたいと強く思った。
しかし現実はそううまくいかない。
なんの反応も示さなかったジョフィルの世話を嬉々として焼いたのだが、彼が初めて喋った言葉は「俺に触れるな」だった。
ジョフィルは俺が世話をしなくとも気づくと勝手に立ち直っていた。
その逞しさがまた良い…!と思ったが口に出しては怒られるだろうから黙っている。
という訳で触れるなと言われた日から直接ジョフィルに触れることがないように気を付けていたのに。
一体全体これはどういうことだろうか。
何故にジョフィルは俺を抱きしめている?ご乱心?
「ど、ど、どうしたんだ!?」
「……てください」
「え?」
「私を…捨てないでください」
「ん?んんん?」
やっぱりジョフィルが乱心してる。
「あ、あの、な、なんのこと…?ジョ、ジョフィルがいないと、や、屋敷が回らないし、お、俺が、こ、困る」
むしろいつ俺を見限っていつ屋敷を出て行ってしまうか気が気ではないのはこちらなのだが。
「デ、デイビッドに、な、何か言われたのか…?」
あまり疑いたくはないが、未だかつてジョフィルがこんな状態になったことはない。
何かあったとしか思えない。
「私では…ダメですか? 私をあなたの恋人に…してもらえませんか…?」
ええええええ??
ジョフィルが絶対に口にしないだろう台詞ナンバーワンが飛び出て混乱はピークに達する。
一体全体どんな感情で言っているのかと表情を確認しようとするが、ジョフィルの胸に頭を押さえつけられているので見えない。
押さえつけられたそこから聞こえる鼓動は凄く速い。
「ジョ、ジョフィル。ジョフィル。い、一旦、と、止まって。く、詳しく話してくれ」
落ち着かせる為に背中に手を回してトントンと叩くと、ふっと力が抜けて拘束から解放された。
ようやく目にしたジョフィルは迷子の子供のように不安そうに瞳を揺らしている。
「あの男はあなたの恋人になったのだと言っていました。愛し合っているとまで…」
「ええ?」
デイビッドはなんでそんなことを突然…。
第一付き合うまでは行っていない。
「男同士で付き合うなんて許されることではありません」
「ジョ、ジョフィルは知らないだろうけど、しょ、庶民では、ど、同性同士で、つ、付き合うことも、め、珍しいけど、あ、あり得るんだって…」
「そんなこと知っています」
知ってたの!?
庶民には同性愛が存在すると知ったらさぞ衝撃を受けるだろうと思っていたが、あっけなく返されこちらが衝撃を受ける羽目になった。
「しかしあなたは勇者であって庶民ではない。こんなの認められるわけがない…」
「お、俺…ゆ、勇者の肩書を捨ててもいいと、お、思ってる。お、俺は、ど、同性にしか、ひ、惹かれない。そ、それは一生変わらないから。そ、それが勇者に、ふ、相応しくないのであれば、お、俺は勇者を辞めたい」
「辞める…勇者を…? そんなことが?」
以前から用意していた回答を出すと、ジョフィルは驚いたように呟く。
反対されてもこれだけは譲れないと気合を入れて眉間に皺を寄せたが、ジッとこちらを見つめてくるジョフィルの眼力に少し怯む。
「だったら…勇者を辞めるというのなら、もうあなたは普通の男だ。そして私も貴族でもなんでもない。だからどうか、私を選んでください」
「んん…?」
俺の良いところなんて勇者の肩書きだけなんだから、てっきり反対されると思っていたのにすんなり受け入れられてしまった。
それどころか選んでくださいって…。
まるで告白されているようだ。
「あのデイビッドという者はマサキ様と結ばれれば、この屋敷を取り仕切ると言っておりました。私もあの者に忠誠を誓うようにと笑っていた…」
おお…デイビッド、そんなことを考えてたのか。
怒りなのか悲しみなのかジョフィルの声は震えている。
「マサキ様とあの者が仲睦まじく恋人として生活するのを、私がずっと側で支え見守る…そんなことは耐えられないっ…!」
辛さが悲痛が混じった言葉が吐き出され、俺は納得した。
同性愛反対過激派であるジョフィルに同性カップルのラブラブっぷりを始終見せつるのは確かに酷だ。
「だ、だからって、ジョ、ジョフィルが、お、俺の犠牲になることはない。も、もっと、じ、自分を大切に、す、すべきだ」
いくら見たくないとは言え、それで自分が嫌々俺の恋人役を演じるなんて本末転倒だ。
俺だってそんなの嫌だし。
「っ、犠牲など…」
言葉に詰まるジョフィルに微笑みかける。
「だ、大丈夫。ま、万が一、デ、デイビッドと俺が、む、む、結ばれることがあっても、こ、この屋敷には住まないから。そ、その時は、ジョ、ジョフィルに全部任せるよ」
「この屋敷を出て行くと…?」
「う、うん。セ、セイレスは連れて行くと思うけど。し、資産も殆ど置いて行くから、お、俺のことは気にせず、じ、自由に暮らしてくれ」
てっきり喜んでくれるかと思ったが、ジョフィルの顔色は真っ青だ。
「私はやはり…捨てられるのですか…」
「……?」
泣きそうにクシャリと歪む表情の意味が分からず首を傾げる。
「お、俺が言いたかったのは、お、俺はもう2度とジョフィルに、れ、恋愛感情を、も、持たないってこと。ぜ、絶対に、こ、恋人にはならないから、も、もう変な考えは持っちゃ、ダメだ」
「……そう…ですか」
納得したのかしてないのか、蚊の鳴くような声で頷くと、覚束ない足取りで部屋を出て行った。
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