エンド後勇者、奴隷たちに振られまくる総受け生活

極寒の日々

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41本性

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鬱陶しそうな前髪を掻き分けると穏やかそうな寝顔が現れる。
頬は痩せこけ、暖炉の掃除でもしたのかところどころ煤けているが、やはり随分と整った顔をしている。
穏やかに寝息を立てる姿を見つめていると安堵で心が落ち着く。

「ウチの奴隷が面倒をかけたね」

見入っているとデイビッドが背後から声をかけてきた。

「その奴隷は最近ずっと調子が悪くてね。買って随分経つし、そろそろ買い替えを検討していたんだ」

この世界としては通常の会話の範囲である。
しかし俺にとってはズシリと心が重くなる内容だ。
それも親しくしている人間から出た言葉となれば、それは尚更俺のメンタルを削る。

「こ、この人のこと…す、捨てるつもりなのか?」
「捨てる? まさか、そんな酷いことはしないよ」

笑顔でそんな返答があり安堵する。

「ちゃんと殺すよ。僕は奴隷に優しい主人だからね。最期まで責任は取るさ」
「っ…!」

デイビッドの優しそうな笑顔が途端に理解出来ない恐ろしいものに感じる。

「今更中古にも出せないし、かと言って放り出してたところで病弱な奴隷なんてすぐに野垂れ死ぬだけだ。だったら一思いに殺してあげた方が余程優しいと思うけどなぁ」
「や、優しい…?」
「うん、だってちゃんとお墓も作ってあげるよ? 所有した歴代の奴隷達はみんな庭に埋葬してるんだ。物を大切にする良い主人を持てた奴隷達はみんな幸せ者だよ」

罪悪感なんて欠片もなく、本気でそれが優しさだと言わんばかりの物言いに絶句する。

「ち、治療してあげようとは、お、思わないのか? か、彼はまだ、わ、若い。な、治る可能性が高いんじゃ?」
「ふふ、金持ちのマサキには分からないかもしれないけど、治療って凄くお金が掛かるんだよ? それこそ新品の奴隷を買った方が余程いい」
「……」
「奴隷のことなんてどうでもいいじゃないか。それよりホラ、ワインを用意してあるって言っただろ? 奥の部屋にあるからおいで」

寝ている彼のことは気がかりだが、万能薬はまさに万能。
冒険中に作成した物で、効果は保証できる。
恐らく彼はもう大丈夫。
後ろ髪引かれつつ促されるままデイビッドの後に続く。

通されたのは広々とした部屋で、暖炉の向かいに大きなソファが設置されている落ち着いた空間だった。
ソファに腰掛けると、デイビッドが両手にワインを持って隣に座った。

渡されたワインを一口飲む。
渋みはそこそこで喉にさらりと流れる感じで飲みやすい気がする。
よく分からないが、美味しい…ような?

「うん、美味しいね。この年代は当たり年と言われているだけある」

ワインに満足そうなデイビッド。
彼と呑むのが好きだった。
俺のペースに合わせて会話してくれ、軽快な返しをくれる。
あれほど楽しかった彼との時間が、今は全身で緊張を感じている。

「ねぇ、今日マサキを呼んだのは、そろそろ僕たちの関係をはっきりさせたいからなんだ」

そう言いながらこちらに身を寄せてくるので反射的に反対側へ体を微かに反らしてしまう。

「お、お、俺も、き、聞きたかった。ジョ、ジョフィルに、な、なんで、あ、あんなこと、い、言ったんだ?」
「あんなこと?」
「お、俺たちは、こ、恋人同士で、あ、あ、あ、愛し合っているとか。や、屋敷を自分が取り仕切るとか…」


勇気を出して尋ねると、デイビッドはまったく焦ることなく楽しげに笑った。

「ああ、ごめん。ちょっと先走っちゃったかな。僕らは愛しているって誰かに喋りたかったんだ」
「そ、それは…」

俺ごときがおこがましいのだが、正直今のデイビッドと付き合いたいとは思わない。
デイビッドとはあまりに価値観が違いすぎる。

「これからマサキとの甘い生活が楽しみだよ。恋人になったら是非僕の事業も手伝ってもらいたいな」

どう断りをいれようかと言いあぐねていると、デイビッドが唐突にそんなことを言い始めた。
それってもしかして…。

「なに、全然難しい話じゃないんだ。主に資金提供をお願いしたいかなって。僕の事業は今が正念場なんだ。愛するマサキに支えてもらいたい。今後の二人の未来の為にも絶対に必要なことだよ」

ああ…そういう…。
おかしいと思ったのだ。
デイビッドのような美形が俺みたいなちんちくりんに興味を持つなんて。

いわゆる金目当てというやつだろう。
本来なら美形に甘い言葉を囁かれれば俺は有頂天になるはずなのに、なんだか心の底からは喜べなかった。
それは全てデイビッドの本心ではなかったからだ。
しかしそれで落胆したわけではない。
むしろ今まで胸につかえていた違和感が取り払われて、爽快感さえ感じる。

「ご、ごめんな、デイビッド。お、俺なんかの為に、じ、時間を使わせて。で、でも、デイビッドの望むことは、お、俺はしてあげられない」

自分としてはきっぱりと断ったつもりだ。
しかしデイビッドの笑顔が崩れることはない。

「そんなこと言わないで欲しいな。これはマサキにとってもメリットのあることだよ?」
「メ、メリット?」

満面の笑みでグイグイと距離を詰めるデイビッドがなんだか恐ろしい。
もう一度距離を取ろうと腰を引いたが、その腰に手を回して強引に引くデイビッド。
そのまま彼の顔がキス出来そうなほど近づいてくる。

「そう、メリット。つまりこういうことさ」

———ドサリ

俺をソファに押し倒したデイビッドは不敵に笑った。
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